つむじのまわりが薄くなってきたように感じる方は、もしかすると男性型脱毛症(AGA)の初期症状かもしれません。

髪全体に影響が出る前に早めのケアを検討すると、進行をゆるやかにすることが期待できます。

本記事では、つむじまわりに起こる薄毛とAGAの関連性を、治療やセルフケアの視点からわかりやすく解説します。

目次

つむじはげとは?

髪の毛は頭皮から一定の方向に流れるように生えていますが、頭頂部はつむじを中心に渦巻き状になっているのが一般的です。

髪の生え方が特殊であるがゆえに、つむじ付近は元々地肌が見えやすい特徴があります。

しかし、地肌の見え方が明らかに強くなった場合は、つむじまわりが薄くなり始めている可能性があります。

頭頂部の構造と髪の生え方

人間の頭頂部は前頭部や後頭部と比べると頭皮が露出しやすく、特に髪の流れが集中するつむじ付近は透け感が生じやすいです。

髪の流れに沿って頭皮が見えやすい形状であるため、つむじ近辺のボリューム低下には早めに気づけます。

つむじまわりが薄く見える原因

つむじまわりの透け感にはさまざまな原因が考えられます。髪の成長サイクルの乱れや遺伝要因、ホルモンの変化などが複合的に影響することが多いです。

過度なダイエットやストレスがかかる生活を続けると髪が細くなり、つむじ付近からはげ上がりやすくなります。

  • 乱れた生活習慣による髪の細り
  • 過度なストレスやホルモンバランスの変化
  • 不十分な栄養摂取
  • 遺伝的な要因や男性ホルモンの影響

性別や年齢による特徴の違い

つむじまわりの薄毛は男性だけでなく、女性にも起こる可能性があります。

女性の場合は全体的に髪が薄くなる傾向がありますが、ホルモンバランスの乱れによって頭頂部が特に目立つケースもあります。

また、加齢とともに髪が細くなるため、年齢を重ねるほどつむじ付近の地肌が目立ちやすくなります。

つむじはげのポイント

項目男性の場合女性の場合
生え際の特徴生え際が後退しやすい全体的に薄くなる
頭頂部の特徴つむじ周辺が特に薄くなる分け目が広がる場合も
ホルモンの影響男性ホルモンが強く影響エストロゲン低下が影響
生活習慣での違い喫煙・飲酒の影響が大きいダイエットの影響が大きい
加齢による変化中年以降に顕著閉経前後に顕著

AGA(男性型脱毛症)とは

男性に多く見られる脱毛症の代表的な形態としてAGAが知られています。近年では医療機関での治療法が普及し、認知度が高まってきました。

しかし、進行性の脱毛症であるため、気づいたときには予想以上に髪が減っているケースもあります。早めに知識を得ることが大切です。

男性型脱毛症の発生メカニズム

AGAは男性ホルモン(テストステロン)が5αリダクターゼという酵素と結びつき、ジヒドロテストステロン(DHT)に変化することで起こりやすくなります。

DHTが毛根に作用するとヘアサイクルが短縮し、成長期が十分でないまま髪が抜け落ちるため、毛の本数と太さが徐々に減少していきます。

AGAの進行メカニズム

メカニズム内容
テストステロンの存在男性ホルモンの一種
5αリダクターゼの働きテストステロンをDHTに変換する酵素
DHT(ジヒドロテストステロン)毛根に悪影響を与え、ヘアサイクルを短縮させる
ヘアサイクルの乱れ成長期が短くなり、十分に育たない髪が抜け落ちる
結果頭髪が徐々に細く、全体のボリュームも低下していく

遺伝とホルモンの関係

AGAには遺伝的要因も大きく作用します。親や祖父母が男性型脱毛症だった場合、同様にAGAを発症しやすい体質を受け継ぐ可能性が高いです。

ホルモンバランスも加齢や生活習慣の乱れで変化し、症状を進行させる一因になります。

特徴的な進行パターン

AGAは前頭部から生え際が後退していくタイプと、頭頂部から丸くはげ上がるタイプ、もしくは両方同時に進行するタイプなど、いくつかのパターンに分かれます。

つむじまわりの薄毛が顕著になる場合は、頭頂部型の特徴と考えられます。

パターン特徴
前頭部型前髪から徐々に後退
頭頂部型つむじ付近から薄くなる
混合型前頭部と頭頂部の両方が同時進行

つむじはげとAGAの関連性

つむじまわりの薄毛は、男性型脱毛症の進行パターンの1つと捉えられています。

頭頂部は髪のボリュームを印象づける重要な箇所なので、少し薄くなるだけでも全体的な見た目に影響しやすいです。

つむじ周辺の薄毛が男性型脱毛症に含まれる理由

頭頂部は男性ホルモンの影響を強く受ける部位の1つです。つむじまわりの髪は成長期が短くなりやすいため、地肌が目立ちやすくなる傾向があります。

また、遺伝要因や生活習慣の乱れにより抜け毛が増えると、つむじ部分から薄毛が進行する可能性が高いです。

AGAにおける主な影響部位

影響部位特徴
前頭部生え際が後退しやすい
頭頂部(つむじ周辺)地肌が透けやすく、外見上の変化が大きい
側頭部比較的影響を受けにくいが、症状が進むと広範囲で髪が薄くなる場合もある

進行の早さと頭頂部の変化

頭頂部の薄毛は気づきにくい反面、一度気づいたときにはすでにかなり進行していることが珍しくありません。

髪を洗うときや鏡で見たときに、つむじまわりの髪がペタンと寝ていると感じたら、進行のサインかもしれません。

  • 髪が全体的に細くなる
  • 抜け毛に短く細い髪が混ざる
  • 頭頂部にボリュームが出にくい

放置によるリスク

つむじはげを放置すると、頭頂部だけでなく前頭部や側頭部にも広がる場合があります。

早い段階で治療を始めれば、抜け毛の抑制や髪の太さの回復が期待しやすいですが、進行が進むほど改善に時間と費用がかかります。

AGAを放置した場合の一般的な流れ

  • つむじまわりが薄くなる
  • 前頭部や生え際にも影響が及ぶ
  • 髪が全体的に減少する
  • 日常生活の中で薄毛の進行を意識するようになる
  • 心理的負担が増え、対人関係やセルフイメージに影響が出やすい

つむじまわりの薄毛を見分けるポイント

つむじまわりが薄くなってきたと感じたら、早めに変化の程度を見極めることが大切です。

早めに確認すると、AGAによる脱毛かどうかを判断しやすくなります。

髪の毛の太さと量の変化

抜け毛が増えただけでなく、1本1本の髪が細くなっていないかチェックしてください。

成長期が短くなると髪が十分に成長せず、細く柔らかい毛が増加します。髪の太さが落ちるとつむじ付近の透け感が増し、はげている印象が強まります。

髪の太さの変化

状態特徴
健康な髪太さが均一でコシやハリがある
進行した薄毛細い髪が多く、触ると柔らかい
AGAの疑いがある髪成長期が短くなり、抜け毛として排出される毛も細くて短いケースが増える

髪の生え際との違い

生え際の後退と異なり、つむじ付近は直接視界に入りにくい場所です。知らないうちに透ける範囲が広がっている可能性があります。

前頭部は鏡を見るたびにチェックしやすい一方で、つむじまわりは定期的に角度を変えて確認しないと見落としやすいです。

鏡チェックと他者からの指摘

頭頂部は自分で見づらいため、鏡を2つ使って確認する方法が有効です。

また、家族や友人から「後ろの方が薄くなったのでは?」と指摘を受けた場合は、早めに実際の状況を確かめてみることが必要です。

つむじまわりをチェックする際のコツ

方法ポイント
鏡を2つ使う後頭部と頭頂部が見やすくなり、つむじ周辺を明確に把握できる
スマホのカメラを利用上から撮影した画像を定期的に保存して経過を比べる
家族や友人に見てもらう第三者の視点で客観的な変化に気づきやすい

定期的に写真を撮り、経過を客観視しましょう。視線の届きにくい部分こそ注意して観察するようにします。

また、鏡だけでなく動画撮影や照明の調整を活用するのも有効です。

早期発見の重要性とセルフチェックのコツ

つむじ付近の薄毛を初期段階で発見できるかどうかが、治療効果や改善スピードに大きく影響します。

自分でも気軽に行えるセルフチェックを習慣化し、少しでも疑わしい兆候があれば専門の医療機関に相談するとよいでしょう。

早期発見がなぜ大切か

髪の毛は一度抜けてしまうと、毛根や毛母細胞の状態が悪化しているケースでは新しい髪が再生しにくくなります。

早期の段階で治療を始めると、まだ毛根が活性を保っているため、効果を実感しやすくなる傾向があります。

早期発見で得られるメリット

メリット内容
改善までの期間が短くなる毛根の活動が残っているほど再生しやすい
コストを抑えやすい軽度なうちに対処すると、進行した状態よりも治療費が抑えられる可能性がある
メンタル面の安定早めの対処で心理的ストレスを軽減

定期的な頭皮撮影と観察方法

自宅で頭頂部を撮影し、月1回程度の頻度で比較する方法を試してみてください。髪のボリュームや地肌の見え方の違いに気づきやすくなります。

  • 月1回、同じ場所・同じ照明で頭頂部を撮影
  • 前後左右など複数のアングルから撮影
  • 撮影日を記録し、過去の写真と見比べる

自宅でのセルフチェック手順

自宅で簡単に行える頭頂部セルフチェックを実施してみてください。髪が濡れた状態と乾いた状態の両方を比較すると、より正確に変化を捉えられます。

自宅チェックの流れ

  • ドライヤー前に頭頂部を鏡とスマホで撮影
  • ドライヤー後も同様に撮影し、画像を保存
  • 写真の日付をメモし、1カ月前や数カ月前と比較
  • わずかな変化でも気になれば早めに専門医へ相談

つむじまわりの薄毛治療で用いられる主な方法

つむじ付近の薄毛の原因がAGAである場合、医療機関では複数の治療法を組み合わせるケースが多いです。

症状の進行度や生活スタイルに応じて選択肢が異なるので、医師と相談の上で適切な方法を検討してください。

内服薬・外用薬の特徴

AGAの治療として代表的なものは、内服薬(フィナステリドやデュタステリドなど)と外用薬(ミノキシジル)です。

これらは脱毛の進行を抑えたり、髪の成長を促したりする効果が期待できます。一定期間継続して使用することで、頭頂部のボリュームアップを目指します。

内服薬と外用薬の比較

項目内服薬外用薬
代表的な成分フィナステリド、デュタステリドミノキシジル
作用機序DHTの産生を抑制毛母細胞への血流を促進
投与・使用方法1日1回の服用1日2回程度の頭皮塗布
副作用の可能性性機能への影響、肝機能数値の変化など頭皮のかゆみやかぶれなど
効果実感の目安3~6カ月程度3~6カ月程度

注入療法や植毛の選択肢

内服薬や外用薬では効果を十分に感じられないケースや、進行がかなり進んでいる場合は、頭皮に成長因子を注入する治療や自毛植毛などの外科的なアプローチを検討することがあります。

自毛植毛は自分の毛髪を薄毛部分に移植するため、定着すれば見た目の回復が期待できます。

治療期間と効果実感のタイミング

AGA治療の効果を実感するまでには、少なくとも3カ月から6カ月ほどかかると言われています。

髪の成長サイクルを踏まえ、1年以上の長期的な視点で治療を続ける方が多いです。途中で諦めずに根気よく継続することが大切です。

治療継続のコツ

  • 医師の指示を守り、薬の使用を途中でやめない
  • 3カ月ごとに頭部を撮影し、変化を記録する
  • 分からないことはこまめに担当医へ相談する
  • 合わない薬や副作用が出た場合はすぐに受診する

生活習慣とセルフケアの実践

治療に加えて、普段の生活習慣やセルフケアも薄毛の進行をゆるやかにするために重要です。髪と頭皮に良い習慣を心がけ、体の内側と外側の両面からケアしましょう。

食事・睡眠・ストレスケア

髪の毛を育てるためには、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養をバランスよく摂取することが求められます。

加えて、成長ホルモンの分泌を促す十分な睡眠や、ストレスを溜めにくい生活スタイルも大切です。

  • たんぱく質や鉄分を含む食品を積極的に摂る
  • 早寝早起きを心がけてホルモンバランスを整える
  • 適度な運動や趣味を通してストレスを解消する

生活習慣の見直し

取り入れたい習慣ポイント
バランスの良い食事たんぱく質、ミネラル、ビタミンを意識的に摂取
定期的な運動血行促進やストレス発散に有効
質の良い睡眠成長ホルモン分泌のためにも1日6~7時間程度の睡眠を確保
リラックス法の習得アロマや瞑想などでストレスを緩和
頭皮ケアの継続日々のシャンプーやマッサージで頭皮環境を整える

頭皮マッサージや洗髪方法

頭皮の血行を促すために、洗髪時に指の腹でマッサージする習慣を取り入れるとよいでしょう。

シャンプーは髪質に合ったものを選び、頭皮の汚れをしっかりと落とすことを心がけてください。

熱すぎるお湯は頭皮の皮脂を過剰に奪う可能性があるため、ぬるめのお湯で洗うとよいです。

洗髪時のポイント

  • ぬるま湯で髪をよくすすぐ
  • シャンプーは手のひらで泡立ててから頭皮へつける
  • 爪を立てず、指の腹で円を描くようにマッサージ
  • 残り湯がないよう丁寧にすすぐ

市販ヘアケアアイテムの上手な活用

育毛剤や頭皮ケアシャンプーなど、市販品も多く販売されています。

ただし、医薬品とは異なるため、AGAが大きく進行している場合の改善には限界があります。あくまで補助的なアイテムとして、自分の頭皮環境に合ったものを選ぶとよいでしょう。

市販アイテムの活用

製品種別役割
育毛トニック頭皮の血行促進、清涼感を得る
スカルプシャンプー頭皮を清潔に保ち、皮脂バランスを整える
育毛サプリ必要な栄養素を補給し、髪の成長をサポート

受診時のポイントとよくある質問

つむじまわりの薄毛が目立つと感じた方や、セルフチェックで疑いがある方は、専門の医療機関や皮膚科の受診を検討するとよいでしょう。初診時にスムーズに相談するためのポイントを押さえておくと安心です。

どのタイミングで受診すべきか

「つむじが広がった気がする」「抜け毛が増えた」など、薄毛を疑わせる症状に気づいたら早めに受診するのが望ましいです。

実際には「まだ大丈夫かも」と放置しがちですが、AGAは進行性なので早めの行動が将来の髪の状態を左右する可能性があります。

受診前にチェックしたいこと

チェック項目内容
抜け毛の増加を感じた時期いつ頃から自覚するほど抜け毛が増えたか
家族の薄毛歴両親や祖父母、兄弟姉妹に薄毛の人がいるか
生活習慣の乱れ睡眠不足、栄養バランスの偏り、喫煙や飲酒の有無など

治療費や治療期間に関する疑問

AGA治療の費用は、保険適用外となるケースがほとんどです。クリニックや治療内容によって差がありますが、1カ月あたり数千円から数万円ほどかかる方が多いです。

治療期間は最低3~6カ月、長期的には数年単位で継続する方もいます。費用や期間を把握した上で計画的に進めると負担をコントロールしやすいです。

  • 費用はクリニックにより異なる
  • 長期的な治療を見越して予算を組む
  • 初回カウンセリングで具体的な金額と期間を相談する

クリニックでよくある質問と解決策

受診時には、つむじ付近の状態を視診や触診、場合によってはマイクロスコープで確認します。疑問点や不安を抱えたままでは治療を継続しにくいので、遠慮なく質問してください。

薬は一生飲み続けないといけないの?

AGA治療薬は進行を抑える目的が大きいので、進行を抑制する限りある程度の継続が望ましいです。

副作用が心配だけれど大丈夫?

副作用が出やすい人もいますが、定期的な検査と医師の指導でリスクを軽減できます。

治療で生え際や頭頂部は完全に元通りになる?

個人差がありますが、初期であれば改善の可能性は高まります。進行度合いによっては効果に限度もあります。

つむじ付近のはげ方は自分では確認が難しく、気づいたときには進行している場合が多いです。少しでも「おかしい」と思ったら、早めに専門医に相談してみてください。

早期の段階で治療を始めれば、進行抑制だけでなく髪の状態をある程度取り戻す期待も持てます。

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