女性にとって髪は、容姿を彩る大切な要素の一つです。しかし、時に予期せぬ脱毛の悩みに直面することがあります。

その中でも「非光性脱毛症」と「円形脱毛症」は、名前は似ていても原因や症状の現れ方が異なる脱毛症です。

この記事では、このような脱毛症について、特に女性の視点から詳しく解説します。

それぞれの特徴、考えられる原因、そしてどのような違いがあるのかを理解することで、ご自身の状態を把握し、適切な対応を考えるための一助となれば幸いです。

目次

非光性脱毛症とは何か

非光性脱毛症という言葉を初めて耳にする方もいらっしゃるかもしれません。これは特定の脱毛状態を指す医学的な用語の一つです。

非光性脱毛症の定義と特徴

非光性脱毛症は、主に頭皮の広範囲にわたって毛髪が薄くなる状態を指します。特定の部位だけが円形に抜ける円形脱毛症とは異なり、全体的にボリュームが失われるような印象を受けることが多いのが特徴です。

初期には気づきにくいこともありますが、進行すると分け目が目立ってきたり、地肌が透けて見えやすくなったりします。女性の場合、頭頂部を中心にびまん性に薄くなることが多いです。

この脱毛症は、毛周期(ヘアサイクル)の乱れが深く関わっています。

毛髪は成長期、退行期、休止期というサイクルを繰り返していますが、何らかの原因で成長期が短縮されたり、休止期にとどまる毛包が増えたりすると、薄毛が目立つようになります。

非光性脱毛症の主な原因

非光性脱毛症を引き起こす原因は一つだけでなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症することも少なくありません。女性の場合、特にホルモンバランスの変動が影響しやすいと考えられています。

その他、生活習慣の乱れや精神的なストレス、栄養状態の偏りなども原因です。

非光性脱毛症の考えられる要因

要因のカテゴリー具体的な内容髪への影響
ホルモンバランスの乱れ妊娠・出産、更年期、経口避妊薬の使用中止など女性ホルモンの減少が毛髪の成長を妨げる可能性
生活習慣睡眠不足、不規則な食生活、過度なダイエット毛髪の成長に必要な栄養不足や血行不良
精神的ストレス仕事や家庭環境の変化、人間関係の悩みなど自律神経の乱れによる頭皮環境の悪化、血行不良
遺伝的要因家族歴に薄毛の方がいる場合薄毛になりやすい体質を受け継いでいる可能性
薬剤の影響特定の治療薬の副作用毛周期に影響を与える薬物

女性における非光性脱毛症の現れ方

女性の非光性脱毛症は、男性の典型的な薄毛のパターンとは異なる現れ方をします。生え際が後退するのではなく、頭頂部や分け目を中心に全体的に髪の毛が細くなり、密度が低下していくのが一般的です。

そのため、「最近、髪にボリュームがなくなった」「分け目が広くなった気がする」「髪を束ねたときの量が減った」といった自覚症状から気づくことが多いようです。

進行のスピードは個人差があり、ゆっくりと時間をかけて薄毛が目立ってくる場合もあれば、比較的短期間で変化を感じる場合もあります。

非光性脱毛症と間違えやすい他の脱毛症

非光性脱毛症は、他の脱毛症と症状が似ていることがあります。

例えば、びまん性脱毛症という言葉もよく使われますが、これは広範囲に薄毛が広がる状態の総称であり、非光性脱毛症もその一種です。

また、牽引性脱毛症は、ポニーテールなど髪を強く引っ張る髪型を長期間続けることで起こる脱毛症で、特定の部位の毛が薄くなります。

甲状腺機能の異常や鉄欠乏性貧血なども、全身の毛髪に影響を与え、薄毛の原因となることがあります。

脱毛症の初期サイン

  • 抜け毛の量が以前より増えた
  • 髪の毛が細く、弱々しくなった
  • 頭皮が硬くなった、またはかゆみがある

円形脱毛症とは何か

円形脱毛症は、比較的よく知られている脱毛症の一つですが、実態については誤解されている部分も少なくありません。

突然、円形や楕円形に髪の毛が抜け落ちる症状が特徴的で、年齢や性別を問わず誰にでも起こり得る疾患です。

円形脱毛症の基本的な理解

円形脱毛症は、自己免疫反応が関与していると考えられている脱毛症です。何らかの原因で免疫系が自身の毛包を異物と誤認し、攻撃してしまうことで毛髪の成長が阻害され、脱毛斑が生じます。

一般的には、コイン程度の大きさの脱毛が1箇所または数カ所に現れることが多いですが、症状の範囲や進行の仕方は個人差が大きいです。

多くの場合、自覚症状はほとんどなく、ある日突然、家族や美容師に指摘されて気づくケースも珍しくありません。かゆみや軽い違和感を伴うこともあります。

円形脱毛症は、ストレスが唯一の原因であるかのように語られることがありますが、実際にはストレスはあくまで誘因の一つであり、遺伝的な素因やアトピー素因なども関与していると考えられています。

円形脱毛症の多様な種類

円形脱毛症は、脱毛斑の数や範囲によっていくつかの種類に分類されます。

単発型

円形または楕円形の脱毛斑が1箇所だけ現れ、最も一般的なタイプで、多くの場合、数ヶ月から1年程度で自然に治癒することもあります。

しかし、再発したり、多発型に移行したりする可能性もあるため、経過観察が重要です。

多発型

脱毛斑が2箇所以上に現れるタイプです。脱毛斑が融合して大きな脱毛範囲になることもあり、単発型に比べて治癒までに時間がかかる傾向があり、治療が長期にわたることもあります。

全頭型

頭部全体の毛髪が抜け落ちてしまうタイプです。進行が早く、精神的な負担も大きくなり、治療にも時間を要することが多く、専門医による適切な治療とケアが必要です。

汎発型

頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、体毛など、全身の毛が抜け落ちてしまう最も重症なタイプです。治療が難しい場合もあり、長期的な視点での対応が求められます。

円形脱毛症の分類と特徴

種類脱毛斑の特徴一般的な経過
単発型1箇所に円形・楕円形の脱毛自然治癒も期待できるが、再発・移行の可能性あり
多発型2箇所以上に脱毛斑、融合することもある治癒に時間がかかる傾向、治療が長期化することも
蛇行型(S状脱毛症)後頭部から側頭部の生え際に沿って帯状に脱毛治りにくいタイプの一つとされる
全頭型頭部全体の毛髪がほぼ全て抜ける治療に時間を要し、精神的負担が大きい
汎発型頭髪に加え、眉毛、まつ毛、体毛も抜ける最も重症で、治療が難しい場合がある

円形脱毛症の診断方法

円形脱毛症の診断は、主に視診と問診によって行われます。医師が脱毛斑の形状、大きさ、数、分布、頭皮の状態などを詳しく観察します。

また、発症時期、既往歴、家族歴、アトピー素因の有無、最近のストレス状況などについて問診を行い、総合的に判断します。

場合によっては、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いて毛穴の状態や脱毛部の毛髪の形状(感嘆符毛など)を確認することもあります。

他の脱毛症との鑑別が必要な場合や、自己免疫疾患の合併が疑われる場合には、血液検査を行うことも大切です。

非光性脱毛症と円形脱毛症の主な違い

非光性脱毛症と円形脱毛症は、どちらも女性を悩ませる脱毛症ですが、性質は大きく異なります。原因、症状の現れ方、進行の仕方、そして検査方法に至るまで、様々な違いがあります。

原因の違いを詳しく解説

非光性脱毛症と円形脱毛症の最も大きな違いの一つは、その発症原因です。

非光性脱毛症は、ホルモンバランスの乱れ、生活習慣の悪化、栄養不足、遺伝的要因、薬剤の影響など、多様な要因が複合的に関与して発症すると考えられています。

毛周期の乱れが広範囲に起こり、全体的に毛髪が薄くなるのが特徴です。一方、円形脱毛症の主な原因は自己免疫反応と考えられています。

免疫系が誤って自身の毛包を攻撃することで、毛髪が突然抜け落ちてしまいます。遺伝的素因やアトピー素因、精神的ストレスなどが誘因となることはありますが、根本的な発症の仕組みが異なります。

原因の比較

比較項目非光性脱毛症円形脱毛症
主な発症要因ホルモンバランス、生活習慣、遺伝、栄養状態など複合的自己免疫反応(遺伝的素因、アトピー素因、ストレスなどが誘因)
毛髪への影響毛周期の乱れ、毛髪の菲薄化(細くなる)毛包への攻撃による毛髪の脱落

症状の現れ方の違い

症状の現れ方にも明確な違いがあります。非光性脱毛症では、頭部全体、特に頭頂部や分け目を中心に、徐々に髪の毛が細くなり、全体のボリュームが失われていくように感じられます。

特定の部位だけが急に抜けるのではなく、びまん性(広範囲)に薄毛が進行し、初期には自覚しにくいこともあります。

対照的に、円形脱毛症は、境界が比較的はっきりとした円形または楕円形の脱毛斑が突然現れるのが特徴です。

脱毛斑は1箇所の場合もあれば、複数箇所に及ぶこともあり、時には融合して大きな脱毛範囲を形成し、脱毛部にはほとんど毛髪がなく、地肌が見える状態になります。

進行の仕方の違い

非光性脱毛症は、一般的にゆっくりと進行し、数ヶ月から数年かけて薄毛が目立ってくることが多いです。

一方、円形脱毛症は、症状が急速に現れることが特徴で、数日から数週間で明らかな脱毛斑が出現し、その後、脱毛範囲が拡大したり、新たな脱毛斑が出現したりすることもあります。

しかし、自然に治癒することも多く、症状が改善と悪化を繰り返すこともあります。全頭型や汎発型といった重症型では、進行が早く、広範囲に及ぶことがあります。

検査方法の違い

診断に至るまでの検査方法にも違いが見られます。非光性脱毛症の診断では、問診で生活習慣や既往歴、家族歴などを詳しく聞き取るとともに、視診で頭皮全体の薄毛のパターンや毛髪の状態を確認します。

必要に応じて、血液検査を行い、ホルモンバランスの乱れや栄養状態(鉄欠乏など)、甲状腺機能などを調べることがあります。円形脱毛症の診断では、特徴的な脱毛斑の視診が中心です。

ダーモスコピーで脱毛部の毛の状態(感嘆符毛の有無など)を確認することもあります。アトピー素因の有無や自己免疫疾患の合併が疑われる場合には、血液検査を行います。

検査項目の一般的な違い

検査の種類非光性脱毛症で検討されること円形脱毛症で検討されること
問診生活習慣、ホルモン関連(妊娠・出産・更年期等)、薬剤歴、家族歴発症時期、既往歴(特に自己免疫疾患、アトピー)、ストレス状況、家族歴
視診びまん性の薄毛パターン、毛髪の太さ、頭皮の状態円形・楕円形の脱毛斑、脱毛斑の境界、感嘆符毛の有無(ダーモスコピー使用)
血液検査ホルモン値、鉄、亜鉛、甲状腺機能など自己抗体、甲状腺機能、アレルギー関連(IgEなど)

女性の症例から見る非光性脱毛症

非光性脱毛症は、多くの女性にとって深刻な悩みとなり得ます。ここでは、女性が非光性脱毛症を発症する際によく見られるパターンや背景について、一般的な傾向として解説します。

ストレスが引き金となったケースの傾向

現代社会において、女性も仕事や家庭、人間関係など様々な場面でストレスにさらされる機会が多くあります。

持続的な強いストレスは、自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて頭皮への血流を悪化させる可能性があります。

血行が悪くなると、毛髪の成長に必要な栄養素や酸素が毛根に十分に行き渡らなくなり、毛周期の乱れを引き起こし、非光性脱毛症につながるのです。

大きな環境の変化(転職、引っ越し、家族構成の変化など)や、精神的な負担が大きい出来事の後に、抜け毛の増加や髪のボリュームダウンを自覚する方がいます。

生活習慣の乱れが影響したケースの傾向

不規則な生活習慣も、非光性脱毛症の要因となり得、特に、睡眠不足は髪の成長に悪影響を与えます。

毛髪の成長を促す成長ホルモンは、主に睡眠中に分泌されるため、睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすると、毛髪の健やかな成長が妨げられる可能性があります。

また、偏った食生活や無理なダイエットも問題です。髪の毛は主にタンパク質でできており、ビタミンやミネラルも健康な髪を維持するためには必要です。

栄養素が不足すると、髪が細くなったり、抜けやすくなったりすることがあります。

髪の健康と生活習慣

  • 質の高い睡眠を十分にとる
  • バランスの取れた食事を心がける
  • 適度な運動で血行を促進する

ホルモンバランスの変化と関連したケースの傾向

女性のライフステージにおいて、ホルモンバランスは大きく変動します。特に、妊娠・出産後や更年期は、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌量が大きく変化する時期です。

エストロゲンには、毛髪の成長期を維持し、髪を豊かに保つ働きがあるため、出産後にエストロゲンの分泌量が急激に減少すると、「産後脱毛症」と呼ばれる一時的な脱毛が起こることがあります。

多くの場合、時間とともに回復しますが、一部が非光性脱毛症に移行したり、回復が遅れたりすることもあります。

また、更年期に入り、エストロゲンの分泌量が持続的に減少すると、髪のハリやコシがなくなり、全体的に薄くなる傾向が見られ、「女性型脱毛症(FAGA)」とも呼ばれ、非光性脱毛症の一つのタイプです。

女性ホルモンと髪の関係

ホルモン髪への主な働き分泌量が変動する主な時期
エストロゲン(卵胞ホルモン)毛髪の成長期を持続させる、髪のハリ・ツヤを保つ妊娠中(増加)、出産後(急減)、更年期(減少)
プロゲステロン(黄体ホルモン)毛髪の成長期をやや短縮させる可能性(エストロゲンとのバランスが重要)排卵後から月経前に増加、妊娠中に高値を維持

女性の症例から見る円形脱毛症

円形脱毛症は、ある日突然、髪の一部が抜け落ちるという衝撃的な症状のため、多くの女性に大きな不安と精神的負担を与えます。

自己免疫疾患との関連が疑われたケースの傾向

円形脱毛症は自己免疫疾患の一つと考えられており、他の自己免疫疾患を合併しているケースも稀に見られます。

甲状腺疾患(橋本病やバセドウ病など)や膠原病(関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど)、尋常性白斑などが代表的です。

このような疾患を持つ方が円形脱毛症を発症したり、逆に円形脱毛症の経過中にこれらの疾患が見つかったりすることがあります。

そのため、広範囲に及ぶ円形脱毛症や、治療に反応しにくい場合には、他の自己免疫疾患のスクリーニング検査を行います。

アトピー素因を持つ方のケースの傾向

アトピー素因(アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎などを起こしやすい体質)を持つ方は、円形脱毛症を発症しやすい傾向があります。

アトピー素因のある方では、免疫系のバランスが崩れやすく、それが毛包に対する自己免疫反応を引き起こす一因となる可能性が考えられています。

アトピー性皮膚炎の症状が頭皮に出ている場合、それが円形脱毛症の直接的な原因となるわけではありませんが、頭皮環境の悪化が間接的に影響することも否定できません。

アトピー素因を持つ方が円形脱毛症を発症した場合、アトピー性皮膚炎の治療と並行して円形脱毛症の治療を行うことが重要です。

アトピー素因と円形脱毛症

アトピー関連疾患円形脱毛症との関連性
アトピー性皮膚炎合併する頻度が高いとされる。頭皮の炎症管理も重要。
気管支喘息関連が指摘されることがある。
アレルギー性鼻炎・結膜炎関連が指摘されることがある。

精神的ストレスと症状の悪化

円形脱毛症の発症や悪化の誘因として、精神的ストレスが挙げられることはよく知られています。

強い精神的ショックや持続的なストレスが、免疫系のバランスを崩し、自己免疫反応を増強させる可能性があると考えられています。

実際に、大きなライフイベントや環境の変化、人間関係のトラブルなどを経験した後に円形脱毛症を発症したり、既存の脱毛斑が悪化したりするケースは少なくありません。

治療による改善と再発の経験

円形脱毛症は、適切な治療によって多くの場合、毛髪の再生が見込めます。

治療法には、ステロイド外用薬、ステロイド局所注射、局所免疫療法、内服薬、紫外線療法などがあり、症状の範囲や重症度、年齢などに応じて選択されます。

治療を開始して数ヶ月で産毛が生え始め、徐々に太く黒い毛に成長していくのが一般的な改善の経過です。

しかし、円形脱毛症は再発しやすい疾患でもあり、一度治癒しても、数ヶ月後あるいは数年後に再び脱毛斑が現れることがあります。

円形脱毛症の治療法の選択肢

  • ステロイド外用療法
  • ステロイド局所注射療法
  • 局所免疫療法(SADBE、DPCP)
  • 紫外線療法(エキシマライト、ナローバンドUVB)

脱毛症のサインに気づいたら

「最近抜け毛が多い気がする」「髪が薄くなったかも」と感じても、それが本当に脱毛症のサインなのか、どう対処すれば良いのか分からず不安になるものです。

しかし、早期に気づき、適切な行動をとることが、症状の進行を食い止め、改善への近道となります。

日常でできるセルフチェック

日々の生活の中で、ご自身の髪や頭皮の状態に意識を向けることが、脱毛症の早期発見につながります。以下のような点をチェックしてみましょう。

抜け毛の状態を確認する

シャンプー時やブラッシング時の抜け毛の量が増えていないか、枕につく抜け毛が目立つようになっていないかを確認します。

1日の抜け毛の本数は50本から100本程度であれば正常範囲内とされていますが、これを大幅に超える状態が続く場合は注意が必要です。

また、抜けた毛の毛根部分の状態も見てみましょう。

健康な毛根は丸みを帯びていますが、毛根が細く尖っていたり、毛根鞘(もうこんしょう)がほとんど付いていなかったりする場合は、毛髪の成長に問題が生じている可能性があります。

頭皮の状態を確認する

頭皮の色も健康状態のバロメーターです。健康な頭皮は青白い色をしていますが、赤みがかっていたり、黄色っぽくくすんでいたりする場合は、炎症や血行不良、乾燥などが起きている可能性があります。

また、フケやかゆみ、湿疹、ニキビなどの頭皮トラブルが頻繁に起こる場合も、頭皮環境が悪化しているサインかもしれません。頭皮が硬く、動かしにくい場合も血行不良が考えられます。

髪質の変化を確認する

以前と比べて髪の毛が細くなった、ハリやコシがなくなった、うねりやすくなったなど、髪質の変化も脱毛症の兆候であることがあります。

特に、新しく生えてくる毛が細く弱々しい場合は、毛周期の乱れや毛母細胞の活力低下が疑われます。

セルフチェックのポイント

チェック項目注意すべきサインの例考えられること
抜け毛の量1日に100本以上抜ける日が続く、急に抜け毛が増えた毛周期の乱れ、休止期脱毛など
抜け毛の質細く短い毛が多い、毛根が小さい・いびつ毛髪の成長不良、毛根の弱り
頭皮の色・状態赤み、黄色っぽさ、フケ、かゆみ、乾燥、硬さ炎症、血行不良、皮脂バランスの乱れ
髪質細くなった、ハリ・コシがない、切れやすい、ツヤがない栄養不足、毛髪の菲薄化
分け目・地肌分け目が以前より目立つ、地肌が透けて見える範囲が広がったびまん性の脱毛、毛髪密度の低下

専門医に相談するタイミング

脱毛のサインに気づいたら、できるだけ早めに皮膚科や女性の薄毛治療を専門とするクリニックを受診することをお勧めします。特に、以下のような場合は、専門医への相談を検討しましょう。

  • 抜け毛が急に増え、2週間以上続く場合
  • 明らかな円形または楕円形の脱毛斑を見つけた場合
  • 頭皮にかゆみや赤み、痛みなどの異常がある場合
  • セルフケアを続けても改善が見られない、または悪化する場合
  • 薄毛や抜け毛によって精神的な苦痛を感じている場合

よくある質問

非光性脱毛症や円形脱毛症に関して、多くの方が疑問に思うことや不安に感じる点について、Q&A形式でお答えします。

Q
非光性脱毛症は治りますか
A

「完治」という言葉が適切かどうかは状態によりますが、治療とセルフケアによって、薄毛の進行を遅らせたり、ある程度の毛量回復を期待したりすることは可能です。

原因が特定でき、それを取り除くことができれば(例えば、薬剤性の脱毛で原因薬剤を中止できた場合や、栄養不足が改善された場合など)、良好な改善が見られることもあります。

しかし、加齢や遺伝的要因が関与している場合は、完全に元の状態に戻すことが難しいこともあります。

Q
円形脱毛症は遺伝しますか
A

円形脱毛症の発症には、遺伝的な素因が関与していると考えられています。

家族(特に親子や兄弟姉妹)に円形脱毛症の方がいる場合、そうでない方と比較して発症リスクがやや高くなるという報告があります。

しかし、遺伝的素因があれば必ず発症するというわけではありません。

円形脱毛症は、遺伝的素因に加えて、自己免疫反応の異常、精神的ストレス、アトピー素因など、複数の要因が複雑に絡み合って発症します。

遺伝はあくまで発症しやすさに関わる一要素であり、決定的な原因ではありません。

Q
脱毛症の治療にはどのような選択肢がありますか
A

非光性脱毛症の場合、原因に応じた治療が行われます。

ホルモンバランスの乱れが原因であればホルモン補充療法が検討されることもあります(ただし、利益と不利益を慎重に考慮する必要がある)。

栄養不足であれば食事指導やサプリメントの推奨、血行促進や毛母細胞の活性化を目的とした外用薬(ミノキシジルなど)や内服薬、LED照射療法などが用いられます。

円形脱毛症の場合は、ステロイド外用薬や局所注射、局所免疫療法(SADBEやDPCPを用いたかぶれさせる治療)、紫外線療法などが代表的です。

重症例ではステロイド内服やJAK阻害薬(比較的新しい治療薬)が検討されることもあります。

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