この記事では、女性に見られる円形脱毛症の一つである「蛇行型円形脱毛症」について、症状の現れ方や医学的に考えられていること、そしてどのような治療方針が取られるのかを詳しく解説します。

蛇行型円形脱毛症は、脱毛斑が頭の生え際などに沿って帯状に広がる特徴があり、他の円形脱毛症とは異なる様相を呈します。

この症状に悩む女性が、状態を正しく理解し、医療機関への相談を検討する一助となることを目指しています。

目次

蛇行型円形脱毛症とは何か

蛇行型円形脱毛症は、円形脱毛症の中でも特異な脱毛パターンを示す病型です。

一般的な円形脱毛症が円形や楕円形の脱毛斑を形成するのに対し、蛇行型では頭髪の生え際に沿って、まるで蛇が這うように帯状に脱毛が広がることが特徴です。

円形脱毛症の一種としての位置づけ

円形脱毛症は、自己免疫反応が関与して毛包組織が攻撃され、毛髪が抜け落ちる疾患です。その中で、脱毛斑の数や範囲、形状によっていくつかの病型に分類されます。

単発型や多発型といった比較的範囲の狭いものから、全頭型(頭全体の毛髪が失われる)、汎発型(全身の毛髪が失われる)といった重症型まで様々ですが、蛇行型は脱毛の広がり方に特徴があります。

蛇行型という名称の由来と特徴的な脱毛範囲

「蛇行型」という名称は、脱毛斑が頭皮の特定部位、特に側頭部から後頭部にかけての生え際に沿って、くねくねと蛇が進行するように帯状に広がる様子から名付けられました。

英語では「ophiasis(オフィアシス)」と呼ばれ、ギリシャ語で蛇を意味する「ophis」に由来し、この脱毛パターンは、他の円形脱毛症の病型とは明らかに異なり、視覚的にも特徴的です。

脱毛範囲は個人差がありますが、耳の周りから襟足にかけてのラインに沿って進行することが多いです。

蛇行型円形脱毛症の主な脱毛部位

部位特徴進行の仕方
側頭部耳の上からこめかみにかけて帯状に脱毛が広がる
後頭部襟足の生え際に沿って左右に繋がるように脱毛が進むことがある
前頭部稀に見られるが、生え際に沿う他の部位と連続することがある

他の円形脱毛症との違い

蛇行型円形脱毛症と他の円形脱毛症との最も大きな違いは、脱毛斑の形状と分布で、通常の円形脱毛症(単発型や多発型)では、円形または楕円形の脱毛斑が頭皮の様々な場所にランダムに現れます。

一方、蛇行型では、生え際に沿った帯状の脱毛が特徴です。また、蛇行型は治療に対する反応が他の病型と比べて芳しくない場合があるとも言われ、難治性であるとの報告もあります。

女性における発症傾向

蛇行型円形脱毛症は、年齢や性別を問わず発症する可能性がありますが、小児や若年層に比較的多く見られる傾向があります。

女性においては、特に髪型で隠しにくい部位に脱毛が生じることが多く、精神的な苦痛が大きくなることがあります。

ホルモンバランスの変化やストレスなどが発症や悪化に関与する可能性も指摘されていますが、明確な性差に関する医学的根拠はまだ十分ではありません。

蛇行型円形脱毛症の主な症状

蛇行型円形脱毛症の症状は、脱毛のパターンに最も大きな特徴がありますが、初期には他の円形脱毛症と区別がつきにくいこともありますが、進行すると、特有の帯状の脱毛が明らかになります。

脱毛以外にも、頭皮の感覚異常や爪の変化など、いくつかの随伴症状が現れることもあります。

初期症状の見分け方

蛇行型円形脱毛症の初期症状は、必ずしも典型的な帯状の脱毛から始まるとは限りません。最初は小さな円形脱毛斑として現れ、それが次第に連結・拡大して蛇行状になるケースもあります。

美容室で指摘されたり、自分で鏡を見た際に気づいたりすることが多いです。

頭皮の違和感やかゆみ

脱毛が始まる前に、頭皮に軽いかゆみやピリピリとした違和感、赤みなどを感じることがあります。

しかし、これらの症状は必ずしも現れるわけではなく、自覚症状がないまま脱毛が進行することも少なくありません。

細かい抜け毛の増加

シャンプー時やブラッシング時に、普段よりも抜け毛が多いと感じることが、脱毛の初期サインとなることがあり、特に、特定の部位から集中的に短い毛や細い毛が抜ける場合は注意が必要です。

枕に付着する抜け毛の量が増えることで気づく人もいます。

進行した際の脱毛パターン

蛇行型円形脱毛症が進行すると、その特徴的な脱毛パターンが顕著になり、脱毛は徐々に広がり、特定のラインに沿って毛髪が失われていきます。

生え際や側頭部、後頭部の帯状の脱毛

最も典型的なのは、耳の後ろから後頭部の襟足にかけて、あるいは側頭部の生え際に沿って、幅数センチ程度の帯状に毛が抜けるパターンで、脱毛帯が頭を一周するように広がることもあります。

脱毛部の境界は比較的はっきりしていることが多いです。

脱毛範囲の拡大と蛇行

初期の脱毛斑が徐々に横方向へ拡大し、連結することで、文字通り蛇が這うような不規則な帯状の脱毛領域を形成し、蛇行するパターンが、診断上の重要な手がかりです。

進行のスピードには個人差があり、数週間で急速に広がる場合もあれば、数ヶ月かけてゆっくりと進行する場合もあります。

蛇行型脱毛症の進行パターン

進行段階脱毛の特徴自覚症状
初期小さな脱毛斑、抜け毛の増加かゆみ、違和感(ある場合)
中期脱毛斑の連結、帯状化の始まり脱毛範囲の明確化
進行期生え際に沿った顕著な帯状脱毛、蛇行パターン美容的な悩み、精神的ストレス

脱毛以外の随伴症状

蛇行型円形脱毛症では、脱毛以外にもいくつかの症状が伴うことがあり、診断の一助となることもありますが、全ての人に現れるわけではありません。

爪の異常(点状陥凹など)

円形脱毛症の患者さんの一部には、爪に異常が見られることがあり、代表的なものは、爪の表面に針で刺したような小さなへこみ(点状陥凹)が多数現れる症状です。

その他、爪がもろくなったり、横筋が入ったりすることもあり、爪の変化は、毛髪と同様に爪も皮膚付属器であるため、共通の免疫学的な異常が影響している可能性が考えられます。

  • 点状陥凹
  • 爪甲縦裂症(爪が縦に割れる)
  • 爪甲横溝(爪に横方向の溝ができる)
  • 爪甲剥離症(爪が先端からはがれる)

女性における蛇行型円形脱毛症の原因と考えられているもの

蛇行型円形脱毛症を含む円形脱毛症の正確な原因は、まだ完全には解明されていないものの、自己免疫反応が中心的な役割を果たしているという説が有力です。

自己免疫疾患としての側面

現在、円形脱毛症は自己免疫疾患の一つであるという考え方が一般的になっています。

自己免疫疾患とは、本来外部からの異物(細菌やウイルスなど)を攻撃するはずの免疫システムが、誤って自分自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまう病気です。

免疫細胞の誤攻撃

円形脱毛症の場合、Tリンパ球という種類の免疫細胞が、毛根を包む毛包組織を異物と誤認し、攻撃してしまうことで毛髪の成長が阻害され、脱毛が引き起こされると考えられています。

蛇行型円形脱毛症においても、この基本的な発症の仕組みは共通していると推測されます。ただし、なぜ特定の部位(生え際など)が選択的に攻撃されるのかについては、まだ不明な点が多いです。

関連する可能性のある他の自己免疫疾患

円形脱毛症の患者さんは、他の自己免疫疾患を合併しやすい傾向があることが知られていて、甲状腺疾患(橋本病やバセドウ病など)、尋常性白斑、関節リウマチ、1型糖尿病などが挙げられます。

疾患を持つ方が必ずしも円形脱毛症を発症するわけではありませんが、体質的に自己免疫反応が起こりやすい背景がある可能性を示唆しています。

自己免疫疾患との関連性

疾患名関連性簡単な説明
甲状腺疾患(橋本病など)比較的高い甲状腺に対する自己免疫反応
尋常性白斑ありメラノサイトに対する自己免疫反応
関節リウマチ可能性あり関節に対する自己免疫反応

遺伝的要因の関与

蛇行型円形脱毛症の発症には、遺伝的な素因も関与していると考えられていて、血縁者の中に円形脱毛症の人がいる場合、発症リスクが若干高まるという報告があります。

家族内発症の報告

円形脱毛症患者さんの約10~20%に家族歴があると言われていて、これは、特定の遺伝子が発症のしやすさに関わっている可能性を示しています。

ただし、遺伝子が全てを決めるわけではなく、複数の遺伝子と環境要因が複雑に絡み合って発症に至ると考えられています。

関連遺伝子の研究状況

近年のゲノムワイド関連解析(GWAS)などの研究により、円形脱毛症の発症に関連する可能性のあるいくつかの遺伝子領域が特定されつつあります。

遺伝子の多くは、免疫機能の調節に関わるものですが、蛇行型円形脱毛症に特異的な遺伝子は見つかっておらず、さらなる研究が必要です。

ストレスや生活習慣の影響

精神的なストレスや不規則な生活習慣が、蛇行型円形脱毛症を含む円形脱毛症の発症や悪化の引き金になることがあると考えられています。

ただし、これらが直接的な原因となるわけではなく、あくまで免疫系のバランスを崩す要因の一つとして捉えられています。

精神的ストレスと発症・悪化の関連

強い精神的ストレス(ショックな出来事、過労、人間関係の悩みなど)を経験した後に円形脱毛症を発症したり、症状が悪化したりするケースは少なくありません。

ストレスは自律神経系や内分泌系、免疫系のバランスを乱し、毛包への攻撃を促してしまう可能性があります。

特に女性は、仕事、家庭、育児など多岐にわたるストレスにさらされる機会が多いため、注意が必要です。

睡眠不足や栄養バランスの乱れ

睡眠不足や栄養バランスの偏った食事も、免疫機能を低下させ、円形脱毛症の発症や悪化に影響を与える可能性があります。

特に、毛髪の成長に必要なタンパク質、ビタミン、ミネラルなどが不足すると、毛髪自体が弱くなり、脱毛しやすくなることも考えられます。

健康な毛髪を育むためには、規則正しい生活とバランスの取れた食事が重要です。

内分泌系の関与の可能性

ホルモンバランスの変動が、円形脱毛症の発症や経過に影響を与える可能性も指摘されていて、女性の場合、ライフステージによってホルモン環境が大きく変化するため、関連が疑われることがあります。

ホルモンバランスの変化と脱毛

妊娠・出産後や更年期など、女性ホルモンの分泌量が大きく変動する時期に、円形脱毛症を発症したり、症状が変化したりすることがあります。

しかし、女性ホルモンが直接的に円形脱毛症の原因となるというよりは、ホルモンバランスの変化が免疫系に何らかの影響を与え、発症のきっかけの一つです。

甲状腺疾患との関連

前述の通り、円形脱毛症は甲状腺疾患(特に自己免疫性のもの)との合併が多いことが知られています。

甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節する重要なホルモンであり、その異常は免疫系にも影響を及ぼすことがあるため、円形脱毛症の診断時には、甲状腺機能の検査を行うことが推奨される場合があります。

蛇行型円形脱毛症の診断方法

蛇行型円形脱毛症の診断は、主に皮膚科専門医による問診、視診、そして必要に応じて各種検査を組み合わせて行います。

専門医による問診の重要性

正確な診断のためには、患者さんからの詳細な情報が不可欠です。医師は、脱毛の始まり方、進行の速さ、過去の治療歴、既往歴、家族歴、生活習慣、ストレスの状況などを詳しく尋ねます。

発症時期や経過、既往歴の確認

いつから脱毛が始まったのか、どのように進行してきたのか、これまでに円形脱毛症になったことがあるか、アトピー性皮膚炎や甲状腺疾患などの自己免疫疾患の既往がないかなどを確認します。

情報は、病型や重症度、治療方針を決定する上で重要な手がかりです。

家族歴や生活習慣の聴取

血縁者に円形脱毛症の方がいるか、最近大きなストレスがなかったか、睡眠や食事の状況はどうかなど、発症や悪化に関与する可能性のある背景因子についても聴取します。

視診とダーモスコピー検査

問診に続いて、実際に脱毛部位の状態を詳細に観察し、視診では、脱毛斑の形状、範囲、分布、頭皮の色調、毛髪の太さや密度などを確認します。

脱毛斑の形状や範囲の確認

蛇行型円形脱毛症に特徴的な、生え際に沿った帯状の脱毛があるかどうかを確認します。脱毛斑の境界が明瞭か、活動性の兆候(切れ毛、感嘆符毛など)が見られるかなども重要な観察ポイントです。

毛髪や毛穴の状態観察

ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いて、毛髪や毛穴の状態をより詳しく観察し、毛髪が途中で折れていないか、毛根部が細くなっている毛、毛穴が閉塞していないかなどを確認できます。

所見は、円形脱毛症の活動性や診断の確度を高めるのに役立ちます。

ダーモスコピーで観察される所見

所見説明示唆すること
感嘆符毛(exclamation mark hair)毛幹の先端が太く、毛根側が細くなっている毛円形脱毛症の活動期
黒点(black dots)毛穴に残った断裂毛脱毛の進行
黄色点(yellow dots)皮脂や角質で満たされた毛包開口部慢性期、毛包の変性

血液検査で確認する項目

円形脱毛症の診断自体は主に臨床所見に基づいて行われますが、合併症の有無や全身状態を評価するために血液検査を行うことがあります。

特に、自己免疫疾患の合併が疑われる場合や、治療薬の選択に影響する可能性がある場合に実施します。

自己抗体の有無

抗核抗体(ANA)や抗甲状腺抗体(抗TPO抗体、抗Tg抗体など)といった自己抗体を測定し、他の自己免疫疾患の合併がないかを確認します。

抗体が陽性であっても、必ずしも他の疾患を発症しているとは限りませんが、注意深い経過観察が必要です。

甲状腺機能や栄養状態の評価

甲状腺ホルモン(TSH、FT3、FT4)を測定し、甲状腺機能異常がないかを確認し、また、鉄欠乏性貧血などが脱毛に関与することもあるため、血算やフェリチン(貯蔵鉄)などを調べることもあります。

皮膚生検が必要となるケース

ほとんどの蛇行型円形脱毛症は臨床所見で診断可能ですが、診断が困難な場合や、他の脱毛症(例えば、瘢痕性脱毛症や休止期脱毛など)との鑑別が必要な場合には、皮膚生検を行うことがあります。

診断が困難な場合

非典型的な症状を呈する場合や、複数の脱毛症が混在している可能性がある場合など、視診やダーモスコピーだけでは確定診断に至らないケースがあります。

このような場合に、より確実な情報を得るために皮膚生検を検討します。

他の脱毛症との鑑別

皮膚生検では、脱毛部の頭皮から小さな組織片を採取し、顕微鏡で毛包周囲の炎症細胞の種類や分布、毛包の構造変化などを詳細に観察します。

円形脱毛症に特徴的なリンパ球浸潤のパターンを確認したり、他の脱毛症を除外したりすることが可能です。局所麻酔下で行う比較的簡単な検査ですが、実施の要否は医師が慎重に判断します。

女性患者における蛇行型円形脱毛症の治療方針

蛇行型円形脱毛症の治療は、脱毛の範囲や進行度、患者さんの年齢、全身状態、そして希望などを総合的に考慮して決定します。

残念ながら、現時点では確実に完治させる特効薬はなく、治療の目標は脱毛の進行を抑え、発毛を促し、QOL(生活の質)を維持することに置かれます。

現実的な治療期間と効果の予測

治療期間は、症状の重症度や治療法によって大きく異なりますが、一般的に数ヶ月から数年単位となることが多いです。

効果の現れ方にも個人差があり、すぐに発毛が見られる場合もあれば、なかなか改善しない場合もあります。

主な治療法の種類と特徴

蛇行型円形脱毛症の治療法には、いくつかの選択肢があり、脱毛範囲や活動性、患者さんの年齢や背景などを考慮して、単独または複数の治療法を組み合わせて行います。

ステロイド外用療法

炎症を抑える作用のあるステロイドホルモンの塗り薬を脱毛部に塗布する方法で、比較的軽症の場合や、他の治療法の補助として用いられます。

副作用としては、長期使用による皮膚の菲薄化や毛細血管拡張などがありますが、医師の指示通りに使用すればリスクは低いです。

ステロイド局所注射療法

ステロイド薬を脱毛部の皮内に直接注射する方法で、外用薬よりも効果が期待でき、脱毛範囲が限局している場合に良い適応となります。

注射時に痛みを伴うことや、注射部位が一時的に陥凹することがありますが、通常は自然に回復し、月に1回程度の頻度で行うことが多いです。

局所免疫療法(SADBE、DPCP)

SADBE(squaric acid dibutylester)やDPCP(diphenylcyclopropenone)といった化学物質を脱毛部に塗布し、人工的に軽いかぶれ(接触皮膚炎)を起こさせることで、毛包への免疫反応を変化させ、発毛を促す治療法です。

広範囲の脱毛や難治例に有効な場合があり、治療初期にかゆみや赤み、腫れなどが強く出ることがありますが、徐々に調整していきます。

主な治療法の比較

治療法主な作用適応(目安)
ステロイド外用抗炎症作用軽症、小範囲
ステロイド局所注射強力な抗炎症作用限局性、活動期
局所免疫療法免疫変調作用広範囲、難治例

内服薬(ステロイド、免疫抑制剤など)

脱毛が急速に進行している場合や、範囲が非常に広い重症例では、ステロイドの内服薬や免疫抑制剤(シクロスポリンなど)が検討されることがあります。

薬剤は全身への影響があるため、効果と副作用のリスクを十分に考慮し、医師の厳重な管理のもとで使用します。

特にステロイド内服は、長期連用による副作用(易感染性、糖尿病、骨粗鬆症、満月様顔貌など)に注意が必要です。

治療選択における注意点

どの治療法を選択するにしても、いくつかの注意点があります。

副作用のリスクと対策

全ての治療法には、何らかの副作用の可能性があり、医師は、それぞれの治療法の効果と副作用について詳しく説明し、患者さんの状態に合わせて副作用を最小限に抑えるための対策を講じます。

何か異常を感じた場合は、すぐに医師に相談することが重要です。

妊娠中や授乳中の治療法

妊娠中や授乳中の女性の場合、使用できる薬剤や治療法が限られ、胎児や乳児への影響を考慮し、安全性を最優先した治療計画を立てる必要があります。

ステロイド外用薬は比較的安全に使用できる場合がありますが、内服薬や一部の局所療法は避けるべきです。治療を希望する場合は、必ず妊娠中または授乳中であることを医師に伝え、相談してください。

長期的な視点での治療計画

蛇行型円形脱毛症の治療は、一朝一夕に効果が出るものではなく、長期的な視点が必要で、途中で効果が見えにくい時期があっても、根気強く治療を続けることが大切です。

また、一度改善しても再発する可能性もあるため、症状が落ち着いた後も定期的な診察を受け、必要に応じて維持療法を行うこともあります。

蛇行型円形脱毛症と向き合うための生活上の工夫

蛇行型円形脱毛症の治療と並行して、日常生活の中でいくつかの工夫を取り入れることは、症状の管理や精神的な安定に繋がります。

ストレスマネジメントの重要性

ストレスは円形脱毛症の誘因や悪化因子の一つと考えられているため、日常生活においてストレスを上手にコントロールすることは非常に重要です。

リラックス方法の見つけ方

自分に合ったリラックス方法を見つけ、意識的に取り入れるようにしましょう。

趣味の時間を持つ、軽い運動をする(ウォーキング、ヨガなど)、音楽を聴く、瞑想する、アロマテラピーを試すなどが挙げられます。

何が効果的かは人それぞれですので、色々試してみて心地よいと感じるものを見つけることが大切です。

専門家のサポート活用

ストレスが大きすぎて自分だけでは対処しきれないと感じる場合は、臨床心理士やカウンセラーなどの専門家のサポートを受けることも検討しましょう。

専門家は、話を聞くだけでなく、ストレス対処法や考え方の癖を修正する手助けをしてくれ、医療機関によっては、心理カウンセリングを提供しているところもあります。

バランスの取れた食事と睡眠

健康な毛髪を育むためには、体全体の健康が基盤となり、バランスの取れた食事と質の高い睡眠は、免疫機能の維持にも繋がり、脱毛症の管理に間接的に貢献します。

髪の成長に必要な栄養素

毛髪は主にタンパク質(ケラチン)からできているため、良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)を十分に摂取することが大切です。

また、ビタミン(特にビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE)やミネラル(特に亜鉛、鉄)も毛髪の健康に関与しています。

髪の健康に役立つ栄養素の例

栄養素主な働き多く含む食品例
タンパク質毛髪の主成分肉、魚、卵、大豆製品
亜鉛毛髪の合成を助ける牡蠣、レバー、牛肉
ビタミンB群頭皮環境を整える緑黄色野菜、魚介類、穀類

質の高い睡眠の確保

睡眠中には成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生が活発に行われ、毛髪の成長も例外ではありません。

質の高い睡眠を確保するためには、規則正しい生活リズムを心がけ、就寝前のカフェイン摂取やスマートフォンの使用を控えるなどの工夫が有効です。

睡眠時間は個人差がありますが、6~8時間程度を目安にすると良いでしょう。

頭皮ケアとヘアケアのポイント

脱毛がある場合、頭皮や残っている毛髪への刺激はできるだけ避けたいものです。優しいケアを心がけましょう。

低刺激性のシャンプー選び

洗浄力の強すぎるシャンプーや、香料・着色料が多く含まれるものは、頭皮への刺激となる可能性があります。

アミノ酸系などの低刺激性のシャンプーを選び、洗髪時は爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするように洗いましょう。すすぎ残しがないように、しっかりと洗い流すことも大切です。

頭皮マッサージの可否と方法

頭皮マッサージは血行を促進し、頭皮環境を整える効果が期待できますが、円形脱毛症の活動期には刺激が逆効果になることもあります。

マッサージを行う場合は、医師に相談の上、強くこすったりせず、指の腹で優しく押さえる程度に留めましょう。炎症が強い時期は避けてください。

蛇行型円形脱毛症に関するよくある質問(Q&A)

蛇行型円形脱毛症について、患者さんからよく寄せられる質問とその一般的な回答をまとめました。ただし、個々の症状や状況によって回答は異なる場合がありますので、最終的には主治医にご確認ください。

Q
完治する可能性はありますか?
A

蛇行型円形脱毛症は、他の病型の円形脱毛症と比較して治療に時間がかかったり、難治性であったりするケースも報告されています。

しかし、適切な治療を根気強く続けることで、症状が改善し、毛髪が再生する可能性は十分にあります。

完全に元の状態に戻る方もいれば、ある程度の脱毛が残る方、あるいは再発を繰り返す方もいて、治療効果には個人差が大きいのが現状です。

Q
治療期間はどのくらいかかりますか?
A

治療期間は、脱毛の範囲、重症度、選択する治療法、治療に対する反応によって大きく異なります。

数ヶ月で改善が見られることもあれば、数年単位の長期的な治療が必要となることも少なくありません。蛇行型は一般的に治療期間が長くなる傾向があると言われています。

Q
再発する可能性はありますか?また、その場合の対策は?
A

円形脱毛症は、一度症状が改善しても再発する可能性がある疾患で、蛇行型円形脱毛症も例外ではありません。再発の頻度や時期を正確に予測することは困難です。

再発した場合の対策としては、基本的には初回の治療と同様に、症状の程度に応じて治療法を選択することになります。

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