突然、髪の毛が円形に抜け落ちてしまう円形脱毛症。抜け毛がなかなか止まらないと、「このまま全部抜けてしまうのでは…」と不安な日々を過ごす方も少なくありません。
この記事では、女性の円形脱毛症の基本的な知識から、抜け毛が止まらない場合に考えられる原因、そしてご自身でできる対処法や医療機関での対応について、分かりやすく解説します。
女性の円形脱毛症とは何か
円形脱毛症は、頭皮にコインのような円形や楕円形の脱毛斑が突然現れる病気です。
ここでは、まず円形脱毛症の基本的な特徴や、女性特有の傾向、種類と症状の進行、そして他の脱毛症との違いについて詳しく見ていきましょう。
円形脱毛症の基本的な特徴
円形脱毛症の最も代表的な特徴は、境界がはっきりとした円形または楕円形の脱毛斑が突然出現することです。
自覚症状はほとんどなく、美容院で指摘されたり、家族に発見されたりして初めて気づくケースも少なくありません。
脱毛斑の大きさは、1円玉程度のものから、頭部全体に広がるものまで様々です。脱毛の勢いが強い時期には、脱毛斑の周囲の毛を軽く引っ張ると簡単に抜けてしまうことがあります。
また、脱毛斑の皮膚は、炎症を起こして赤みを帯びたり、わずかにむくんだりすることもありますが、通常は正常な皮膚と変わりません。かゆみや痛みを伴うことは稀ですが、軽微なかゆみを感じる人もいます。
女性特有の円形脱毛症の傾向
女性の円形脱毛症は、男性と比較していくつかの特徴的な傾向が見られることがあり、甲状腺疾患や膠原病といった自己免疫疾患を合併する割合が、男性よりもやや高いという報告があります。
また、妊娠や出産、更年期といったライフステージにおけるホルモンバランスの大きな変動が、発症や悪化の引き金になることも多いです。
さらに、精神的な影響も大きくなりがちで、社会生活や人間関係において、脱毛が大きなストレス源となり、それがさらに症状を悪化させるという悪循環に陥ることもあります。
円形脱毛症の主な種類と症状
種類 | 主な症状 | 一般的な進行の傾向 |
---|---|---|
単発型 | 頭部に1ヶ所だけ円形または楕円形の脱毛斑が生じる。 | 多くは自然に治癒することも期待できるが、拡大や多発型への移行もある。 |
多発型 | 頭部に複数の脱毛斑が生じる。脱毛斑が融合して大きな脱毛斑になることもある。 | 単発型より治癒に時間がかかる傾向があり、治療が必要な場合が多い。 |
蛇行型 | 後頭部から側頭部の生え際に沿って、帯状に脱毛する。 | 治りにくいタイプの一つで、治療が長期化することがある。 |
全頭型 | 頭部全体の毛髪がほぼ全て抜け落ちる。 | 重症型であり、専門的な治療を根気強く続ける必要がある。 |
汎発型 | 頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、腋毛、陰毛など全身の体毛が抜け落ちる。 | 最も重症なタイプで、治療が非常に難しい場合がある。 |
他の脱毛症との違い
女性の薄毛や抜け毛の原因は円形脱毛症だけではありません。
代表的なものに「女性型脱毛症(FAGA/FPHL)」や「びまん性脱毛症」があります。
女性型脱毛症は、主に頭頂部の分け目が薄くなるのが特徴で、男性型脱毛症(AGA)の女性版で、進行は緩やかで、毛髪が細く軟毛化していきます。
びまん性脱毛症は、頭部全体の毛髪が均等に薄くなる状態を指し、特定の原因がはっきりしないこともあります。
このような脱毛症と円形脱毛症の大きな違いは、脱毛の仕方です。
円形脱毛症は境界明瞭な脱毛斑が生じるのに対し、女性型脱毛症やびまん性脱毛症は、全体的にボリュームが減ったり、地肌が透けて見えやすくなったりする形で現れます。
円形脱毛症による抜け毛が止まらない原因
円形脱毛症による抜け毛が始まると、いつになったら止まるのか、なぜ自分だけこんなに抜けるのかと不安になるものです。
抜け毛が止まらない背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
自己免疫疾患としての側面
現在、円形脱毛症の最も有力な原因と考えられているのが「自己免疫疾患」です。
私たちの体には、外部から侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して体を守る「免疫」という仕組みがあります。
何らかの理由で免疫系に異常が生じると、自分自身の正常な細胞や組織を異物とみなして攻撃してしまうことがあり、これが自己免疫疾患です。
円形脱毛症の場合、免疫細胞であるTリンパ球が、成長期の毛根を誤って攻撃してしまうことで、毛髪が十分に成長する前に抜け落ちてしまうと考えられています。
ストレスとの関連性
「ストレスで髪が抜ける」という話はよく耳にしますが、円形脱毛症とストレスの関係も指摘されています。
精神的なストレスや過労、睡眠不足などが続くと、自律神経のバランスが乱れたり、免疫系の働きに影響を与えたりすることがあり、自己免疫反応が誘発されたり、増強されたりする可能性が考えられます。
ただし、ストレスはあくまで発症や悪化の「誘因」の一つであり、ストレスだけが円形脱毛症の直接的な原因となるわけではありません。
ストレスを感じていない人でも発症することはありますし、逆に大きなストレスを抱えていても発症しない人もいます。
- 十分な睡眠時間の確保
- バランスの取れた食事
- 適度な運動習慣
- 趣味やリラックスできる時間を持つ
ホルモンバランスの影響
女性の場合、ホルモンバランスの変動が円形脱毛症の発症や症状の進行に関与することがあり、特に、妊娠・出産、授乳期、更年期などは、女性ホルモンの分泌量が大きく変化する時期です。
この時期に円形脱毛症を発症したり、症状が悪化したりするケースが見られ、女性ホルモンの一つであるエストロゲンには、毛髪の成長を促進し、成長期を維持する働きがあります。
そのため、エストロゲンの分泌量が減少すると、毛髪の成長サイクルが乱れ、抜け毛が起こりやすくなる可能性があります。
また、甲状腺ホルモンの異常も、毛髪の健康に影響を与えることが知られており、甲状腺疾患を持つ女性は円形脱毛症を併発しやすいです。
遺伝的要因の可能性
円形脱毛症の発症には、遺伝的な要因も関わっていて、家族や親族に円形脱毛症の経験者がいる場合、本人も発症するリスクがやや高くなるというデータがあります。
海外の研究では、一卵性双生児が二人とも円形脱毛症を発症する確率が、二卵性双生児よりも高いことが報告されており、遺伝子の関与を示唆しています。
ただし、特定の遺伝子があれば必ず発症するという単純なものではなく、複数の遺伝子が複雑に関与し、そこに自己免疫反応や環境因子(ストレス、感染症など)が加わることで発症に至ると考えられています。
抜け毛が止まらない場合の初期対応
円形脱毛症による抜け毛が止まらず、日に日に脱毛斑が広がっていくのを見ると、大きな不安を感じるものです。
ここでは、抜け毛が止まらない場合にまず行うべきこと、生活習慣の見直しポイント、そして頭皮ケアの注意点について解説します。
まず行うべきこと
抜け毛が止まらない、あるいは円形脱毛症の疑いがあると感じたら、自己判断で市販の育毛剤などに頼るのではなく、できるだけ早く皮膚科、特に脱毛症を専門とする医師に相談することが最も重要です。
専門医は、症状を正確に診断し、現在の状態に合った適切な治療法やアドバイスを提供してくれ、早期に対応を始めることで、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることにもつながります。
受診する際には、いつから症状が始まったか、どのような経過をたどっているか、他に気になる症状はないかなどをメモしておくと、診察がスムーズに進みます。
生活習慣の見直しポイント
円形脱毛症の直接的な治療ではありませんが、健やかな髪の毛を育むためには、土台となる体全体の健康状態を整えることが大切です。
特に、食生活、睡眠、ストレス管理は、免疫機能やホルモンバランスにも影響を与えるため、意識的に見直してみましょう。
食生活の改善
髪の毛は主にタンパク質(ケラチン)からできているため、良質なタンパク質を十分に摂取することが基本です。肉、魚、卵、大豆製品などをバランス良く取り入れてください。
また、髪の毛の成長には、ビタミンやミネラルも欠かせません。特に、亜鉛は髪の毛の主成分であるケラチンの合成に必要で、不足すると抜け毛の原因になることがあります。
ビタミンB群は頭皮の新陳代謝を促し、ビタミンCはコラーゲンの生成を助け、頭皮環境を整え、ビタミンEは血行を促進し、毛根に栄養を届けやすくします。
栄養素を意識して、緑黄色野菜や果物、海藻類、ナッツ類なども積極的に食事に取り入れましょう。
髪の成長をサポートする栄養素と主な食品
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品例 |
---|---|---|
タンパク質 | 髪の主成分であるケラチンの材料 | 肉類、魚介類、卵、大豆製品、乳製品 |
亜鉛 | ケラチンの合成を助ける、免疫機能の維持 | 牡蠣、レバー、牛肉、チーズ、ナッツ類 |
鉄分 | 毛母細胞へ酸素を運ぶヘモグロビンの材料 | レバー、赤身の肉、ほうれん草、ひじき |
ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝促進、皮脂のバランス調整 | 豚肉、レバー、魚介類、穀類、豆類 |
ビタミンC | コラーゲン生成促進、抗酸化作用 | 果物(柑橘類、イチゴ)、野菜(パプリカ、ブロッコリー) |
ビタミンE | 血行促進、抗酸化作用 | ナッツ類、植物油、アボカド、うなぎ |
睡眠の質の向上
質の高い睡眠は、体の修復や成長ホルモンの分泌に重要です。成長ホルモンは、毛母細胞の分裂を促し、髪の毛の成長を助ける働きがあります。
睡眠不足が続くと、成長ホルモンの分泌が減少し、自律神経のバランスも乱れやすくなるため、髪の毛の健やかな成長を妨げる可能性があります。
毎日同じ時間に寝起きする、寝る前にスマートフォンやパソコンの使用を控える、カフェインの摂取を避ける、寝室の環境を整える(温度、湿度、光、音など)といった工夫で、睡眠の質を高めるよう心がけましょう。
ストレス管理の方法
過度なストレスは、免疫系やホルモンバランスに影響を与え、円形脱毛症の誘因や悪化因子となることがあります。
日常生活の中で、自分に合ったストレス解消法を見つけ、意識的にリフレッシュする時間を作ることが大切です。
軽い運動(ウォーキング、ヨガなど)、趣味に没頭する時間、友人や家族との会話、自然に触れること、瞑想や深呼吸などが挙げられます。
何がストレスになっているのかを客観的に把握し、可能であれば原因を遠ざける努力も必要です。
頭皮ケアの注意点
抜け毛が気になると、つい頭皮を念入りに洗いすぎたり、マッサージをしすぎたりしがちですが、過度な刺激はかえって頭皮環境を悪化させる可能性があります。
シャンプーは、洗浄力の強すぎるものを避け、アミノ酸系などの低刺激性のものを選びましょう。
洗髪時は、爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないように丁寧に洗い流します。
ドライヤーは、頭皮からある程度離して、熱風を長時間同じ場所に当てないように注意し、優しく乾かします。
また、パーマやヘアカラーは、頭皮や毛髪に負担をかけるため、症状が落ち着くまでは控えるのが賢明です。
医療機関での円形脱毛症の診断
円形脱毛症の疑いがある場合、あるいは抜け毛が止まらず不安な場合は、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。
皮膚科が専門となりますが、中でも脱毛症の治療経験が豊富な医師を選ぶと、より的確な診断と治療が期待できます。
専門医の選び方
円形脱毛症の治療を行っている皮膚科は多くありますが、より専門的な知識や経験を持つ医師に診てもらうことが望ましいです。
また、クリニックのホームページなどで、脱毛症の治療に力を入れているか、どのような治療法を行っているかなどを確認するのも良いでしょう。
可能であれば、実際にそのクリニックで治療を受けた人の口コミや評判を参考にすることも一つの方法ですが、感じ方には個人差があるため、あくまで参考程度に留めることが大事です。
診断の流れと検査内容
医療機関では、まず問診と視診によって症状を把握し、その後、必要に応じていくつかの検査を行い、円形脱毛症の診断を確定したり、他の脱毛症との鑑別を行ったりします。
問診と視診
問診では、以下のようなことを詳しく聞かれます。
- いつから脱毛症状が始まったか
- 脱毛の範囲や進行の程度
- かゆみや痛みなどの自覚症状の有無
- 過去の円形脱毛症の既往歴
- 家族歴(血縁者に円形脱毛症の人がいるか)
- アトピー性皮膚炎や甲状腺疾患などの既往歴や合併症
- 最近の生活状況(ストレス、睡眠、食事など)
- 使用中の薬やサプリメント
視診では、脱毛斑の形状、大きさ、数、範囲、頭皮の状態(色、炎症の有無など)、毛髪の状態(切れ毛、萎縮毛の有無など)を詳細に観察します。
脱毛斑の辺縁部の毛を軽く引っ張って抜けやすさを確認する「牽引試験(pull test)」を行うこともあります。
ダーモスコピー検査
ダーモスコピーは、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を用いて、頭皮や毛髪の状態をより詳しく観察する検査です。
肉眼では分かりにくい毛穴の状態、毛髪の太さや形状の変化、切れ毛のパターン(感嘆符毛など)、脱毛斑の活動性を示す所見(黄点、黒点など)を確認することができます。
血液検査など
円形脱毛症は自己免疫疾患との関連が深いため、他の自己免疫疾患(特に甲状腺疾患や膠原病など)の合併がないか、また全身状態を把握するために血液検査を行うことがあります。
甲状腺ホルモン、自己抗体(抗核抗体など)、鉄分、亜鉛などの値を調べ、検査は、全ての患者さんに行われるわけではなく、医師が必要と判断した場合に実施されます。
場合によっては、より詳細な診断のために皮膚生検(脱毛部の皮膚を一部採取して顕微鏡で調べる検査)を検討することもありますが、これは比較的稀なケースです。
診断に用いられる主な検査
検査方法 | 目的 | 検査内容の概要 |
---|---|---|
問診 | 症状の経過、既往歴、生活習慣などを把握する | 医師からの質問に答える形で情報を提供する |
視診・触診 | 脱毛斑の状態、頭皮の状態、毛髪の状態を観察する | 医師が直接見て、触れて確認する。牽引試験も含む。 |
ダーモスコピー検査 | 毛穴や毛髪の状態を拡大して詳細に観察する | 特殊な拡大鏡(ダーモスコープ)を使用する。痛みはない。 |
血液検査 | 甲状腺機能、自己免疫疾患の有無、栄養状態などを調べる | 採血を行い、各種項目を分析する。 |
円形脱毛症の一般的な治療法
円形脱毛症の治療法は、脱毛の範囲、進行度、年齢、合併症の有無などを考慮して、医師が総合的に判断し選択し、単一の治療法で効果が見られない場合は、複数の治療法を組み合わせることもあります。
ステロイド外用薬・局所注射
ステロイドには、免疫の働きを抑え、炎症を鎮める効果があり、円形脱毛症は自己免疫反応が関与していると考えられているため、ステロイドを用いた治療が広く行われています。
脱毛範囲が狭い場合や、軽症の場合は、まずステロイド外用薬(塗り薬)が用いられることが多いです。
1日に1~2回、脱毛斑に塗布し、副作用としては、長期使用による皮膚の菲薄化や毛細血管拡張などがありますが、医師の指示通り適切に使用すれば、過度に心配する必要はありません。
脱毛斑が限局している場合や、外用薬だけでは効果が不十分な場合には、ステロイド局所注射が行われることがあり、脱毛斑に直接ステロイドを注射する方法で、より高い効果が期待できます。
ただし、注射部位の皮膚が一時的に陥凹することがありますが、多くは時間とともに回復し、注射時の痛みは軽微ですが、範囲が広い場合は複数回に分けて行うこともあります。
免疫抑制剤の使用
ステロイド外用薬や局所注射で十分な効果が得られない重症例や、急速に進行するような場合には、免疫抑制剤の内服が検討されることがあります。
免疫抑制剤は、異常な免疫反応を抑えることで脱毛の進行を止め、発毛を促すことが目的です。代表的なものにシクロスポリンなどがあります。
ただし、免疫機能全体を抑制するため、感染症にかかりやすくなったり、血圧上昇や腎機能障害などの副作用が現れたりする可能性もあります。
使用中は定期的な血液検査などを行い、慎重に経過を観察する必要があり、薬剤は専門的な知識と管理が必要なため、経験豊富な医師のもとで使用することが重要です。
光線療法(紫外線療法)
光線療法は、特定の波長の紫外線を脱毛斑に照射することで、免疫反応を調整し、発毛を促す治療法です。PUVA(プーバ)療法やナローバンドUVB療法などがあります。
PUVA療法は、ソラレンという光感受性を高める薬剤を塗布または内服した後に長波長紫外線を照射する方法です。
ナローバンドUVB療法は、特定の波長の中波長紫外線のみを照射する方法で、PUVA療法よりも簡便で副作用も少ないとされています。
週に1~3回程度の通院が必要で、効果が現れるまでには数ヶ月かかることが一般的です。副作用としては、日焼けのような赤みや色素沈着、かゆみなどが起こることがあります。
主な治療法の比較
治療法 | 対象となる主な症状 | 期待される効果 |
---|---|---|
ステロイド外用薬 | 軽症~中等症、脱毛範囲が限定的 | 局所の免疫抑制、炎症鎮静 |
ステロイド局所注射 | 中等症、脱毛斑が限局的、外用薬で効果不十分 | より強力な局所の免疫抑制 |
免疫抑制剤内服 | 重症、急速進行例、他の治療で効果不十分 | 全身的な免疫抑制 |
光線療法 | 広範囲、難治例、他の治療で効果不十分 | 免疫調整作用 |
治療法は医師が症状や状態を総合的に判断して決定します。自己判断は避けましょう。
その他の治療選択肢
上記以外にも、いくつかの治療法が試みられていて、局所免疫療法(SADBE、DPCPなど)は、かぶれを起こす化学物質を脱毛斑に塗布します。
人為的に軽い接触皮膚炎を起こすことで、毛根を攻撃しているリンパ球の働きを別の方向に向け、発毛を促す治療法です。
広範囲の脱毛に有効な場合がありますが、かゆみやリンパ節の腫れなどの副作用が出ることがあり、また、抗ヒスタミン薬やセファランチンなどの内服薬が補助的に用いられることもあります。
円形脱毛症に関するよくある質問(Q&A)
円形脱毛症と診断されたり、抜け毛が止まらなかったりすると、様々な疑問や不安が湧いてくるものです。ここでは、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- Q円形脱毛症は治りますか?
- A
多くの場合、円形脱毛症は適切な治療を行うことで治癒が期待できる病気です。脱毛斑が1つか2つ程度の単発型や多発型の場合は、数ヶ月から1年程度で自然に治ることもあります。
しかし、脱毛範囲が広い全頭型や汎発型、あるいは蛇行型といった難治性のタイプでは、治療が長期にわたったり、完全に元の状態に戻らなかったりすることもあります。
また、一度治っても再発する可能性があるのも円形脱毛症の特徴の一つです。
- Q治療期間はどのくらいですか?
- A
治療期間は、円形脱毛症の種類、重症度、治療への反応性、年齢、合併症の有無などによって大きく異なります。
軽症の単発型であれば、数ヶ月で改善が見られることもありますが、多発型や範囲の広いものでは、1年以上の治療が必要になることも珍しくありません。
全頭型や汎発型の場合は、さらに長期間の治療となることもあり、治療効果が現れるまでには時間がかかることを理解し、焦らずに治療に取り組むことが大切です。
- Q円形脱毛症は再発しますか?
- A
残念ながら円形脱毛症は再発しやすい病気の一つです。一度治癒しても、数ヶ月後あるいは数年後に再び脱毛症状が現れることがあります。
再発率は、正確な統計はありませんが、約半数以上の人が経験するとも言われています。
再発のきっかけも、初発時と同様に、ストレスや疲労、感染症、ホルモンバランスの変化などが考えられますが、はっきりとした原因が分からないことも多いです。
再発した場合でも、早期に治療を開始すれば、比較的早く改善することが多いので、脱毛の兆候に気づいたら、速やかに専門医を受診しましょう。
- Q子供にも遺伝しますか?
- A
円形脱毛症の発症には遺伝的要因が関与していると考えられていますが、親が円形脱毛症だからといって、子供が必ず発症するわけではありません。
複数の遺伝子が関与し、そこに環境因子が加わって発症すると考えられているため、遺伝だけで決まるものではありません。
家族内に円形脱毛症の人がいる場合、いない場合に比べて発症リスクがやや高くなる可能性はありますが、過度に心配する必要はありません。
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