円形脱毛症は、ある日突然、髪の一部が円形や楕円形に抜け落ちる症状で、女性にとっても深刻な悩みのひとつです。
原因は完全には解明されていませんが、自己免疫疾患、ストレス、遺伝的要因などが関与すると考えられています。
この記事では、特に女性の円形脱毛症に焦点を当て、東洋医学の視点からの漢方治療や、日常生活で取り入れやすい自然療法について、できる限り詳しく解説します。
円形脱毛症を理解する 女性特有の悩みと向き合うために
円形脱毛症は、性別や年齢を問わず誰にでも起こりうる脱毛症ですが、女性にとっては外見の変化が精神的な負担となりやすく、より深刻な悩みとなることがあります。
円形脱毛症とは 基本的な知識と主な症状
円形脱毛症は、頭皮にコイン大の脱毛斑が一つまたは複数できるのが典型的な症状です。多くの場合、自覚症状はほとんどありませんが、軽いかゆみや違和感を伴うこともあります。
脱毛斑は頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、体毛など、毛が生えている部分ならどこにでも発生する可能性があります。
症状の範囲や進行の仕方は個人差が大きく、単発で自然に治癒することもあれば、多発したり、脱毛範囲が拡大したりすることもあります。
重症化すると、頭部全体の毛髪が失われる「全頭型」や、全身の毛が失われる「汎発型」に移行することもあります。
女性ホルモンと円形脱毛症の関連性
女性の体は、月経、妊娠、出産、更年期など、生涯を通じて女性ホルモンのバランスが大きく変動し、ホルモンバランスの乱れが、円形脱毛症の発症や悪化に関与する可能性が指摘されています。
特に、エストロゲンの減少は、毛髪の成長期を短縮させ、休止期を延長させることで、抜け毛を増やし、薄毛を起こす一因です。
また、甲状腺ホルモンの異常も、円形脱毛症を含む脱毛症の原因となることがあります。
ホルモンバランスの乱れは、自律神経の失調にもつながりやすく、これが免疫系の異常を引き起こし、円形脱毛症を誘発するという考え方もあります。
ストレスが引き金に? 女性の円形脱毛症と心因的要因
現代社会において、女性は仕事、家庭、育児など、様々な役割を担い、多くのストレスにさらされています。
過度な精神的ストレスや持続的な緊張状態は、自律神経のバランスを乱し、免疫機能を低下させることが知られています。
免疫系の異常が、毛包を異物と誤認して攻撃してしまう自己免疫反応を起こし、円形脱毛症を発症させる主要な原因の一つです。
特に感受性の高い方や、ストレスを溜め込みやすい性格の方は、円形脱毛症を発症しやすい傾向があるとも言われまています。
見逃さないで 円形脱毛症の初期サインと進行パターン
円形脱毛症は、初期には自覚しにくいこともありますが、いくつかのサインに気づくことで早期発見につながる場合があります。
シャンプー時やブラッシング時の抜け毛の増加、特定の部位の地肌が透けて見える、頭皮にかゆみや軽い痛みを感じる、などが挙げられます。
脱毛斑は、最初は小さなものであっても、数週間から数ヶ月かけて拡大したり、新たな脱毛斑が現れたりすることがあります。
進行パターンは様々で、一度治癒しても再発を繰り返すことも少なくありません。
東洋医学が捉える円形脱毛症 その原因と漢方的アプローチ
東洋医学、特に漢方医学では、円形脱毛症を単に頭皮や毛髪の問題として捉えるのではなく、身体全体のバランスの乱れが起こす症状の一つと考えられています。
気・血・水の調和や、五臓の機能が正常に働くことが、健康な毛髪を育む上で重要です。
漢方医学の基本「気・血・水」のバランスとは
漢方では、私たちの身体は「気」「血」「水」という三つの要素で構成され、バランス良く体内を巡ることで健康が維持されると考えます。
「気」の滞りと円形脱毛症
「気」は生命活動のエネルギー源であり、精神状態や自律神経の働きとも関連します。
ストレスや過労などにより「気」の流れが滞る「気滞(きたい)」の状態になると、血行が悪化し、毛髪に十分な栄養が届きにくくなり、また、精神的な不安定さも起こし、円形脱毛症の誘因となることがあります。
「血」の不足・滞りと円形脱毛症
「血」は全身に栄養を運び、身体を潤す役割を担います。
食生活の乱れや消化機能の低下、慢性的な疲労などにより「血」が不足する「血虚(けっきょ)」の状態になると、毛髪の成長に必要な栄養が行き渡らず、抜け毛や薄毛、髪のパサつきなどが現れやすいです。
また、「血」の流れが滞る「瘀血(おけつ)」も、頭皮の血行不良を招き、円形脱毛症の原因となり得ます。
「水」の滞りと円形脱毛症
「水」は体内の水分代謝を指し、リンパ液なども含みます。
水分の摂りすぎや代謝の低下により「水」が滞る「水滞(すいたい)」または「痰湿(たんしつ)」の状態になると、身体が重だるくなったり、むくみやすくなったりします。
頭皮においても、余分な水分や老廃物が溜まりやすくなり、毛根の働きを妨げ、円形脱毛症につながることがあります。
五臓の不調と髪の関係 肝・腎の重要性
漢方では、五臓(肝・心・脾・肺・腎)が互いに協調し合いながら生命活動を維持していると考え、毛髪の状態は、特に「肝」と「腎」の機能と深く関連しています。
「肝」は「血」を貯蔵し、全身への供給をコントロールする役割があり、精神状態の安定にも関わります。
ストレスなどにより「肝」の機能が失調すると、「血」の巡りが悪くなり、毛髪に栄養が届きにくくなります。「腎」は生命エネルギーの源である「精(せい)」を貯蔵し、成長や発育、老化と深く関わります。
「腎精(じんせい)」が充実していると毛髪は黒く艶やかになりますが、加齢や慢性的な疲労などで「腎精」が不足すると、白髪や抜け毛、薄毛などが現れやすいです。
円形脱毛症と関連する五臓の状態
臓腑 | 主な役割と毛髪との関連 | 不調時の毛髪への影響例 |
---|---|---|
肝(かん) | 血の貯蔵、疏泄(気血の流れを調節)、精神安定 | ストレスによる血行不良、栄養不足、抜け毛 |
腎(じん) | 精の貯蔵、成長発育、生殖機能、水分代謝 | 加齢や疲労による抜け毛、白髪、髪のパサつき |
脾(ひ) | 消化吸収、気血の生成 | 栄養不足による毛髪の菲薄化、抜け毛 |
ストレス(七情の乱れ)と自律神経 円形脱毛症への影響
漢方では、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七つの感情「七情(しちじょう)」が過度になったり、持続したりすると、気の流れを乱し、五臓の機能に影響を与え、病気の原因になります。
特に、怒りや憂い、思い悩みといった感情は「肝」や「脾」の機能を低下させやすく、気血の巡りを悪化させ、自律神経のバランスを崩し、免疫系の異常を介して円形脱毛症を起こすと考えられます。
現代社会における複雑な人間関係や仕事のプレッシャーは、「七情の乱れ」を起こしやすい環境で、円形脱毛症の改善のためには、ストレスを適切にコントロールし、心のバランスを保つことが非常に大切です。
食生活の偏りや生活習慣が招く体質変化
不規則な食事、栄養バランスの偏った食事、冷たいものの摂りすぎは、消化吸収を担う「脾」の機能を弱らせ、「気」や「血」を十分に作り出せず、毛髪に必要な栄養が不足し、抜け毛や薄毛の原因となります。
また、睡眠不足、運動不足、喫煙などの不適切な生活習慣も、気血の流れを悪化させたり、ホルモンバランスを乱したりすることで、円形脱毛症を発症・悪化させる要因です。
円形脱毛症への漢方アプローチ 体質改善で根本解決を目指す
円形脱毛症に対する漢方治療は、単に脱毛という症状を抑えるだけでなく、背景にある身体全体のバランスの乱れ、すなわち「体質」を改善することに主眼を置きます。
漢方治療の考え方 個々の体質に合わせたオーダーメイド治療
漢方では、「同病異治(どうびょういち)」という考え方があります。これは、同じ円形脱毛症という病名であっても、患者さんそれぞれの体質や原因が異なれば、治療法も異なるという意味です。
ストレスが主な原因で「気」の巡りが滞っている方には「気」を巡らせる漢方薬を、栄養不足で「血」が不足している方には「血」を補う漢方薬を用いるなど、個々の状態に合わせたオーダーメイドの治療を行います。
このため、漢方専門の医師や薬剤師による丁寧な問診(脈診、舌診、腹診などを含む)が重要です。
円形脱毛症に用いられる代表的な漢方処方
円形脱毛症の漢方治療に用いられる処方は多岐にわたりますが、ここでは代表的な体質タイプとそれに対応する漢方薬の例をいくつか紹介します。
気滞血瘀(きたいけつお)タイプに使われる漢方薬
ストレスが多く、イライラしやすい、胸や脇が張る感じがする、頭痛や肩こりがあるなどの症状が見られるタイプで、気の巡りが悪くなり、血の流れも滞っている状態です。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)や加味逍遙散(かみしょうようさん)などが用いられ、気の巡りを改善し、精神を安定させることで、血行を促進し、円形脱毛症の改善を促します。
血虚(けっきょ)タイプに使われる漢方薬
顔色が悪く、疲れやすい、めまいや立ちくらみがする、爪がもろい、髪が細くパサつくなどの症状が見られるタイプです。体に必要な「血」が不足している状態で、毛髪に十分な栄養が行き届きません。
四物湯(しもつとう)や十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)などが用いられることがあり、「血」を補い、全身の栄養状態を改善することで、毛髪の成長をサポートします。
腎虚(じんきょ)タイプに使われる漢方薬
加齢や慢性的な疲労により、足腰がだるい、耳鳴りがする、物忘れしやすい、白髪が多いなどの症状が見られるタイプです。
「腎」のエネルギーが不足している状態で、毛髪の成長や維持に関わる力が弱まっています。
八味地黄丸(はちみじおうがん)や六味丸(ろくみがん)などが用いられることがあり、「腎」の機能を高め、生命エネルギーを補うことで、毛髪の老化を防ぎ、円形脱毛症の改善を助けます。
代表的な漢方薬
漢方薬名 | 主な対象体質・症状 | 期待される作用 |
---|---|---|
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) | ストレス、不眠、不安、動悸 | 精神安定、気の巡り改善 |
加味逍遙散(かみしょうようさん) | イライラ、のぼせ、肩こり、不定愁訴 | 気の巡り改善、ホルモンバランス調整 |
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう) | 疲労倦怠、食欲不振、貧血傾向、体力低下 | 気血双補、免疫力向上 |
人参養栄湯(にんじんようえいとう) | 病後・術後の体力低下、食欲不振、寝汗 | 気血双補、滋養強壮 |
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう) | 神経過敏、不眠、眼精疲労 | 精神安定、自律神経調整 |
漢方薬の服用期間と効果を実感するまで
漢方治療は、体質を根本から改善していくことを目的とするため、効果が現れるまでにはある程度の時間が必要です。
数週間から数ヶ月程度の服用で少しずつ変化を感じ始める方が多いですが、症状の程度や体質、生活習慣などによって個人差があります。焦らずにじっくりと治療に取り組むことが大切です。
漢方治療を受ける際の注意点 専門家への相談
漢方薬は自然由来の生薬から作られていますが、医薬品であることに変わりはなく、体質に合わない場合は副作用が現れることもあり、胃腸の不快感、食欲不振、下痢、発疹などが起こりえます。
そのため、自己判断で市販の漢方薬を選んだり、他人に処方されたものを服用することは避けるべきです。
必ず漢方に詳しい医師や薬剤師に相談し、診断のもとで処方された漢方薬を、用法・用量を守って服用することが重要です。
日常に取り入れる円形脱毛症のための自然療法
漢方治療と並行して、あるいは漢方治療が難しい場合でも、日常生活の中で取り入れられる自然療法は、円形脱毛症の改善や予防に役立つ可能性があります。
食事で内側からケア 髪に必要な栄養素と食養生
健康な髪を育むためには、バランスの取れた食事が基本です。
髪の主成分であるタンパク質(特にケラチンを構成するアミノ酸)、毛母細胞の分裂を促す亜鉛、血行を促進し頭皮に栄養を届けるビタミンE、抗酸化作用のあるビタミンC、頭皮環境を整えるビタミンB群などを積極的に摂取することが推奨されます。
また、漢方的な観点からは、体を温める食材や、「血」を補うとされる黒い食材(黒豆、黒ゴマ、ひじきなど)も良いでしょう。
髪の成長をサポートする栄養素と食材
栄養素 | 主な働き | 多く含む食材例 |
---|---|---|
タンパク質 | 髪の主成分、毛髪の成長 | 肉類、魚介類、卵、大豆製品、乳製品 |
亜鉛 | 毛母細胞の分裂促進、ケラチン合成 | 牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類 |
ビタミンE | 血行促進、抗酸化作用 | ナッツ類、植物油、アボカド、うなぎ |
ビタミンC | コラーゲン生成補助、抗酸化作用 | 果物(柑橘類、イチゴ)、野菜(パプリカ、ブロッコリー) |
ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝促進、皮脂バランス調整 | レバー、魚介類、緑黄色野菜、穀類 |
日々の食事で心がけたいこと
- 様々な食材をバランス良く摂取する
- 加工食品やインスタント食品を控える
- 体を冷やす食べ物や飲み物の摂りすぎに注意する
- よく噛んで食べることで消化吸収を高める
食養生は、円形脱毛症の改善だけでなく、全身の健康維持にもつながります。
心と体を癒すリフレッシュ法 ストレス軽減のために
ストレスは円形脱毛症の大きな誘因の一つです。日常生活の中で、自分に合ったリフレッシュ法を見つけ、こまめにストレスを解消することが大切です。
深呼吸や瞑想、ヨガ、アロマテラピー、音楽鑑賞、趣味の時間を持つなど、心身をリラックスさせる習慣を取り入れましょう。また、十分な休息を取り、無理のない生活を送ることも重要です。
手軽にできるリラックス習慣
- ゆっくりとした腹式呼吸を意識する
- 好きな香りのアロマを焚く、または持ち歩く
- 自然の中で過ごす時間を作る(散歩など)
- 温かい飲み物で一息つく
頭皮環境を整える 頭皮マッサージと適切なヘアケア
頭皮の血行を促進し、毛根に栄養を行き渡らせるためには、頭皮マッサージが効果的です。指の腹を使って、頭皮全体を優しく揉みほぐすようにマッサージしましょう。
シャンプー時やリラックスタイムに行うのがおすすめです。ただし、強くこすりすぎると頭皮を傷つける可能性があるので注意が必要です。
また、ヘアケア製品は、自分の頭皮タイプに合った、刺激の少ないものを選んでください。
洗髪後は、ドライヤーで頭皮をしっかりと乾かすことも大切で、湿ったまま放置すると雑菌が繁殖しやすくなり、頭皮トラブルの原因となります。
頭皮マッサージのポイント
ポイント | 具体的な方法・注意点 |
---|---|
タイミング | シャンプー時、入浴後、就寝前などリラックスできる時 |
方法 | 指の腹を使い、頭皮全体を優しく動かすように揉む。爪を立てない。 |
強さ | 気持ち良いと感じる程度の力加減で。痛みを感じる場合は避ける。 |
質の高い睡眠で健やかな髪を育む
睡眠中には成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生が活発に行われます。これには毛母細胞も含まれており、質の高い睡眠は健康な髪を育む上で非常に重要です。
睡眠不足や不規則な睡眠は、ホルモンバランスの乱れや自律神経の失調を起こし、円形脱毛症を悪化させる可能性があります。
毎日同じ時間に寝起きする、寝る前にカフェインやアルコールの摂取を避ける、寝室の環境を整える(温度、湿度、光、音など)など、睡眠の質を高める工夫をしましょう。
生活習慣の見直しで円形脱毛症の改善と予防を促す
円形脱毛症の改善や再発予防には、日々の生活習慣を見直すことが不可欠です。
食事や睡眠だけでなく、喫煙や飲酒の習慣、運動不足、不適切なヘアケアなどが、知らず知らずのうちに頭皮や毛髪に悪影響を与えている可能性があります。
喫煙・飲酒習慣と髪への影響
喫煙は、血管を収縮させ血行を悪化させるため、頭皮への栄養供給を妨げ、また、タバコに含まれる有害物質は、毛母細胞の働きを弱め、毛髪の成長を阻害する可能性があります。
さらに、活性酸素を大量に発生させ、細胞の老化を早めることも指摘されているので、円形脱毛症の改善を目指すのであれば、禁煙することが強く推奨されます。
アルコールについては、適量であれば血行を促進する効果も期待できますが、過度な飲酒は肝臓に負担をかけ、栄養の代謝を妨げたり、睡眠の質を低下させたりする可能性があります。
飲酒はほどほどにし、休肝日を設けるなど、健康的な付き合い方を心がけましょう。
適度な運動で血行促進とストレス発散
適度な運動は、全身の血行を促進し、頭皮にも十分な酸素と栄養を届ける助けとなり、また、ストレス解消にも効果的であり、自律神経のバランスを整えることにもつながります。
ウォーキング、ジョギング、ヨガ、水泳など、自分が楽しめる運動を生活に取り入れ、継続することが大切です。
おすすめの運動と期待できる効果
運動の種類 | 頻度の目安 | 期待できる効果 |
---|---|---|
ウォーキング | 毎日20~30分程度 | 血行促進、気分転換、生活習慣病予防 |
ヨガ・ストレッチ | 週に数回、1回30分~1時間程度 | 自律神経調整、リラックス効果、柔軟性向上 |
軽いジョギング | 週に2~3回、1回20~30分程度 | 体力向上、ストレス解消、血行促進 |
漢方と自然療法の可能性 西洋医学との使い分けと併用
円形脱毛症の治療法は、漢方や自然療法だけではありません。西洋医学的なアプローチもあり、それぞれに特徴があります。
漢方と自然療法を組み合わせる利点
漢方治療は体質改善を主眼とし、身体の内側から円形脱毛症の原因にアプローチします。
一方、食事療法、ストレスケア、頭皮マッサージなどの自然療法は、日常生活の中で実践しやすく、漢方治療の効果を高めたり、再発を予防したりするのに役立ちます。
これらを組み合わせることで、相乗効果が期待できます。例えば、漢方薬で気血の巡りを整えながら、バランスの取れた食事で栄養を補給し、適度な運動でストレスを発散するといった形です。
漢方と自然療法の組み合わせ
漢方治療の目的 | 組み合わせる自然療法 | 期待される相乗効果 |
---|---|---|
気滞改善(ストレス緩和) | アロマテラピー、ヨガ、瞑想 | 精神的リラックス効果の向上、自律神経の安定 |
血虚改善(栄養補給) | バランスの取れた食事、鉄分・亜鉛摂取 | 毛髪への栄養供給促進、体力向上 |
頭皮環境改善 | 頭皮マッサージ、適切なシャンプー選び | 頭皮血行促進、毛穴の詰まり改善 |
西洋医学における円形脱毛症治療の概要
西洋医学では、円形脱毛症の原因を主に自己免疫疾患と捉え、免疫反応を抑える治療や、発毛を促進する治療が行われます。
代表的な治療法としては、ステロイド外用薬や内服薬、局所免疫療法(SADBE、DPCPなど)、ミノキシジル外用薬などがあります。
主な西洋医学的治療法
治療法 | 概要 | 主な対象 |
---|---|---|
ステロイド外用・局注 | 炎症や免疫反応を抑える | 軽症~中等症 |
局所免疫療法 | かぶれを起こす物質を塗り、免疫反応を変化させる | 広範囲、多発型 |
ミノキシジル外用 | 毛母細胞を活性化し発毛を促す | 軽症~中等症(補助的) |
治療法選択のポイント 自分に合ったケアを見つける
円形脱毛症の治療法を選ぶ際には、まず専門医の診断を受け、自分の症状の程度や原因について正確に把握することが重要です。
その上で、各治療法の効果や副作用、費用、期間などをよく理解し、医師と相談しながら、自分自身のライフスタイルや価値観に合った治療法を選択しましょう。
漢方治療や自然療法は、体質改善を目指すため効果が出るまでに時間がかかる場合がありますが、副作用のリスクが比較的低いというメリットがあります。
一方、西洋医学的治療は、比較的早く効果が現れる可能性がありますが、副作用に注意が必要です。
女性の円形脱毛症に関するよくあるご質問(FAQ)
ここでは、女性の円形脱毛症やその漢方治療、自然療法に関して、多く寄せられるご質問とその回答をまとめました。治療法を選択する上での参考にしてください。
- Q漢方薬はどれくらいの期間で効果が現れますか?
- A
漢方薬の効果の現れ方には個人差が大きく、一概には言えません。
数週間から2~3ヶ月程度の服用で何らかの変化を感じ始める方が多いですが、症状の重症度、罹患期間、体質、生活習慣などによって異なります。
漢方治療は体質を根本から改善することを目指すため、ある程度の期間、継続して服用することが必要です。
- Q自然療法だけで円形脱毛症の改善は期待できますか?
- A
軽度の場合や、ストレスが主な原因である場合などには、食生活の改善、十分な睡眠、ストレスマネジメントといった自然療法だけで症状が改善することもあります。
しかし、症状が進行している場合や、広範囲に及ぶ場合には、自然療法だけでは十分な効果が得られないこともあります。
そのような場合は、漢方治療や西洋医学的治療など、専門的な治療と組み合わせることが推奨されます。
- Q漢方薬の副作用について教えてください。
- A
漢方薬は比較的副作用が少ないとされていますが、医薬品である以上、体質に合わない場合や、用法・用量を誤った場合には、胃腸症状(食欲不振、吐き気、下痢など)、皮膚症状(発疹、かゆみなど)、肝機能障害などが起こる可能性があります。
複数の漢方薬を併用する場合や、他の薬剤と併用する場合には注意が必要です。
- Q食生活の改善はどの程度影響しますか?
- A
食生活は、健康な毛髪を育むための基礎となるため、円形脱毛症の改善において非常に重要です。
髪の主成分であるタンパク質や、毛髪の成長に必要なビタミン、ミネラル(特に亜鉛や鉄分)などをバランス良く摂取することで、毛母細胞の働きをサポートし、頭皮環境を整える効果が期待できます。
ただし、食生活の改善だけで円形脱毛症が完全に治癒するとは限りません。他の治療法と組み合わせることで、より効果的な改善が期待できます。
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