この記事では、後頭部の円形脱毛症に悩む女性に向けて、原因、症状、医療機関での診断や治療法、そして日常生活でできる対策について詳しく解説します。

円形脱毛症は誰にでも起こりうる症状であり、特に後頭部は自分では気づきにくい部位です。正しい知識を得て、不安を軽減し、対応を見つけるための一助となれば幸いです。

目次

円形脱毛症とは?その基本的な知識

円形脱毛症は、頭髪をはじめとする体毛が円形または楕円形に抜け落ちる疾患です。多くの場合、自覚症状がないまま突然発症します。

円形脱毛症の定義と特徴

円形脱毛症は、免疫システムの異常が関与していると考えられています。

通常、免疫システムは外部からの異物(細菌やウイルスなど)を攻撃して体を守りますが、何らかの原因で自身の毛包組織を異物と誤認し、攻撃してしまうことで毛が抜け落ち、これを自己免疫疾患と呼びます。

脱毛斑は、コインのような円形や楕円形を呈することが多く、大きさは様々です。

1つだけできることもあれば、複数できることもあり、境界は比較的はっきりしており、周囲の毛髪は正常に見えることが多いです。

かゆみや軽い痛みを感じる人もいますが、多くは無症状で、髪の毛だけでなく、眉毛、まつ毛、ひげ、体毛など、毛が生えている場所であればどこにでも発症する可能性があります。

円形脱毛症の種類と後頭部にできるケース

円形脱毛症は、脱毛斑の数や範囲によっていくつかの種類に分類されます。後頭部にもこれらの種類の脱毛症が発生する可能性があります。

単発型と多発型

単発型は、脱毛斑が1つだけできるタイプです。多くの場合、自然に治癒することも期待できますが、進行して多発型になることもあります。

多発型は、脱毛斑が2つ以上できるタイプで、脱毛斑が融合して大きくなることもあります。

後頭部に単発型または多発型の脱毛斑ができると、自分では気づきにくいため、家族や美容師に指摘されて初めて知るケースも少なくありません。

全頭型と汎発型への進行リスク

円形脱毛症が進行すると、頭部全体の毛髪が抜け落ちる「全頭型」や、頭髪だけでなく眉毛、まつ毛、体毛など全身の毛が抜け落ちる「汎発型」に至ることがあります。

難治性となる場合があり、早期の適切な対応が重要です。

円形脱毛症の主な種類

種類特徴後頭部での発症
単発型脱毛斑が1箇所に限局する比較的多い
多発型脱毛斑が複数箇所に発生するあり得る
蛇行型脱毛斑が帯状に広がる(特に後頭部から側頭部の生え際)特徴的な部位の一つ

発症しやすい年齢や傾向

円形脱毛症は、子供から高齢者までどの年齢層でも発症する可能性がありますが、特に若年層に多い傾向があります。

また、アトピー性皮膚炎や甲状腺疾患、膠原病などの自己免疫疾患を持つ人は、円形脱毛症を発症しやすく、家族に円形脱毛症の経験者がいる場合も、発症リスクがやや高いです。

後頭部に円形脱毛症ができる原因の探求

円形脱毛症の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が複雑に関与していると考えられています。

自己免疫疾患としての円形脱毛症

現在、最も有力な説は自己免疫疾患によるものです。免疫システムが毛包を攻撃することで脱毛が起こります。

免疫システムの誤作動

私たちの体には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守るための免疫システムが備わっています。

しかし、この免疫システムが何らかの原因で誤作動を起こし、自分自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまうことがあります。円形脱毛症では、毛根を包む組織である「毛包」が攻撃の対象です。

Tリンパ球の役割

免疫細胞の一種であるTリンパ球が、毛包を異物と認識して攻撃することが、円形脱毛症の主な原因です。毛包が攻撃されると炎症が起こり、毛髪の成長が阻害されて抜け落ちてしまいます。

ただし、毛包自体が破壊されるわけではないため、炎症が治まれば再び毛髪が再生する可能性があります。

ストレスと円形脱毛症の関係性

ストレスは円形脱毛症の発症や悪化の誘因となると言われていて、精神的なストレスだけでなく、肉体的なストレスも影響する可能性があります。

精神的ストレスの影響

過度な精神的ストレスは、自律神経のバランスを乱し、免疫機能に影響を与えることがあります。

大きな悩みや不安、環境の変化などがきっかけで円形脱毛症を発症したり、症状が悪化したりすることがあります。ただし、ストレスが直接的な原因であるとは断定できず、あくまで誘因の一つです。

肉体的ストレスの影響

睡眠不足、過労、不規則な生活、大きな手術や病気なども肉体的ストレスとなり、免疫システムに影響を与える可能性があります。

肉体的ストレスが、円形脱毛症の発症や悪化に関与することが考えられます。

円形脱毛症の考えられる要因

要因詳細後頭部への影響
自己免疫反応免疫細胞が毛包を攻撃する他の部位と同様に影響
ストレス精神的・肉体的ストレスが誘因となる可能性他の部位と同様に影響
遺伝的素因家族歴がある場合に発症しやすい傾向他の部位と同様に影響

遺伝的要因の可能性

円形脱毛症は遺伝的要因も関与していると考えられていて、家族内に円形脱毛症の人がいる場合、発症リスクが若干高まるという報告があります。

ただし、遺伝的要因だけで発症するわけではなく、他の要因と複合的に絡み合って発症します。特定の遺伝子が特定されているわけではありませんが、複数の遺伝子が関与している可能性が指摘されています。

その他の考えられる要因

自己免疫疾患、ストレス、遺伝的要因以外にも、いくつかの要因が円形脱毛症の発症に関わっている可能性があります。

アトピー素因

アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などを持つアトピー素因のある人は、円形脱毛症を発症しやすい傾向があります。

アトピー素因を持つ人は、免疫システムが過敏に反応しやすい体質であるため、円形脱毛症との関連が高いです。

内分泌異常・ホルモンバランスの乱れ

甲状腺疾患などの内分泌系の異常や、ホルモンバランスの乱れが円形脱毛症の発症に関与することがあります。

女性の場合、妊娠・出産や更年期など、ホルモンバランスが大きく変動する時期に発症したり、症状が変化したりすることが特徴です。

睡眠不足や生活習慣の乱れ

睡眠不足や不規則な食生活、過度な疲労といった生活習慣の乱れは、免疫機能の低下や自律神経の乱れを起こし、円形脱毛症の誘因です。

健康的な生活習慣を心がけることは、円形脱毛症の予防や改善にもつながります。

後頭部の円形脱毛症の症状と進行

後頭部にできる円形脱毛症は、自分では気づきにくい部位であるため、症状の発見が遅れることがあります。ここでは、後頭部の円形脱毛症の典型的な症状や進行について解説します。

初期症状の見分け方

円形脱毛症の初期には、いくつかのサインが現れることがあり、早期に気づくことで、適切な対応を取りやすいです。

抜け毛の増加

シャンプー時やブラッシング時、枕元などに普段よりも多くの抜け毛が見られるようになったら注意が必要です。

後頭部は自分では見えにくいため、排水溝に溜まる髪の毛の量や、櫛につく髪の毛の量に変化がないか意識してみましょう。

頭皮のかゆみや違和感

脱毛が始まる前に、脱毛部位にかゆみ、軽い赤み、ピリピリとした違和感などを感じることがあります。ただし、これらの症状がない場合も多く、無症状で突然脱毛斑が現れることも少なくありません。

初期症状

  • シャンプー時の抜け毛の増加
  • ブラッシング時の抜け毛の増加
  • 枕に付着する抜け毛の増加
  • 脱毛部位の軽いかゆみや赤み
  • 脱毛部位のピリピリとした違和感

脱毛斑の形状と大きさの変化

円形脱毛症の最も特徴的な症状は、円形または楕円形の脱毛斑です。

円形・楕円形の脱毛斑

典型的には、境界明瞭な円形または楕円形の脱毛斑が現れ、大きさは1円玉程度のものから、手のひらサイズ以上のものまで様々です。

脱毛斑の表面は滑らかで、炎症が強い場合は少し赤みを帯びたり、わずかにむくんだりすることもあります。

脱毛斑の拡大と融合

脱毛斑は、時間の経過とともに拡大したり、数が増えたりすることがあり、複数の脱毛斑が融合して、より大きな不整形の脱毛斑になることもあります。

進行のスピードは個人差が大きく、急速に拡大する場合もあれば、数ヶ月かけてゆっくりと進行する場合もあります。

爪の異常など他の身体的サイン

円形脱毛症の患者さんの中には、爪に異常が現れることがあり、これは、毛と爪が同じケラチンというタンパク質からできているためです。

爪の表面に小さな点状のへこみ(点状陥凹)ができたり、爪がもろくなったり、横方向に溝ができたりすることがあります。

爪の変化は、円形脱毛症の活動性や重症度と関連があるという報告もありますが、必ずしも全ての人に現れるわけではありません。

爪に見られる変化

爪の変化説明
点状陥凹爪の表面に針で刺したような小さなへこみができる
爪甲横溝爪に横方向の溝ができる
爪甲脆弱化爪が薄くもろくなり、割れやすくなる

進行度合いと重症度の分類

円形脱毛症の進行度合いや重症度は、脱毛斑の数、大きさ、範囲などによって評価され、脱毛面積が頭部全体の25%未満を軽症、25~49%を中等症、50%以上が重症です。

また、脱毛が急速に進行している場合や、広範囲に及ぶ場合は、より積極的な治療が必要となり、後頭部のみの脱毛であっても、範囲が広ければ中等症以上と判断されることもあります。

円形脱毛症の部位による特徴と後頭部の注意点

円形脱毛症は頭部のどの部位にも発生する可能性がありますが、部位によっていくつかの特徴や注意点があります。

後頭部にできる円形脱毛症の特徴

後頭部は、円形脱毛症が好発する部位の一つで、他の部位と比べて特有の注意点があります。

発見の遅れやすさ

後頭部は自分自身の目で直接確認することが難しいため、脱毛斑ができていても気づくのが遅れがちです。

家族や美容師に指摘されて初めて気づくというケースもあり、発見が遅れると、その間に症状が進行してしまう可能性があります。

治療への影響

塗り薬を塗布する際など、セルフケアがしにくい部位でもあり、正確な位置に薬剤を塗布することが難しかったり、塗りムラができたりする可能性があります。

また、髪の毛で隠れやすいため、治療効果の確認がしにくいです。

他の部位(頭頂部、側頭部など)との比較

円形脱毛症は、頭頂部や側頭部にもよく見られ、後頭部を比較すると、いくつかの違いがあります。

各部位の皮膚特性の違い

頭皮の厚さや血行は部位によって若干異なりますが、これが円形脱毛症の発生率や治りやすさに大きく影響するという明確なエビデンスは現在のところ多くありません。

しかし、例えば側頭部や後頭部の生え際に沿って帯状に脱毛する「蛇行状脱毛症」というタイプは、比較的治りにくいです。

治療法の選択における考慮点

どの部位であっても基本的な治療方針は大きく変わりませんが、薬剤の塗布のしやすさや、紫外線療法の際の照射のしやすさなど、部位によって若干の工夫が必要になることがあります。

後頭部の場合、合わせ鏡を使うなどして、確実に薬剤を塗布することが大切です。

部位別円形脱毛症の特徴比較

部位発見のしやすさセルフケアのしやすさ
頭頂部比較的気づきやすい比較的しやすい
側頭部比較的気づきやすいしやすい
後頭部気づきにくいしにくい

後頭部特有のケア方法

後頭部は汗をかきやすく、蒸れやすい部位でもあり、清潔に保つことが大切です。シャンプーの際は、すすぎ残しがないように丁寧に洗い流しましょう。

また、枕カバーをこまめに交換するなど、衛生的な環境を保つことも重要です。

髪型によっては、後頭部の脱毛斑が隠しやすい場合もありますが、隠すことばかりに気を取られず、治療を受けることが根本的な解決につながります。

医療機関での円形脱毛症の診断と検査

円形脱毛症が疑われる場合は、自己判断せずに皮膚科専門医の診察を受けることが大切です。医療機関では、問診、視診、検査などを通じて正確な診断を行い、治療法を提案します。

皮膚科専門医による問診の重要性

診断において、問診は非常に重要な情報源となります。医師は以下のような点を詳しく尋ねます。

発症時期や既往歴の確認

いつ頃から脱毛に気づいたか、初めてか再発か、過去に円形脱毛症や他の自己免疫疾患にかかったことがあるかなどを確認します。アトピー素因や甲状腺疾患の有無、家族歴なども重要な情報です。

生活習慣に関するヒアリング

最近の生活状況、ストレスの有無、睡眠時間、食生活なども尋ねることがあり、円形脱毛症の誘因や悪化因子を探る上で参考になります。

視診と触診による脱毛状態の確認

医師は脱毛斑の状態を詳しく観察し、脱毛斑の数、大きさ、形状、範囲、活動性の兆候(切れ毛の存在など)を確認します。

ダーモスコピー検査

ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いて、脱毛部の毛穴の状態や毛髪の形状を詳細に観察し、円形脱毛症に特徴的な所見(例えば、感嘆符毛や黒点など)を確認し、他の脱毛症との鑑別にも役立ちます。

引っ張り試験(Pull test)

脱毛斑の辺縁部の毛髪を軽く引っ張り、抜けやすさを調べる検査です。容易に毛が抜ける場合は、脱毛症が活動期である可能性を示唆し、この検査は、治療効果の判定にも用いられます。

円形脱毛症の主な検査方法

検査方法目的内容
問診発症状況、既往歴、生活習慣などの把握医師による詳細な聞き取り
視診・触診脱毛斑の数、大きさ、形状、活動性の評価医師による脱毛部位の観察
ダーモスコピー検査毛穴や毛髪の状態を詳細に観察特殊な拡大鏡を用いた検査

血液検査でわかること

円形脱毛症の診断自体は主に視診で行われますが、他の疾患との鑑別や合併症の確認のために血液検査を行うことがあります。

自己免疫疾患のマーカー

自己抗体(抗核抗体など)や炎症反応の程度(CRPなど)を調べることで、他の自己免疫疾患の合併がないかを確認します。

円形脱毛症は、橋本病(慢性甲状腺炎)や尋常性白斑などの自己免疫疾患を合併することがあります。

甲状腺機能や栄養状態の確認

甲状腺ホルモンの値を調べることで、甲状腺機能異常の有無を確認し、また、鉄欠乏性貧血など、脱毛の原因となりうる栄養状態の問題がないかも調べることがあります。

皮膚生検が必要なケース

通常、円形脱毛症の診断に皮膚生検は必須ではありません。

しかし、診断が困難な場合や、他の脱毛症(例えば、瘢痕性脱毛症など)との鑑別が必要な場合には、脱毛部の皮膚を少量採取して病理組織学的に調べる皮膚生検を行うことがあります。

後頭部の円形脱毛症に対する主な治療法

円形脱毛症の治療法は、脱毛の範囲、重症度、年齢、合併症の有無などを考慮して選択し、後頭部の円形脱毛症に対しても、同じ治療法が適用されます。

ステロイド治療

ステロイドは、炎症や免疫反応を抑える効果があり、円形脱毛症治療の第一選択の一つです。使用方法には外用、局所注射、内服があります。

外用薬(塗り薬)

軽症から中等症の円形脱毛症に対して、ステロイドの塗り薬を使用し脱毛斑に直接塗布することで、毛包周囲の炎症を抑え、発毛を促します。効果が現れるまでには数ヶ月かかることが一般的です。

副作用としては、長期使用による皮膚の菲薄化や毛細血管拡張などがありますが、医師の指示通りに使用すれば比較的安全な治療法です。

局所注射

脱毛斑に直接ステロイドを注射する方法で、塗り薬よりも薬剤が深部に浸透しやすいため、より高い効果が期待できます。主に、範囲が限局している場合や、塗り薬の効果が不十分な場合に選択されます。

数週間から1ヶ月程度の間隔で繰り返し注射を行うことが多いです。副作用としては、注射部位の痛みや、一時的な皮膚の陥凹などが起こることがあります。

内服薬(飲み薬)とその注意点

脱毛範囲が広い重症例や、急速に進行する場合には、ステロイドの内服薬を使用することがあります。

高い効果が期待できる一方で、全身性の副作用(免疫力低下、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症、消化性潰瘍、精神症状など)のリスクがあるため、使用は慎重に判断し、短期間に限定することが多いです。

主な治療法の比較

治療法対象主な効果
ステロイド外用薬軽症~中等症局所の炎症抑制、発毛促進
ステロイド局所注射限局性の脱毛斑、外用薬で効果不十分な場合より強力な局所の炎症抑制、発毛促進
ステロイド内服薬重症例、急速進行例全身的な免疫抑制、強力な発毛促進

免疫療法

免疫療法は、脱毛部に人工的にかぶれを起こさせることで、毛包への攻撃を別の方向へそらし、発毛を促す治療法です。主に広範囲な脱毛症に対して行われます。

SADBE療法やDPCP療法

SADBE(スクアレン酸ジブチルエステル)やDPCP(ジフェニルシクロプロペノン)といった化学物質を脱毛部に塗布し、軽い接触皮膚炎(かぶれ)を意図的に起こします。

かぶれによって免疫反応が変化し、毛包への攻撃が弱まることで発毛が期待され、治療は週に1回程度から開始し、徐々に濃度を調整しながら継続します。

治療の仕組みと効果

この治療法の正確な作用は完全には解明されていませんが、かぶれによって集まってきた免疫細胞が、毛包を攻撃していたリンパ球の働きを抑制すると考えられています。

効果には個人差があり、数ヶ月以上の治療期間を要することが一般的です。副作用としては、強いかゆみ、じんましん、リンパ節の腫れなどが起こることがあります。

その他の治療法

ステロイド治療や免疫療法の他にも、いくつかの治療法が試みられています。

冷却療法

液体窒素などを脱毛部に接触させて冷却刺激を与える治療法です。軽い炎症を起こすことで免疫状態を変化させ、発毛を促すと考えられていて、主に範囲の狭い脱毛斑に用いられます。

紫外線療法(エキシマライトなど)

特定の波長の紫外線を脱毛部に照射する治療法です。

免疫反応を調整する効果があり、発毛を促すことが期待され、PUVA療法やナローバンドUVB療法、エキシマライトなどが用いられます。週に数回の通院が必要です。

ミノキシジル外用薬

ミノキシジルは、元々高血圧の治療薬として開発されましたが、発毛効果があることがわかり、脱毛症治療のために使用されている薬剤です。

円形脱毛症に対する効果は限定的ですが、他の治療法と併用されることがあり、血管拡張作用や毛母細胞の活性化作用などが期待されます。

日常生活でできる対策と心のケア

円形脱毛症の治療と並行して、日常生活でできる対策や心のケアも重要です。これらは直接的な治療ではありませんが、症状の改善や再発予防、そして精神的な安定につながることが期待できます。

バランスの取れた食事と栄養

健康な髪の毛を育むためには、バランスの取れた食事が基本で、特定の食品だけを摂取するのではなく、様々な栄養素をバランス良く摂ることが大切です。

髪の成長に必要な栄養素

髪の主成分であるタンパク質(特に良質なアミノ酸)、毛髪の成長を助けるビタミン類(ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンEなど)、そしてミネラル(特に亜鉛、鉄)は、健康な髪の維持に必要です。

髪の成長に役立つ主な栄養素
栄養素主な働き多く含む食品例
タンパク質髪の主成分肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛タンパク質の合成を助ける、免疫機能の維持牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類
鉄分酸素を運搬し、頭皮の健康を保つレバー、赤身の肉、ほうれん草、ひじき

避けるべき食事

過度な脂質の摂取や、インスタント食品、加工食品に偏った食事は、頭皮環境を悪化させる可能性があります。また、刺激の強い香辛料やアルコールの過剰摂取も控えましょう。

バランスの取れた食事を心がけ、腸内環境を整えることも大切です。

質の高い睡眠の確保

睡眠は、体の修復や成長ホルモンの分泌に重要な役割を果たし、質の高い睡眠を確保することは、髪の健康にもつながります。

睡眠時間と成長ホルモン

睡眠中には成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生を促し、特に夜10時から深夜2時の間は成長ホルモンの分泌が活発になります。十分な睡眠時間を確保し、規則正しい睡眠リズムを心がけましょう。

寝具や寝室環境の整備

快適な睡眠のためには、寝具や寝室環境も重要です。自分に合った枕やマットレスを選び、寝室の温度や湿度、明るさなどを調整してください。

ストレスマネジメントの方法

ストレスは円形脱毛症の誘因の一つと考えられています。日常生活の中で上手にストレスをコントロールすることが大切です。

リラックス方法の見つけ方

自分に合ったリラックス方法を見つけ、日常生活に取り入れましょう。例えば、趣味に没頭する時間を作る、音楽を聴く、アロマテラピーを楽しむ、瞑想やヨガを行うなどが挙げられます。

適度な運動のすすめ

ウォーキングやジョギング、水泳などの適度な有酸素運動は、血行を促進し、ストレス解消にも効果的です。無理のない範囲で、継続的に行うことが大切です。運動習慣は、心身の健康維持に役立ちます。

ストレスマネジメント方法

方法具体例
趣味読書、映画鑑賞、ガーデニング、手芸など
リラクゼーション音楽鑑賞、アロマテラピー、入浴、瞑想、ヨガ
運動ウォーキング、ジョギング、ストレッチ、水泳

頭皮環境を整えるヘアケア

適切なヘアケアは、頭皮環境を健やかに保ち、脱毛症の悪化を防ぐために重要です。

シャンプーの選び方と正しい洗い方

頭皮に優しいアミノ酸系や低刺激性のシャンプーを選び、洗髪時は、爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないように丁寧に洗い流します。

洗いすぎは頭皮の乾燥を招くため、1日1回程度が目安です。

頭皮マッサージの注意点

頭皮マッサージは血行を促進し、頭皮環境を整える効果が期待できますが、円形脱毛症の活動期には刺激が逆効果になることもあります。

マッサージを行う場合は、優しく行うか、医師に相談してから行いましょう。強くこすったり、爪を立てたりしないように注意が必要です。

よくある質問

Q
円形脱毛症は治りますか?
A

円形脱毛症の多くは、数ヶ月から1年程度で自然に治癒することがあり、特に単発型の場合は治りやすいです。

しかし、脱毛範囲が広い場合や、多発型、全頭型、汎発型の場合は、治療が長期にわたったり、難治性となったりすることもあります。

Q
治療期間はどのくらいかかりますか?
A

軽症の場合は数ヶ月で改善が見られることもありますが、重症の場合は1年以上の治療が必要となることもあります。

また、一度治癒しても再発する可能性もあるため、定期的な経過観察が必要です。

Q
治療中に気をつけることはありますか?
A

医師の指示に従って治療を継続することが最も重要です。自己判断で治療を中断したり、薬の量を変えたりしないようにしましょう。

また、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスを溜めない生活を心がけることも大切です。

頭皮への過度な刺激(強くブラッシングする、パーマやカラーリングなど)は、症状が悪化する可能性があるため、医師に相談の上で行ってください。

参考文献

Werner B, Mulinari-Brenner F. Clinical and histological challenge in the differential diagnosis of diffuse alopecia: female androgenetic alopecia, telogen effluvium and alopecia areata-part I. Anais brasileiros de dermatologia. 2012;87:742-7.

Kwong RA, Kossard S. Alopecia areata masquerading as frontal fibrosing alopecia. Australasian journal of dermatology. 2006 Feb;47(1):63-6.

Ekmekci TR, Sakiz D, Koslu A. Occipital involvement in female pattern hair loss: histopathological evidences. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology. 2010 Mar;24(3):299-301.

Mesonero RP, Pulido EL, Zubiaur AG, Velázquez DV, Díez DV, Lario AR, González-Cañete M, Verdú EG, Pelayo PV, Marugán LT. Occipital involvement in classic frontal fibrosing alopecia: Clinical and trichoscopic cross-sectional study in 17 patients. Journal of the American Academy of Dermatology. 2023 Oct 1;89(4):815-7.

Shin J, Jang HS, Cho SB. Rectangular-patterned occipital alopecia areata: a report of three cases. International Journal of Trichology. 2012 Jul 1;4(3):164-6.

Priego‐Recio CM, Rodríguez‐Pichardo A, Camacho‐Martínez FM. Unusual forms of alopecia areata in a Trichology Unit. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology. 2014 Oct;28(10):1394-6.

Chartier MB, Hoss DM, Grant-Kels JM. Approach to the adult female patient with diffuse nonscarring alopecia. Journal of the American Academy of Dermatology. 2002 Dec 1;47(6):809-18.