髪は女性の印象を大きく左右する要素の一つであり、その悩みは非常にデリケートなものです。特に円形脱毛症は、ある日突然現れることがあり、大きな不安を感じる方も少なくありません。

実は、円形脱毛症と、体の調子を整える重要な役割を持つ「甲状腺」の機能には、深いつながりがある場合があります。

この記事では、甲状腺の働きと女性の円形脱毛症がどのように関連しているのか、そして早期発見のために知っておきたいポイントを、分かりやすく解説します。

目次

甲状腺と円形脱毛症 まず知っておきたいこと

円形脱毛症と甲状腺疾患は、一見すると異なる問題のように思えるかもしれませんが、私たちの体は複雑に関連し合っており、一方の不調がもう一方に影響を及ぼすことがあります。

甲状腺とはどんな臓器?その役割と重要性

甲状腺は、喉ぼとけの下あたりに位置する、蝶が羽を広げたような形をした小さな臓器です。

重さは約15~20グラム程度と小さいながらも、私たちの体にとって非常に重要なホルモンである「甲状腺ホルモン」を分泌しています。

甲状腺ホルモンは、全身の細胞の新陳代謝を活発にする働きを担っており、エネルギーの産生、体温調節、心臓や消化管の活動、さらには脳の発育や機能維持にも関与しています。

つまり、私たちが健康で活動的な毎日を送るために、甲状腺ホルモンはなくてはならない存在です。

甲状腺ホルモンの主な働き

項目主な働き影響
新陳代謝の促進全身の細胞活動を活発にするエネルギー消費、体温維持
成長と発達特に胎児期や小児期の脳や骨の発育に重要知能、身体的成長
各器官の機能調節心臓、消化器、神経系などの働きを正常に保つ心拍数、消化吸収、精神活動

このように、甲状腺は生命維持に欠かせない多くの活動を支えているため、甲状腺の機能に異常が生じると、その影響は全身に及ぶ可能性があります。

円形脱毛症とは?主な症状と特徴

円形脱毛症は、頭部やその他の体毛が生えている部分に、コインのような円形または楕円形の脱毛斑が突然現れる疾患です。

多くの場合、自覚症状はほとんどありませんが、時に軽いかゆみや違和感を伴うこともあります。

脱毛斑は一つだけの場合もあれば、複数現れることもあり、進行すると脱毛斑同士が融合して広範囲に及ぶこともあります。

重症度も様々で、数ヶ月で自然に治癒する軽症例から、頭髪全体が抜け落ちる全頭型、さらには眉毛やまつ毛、体毛など全身の毛が抜ける汎発型に至るケースもあります。

発症年齢に男女差はあまり見られませんが、どの年代でも起こりうるのが特徴です。

円形脱毛症のタイプ

タイプ特徴一般的な経過
単発型円形の脱毛斑が1箇所にできる自然治癒することも多い
多発型円形の脱毛斑が複数箇所にできる治癒に時間がかかる場合がある
全頭型頭髪のほぼ全てが抜け落ちる治療が長期にわたることがある
汎発型頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、体毛など全身の毛が抜ける治療が難しい場合がある

円形脱毛症の原因は完全には解明されていませんが、自己免疫反応が関与していると考えられています。

何らかの理由で免疫系が自分自身の毛包(毛を作り出す組織)を異物と誤認し、攻撃してしまうことで毛が抜けてしまうというものです。

女性における甲状腺疾患と脱毛症の関連性について

女性は男性に比べて甲状腺疾患にかかりやすく、代表的なものに、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるバセドウ病や、逆に甲状腺ホルモンの分泌が低下する橋本病などがあり、自己免疫疾患の一つです。

円形脱毛症もまた自己免疫疾患と考えられているため、これらの疾患が合併しやすいことが指摘されています。

つまり、甲状腺疾患を持つ女性は、円形脱毛症を発症するリスクが一般よりも高くなる可能性があるのです。

また、甲状腺ホルモンの異常は毛髪の成長サイクルにも直接影響を与えるため、円形脱毛症とは異なるメカニズムでびまん性(全体的)な脱毛を起こすこともあります。

甲状腺機能の異常が円形脱毛症を起こす可能性

甲状腺機能の異常、甲状腺ホルモンのバランスの乱れは、毛髪の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。

甲状腺ホルモンのバランスと毛髪サイクルの関係

毛髪には「成長期」「退行期」「休止期」という3つの期間からなる毛周期(ヘアサイクル)があり、甲状腺ホルモンは、この毛周期の各段階の期間や移行を正常に保つ上で重要な役割を果たしています。

毛母細胞の増殖を促し、成長期を維持する働きがあり、甲状腺ホルモンの分泌が多すぎたり少なすぎたりすると、毛周期が乱れ抜け毛が増えたり、新しい髪が生えにくくなったりするのです。

毛髪サイクルの各期と甲状腺ホルモン

甲状腺ホルモンは、毛包の細胞に直接作用し、その活動を調節し、成長期にある毛母細胞の分裂や増殖を促進し、毛髪の太さや長さを保つ働きがあります。

また、休止期から成長期への移行をスムーズにする役割も担っていると考えられています。

甲状腺機能に異常が生じると、成長期が短縮されたり、休止期にとどまる毛髪の割合が増加したりすることがあります。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)と脱毛

甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態です。

代表的な疾患としてバセドウ病があり、甲状腺ホルモンが過剰になると、全身の新陳代謝が異常に活発になります。

毛髪に影響すると、毛周期が早まり、成長期が短縮されることがあり、髪の毛が細くなったり、十分に成長する前に抜け落ちてしまったりして、びまん性の脱毛(髪全体が薄くなる)が起こることがあります。

また、バセドウ病は自己免疫疾患であるため、円形脱毛症を合併するリスクも高まります。

バセドウ病による脱毛の特徴

バセドウ病に伴う脱毛は、特定の箇所だけが抜けるのではなく、頭部全体の髪が薄くなるびまん性脱毛の形をとることが一般的で、髪質が柔らかく、細くなることも特徴の一つです。

また、円形脱毛症を合併した場合は、円形または楕円形の脱毛斑が現れます。

甲状腺機能亢進症の他の症状(動悸、多汗、体重減少、手の震え、眼球突出など)と合わせて脱毛が見られる場合は、関連を疑うことが必要です。

  • 髪全体のボリュームダウン
  • 髪の毛が細く、柔らかくなる
  • 抜け毛の増加

甲状腺機能低下症(橋本病など)と脱毛

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が不足する状態です。代表的な疾患として橋本病(慢性甲状腺炎)があります。甲状腺ホルモンが不足すると、全身の新陳代謝が低下します。

毛髪では、毛母細胞の活動が低下し、成長期が短縮されたり、休止期が延長されたりし、髪の成長が遅くなり、抜け毛が増えるだけでなく、新しい髪が生えにくくなり、びまん性の脱毛が起こりやすくなるのです。

また、髪が乾燥し、パサついたり、もろくなったりする傾向も見られます。橋本病も自己免疫疾患であるため、円形脱毛症を合併することがあります。

橋本病による脱毛の特徴

橋本病に伴う脱毛も、びまん性脱毛が主ですが、特に頭頂部や側頭部が薄くなることがあり、髪の毛が乾燥してパサパサし、ツヤが失われ、切れやすくなるのも特徴です。

眉毛の外側3分の1が薄くなる「眉毛外側脱毛」も、甲状腺機能低下症に比較的特徴的な所見とされます。

甲状腺機能低下症の他の症状(倦怠感、むくみ、寒がり、体重増加、便秘、皮膚の乾燥など)とともに脱毛が見られる場合は、関連を疑うことが大切です。

自己免疫疾患としての共通点

前述の通り、バセドウ病や橋本病といった甲状腺疾患の多くは自己免疫が関与していて、円形脱毛症もまた、毛包に対する自己免疫反応が原因と考えられています。

自己免疫疾患は、一つの疾患を持つ人が他の自己免疫疾患を合併しやすいという特徴があり、甲状腺疾患(特に自己免疫性のもの)を持つ方は、円形脱毛症を発症するリスクが一般よりも高いです。

女性が特に注意すべき甲状腺疾患のサイン

甲状腺疾患は、初期には症状が軽微であったり、他の一般的な不調と区別がつきにくかったりすることがあります。

しかし、放置すると心臓や骨、精神状態などにも影響を及ぼす可能性があるため、早期に気づき対応をすることが重要です。

甲状腺機能亢進症のチェックポイント

甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺機能亢進症では、全身の代謝が異常に高まるため、様々な症状が現れます。

甲状腺機能亢進症の主な症状

分類主な症状詳細
全身症状疲れやすい、体重減少(食欲はあるのに)エネルギー消費が増大するため
精神・神経症状イライラしやすい、落ち着きがない、集中力低下、手の震え神経系が過敏になるため
循環器症状動悸、頻脈、息切れ、不整脈心臓の働きが活発になりすぎるため
消化器症状食欲亢進、軟便・下痢傾向消化管の動きが活発になるため
その他多汗、暑がり、微熱、眼球突出(バセドウ病の場合)、首の腫れ体温調節の異常、特有の眼症状

症状は、ストレスや更年期障害の症状と似ていることもあり、自己判断は禁物で、気になる症状が続く場合は、専門医に相談することが大切です。

甲状腺機能低下症のチェックポイント

甲状腺ホルモンが不足する甲状腺機能低下症では、全身の代謝が低下するため、活動性が鈍り、様々な機能低下のサインが現れます。

症状はゆっくりと進行することが多いため、気づきにくいこともありますが、注意深く観察しましょう。

甲状腺機能低下症の主な症状

分類主な症状詳細
全身症状疲れやすい、むくみ(特に顔や手足)、寒がり、体重増加(食欲はあまりないのに)エネルギー産生が低下するため
精神・神経症状気力低下、物忘れしやすい、眠気、ぼんやりする、うつ傾向脳の活動が低下するため
皮膚・毛髪症状皮膚の乾燥・カサカサ、脱毛、眉毛が薄くなる(特に外側)新陳代謝の低下による
消化器症状食欲不振、便秘消化管の動きが鈍くなるため
その他声がかすれる、脈が遅くなる、首の腫れ(橋本病の場合)、月経異常粘液水腫、心機能低下、甲状腺の炎症

これらの症状も、加齢による変化や他の疾患と間違われやすいものです。複数の症状が当てはまる場合は、医療機関で検査を受けることをお勧めします。

その他の注意すべき身体の変化

上記の代表的な症状以外にも、甲状腺機能の異常は様々な形で体に現れることがあり、首の前部(甲状腺のある位置)にしこりや腫れを感じる場合は、甲状腺腫瘍や甲状腺炎の可能性があります。

また、原因不明の体調不良が長く続く場合や、気分の浮き沈みが激しいといった精神的な変化も、甲状腺ホルモンのバランスの乱れが影響していることがあります。

  • 首の腫れやしこり
  • 声のかすれ
  • 飲み込みにくさ
  • 原因不明の体調不良の持続

変化に気づいたら、自己判断せずに医師に相談し、適切な検査を受けることが重要です。

月経周期や妊娠との関連

甲状腺ホルモンは、女性ホルモンの働きとも密接に関連しており、月経周期の異常(月経不順、過多月経、無月経など)や不妊、流産、早産のリスクを高めることがあります。

妊娠中の甲状腺機能異常は、母体だけでなく胎児の発育にも影響を与える可能性があるため、注意が必要です。

妊娠を希望している方や妊娠中の方は、甲状腺機能に問題がないかを確認しておくことが推奨されます。

円形脱毛症の多様な原因と甲状腺疾患以外の要因

円形脱毛症の発症には、甲状腺疾患が関与することがありますが、それ以外にも様々な要因が考えられていて、多くの場合、これらの要因が複雑に絡み合って発症すると推測されています。

ストレスと円形脱毛症

精神的なストレスや肉体的な疲労は、円形脱毛症の誘因や悪化因子の一つです。

ストレスが自律神経のバランスを乱し、免疫系や内分泌系(ホルモンバランス)に影響を与えることで、毛包への攻撃が始まったり、毛髪の成長が妨げられたりするのではないかと推測されています。

大きな精神的ショックを受けた後や、過労が続いた後に発症するケースも報告されています。

アトピー素因と円形脱毛症

アトピー素因とは、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎などを起こしやすい体質のことで、円形脱毛症の患者さんには、このアトピー素因を持つ人が比較的多いです。

アトピー素因を持つ人は、免疫系が特定の物質に対して過敏に反応しやすい傾向があり、毛包に対する自己免疫反応を起こしやすくするのではないかと考えられています。

遺伝的要因と円形脱毛症

円形脱毛症の発症には、遺伝的な要因も関与しており、家族(特に親子や兄弟姉妹)に円形脱毛症の人がいる場合、本人も発症するリスクが一般よりも高いです。

いくつかの遺伝子が円形脱毛症の発症しやすさに関連していることが研究で示唆されていますが、特定の遺伝子だけで発症が決まるわけではなく、環境要因など他の要素も複合的に関わっていると考えられます。

その他の考えられる原因

上記以外にも、円形脱毛症の発症に関与する可能性のある要因がいくつか挙げられています。

円形脱毛症のその他の要因候補

要因関連性(推測)
感染症特定のウイルスや細菌感染が免疫系の異常を引き起こす可能性
薬剤一部の薬剤の副作用として脱毛が起こることがある(円形脱毛症とは機序が異なる場合も)
出産後のホルモンバランスの変化産後脱毛とは別に、円形脱毛症の誘因となる可能性

早期発見と適切な対処の重要性

円形脱毛症や、その背景にあるかもしれない甲状腺疾患は、早期に発見し、適切な対応を始めることが、症状の改善や進行の抑制、さらにはQOL(生活の質)の維持向上にとって非常に重要です。

なぜ早期発見が大切なのか

円形脱毛症は、初期の小さな脱毛斑のうちに治療を開始することで、脱毛範囲の拡大を防いだり、発毛を早めたりできる可能性があります。

また、もし甲状腺疾患が背景にある場合、脱毛はその疾患の一つのサインかもしれません。

甲状腺疾患を早期に発見し治療を開始することで、脱毛だけでなく、全身の様々な不調の改善につながり、重篤な合併症を防ぐことにもなります。

甲状腺機能低下症を放置すると、脂質異常症や動脈硬化が進行したり、心機能が低下したりするリスクがあります。

甲状腺機能亢進症では、心房細動などの不整脈や心不全、骨粗しょう症などを起こすことがあります。

検査と診断の流れ

医療機関では、まず問診で症状の経過、既往歴、家族歴、生活習慣などを詳しく聴取し、その後、視診や触診で脱毛の状態や頭皮の状態を詳細に確認します。

円形脱毛症が疑われる場合、ダーモスコピーという拡大鏡を用いた検査で、毛髪や毛穴の状態を観察することもあります。

甲状腺疾患の合併が疑われる場合や、円形脱毛症の原因を特定するために、血液検査を行うことが一般的です。

血液検査では、甲状腺ホルモン(FT3, FT4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)、自己抗体(抗サイログロブリン抗体、抗TPO抗体、TSHレセプター抗体など)の値を測定し、甲状腺機能の状態や自己免疫疾患の有無を評価します。

必要に応じて、甲状腺エコー(超音波検査)で甲状腺の大きさや内部の状態を調べることもあり、検査結果を総合的に判断して診断を下し、治療方針を決定します。

甲状腺疾患が関連する円形脱毛症の治療とケア

甲状腺疾患が円形脱毛症に関与している場合、治療は甲状腺疾患そのものに対する治療と、円形脱毛症に対する治療の両面からアプローチすることが基本となります。

また、日々の生活習慣やヘアケア、精神的なサポートも回復を助ける上で大切です。

甲状腺疾患自体の治療

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)の場合は、甲状腺ホルモンの産生を抑える抗甲状腺薬による薬物療法が中心となり、その他、放射性ヨウ素内用療法や手術療法が選択されることもあります。

甲状腺機能低下症(橋本病など)の場合は、不足している甲状腺ホルモンを補うために、合成甲状腺ホルモン製剤(レボチロキシンナトリウム)の内服治療を行います。

円形脱毛症に対する治療法

円形脱毛症の治療法は、脱毛の範囲、重症度、年齢、合併症の有無などを考慮して選択し、甲状腺疾患の治療と並行して行われることもあります。

主な局所療法

治療法概要主な対象
ステロイド外用療法炎症や免疫反応を抑えるステロイド薬を脱毛斑に塗布する軽症~中等症の単発型・多発型
ステロイド局所注射ステロイド薬を脱毛斑の皮内に直接注射する範囲の狭い難治性の脱毛斑
ミノキシジル外用療法毛母細胞を活性化し発毛を促すミノキシジル薬を塗布する軽症~中等症(保険適用外の場合あり)

主な全身療法

治療法概要主な対象
ステロイド内服療法炎症や免疫反応を強力に抑えるステロイド薬を内服する(短期間)急速に進行する重症例
SADBE/DPCPによる局所免疫療法特殊な化学物質を脱毛斑に塗布し、軽いかぶれを起こさせて発毛を促す広範囲な多発型、全頭型、汎発型
JAK阻害薬免疫反応に関わるJAKという酵素の働きを阻害する内服薬広範囲な脱毛斑を有する成人(条件あり)

治療法は、それぞれ効果や副作用が異なるため、医師とよく相談し、納得した上で治療を進めることが大切です。治療効果が現れるまでには時間がかかることも多く、根気強く取り組む必要があります。

日常生活で心がけたいヘアケアと生活習慣

治療と並行して、日常生活でのセルフケアも髪の健康をサポートする上で役立ちます。

  • バランスの取れた食事(タンパク質、ビタミン、ミネラルを十分に)
  • 質の高い睡眠を確保する
  • 適度な運動で血行を促進する
  • ストレスを溜め込まない工夫をする(趣味、リラックス法など)
  • 頭皮に優しいシャンプーを選び、爪を立てずに優しく洗髪する
  • ドライヤーは頭皮から離して、過度に熱を当てないようにする
  • パーマやカラーリングは、頭皮の状態が良い時に、刺激の少ないものを選ぶ

特に、甲状腺疾患がある場合は、ヨウ素の過剰摂取に注意が必要なことがあります(特に橋本病の一部やバセドウ病治療前後など)。食事については医師や管理栄養士の指導に従いましょう。

よくある質問 (FAQ)

甲状腺機能と円形脱毛症に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q
甲状腺の検査はどのようなものですか?
A

甲状腺の機能を調べる主な検査は血液検査です。

採血によって、甲状腺ホルモン(FT3、FT4など)と、甲状腺ホルモンの分泌をコントロールしている脳下垂体からのホルモン(TSH:甲状腺刺激ホルモン)の値を測定します。

また、甲状腺に対する自己抗体(例:抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体、TSHレセプター抗体など)を調べることで、バセドウ病や橋本病といった自己免疫性の甲状腺疾患の診断に役立てます。

必要に応じて、甲状腺超音波(エコー)検査も行います。

Q
甲状腺疾患の治療をすれば髪は必ず生えてきますか?
A

甲状腺疾患が原因で脱毛が起きている場合、甲状腺の治療によってホルモンバランスが正常化すれば、脱毛症状が改善し、発毛が見られることが期待できます。


多くの場合、甲状腺機能が安定してから数ヶ月~半年程度で毛髪の状態に変化が現れ始めます。

しかし、円形脱毛症を合併している場合や、脱毛の程度が重い場合、長期間脱毛が続いている場合などは、甲状腺治療だけでは十分な発毛が得られないこともあります。

Q
食生活で気をつけることはありますか?
A

まず、バランスの取れた食事が基本です。髪の主成分であるタンパク質、髪の成長を助けるビタミン(特にビオチン、亜鉛、鉄分など)やミネラルを意識して摂取しましょう。

甲状腺疾患の種類によっては、ヨウ素の摂取について注意が必要な場合で、橋本病の方で昆布などのヨウ素を多く含む食品を過剰に摂取すると、甲状腺機能がさらに低下することがあります。

バセドウ病の方も、治療法によってはヨウ素制限が必要な時期があります。

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