髪の生え際がM字のように後退し始めると、「自分の髪型はどう見られているのだろう」「このまま放置しておくとどれくらい進行するのだろう」といった不安が募るかもしれません。
生え際が後退する状態は主にAGA(男性型脱毛症)の影響が強いと考えられますが、進行度合いや対処方法は人によってさまざまです。
この記事では、いわゆるM字ハゲの進行パターンや髪型による工夫に注目しながら、クリニックで行う治療法も含めて詳しく解説します。
M字ハゲとは? ~特徴と原因について~
生え際が後退して、おでこがアルファベットの「M」のような形状になる現象は、一般的に「M字ハゲ」と呼ばれます。
はじめに、M字ハゲの特徴と原因を中心に、どのような人がなりやすいのかを考えていきます。
M字ハゲの特徴
M字ハゲは、前頭部の生え際が左右から後退し始めることで生まれる独特の形状を指します。
前髪のM字が目立つと、「薄毛が進行しているのではないか」と強い不安を覚える人が増えますが、すべての髪の後退がすぐに深刻な状態につながるわけではありません。
人によっては頭頂部ではあまり進行が見られないケースもあります。
- おでこの左右の生え際が後退してM字のように見える
- とくに額の両サイドの毛量が減ってくる
- 髪全体ではなく、前頭部に集中して薄くなる印象がある
原因として多いAGAとの関係
M字ハゲは、男性ホルモンが関わるAGAとの関連が深いといわれています。AGAではジヒドロテストステロン(DHT)と呼ばれる物質が毛根を萎縮させ、薄毛を進行させます。
前頭部の毛包はDHTの影響を受けやすく、生え際の後退が早い段階で目立つ人も少なくありません。
- DHTが毛包に作用しやすい遺伝的要素
- 男性ホルモンの変換酵素の活性度
- 食生活やストレスなどの生活スタイル
遺伝や生活習慣による影響
遺伝要因として家族や親族にAGAの症状が見られる場合、M字ハゲになりやすい傾向があります。また、偏った食事や睡眠不足などの生活習慣が髪や頭皮に負担をかけ、抜け毛のリスクを高めます。
ただし、遺伝だからといって必ずしも急激に症状が進むわけではありません。早期に正しいケアや治療法を選択すれば、髪のコンディションをより良い状態に近づけることも期待できます。
M字ハゲに影響すると考えられる要因と特徴
要因 | 主な特徴 |
---|---|
AGA(男性型脱毛症) | 男性ホルモンの影響で生え際が徐々に後退する |
遺伝的要素 | 家族にも同様の兆候がある場合、発症リスクが高くなる |
食生活・栄養不足 | 髪の生成に必要な栄養が不足し、抜け毛が増える |
睡眠不足・ストレス | ホルモンバランスの乱れや血行不良を引き起こしやすい |
M字ハゲに悩む方へのアドバイス
生え際がM字に近い髪型が気になったら、まずは原因を特定するために専門家への相談が大切です。
自分の生活習慣を見直してみるのも効果的です。毎日の食事でたんぱく質を十分に摂るように心がけ、ストレスをためにくい環境を作ることを意識すると、薄毛リスクを下げやすくなります。
M字ハゲの進行度を見分けるポイント
M字ハゲは早期に気づいて対処するほど、育毛・発毛のチャンスを高められる可能性があります。
ここでは、M字ハゲの進行度を見分ける目安や、どこまで後退すると対処が必要なのかを考えていきます。
見た目からわかる進行度のチェック
前髪のM字がどの程度進んでいるかを判断するときは、鏡を使って生え際の状態を定期的に観察してみてください。
髪を後ろにかき上げたり、強い光の下でおでこの形をチェックすると変化をとらえやすいです。
- 額の両サイドが指1本分以上後退している
- 前頭部と側頭部に段差があるように見える
- 前髪を上げたとき、地肌が透けやすくなっている
M字ハゲを疑う初期段階のサイン
- 生え際付近がかゆい、または皮膚が硬く感じる
- 抜け毛の毛根が細く弱々しくなる
- 前髪がセットしにくくなりボリュームが出にくい
進行度を把握する必要性
治療方法やケア方法を選ぶためにも、M字ハゲがどの程度進んでいるかを早めに把握するのが重要です。
これ以上進ませたくない段階なのか、ボリュームアップを目指したい段階なのか、クリニックを受診する際の判断材料にもなります。
M字ハゲの進行度合いと特徴
進行度 | 特徴 |
---|---|
初期 | 生え際がやや薄くなるが髪型で隠せる程度 |
中期 | M字がはっきりとわかる。前髪を下ろしても隠しにくくなる |
後期 | 前頭部全体の髪が薄くなり、地肌が透けて見える |
クリニックで受ける検査のメリット
M字ハゲの進行度を客観的に知りたい場合は、医療機関で専門的な検査を受けることがおすすめです。
マイクロスコープなどを用いて頭皮の状態や毛根の状態を詳しくチェックし、脱毛の原因が本当にAGAなのかどうかを確かめられます。
こうした知識を得ると今後の対策を建てやすくなるでしょう。
自宅でできるM字ハゲ対策 ~生活習慣・ヘアケアの工夫~
M字ハゲの進行を食い止めたり、抜け毛を軽減したりするためには、日常の習慣を見直す取り組みを行いましょう。
食事と栄養バランスの見直し
髪の成長に必要なタンパク質やビタミン、ミネラルが不足していると、毛根への栄養供給が十分に行われません。
肉や魚、卵などの良質なたんぱく質だけでなく、ビタミンB群や亜鉛などのミネラル摂取を意識した食事が大切です。
- 肉や魚、豆類などからタンパク質を補給
- 緑黄色野菜を中心にビタミンをバランスよく摂取
- 亜鉛や鉄などミネラルにも注意を向ける
髪に良い栄養素を多く含む代表的な食品
栄養素 | 代表的な食品 | 特徴 |
---|---|---|
タンパク質 | 肉、魚、豆腐、卵 | 毛髪を構成するケラチンの主成分 |
ビタミンB群 | 豚肉、レバー、納豆、玄米 | 新陳代謝を促進し、頭皮環境を整える |
亜鉛 | 牡蠣、牛肉、ナッツ類 | 毛髪の生成にかかわり、成長を助ける |
鉄 | レバー、ほうれん草、赤身肉 | ヘモグロビン産生を助け、血流を促進 |
シャンプーや頭皮マッサージの重要性
頭皮を清潔に保ち、血行を促すことは髪の成長を促進させるうえでも大切です。
シャンプーは低刺激のものを選び、髪を洗う際に指の腹で優しくマッサージするように洗うと良いでしょう。
頭皮マッサージは入浴時だけでなく、リラックスしたいときに行うのも有効です。
頭皮マッサージのコツ
- 指の腹を使って軽く円を描くように動かす
- 頭頂部から生え際に向かって血液を流すイメージで行う
- 適度な力加減で毎日1分程度を目安に継続
睡眠やストレスケアの見直し
成長ホルモンの分泌が活発になる睡眠時間をしっかり確保し、ストレスによるホルモンバランスの乱れを防ぐ心がけが薄毛予防には欠かせません。
自分なりのリラックス法を見つけ、質の良い眠りを意識すると頭皮環境の改善にもつながります。
睡眠とストレス対策に役立つ工夫
工夫内容 | 期待できる効果 |
---|---|
就寝1時間前にはスマホやPCの使用を控える | メラトニン分泌が促され、入眠をスムーズにする |
軽い運動を取り入れる | 血行促進やストレスの発散に役立つ |
趣味やリラックス法を見つける | 自律神経を整え、ホルモンバランスを安定させる |
髪型でカバーする方法 ~M字ハゲでもおしゃれを楽しむ~
生え際がM字気味になってきたからといって、あきらめる必要はありません。髪型を工夫すると、ほどよくカバーしておしゃれを楽しめます。
自分の頭の形や髪質に合わせてスタイリストに相談するのも一つの方法です。
前髪やサイドを活かしたスタイル
生え際がM字に近い髪型が気になる場合は、前髪を重めに作っておでこのラインを隠す方法が一般的です。
サイドを短めにし、トップにボリュームを持たせるとバランスが取りやすくなります。
- 前髪を長めに下ろして額を隠す
- トップと前髪をふんわりセットして立体感を出す
- サイドは耳回りをすっきりさせてメリハリをつける
ヘアスタイル選びのポイント
- 短髪にしてM字部分をあまり目立たせない
- パーマを活用してトップのボリュームを出す
- ワックスやスプレーで前髪をキープする
髪型によるイメージ変化の例
実際にプロのスタイリストはM字の生え際をカバーするテクニックを多数持っています。
ツーブロックやショートレイヤーなどを取り入れることで、こまめに整えながらスタイリッシュに見せることも可能です。
M字ハゲをカバーしやすい髪型
髪型 | 特徴 |
---|---|
ショートレイヤー | トップにレイヤーを入れてボリューム感を演出 |
ツーブロック | サイドを短くしトップを長めにしてメリハリをつける |
前髪重めのショート | 額をしっかり隠すことができ、スタイリングもしやすい |
軽めパーマスタイル | 前髪の動きで生え際をぼかし、柔らかい印象を与える |
注意点:誤った髪型選びのリスク
無理に隠そうとして前髪を過度に長くすると、かえって薄毛部分とのギャップが目立つ場合があります。
また、ヘアケア用品の使いすぎで頭皮を蒸れさせてしまうと、抜け毛を助長する恐れがあります。
髪型でカバーする際も、頭皮ケアと並行して行うと良いでしょう。
クリニックでのAGA治療方法 ~M字ハゲに有効な取り組み~
M字ハゲの進行を抑えたり、発毛を促進したりするためには、AGA治療を検討する価値があります。治療薬から医療機器を用いた治療まで、その方法は多岐にわたります。
内服薬・外用薬による治療
AGA治療の中心となるのは内服薬(フィナステリドやデュタステリドなど)と外用薬(ミノキシジル)です。
これらの薬は、ホルモンの影響を抑えたり、血行を促進したりすることで、抜け毛を軽減し発毛をサポートします。
治療薬 | 作用 |
---|---|
フィナステリドやデュタステリド | DHTの産生を抑える |
ミノキシジル | 頭皮の血流を促進する |
治療薬の利用で期待できる変化
治療薬を使用すると、下記のような変化が期待できます。
- 抜け毛の減少
- 髪のコシやハリの向上
- 新たな発毛の兆候
メソセラピーなどの医療機器を使った治療
クリニックでは、頭皮に有効成分を直接注入するメソセラピーを実施しているところもあります。血行を促す効果や栄養をダイレクトに届ける効果が期待できる施術です。
また、LED照射などを組み合わせて頭皮環境を整えるケースもあります。
クリニックで行われる治療例と特徴
治療法 | 特徴 |
---|---|
メソセラピー | 成長因子やビタミンなどを頭皮に注入し、育毛を促す |
LED照射治療 | 特定の波長の光で血行促進や頭皮細胞活性をねらう |
PRP療法 | 自分の血液から抽出した血小板を利用して発毛を促す |
早期受診のメリット
M字ハゲの進行が気になる場合、できるだけ早期にクリニックを受診すると、内服薬や外用薬による効果を実感しやすくなる可能性があります。AGAの進行度が浅いほど、残存している毛母細胞の働きを維持しやすいためです。
受診を迷っている場合は、一度カウンセリングだけでも受けてみるとよいでしょう。
M字ハゲが進行した場合 ~植毛やウィッグの選択肢~
薄毛がかなり進んでしまった場合や、薬だけでは効果が感じにくい場合は、植毛やウィッグなどの選択肢もあります。
ここでは、将来的な対策として検討したい手段について解説します。
自毛植毛と人工毛植毛
植毛は、自分自身の後頭部や側頭部から採取した毛根(グラフト)を前頭部に移植する自毛植毛と、人工毛を頭皮に埋め込む人工毛植毛があります。
自毛植毛の場合は拒絶反応が少なく、定着率が高いといわれています。
- 自毛植毛は、自分の毛根を移植するため生着しやすい
- 人工毛植毛は、施術時間が短い場合が多いが、合わないと炎症を起こすリスクがある
自毛植毛と人工毛植毛の比較
項目 | 自毛植毛 | 人工毛植毛 |
---|---|---|
定着率 | 高い傾向 | 個人差が大きい |
拒絶反応 | 比較的起きにくい | 異物とみなされ炎症を起こす可能性も |
メンテナンス | 生えそろった後はさほど不要 | 定期的なメンテナンスが必要な場合あり |
ウィッグや増毛の活用
比較的手軽にカバーできる方法として、ウィッグや増毛を検討する人もいます。
ウィッグは市販品からオーダーメイドまで種類が豊富で、自分の髪に合わせてデザインすれば自然な見た目を実現しやすいです。
増毛も編み込みや接着など多様な技術が開発されており、日常生活に支障なく装着できるタイプが増えています。
ウィッグ・増毛を活用するメリット
- 即効性がある(装着したその日から印象を変えられる)
- 薬を飲むことや侵襲的な施術に抵抗がある方でも始めやすい
- 気分やシーンによって髪型を手軽に変えられる
クリニックとの連携
植毛やウィッグの導入を検討する際も、AGAなどの進行を遅らせる治療との併用を考えるのがポイントです。
単純に植毛して終わりにするのではなく、頭皮や毛根の状態を守りながら、長期的に見て髪のボリュームを保つ戦略が大切になります。
M字ハゲと女性の薄毛 ~女性の場合の特徴と対策~
M字ハゲは男性だけの悩みではありません。女性にも生え際が後退し、M字のような形になるケースが存在します。
女性の場合はホルモンバランスやヘアケアの方法が異なるため、男性とは違う観点からの対策が重要となります。
女性のM字ハゲの特徴
女性は男性と異なり、頭頂部や分け目の部分にボリュームダウンが顕著に現れるケースが多いですが、額の生え際が徐々に後退することもありえます。
女性ホルモン量が低下する更年期以降や、無理なダイエットが原因でM字気味に薄くなる方もいます。
- 分け目や前頭部の地肌が透け始める
- 出産後や更年期にホルモンバランスが乱れて進行する
- ポニーテールなどの引っ張りすぎで生え際が薄くなることもある
女性のM字ハゲに影響する要素
要素 | 特徴 |
---|---|
ホルモンバランス | 女性ホルモンの減少により髪の成長サイクルが乱れやすい |
過度なダイエット | 栄養不足で髪の元となるタンパク質が不足することがある |
ヘアスタイルの負荷 | 強いヘアゴムや過度のブローが生え際へ負担をかけることがある |
女性向けのケア方法
女性の場合も生活習慣の見直しや、適切なシャンプー選びが基本になりますが、ホルモンバランスに着目した治療も選択肢に入ります。
女性用の育毛剤やホルモン治療など、女性特有の視点からの取り組みが必要です。
女性が意識したいケアポイント
- 無理なダイエットを避ける
- 髪を束ねるときは強く引っ張らない
- 生え際に負担をかけないようにドライヤーの温度や距離に気を配る
クリニックでの女性用AGA治療
女性のAGA(FAGA)に特化した治療を提供するクリニックも増えています。男性用の薬とは異なる種類の内服薬や外用薬を組み合わせて治療するケースもあります
。女性の場合は妊娠や出産などライフイベントの影響を受けやすいため、医師との十分な相談が欠かせません。
Q&A ~よくある質問~
M字ハゲに関する疑問は、人によって抱えている悩みや状況によりさまざまです。ここでは、よくある質問をまとめました。
- 薬を飲み始めたらどのくらいで効果が出る?
-
個人差がありますが、一般的には3か月から6か月ほどで効果を実感する人が多いです。ただし、すぐに劇的な変化を期待するのではなく、抜け毛の減少や髪質の向上といった段階的な変化をチェックすることが重要です。
途中でやめてしまうと、薄毛が再び進行する可能性もあるため、医師の指示に従って継続することをおすすめします。
- M字ハゲは放置しておくと必ず進行する?
-
AGAによる脱毛傾向が強い場合、何らかの対策を取らないと進行するケースがあります。ただし、生活習慣の改善や早期の治療によって進行を遅らせたり、維持したりできる場合も多いです。
周囲の例だけを見て悲観的にならず、気になる段階で検査や治療を受けてみるとよいでしょう。
- 内服薬を飲み続ける必要はどれくらい?
-
AGA治療薬は薄毛が進行しないように作用するもので、服用をやめると再度薄毛が進む可能性が高いです。そのため、満足のいく発毛効果を得たあとも、維持目的で一定の服用を続けることが望ましいとされています。
具体的な服用期間は個々の状態によって異なるため、主治医と相談しながら決定してください。
- 病院での検査や治療は保険が適用される?
-
基本的にAGA治療は美容診療の扱いとなり、保険適用外であるケースが大半です。
検査や治療に要する費用は保険適用外になるため、クリニックごとに設定された自由診療の価格となります。事前にカウンセリングや費用の説明を受け、納得した上で治療を始めると安心です。
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