メソセラピーは、頭皮に薬液を直接届けることで髪の毛の成長をサポートする治療です。AGA治療や薄毛治療を考える人が増える中、「外来で行う注射治療」として認知が広がっています。

頭皮環境を整えて育毛をめざす方法として、多くの方が注目していますが、具体的な施術方法や治療期間をイメージしづらい方もいるかもしれません。

この記事では、メソセラピーの原理や期待できる育毛効果、治療の特徴、費用の概略などを詳しく紹介します。

目次

メソセラピーとは

頭皮に働きかける治療と聞くと、外用薬や内服薬を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、メソセラピーは注入という方法を用いて有効成分を届ける点に特徴があります。

メソセラピーの概要

メソセラピーは、ヨーロッパで美容やアンチエイジングの目的で広く行う治療法から発展したといわれます。

育毛を目的とする場合、頭皮へ育毛に寄与する有効成分を直接注入し、発毛をうながします。

薬剤が頭皮へ局所的に届くので、内服や外用では得られにくい効率的な効果をねらえます。

他の育毛治療との違い

内服薬は血流を介して成分が全身に回りますが、メソセラピーは注入部位にダイレクトに働きかける点が注目ポイントです。

頭皮そのものを改善したい場合、直接注入がメリットになりやすいです。

外用薬や内服薬と併用すると、相乗効果が期待できる場合もあります。

メソセラピーが取り入れる主な薬剤

育毛に用いる薬剤はクリニックによって異なりますが、ビタミンやアミノ酸、血行促進に関わる成分などが主です。

複数の成分を組み合わせることで、髪に必要な栄養を補うとともに頭皮の環境を整えます。

メソセラピーに用いられる成分

成分例主な役割
ビタミン群頭皮の健康維持をサポート
アミノ酸髪を構成するタンパク質の原料
ミノキシジル系血行促進をうながす
成長因子毛母細胞の活性化を助ける

メソセラピーが注目される背景

薄毛が進行しやすい方や、部分的に薄毛が気になる方が、比較的短期間で頭皮環境の変化を実感しやすい点が評価されています。

内服や外用と違い、施術時点で直接的に有効成分を届けるため、効果を早めに体感しやすいと考えられています。

メソセラピーの育毛効果を期待できる理由

メソセラピーを実施すると、内服や外用だけでは届きにくい部分にまで薬剤が浸透しやすくなるといわれています。この特徴が、育毛治療としての評価につながっています。

毛根と毛母細胞への直接的なアプローチ

頭皮の深部にある毛母細胞が毛髪を生成する要です。

外用薬の場合、成分が皮膚の表面から浸透しなければ効果を発揮しにくいですが、メソセラピーはダイレクトに薬剤を送り込むため、毛母細胞への働きかけが行いやすいです。

これにより、育毛メカニズムの改善をめざせます。

頭皮環境を整えることで得られる変化

頭皮は皮脂や汚れが蓄積しやすい部位です。適切な成分を直接注入すると、皮脂過剰分泌の抑制や血行促進につながり、頭皮の乾燥や炎症なども緩和しやすいです。

頭皮環境が改善すれば発毛サイクルも健全化しやすく、髪質の向上も期待できます。

複数の成分を組み合わせるメリット

メソセラピーでは、複数の有効成分をオリジナルで調合することが多いです。

ビタミンやアミノ酸、血流改善の成分などを同時に注入するため、複合的な育毛効果をめざせます。

毛髪の成長には様々な要因が関わるため、総合的な取り組みを実行しやすいのが特徴です。

育毛に役立つ複数の有効成分を同時に得るメリット

有効成分効果
ビタミンB群毛細血管を健康に保ち、皮脂を抑える
ビタミンE抗酸化作用で頭皮ダメージを軽減
アミノ酸(システインなど)髪の構造を強固にする
コエンザイムQ10細胞活性化をサポート
血行促進成分(ミノキシジル系)頭皮の血流を改善

メソセラピーと並行して行うケアの重要性

頭皮のクリーニングやシャンプーの選び方など、日常的なケアとの組み合わせによって治療効果は変わりやすいです。

抜け毛の原因を減らしつつ、注入成分の働きを最大限に高めるには、生活習慣を整えることも欠かせません。

  • バランスの良い食生活を心がける
  • 頭皮にやさしいシャンプー剤を選ぶ
  • ストレスをためすぎないようにする
  • 睡眠時間をしっかり確保する
  • 過度の喫煙や飲酒を控える

メソセラピーの施術方法

メソセラピーをどのように行うかは、患者さんが最も気になるポイントのひとつです。注射という方法に対して不安を感じる方もいますが、適切に行えば大きなトラブルは起こりにくいです。

施術の流れ

施術の基本的な流れとしては、カウンセリングや頭皮の状態確認を行い、その後に薬剤を注入します。

頭皮に麻酔が必要な場合もありますが、状況やクリニックの方針によって異なります。

施術自体は数分から数十分程度で終了することが多いです。

メソセラピー施術の流れ

手順内容
カウンセリング頭皮状態や希望を医師に伝える
頭皮の検査マイクロスコープなどで状態を把握
麻酔の検討患者の痛みの感じ方で判断
薬剤の調合・注入頭皮に複数回注射
術後のチェック出血や腫れを確認

施術時の痛みに対する考え方

個人差はありますが、注射によるチクッとした刺激を感じる場合があります。

ただし、麻酔クリームや冷却などで痛みを緩和する方法を選ぶクリニックも少なくありません。痛みに弱い方は遠慮なく相談すると良いでしょう。

安全に実行するための準備

メソセラピーでは薬剤を頭皮に直接注入しますので、清潔な環境と注入方法の管理が必要です。

術前に頭皮を洗浄したり、アルコール消毒を行って感染リスクを下げたりします。

医師やスタッフがマイクロスコープで頭皮の状態を確認しながら行うと、より安全性が高まります。

施術にかかる時間の目安

施術時間は使用する薬剤の量や注射の範囲に左右されますが、頭頂部中心のメソセラピーなら約15分~30分程度で終わるケースが多いです。

カウンセリングや麻酔を含めると、トータルで約1時間前後を想定しておくと安心です。

工程所要時間
カウンセリング約10分~20分
頭皮消毒・麻酔約10分前後
薬剤注入約15分~30分
施術後の休憩 約5分~10分

治療の特徴と期間の目安

メソセラピーは、1回だけで劇的に変わるというより、一定期間継続することで効果が高まりやすい治療です。

どの程度のペースで通院すると良いかや、治療終了までの期間の目安などをここで解説します。

通院の頻度と治療スケジュール

一般的には2~4週間に1回のペースで施術を行い、3~6カ月程度続けるケースが多いです。

頭皮の状態や目的によっては、もう少し短い間隔で行うこともあります。通院間隔は医師が頭皮の回復度合いや効果の出方を見ながら調整します。

通院のスケジュール

時期通院回数の目安主な施術内容
1~2カ月目2~3回集中的に薬剤を注入し頭皮環境を整える
3~4カ月目2~3回毛髪の変化を確認しながら量や成分を調整
5~6カ月目2回程度維持目的で薬剤注入
7カ月目以降必要に応じて間隔を空けつつ続行整った頭皮環境を継続させる

効果を感じるまでの期間

個人差はありますが、早い方だと1~2カ月目で髪のハリやコシに変化を実感する場合があります。

3カ月目を過ぎたあたりから抜け毛の減少や産毛の増加などがわかりやすくなることが多いです。

毛周期を考えると、最低でも3カ月以上の継続は視野に入れるほうが良いと考えられます。

定期的な検査やカウンセリングの重要性

治療途中で頭皮の状態が大きく変化する可能性があります。血液検査や頭皮検査を定期的に行いながら治療プランを微調整すると、より効果的に育毛をめざせます。

自己判断で頻度を急激に減らすより、医師と相談しながらペースを決めることがおすすめです。

メソセラピーにかかる費用

費用はクリニックごとに設定が異なるため、事前の問い合わせが大切です。

1回あたり数万円程度が一般的ですが、複数回のセットプランを用意している場合もあります。

費用だけでなく、施術内容やアフターケアの充実度も合わせて確認すると良いでしょう。

メニュー費用
単発1回約20,000円~50,000円
5回セット約80,000円~200,000円(1回あたりの単価が下がることが多い)
麻酔のオプション料金 約5,000円前後

メソセラピーのメリット・デメリット

治療法を検討するときは、メリットだけでなくデメリットやリスクも把握しておくと安心です。

メリット

メソセラピーの主なメリットは、有効成分を直接注入する点です。

この直接性によって、よりダイレクトに育毛をうながしやすいと考えられています。

また、併用する成分をカスタマイズできる場合が多く、自分の頭皮状態に合わせた治療を望めるのも魅力です。

  • 薬剤が頭皮深部に届きやすい
  • 内服や外用では得にくい実感が期待できる
  • 成分を組み合わせて柔軟に調整できる
  • 短い施術時間で終了するケースが多い

デメリット

一方で注射による痛みや出血がゼロではありません。

内服薬や外用薬と比べるとコストが高くなる傾向があり、通院の手間もかかります。

施術後は軽い腫れや内出血が数日続く場合もあり、気になる方はスケジュールに余裕をもつ必要があります。

メソセラピーのメリット・デメリット比較

項目メリットデメリット
効果の出方頭皮に直接注入できるため効果を得やすい劇的変化を望む場合、継続が必要
痛み麻酔や冷却で軽減可能注射による痛みや針跡の負担
費用セット割引を利用すると割安になりやすい1回あたりの料金が外用や内服より高い
通院定期的な確認で状態を把握しやすい病院へ足を運ぶスケジュール管理が必要

リスクと注意点

施術後に腫れや内出血、頭皮の赤みが残ることがあります。

感染症のリスクを下げるため、施術当日は湯船につかるのを避けたり、強い運動を控えたりする場合があります。

血行促進成分を使用する場合は、血圧に影響することがあるため、持病がある方は担当医に相談が大切です。

メソセラピーを受けるか迷ったら

費用、痛み、通院負担などを考慮して慎重に検討しましょう。

相談時には遠慮なく自分の希望や疑問を医師に伝えられるかどうかも大切です。

クリニック選びの際にはカウンセリングの対応や専門スタッフの有無などもチェックすると安心です。

  • カウンセリングで疑問をしっかり質問できるか
  • 費用や施術内容の見積もりが詳細に提示されるか
  • 他の治療法との比較を提示してくれるか

AGA治療と組み合わせる場合のポイント

AGAは男性型脱毛症とも呼ばれ、男性ホルモンの影響で前頭部や頭頂部の髪が薄くなる病態です。

メソセラピー単独でもある程度の効果を期待できますが、AGAに関連するホルモンを抑制する内服薬や外用薬との併用で、さらに相乗効果をめざす考え方があります。

AGAの基本的な治療法との併用

フィナステリドやデュタステリドなどの内服薬は、ホルモンによる脱毛因子をブロックします。

一方、メソセラピーは頭皮の環境整備に向いているため、併用することで抜け毛抑制と育毛促進の両面から働きかけられるのが大きな利点です。

AGA治療に用いられる薬剤とメソセラピーの役割

治療の種類主な特徴メソセラピーとの相乗効果
内服薬(フィナステリドなど)男性ホルモンを抑制し抜け毛を減らしやすい頭皮環境を同時に改善し、発毛をうながす効果を高める
外用薬(ミノキシジルなど)局所的に血行促進を期待できる注入との相乗作用でさらに血行改善をうながす
サプリメント栄養補給や頭皮環境のサポートメソセラピーで直接成分を注入しながら内側からも補う

AGA治療中の副作用とメソセラピー

内服薬の場合、性欲減退や肝機能への影響などが報告されることがありますが、メソセラピーによる主な副作用は施術部位の腫れや内出血などにとどまることが多いです。

相互作用で深刻な問題が起こる可能性は低いと考えられますが、複数の治療を同時に受ける場合は、担当医にしっかりと相談することが大事です。

AGA治療中に通院間隔が変化するケース

AGA治療薬の効果が安定してきた場合、メソセラピーの通院間隔を少しあけるケースがあります。

髪の変化を見ながら治療プランを調整するので、定期受診と経過観察が重要です。

併用治療を成功させるポイント

AGA治療は長期戦になりやすいです。毎日の内服薬と定期的なメソセラピーを並行して続けるうえで、生活習慣の見直しも含めた総合的な取り組みが結果を左右しやすいです。

  • 内服・外用薬を医師の指示通りに継続する
  • 定期的な血液検査や頭皮の状態確認を行う
  • 施術後は頭皮を清潔に保ち、保湿を心がける
  • 睡眠や栄養バランスに気をつけて体全体の健康を考える

施術を受ける前によくある疑問

メソセラピーは聞きなれない治療法と感じる方が多いため、施術を開始する前に様々な疑問を抱くケースが少なくありません。

ここでは、多くの患者さんが気になる疑問点についてまとめます。

痛みはどの程度か?

痛みに関しては個人差が大きいですが、「麻酔や冷却を行えばある程度は軽減できる」という声が多く聞かれます。

痛みに敏感な方は、カウンセリング時にあらかじめ相談しておくと安心です。

一度やめるとどうなる?

メソセラピーを途中でやめると、有効成分の補給がストップするため、頭皮環境が少しずつ元に戻る可能性があります。

ただし、すぐに薄毛が急速進行するわけではありません。定期的な施術を続けるほうが効果を維持しやすいと考えられます。

副作用はあるか?

皮膚の薄い頭皮に針を刺すため、内出血や赤みが出るリスクはゼロではありません。腫れが気になる場合もありますが、多くは数日以内に治まるケースが多いです。

アレルギー反応などが心配な方は、施術前にパッチテストを受けることも検討すると良いでしょう。

女性でも受けられるのか?

女性でも受けられます。女性特有のホルモンバランスによる薄毛や産後脱毛、局所的なボリュームダウンなどにも応用できる場合があります。

ただし、女性に適した薬剤配合や治療計画を提案しているクリニックを選ぶとより効果を期待しやすいです。

女性が受けるメソセラピーの注意点

注目ポイント理由
女性向けの薬剤選択ホルモンバランスや頭皮環境が男性と異なることがある
肌トラブルが起きやすいかメイクやスタイリング剤の使用が男性より多い場合がある
妊娠・授乳期の時期薬剤使用の安全性の観点で十分に注意が必要

女性は化粧品やヘアケア製品を多用しがちなので、頭皮トラブルにならない製品選びが大事です。ホルモン変動が著しい時期は、特に慎重に治療計画を立てると良いでしょう。

クリニックでの取り組み

メソセラピーを安心して受けるには、施術を行うクリニックの体制や治療方針も大切です。

治療後のアフターフォローや情報提供の充実度によって、治療継続率や効果の出方が変わる可能性があります。

術後のアフターケア

施術後は、頭皮の赤みや針の跡が気になる方もいます。

クリニックが独自の保湿ローションやスカルプケア製品を提供して、術後の頭皮を落ち着かせるケースが増えています。

施術後数日間のケア方法を具体的に伝えることもあり、気になる点をいつでも相談できる体制を整えるところもあります。

術後に推奨される頭皮ケア

  • 頭皮を強くこすらずに洗う
  • 洗髪時はぬるま湯で優しくすすぐ
  • 紫外線対策を徹底する
  • 刺激の少ないヘアケア用品を使う

担当医やカウンセラーとの連携

メソセラピーの効果を最大限に発揮するには、医師の判断だけでなく、日々の生活指導やメンタル面のフォローも欠かせません。

専門のカウンセラーが定期的にヒアリングを行い、食事や睡眠、ストレス状況などを把握しながらアドバイスを行うクリニックもあります。

患者さんが安心して続けられる環境づくり

髪の悩みは周囲に相談しにくい問題です。そのため、プライバシーに配慮したカウンセリングスペースや予約制の導入など、通いやすい雰囲気を整える取り組みを行うクリニックも増えています。

費用負担を軽減するセットプランや分割払いなどを用意し、長期的に通いやすい環境を提供しているケースもあります。

他の施術やケアとの組み合わせ

頭皮の状況によっては、メソセラピーと他の施術やセルフケアを組み合わせることで、より効果的に育毛をめざせる可能性があります。

例としては、頭皮マッサージ機器の導入や、エレクトロポレーションを利用した頭皮への成分導入などを提案するクリニックが存在します。

複数の選択肢を比較しながら、自分に合った方法を検討するのも大切です。

参考文献

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