ふと鏡を見たとき、以前より分け目が目立つようになったと感じる方も多いようです。特に分け目は自分でも見えやすいため、薄毛が進行しているのではないかと不安になる方もいるでしょう。
分け目が目立つ原因は一つではなく、加齢やホルモンバランス、生活習慣、頭皮環境など様々です。20代の若い世代でも、分け目の薄毛に悩む女性は少なくありません。
この記事では、女性の分け目がはげて見える原因を詳しく解説し、ご自身でできる予防・対策から、専門クリニックでの治療法までご紹介します。
分け目が目立つ原因は?
女性の分け目が薄く、地肌が目立つようになる原因は多岐にわたります。ご自身の状況と照らし合わせながら、考えられる原因を探ってみましょう。
加齢による変化
年齢を重ねると、髪の毛を作る毛母細胞の働きが徐々に低下します。これにより、髪の毛1本1本が細くなったり髪の毛全体の量が減ったりして、分け目の地肌が透けて見えやすくなります。
また、加齢に伴い女性ホルモンの分泌量も減少するため、これも薄毛の要因となります。
女性の薄毛の種類
薄毛の種類 | 主な特徴 | 分け目への影響 |
---|---|---|
FAGA(女性男性型脱毛症) | 頭頂部を中心に全体的に薄くなる | 目立ちやすい |
びまん性脱毛症 | 髪全体が均等に薄くなる | 目立ちやすい |
牽引性脱毛症 | いつも同じ分け目や髪型で、髪が引っ張られることで起こる | 特定箇所が目立つ |
ホルモンバランスの乱れ
女性ホルモンの一つであるエストロゲンには、髪の毛の成長を促してハリやコシを保つ働きがあります。
しかし、妊娠・出産や更年期、ストレスや睡眠不足、過度なダイエットなどによってホルモンバランスが乱れるとエストロゲンの分泌量が減少し、髪の毛が細くなったり抜けやすくなったりします。
その結果、分け目が目立ちやすくなります。
ホルモンバランスに影響する要因
要因 | 具体例 | 髪への影響 |
---|---|---|
ライフステージ | 妊娠、出産、更年期 | 抜け毛増加、髪質変化 |
生活習慣 | ストレス、睡眠不足、不規則な食生活、過度なダイエット | 成長阻害、抜け毛 |
病気 | 甲状腺疾患、婦人科系疾患など | 薄毛、脱毛 |
生活習慣の影響
日々の生活習慣も、髪の健康に大きく関わっています。栄養バランスの偏った食事や睡眠不足、運動不足や喫煙、過度な飲酒などは血行不良を招き、髪の毛の成長に必要な栄養素が頭皮に行き渡りにくくなります。
これにより、髪の毛が十分に育たず、分け目が薄く見える原因となります。
頭皮環境の悪化
頭皮は髪の毛が生える土壌です。頭皮が乾燥したり逆に皮脂が過剰に分泌されたり、炎症を起こしたりすると、健康な髪の毛が育ちにくくなります。
洗浄力の強すぎるシャンプーの使用や間違ったヘアケア、紫外線ダメージや整髪料の洗い残しなどが、頭皮環境を悪化させる要因となります。
頭皮環境を悪化させる要因
要因 | 具体的な行動や状況 | 頭皮への影響 |
---|---|---|
不適切なヘアケア | 洗浄力の強いシャンプー、ゴシゴシ洗い、熱すぎるお湯 | 乾燥、皮脂過剰、炎症 |
生活習慣 | 紫外線、汗、整髪料の洗い残し、不衛生な寝具 | 毛穴詰まり、炎症、血行不良 |
その他 | ストレス、体調不良 | 皮脂バランスの乱れ、血行不良 |
20代女性の分け目はげ特有の原因
分け目の薄毛は中高年だけの悩みではありません。最近では、20代の若い女性でも分け目が気になるという方が増えています。
過度なダイエット
美意識の高い20代女性の中には、無理な食事制限を伴うダイエットを行う方もいます。
しかし、極端な食事制限は、髪の毛の主成分であるタンパク質をはじめ、ビタミンやミネラルといった髪の成長に不可欠な栄養素の不足を招きます。
栄養不足の状態が続くと、髪の毛が細くなったり抜け毛が増えたりして、分け目が目立つ原因となります。
ヘアケアやスタイリングの影響
おしゃれを楽しむために頻繁なヘアカラーやパーマ、ヘアアイロンの使用やポニーテールやきつい編み込みなど、髪や頭皮に負担のかかるヘアスタイルを続けると、髪や頭皮へのダメージにつながります。
特に、いつも同じ位置で髪を結んだり分け目を作ったりしていると、その部分の頭皮が継続的に引っ張られ、血行不良や毛根への負担となり、「牽引性脱毛症」を引き起こしやすいです。
これが分け目の薄毛につながるケースも少なくありません。
ヘアケア・スタイリングの注意点
行為 | 注意点 | 頭皮・髪への影響 |
---|---|---|
カラー・パーマ | 頻度を空ける、頭皮に優しい薬剤を選ぶ、施術後のケア | ダメージ、頭皮刺激 |
ヘアアイロン・ドライヤー | 低温設定、短時間使用、熱保護剤の使用 | 乾燥、熱ダメージ |
ヘアスタイル | いつも同じ分け目や結び方を避ける、強く引っ張らない | 牽引性脱毛症、血行不良 |
ストレスと睡眠不足
学業や仕事、人間関係など、20代は様々なストレスにさらされやすい時期です。過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて血行不良を引き起こします。
また、睡眠不足も同様に自律神経やホルモンバランスの乱れにつながります。
頭皮への血流が悪くなると髪の毛の成長に必要な酸素や栄養素が届きにくくなり、薄毛や抜け毛の原因となります。
遺伝的要因
薄毛には遺伝的な要因が関わっている場合もあります。家族に薄毛の方がいる場合、体質的に薄毛になりやすい可能性があります。
ただし、遺伝的要因があるからといって必ず薄毛になるわけではありません。生活習慣やヘアケアを見直すと、薄毛の進行を遅らせたり予防したりできます。若いうちからの適切なケアが重要です。
分け目の状態をセルフチェック
分け目が気になる場合、まずはご自身の頭皮や髪の状態を客観的に把握しましょう。
鏡を使った確認方法
明るい場所で手鏡と合わせ鏡を使って、分け目の幅や地肌の透け具合を確認しましょう。
以前の写真と比較してみると、変化が分かりやすいかもしれません。分け目の幅が広がっていないか、地肌の色は健康的かなどをチェックします。
頭皮の色や硬さ
健康な頭皮は青白い色をしていますが、血行が悪かったり炎症を起こしたりしていると、赤っぽくなったり茶色っぽくなったりします。
指の腹で頭皮を軽く動かしてみて、硬すぎたり、逆にぶよぶよしたりしていないか、弾力を確認しましょう。硬い場合は血行不良、ぶよぶよしている場合はむくんでいる可能性があります。
抜け毛の量や質
シャンプー時やブラッシング時の抜け毛の量を意識してみましょう。1日の抜け毛の本数は通常50〜100本程度ですが、明らかに量が増えたと感じる場合は注意が必要です。
また、抜けた毛の中に細くて短い毛や、毛根部分が細くなっている毛が多く含まれている場合も、ヘアサイクルが乱れているサインかもしれません。
セルフチェックのポイント
- 分け目の幅
- 地肌の透け具合
- 頭皮の色(青白いか、赤み・茶色みはないか)
- 頭皮の硬さ・弾力
- 抜け毛の量(1日100本以上でないか)
- 抜け毛の質(細い毛、短い毛が多くないか)
自宅でできる予防と対策
分け目の薄毛が気になり始めたら、まずは毎日の生活習慣やヘアケアの見直しから始めましょう。
バランスの取れた食事
髪の毛は主にタンパク質(ケラチン)でできています。健やかな髪を育むためには、タンパク質はもちろん、ビタミンやミネラルといった栄養素をバランス良く摂取するのが重要です。
特に、亜鉛は髪の毛の主成分であるケラチンの合成を助け、ビタミンB群は頭皮の新陳代謝を促します。
髪の成長に必要な栄養素と食品例
栄養素 | 主な働き | 含まれる食品例 |
---|---|---|
タンパク質 | 髪の主成分(ケラチン)の材料となる | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
亜鉛 | ケラチンの合成を助ける | 牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類、チーズ |
ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝を促す、血行促進 | レバー、豚肉、マグロ、カツオ、卵、納豆、緑黄色野菜 |
正しいシャンプー方法
頭皮を清潔に保つことは大切ですが、洗いすぎや間違った洗い方は逆効果です。
以下の点に注意してシャンプーしましょう。
- シャンプー前にブラッシングで髪のもつれを解き、ホコリを落とす。
- ぬるま湯で髪と頭皮を十分に予洗いする。
- シャンプーを手のひらで泡立て、指の腹で頭皮をマッサージするように優しく洗う。爪を立てない。
- すすぎ残しがないように、時間をかけてしっかりと洗い流す。
- シャンプー後は、ドライヤーで髪だけでなく頭皮もきちんと乾かす。
頭皮マッサージ
頭皮マッサージは頭皮の血行を促進し、毛根に栄養を行き渡りやすくする効果が期待できます。リラックス効果もあるため、ストレス軽減にもつながります。
指の腹を使って、頭皮全体を優しく揉みほぐしましょう。シャンプー時や、入浴後の体が温まっている時に行うのがおすすめです。
ただし、力を入れすぎたり、爪を立てたりしないように注意してください。
避けるべき生活習慣
- 極端な食事制限
- 睡眠不足
- 過度な飲酒・喫煙
- ストレスを溜め込むこと
- 洗浄力の強すぎるシャンプー
- 髪を強く引っ張る髪型
紫外線対策
頭皮も肌の一部であり、紫外線によるダメージを受けます。紫外線は頭皮を乾燥させて炎症を引き起こすだけでなく、髪の毛を作る毛母細胞にも悪影響を与える可能性があります。
外出時には帽子や日傘を使用したり、頭皮用の日焼け止めスプレーを利用したりするなど、紫外線対策を心がけましょう。
分け目を変えるだけでは解決しない?
分け目が目立つと感じたときに、手っ取り早い方法として分け目を変えるのを試す方が多いでしょう。しかし、それは根本的な解決策なのでしょうか。
一時的なカモフラージュ
分け目を変えると薄くなった部分を隠せて、一時的に目立たなくさせる効果があります。見た目の印象を変えるための応急処置としては有効な方法の一つです。
しかし、これはあくまで薄毛が進行していないように見せかけているだけで、薄毛の原因そのものを解決しているわけではありません。
根本原因へ働きかける重要性
分け目が薄くなる背景には、ホルモンバランスの乱れや生活習慣、頭皮環境の悪化など、様々な原因が潜んでいます。
分け目を変えるだけでは、これらの根本的な原因に対処することはできません。薄毛の進行を食い止め、健やかな髪を取り戻すためには、原因に応じた適切な対策や治療を行うのが重要です。
放置するリスク
分け目の薄毛を「分け目を変えれば大丈夫」と放置してしまうと、その間に薄毛が進行してしまう可能性があります。
特にFAGA(女性男性型脱毛症)などの進行性の脱毛症の場合、早期に対策を始めると、より良い結果につながります。
気になる症状がある場合は、自己判断で放置せず、早めに専門医に相談することを検討しましょう。
クリニックでの専門的な治療法
セルフケアだけでは改善が見られない場合や、薄毛が進行しているように感じる場合は、女性の薄毛治療を専門とするクリニックに相談することをおすすめします。
専門医による診断に基づき、適切な治療を受けられるのがメリットです。
専門医による診断
クリニックでは問診や視診、マイクロスコープによる頭皮・毛髪の状態確認、血液検査などを行い、薄毛の原因を特定します。
原因や薄毛の進行度合い、患者さんの希望などを考慮し、一人ひとりに合った治療計画を立てます。自己判断では気づかなかった原因が判明するケースもあります。
内服薬・外用薬治療
女性の薄毛治療で一般的に用いられるのが、内服薬や外用薬による治療です。
主な治療薬
種類 | 作用 | 使用方法 |
---|---|---|
内服薬 | 抜け毛を抑制する、髪の成長に必要な栄養素を補う | 毎日服用 |
外用薬 | 発毛を促進する(ミノキシジルなど) | 頭皮に直接塗布 |
医師の処方が必要な薬が中心となります。効果や副作用について十分に説明を受け、指示に従って正しく使用することが大切です。
注入療法・再生医療
より積極的に発毛を促したい場合には、注入療法や再生医療も選択肢となります。
注入療法は、発毛効果のある成分(成長因子など)を頭皮に直接注入する方法です。これにより、毛母細胞の働きを活性化させ、発毛を促進します。
再生医療はご自身の血液や脂肪から抽出した成分を利用して、毛髪の再生を促す治療法です。より効果が期待される場合があります。
クリニックでの主な治療法と特徴
治療法 | 特徴 | 期待される効果 |
---|---|---|
内服薬・外用薬 | 自宅で継続しやすい、比較的始めやすい | 抜け毛抑制、発毛促進 |
注入療法 | 有効成分を頭皮に直接届ける、より積極的な発毛促進 | 発毛促進、育毛効果 |
再生医療 | 自身の細胞等を利用、より根本的な毛髪再生を目指す可能性がある | 毛髪再生、発毛促進 |
植毛
薄毛が進行して他の治療法では十分な効果が得られないときには、植毛という選択肢もあります。
植毛には、自分の後頭部などにある元気な髪の毛を薄毛部分に移植する「自毛植毛」があります。移植した髪の毛は、その後も生え変わり続けることが期待できます。
治療を始める前に知っておきたいこと
専門的な治療を検討する際には、事前にいくつか知っておきたい点があります。安心して治療に臨むために、以下の情報を確認しましょう。
クリニック選びのポイント
女性の薄毛治療はデリケートな問題であり、信頼できるクリニックを選ぶのが重要です。
- 女性の薄毛治療の実績が豊富か
- 専門医が在籍しているか
- カウンセリングが丁寧で、質問しやすい雰囲気か
- 治療法の選択肢が複数提示されるか
- 費用やリスクについて明確な説明があるか
これらの点を考慮し、複数のクリニックでカウンセリングを受けて比較検討すると良いでしょう。
治療期間と費用
薄毛治療は、効果を実感するまでに時間がかかるのが一般的です。多くの場合、数ヶ月から半年以上の継続が必要となります。
また、治療法によって費用も大きく異なります。
治療法の費用目安(自由診療の場合)
治療法 | 費用目安(月額または1回あたり) | 備考 |
---|---|---|
内服薬 | 5,000円〜15,000円程度 | 薬剤の種類による |
外用薬 | 10,000円〜20,000円程度 | 薬剤の種類・濃度による |
注入療法 | 30,000円〜100,000円程度 | 薬剤・範囲による |
再生医療・植毛 | 数十万円〜数百万円 | 治療法・範囲により高額 |
これらの費用はあくまで目安であり、クリニックや治療内容によって異なります。治療を開始する前に、総額や支払い方法についてもしっかり確認しましょう。
副作用やリスク
どのような治療法にも、副作用やリスクが伴う可能性があります。例えば、内服薬では初期脱毛や体調の変化、外用薬では頭皮のかぶれやかゆみ、注入療法では痛みや内出血などが考えられます。
治療を受ける前に、考えられる副作用やリスクについて医師から十分な説明を受け、理解しておくことが大切です。少しでも不安な点があれば、遠慮なく質問しましょう。
よくある質問
最後に、女性の分け目の薄毛治療に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- Q治療は痛いですか?
- A
治療法によって異なります。内服薬や外用薬は基本的に痛みはありません。注入療法や植毛では、麻酔を使用しますが、チクッとした痛みや術後の違和感を感じるケースがあります。
痛みの感じ方には個人差があるため、不安な場合は事前に医師に相談してください。多くのクリニックでは、痛みを最小限に抑える工夫をしています。
- Q効果はいつ頃から実感できますか?
- A
効果が現れるまでの期間は治療法や個人の状態によって異なりますが、一般的には3ヶ月から6ヶ月程度の継続が必要とされます。
ヘアサイクル(毛周期)の関係上、すぐに目に見える変化が現れるわけではありません。焦らず、医師の指示に従って根気強く治療を続けることが重要です。
- Q保険は適用されますか?
- A
FAGA(女性男性型脱毛症)やびまん性脱毛症など、美容目的と見なされる薄毛治療の多くは健康保険の適用外で、自由診療となります。
ただし、甲状腺疾患など他の病気が原因で薄毛が起きているときは、その病気の治療に対して保険が適用される場合があります。
まずは原因を特定するためにも、専門医の診察を受けると良いでしょう。
- Q治療をやめたら元に戻りますか?
- A
治療法や薄毛の原因によって異なります。例えば、内服薬や外用薬による治療は使用を中止すると効果が薄れ、元の状態に戻ってしまう可能性があります。
治療を継続する必要があるかどうか、どのくらいの期間続けるべきかは、医師と相談しながら決めていくのが基本です。
生活習慣の改善など、ご自身で続けられるケアも併せて行うようにしましょう。
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