分け目が目立つ、生え際が後退してきた、髪全体のボリュームが減ってきたなど、女性の薄毛の悩みは深刻です。

さまざまな治療法がある中で、自分の髪を使って自然な見た目を取り戻す「自毛植毛」は、根本的な解決策の一つとして注目されています。

この記事では、女性の自毛植毛に関心を持つ方へ向けて、その基本的な知識から、具体的な手術方法の種類、気になる費用や術後の経過、そして知っておくべきメリットと注意点まで、詳しく解説します。

自分に合った治療法を見つけるための一助として、ぜひお役立てください。

女性の自毛植毛とは – 薄毛治療における位置づけ

女性の薄毛治療には内服薬や外用薬、メソセラピーなど多様な選択肢が存在します。その中で自毛植毛は、他の治療法とは異なるアプローチで薄毛を改善する外科的な手法です。

ここでは、女性特有の薄毛の症状と自毛植毛の基本的な考え方、そして他の治療法と比較した際の位置づけを明らかにします。

女性の薄毛と自毛植毛の基本

女性びまん性脱毛の見え方比較(分け目拡大と頭頂部全体の透け)

女性の薄毛は男性とは異なり、特定の部分だけが禿げるのではなく、髪の毛が全体的に細く、少なくなる「びまん性脱毛症」が特徴です。

この症状に対して、自毛植毛がどのようにアプローチするのかを理解することが重要です。

びまん性脱毛症と植毛の適用

びまん性脱毛症は、頭部全体の毛髪が均等に薄くなるため、どこから髪を採取し、どこに植えるのかという判断が男性のAGA(男性型脱毛症)よりも複雑になります。

しかし、後頭部や側頭部には、薄毛の影響を受けにくい、丈夫な髪が残っていることが多くあります。

自毛植毛では、この性質を利用して、丈夫な髪を毛根ごと採取し、分け目や生え際など、薄毛が気になる部分に移植します。これにより、移植した髪は元の性質を保ったまま、その場所で半永久的に生え続ける効果が期待できます。

ただし、びまん性脱毛症が広範囲に進行している場合は、ドナー(採取する髪)が不足することもあり、適用を慎重に判断する必要があります。

そのため、事前のカウンセリングで医師が頭皮全体の状態を正確に診断することが大切です。

自毛植毛の仕組みと効果

自毛植毛は、薄毛の影響を受けにくい後頭部などの毛髪を、皮膚組織ごと(毛包単位で)採取し、薄毛の部分に移植する手術です。

自毛植毛の基本フロー(後頭部ドナー採取から移植部へ)

移植された毛髪は、数週間で一度抜け落ちますが、毛根は頭皮内に残っており、数ヶ月後から再び新しい髪として生え始めます。

このサイクルを経て、1年ほどで自然な仕上がりになります。最大の利点は、自分自身の組織を使うため、拒絶反応のリスクが極めて低いことです。

また、一度定着すれば、他の髪と同じように伸び、染めたりパーマをかけたりすることも可能になり、特別なメンテナンスは必要ありません。

他の治療法との比較

女性の薄毛治療の比較(植毛・薬物治療・ウィッグの特徴アイコン)

自毛植毛が唯一の選択肢ではありません。それぞれの治療法には異なる特徴があり、ご自身のライフスタイルや薄毛の状態、予算に合わせて選択することが求められます。

内服薬・外用薬との違い

ミノキシジル外用薬などの治療薬は、主に現状の髪の毛の成長を促進したり、抜け毛を抑制したりする効果を目的とします。つまり、「今ある髪を守り育てる」治療です。

これに対して自毛植毛は、「髪がなくなった場所に新しく髪を生やす」という、より積極的な治療法です。

薬物治療で効果を感じられなかった方や、生え際の後退など、毛根が失われた部分を改善したい場合に、自毛植毛は有力な選択肢となります。

主な女性の薄毛治療法の比較

治療法主な目的特徴
自毛植毛毛根がない部分に髪を増やす外科手術。効果は半永久的。費用は高額。
薬物治療抜け毛予防・育毛促進継続的な使用が必要。効果には個人差がある。
ウィッグ・増毛即時的に見た目を改善する根本治療ではない。定期的なメンテナンスが必要。

ウィッグや増毛との根本的な差

ウィッグや増毛は、すぐに見た目の変化を得られるという大きな利点があります。しかし、これらは根本的な治療ではなく、定期的なメンテナンスや買い替えに伴う継続的な料金が発生します。

一方、自毛植毛は初期費用こそ高額ですが、一度定着すれば自分の髪として生え続けるため、長期的に見ればメンテナンスの手間やコストを削減できる可能性があります。

自分の髪で生活したい、という自然な仕上がりを求める方にとって、自毛植毛は満足度の高い方法と言えるでしょう。

メスを使わないFUE植毛の仕組みと利点

FUE(Follicular Unit Extraction)法は、メスを使わずに毛髪を採取する方法として、近年主流になりつつある術式です。特に傷跡を気にされる女性にとって、大きなメリットがあります。

ここでは、FUE法の具体的な仕組みと、その利点や注意点について詳しく見ていきます。

FUE法の基本原理

FUE採取の仕組み(極細パンチと点状痕の断面イメージ)

FUE法は、FUT法のように帯状に皮膚を切除するのではなく、専用の器具を使って毛包単位で一つひとつ丁寧にドナーを採取するのが特徴です。

株(グラフト)単位での採取

FUE法では、直径1mm前後の極細のパンチ(円筒状の刃)を用いて、後頭部や側頭部から毛包を一つずつくり抜くように採取します。

採取されたグラフトは、すぐに保存液に浸され、品質を保ったまま移植の準備に入ります。この方法は、メスを使わないため縫合の必要がなく、術後の痛みが少なく、回復が早いという利点があります。

採取した跡は、点状の小さな傷になりますが、治癒するとほとんど目立たなくなります。

刈り上げない方法の登場

刈り上げないFUEの外観イメージ(髪型を保ったまま採取)

従来のFUE法では、ドナーを採取する後頭部を広範囲に刈り上げる必要がありました。しかし、女性にとっては術後に髪型が大きく変わってしまうことは大きなデメリットでした。

そこで開発されたのが「刈り上げないFUE法」です。この方法では、採取する部分の髪を一行ずつ短くカットし、その部分からドナーを採取します。

周りの長い髪が採取部を覆い隠すため、術後も髪型を変えることなく、周囲に気づかれずに手術を受けることが可能です。

この技術は、特に社会生活への影響を最小限にしたい女性から高い支持を得ています。

FUE法の概要

項目特徴
採取方法専用パンチで毛包単位にくり抜く
傷跡点状の小さな傷(治癒後は目立ちにくい)
主な利点痛みが少なく、回復が早い。傷跡が目立たない。

FUE法の利点とデメリット

傷跡が目立たないという大きなメリットがある一方で、FUE法にも知っておくべきデメリットやリスクが存在します。両方を理解した上で、自分に合った方法か判断することが大切です。

傷跡が目立ちにくいという大きなメリット

最大の利点は、やはり傷跡です。FUT法のような線状の傷が残らないため、将来的にショートヘアなど、様々なヘアスタイルを楽しむことができます。

術後の痛みや違和感が少ないため、日常生活への復帰もスムーズです。ダウンタイムを短くしたい方や、外科的な手術に抵抗がある方にとって、心理的なハードルが低い方法と言えるでしょう。

知っておきたいデメリットとリスク

FUE法のデメリットとしては、まず費用が高額になる傾向があることです。グラフトを一つひとつ手作業で採取するため、手術に時間がかかり、その分料金も高くなります。

また、一度に大量のグラフトを採取するのには向いていません。広範囲の移植を希望する場合、複数回の手術が必要になる可能性や、FUT法を勧められることもあります。

さらに、医師の技術力によってグラフトの切断率(採取時に毛根を傷つけてしまう割合)が変わり、定着率に影響するリスクもあります。そのため、経験豊富なクリニックを選ぶことが極めて重要です。

FUE法が向いているケース

FUE法は、特定の悩みを持つ方や、ライフスタイルを重視する方に特に適しています。

分け目や生え際へのピンポイントな移植

分け目が透けて見える、生え際の形を整えたいなど、比較的小範囲の薄毛に対して、ピンポイントで密度を高めたい場合にFUE法は非常に有効です。

必要な分だけを正確に採取し、自然な仕上がりを追求することができます。

傷跡を気にされる方へ

何よりも傷跡を残したくない、という方にはFUE法が第一の選択肢となります。特に、刈り上げない方法を選べば、手術を受けたことを誰にも知られずに、悩みを解決へと導くことが可能です。

カウンセリングで、自分の希望をしっかりと伝え、どの方法が最適か相談しましょう。

FUT(ドナーストリップ法)の特徴と向いているケース

自毛植毛にはいくつかの術式があり、それぞれに特徴があります。FUT(Follicular Unit Transplantation)法は、古くから行われている実績のある方法の一つです。

ここでは、FUT法がどのような手術で、どのような方に適しているのかを、メリットとデメリットを交えながら解説します。

FUT法の手術内容

FUT法は、ドナーとなる毛髪を帯状の皮膚(ストリップ)ごと切除し、それを株分けして移植するという方法です。

メスを使用するため、手術後の傷跡について正しく理解しておくことが重要です。

ドナー採取から移植までの流れ

FUTの手術フロー(ストリップ切除→株分け→植え込み)

まず、局所麻酔の後、後頭部の薄毛が目立ちにくい部分から、必要なグラフト(移植株)数に応じて頭皮を帯状に切除します。切除した部分は、すぐに縫合します。

その後、専門の技術者が顕微鏡を使い、切除した頭皮を一つひとつの毛包単位(グラフト)に丁寧に株分けしていきます。この作業の精度が、髪の定着率や仕上がりの自然さを大きく左右します。

最後に、分け目や生え際など、移植したい部分に小さな穴を開け、株分けしたグラフトを丁寧に植え込んでいきます。

傷跡はどのように残るか

傷跡の比較(FUEの点状痕とFUTの線状瘢痕)

FUT法のデメリットとして最も懸念されるのが、ドナーを採取した部分に残る線状の傷跡です。縫合技術の向上により、傷跡は以前よりも目立たなくなっていますが、完全に消えるわけではありません。

髪を非常に短く刈り上げるようなヘアスタイルにすると、傷跡が見える可能性があります。

しかし、女性の場合、後頭部の髪を伸ばしていることが多いため、周りの髪で隠すことができ、日常生活で傷跡が問題になることはほとんどありません。

FUT法が適している方の特徴

FUT法には、他の術式にはない利点もあります。特に、広範囲の薄毛に悩む方や、費用を考慮したい方にとっては、有力な選択肢となります。

FUT法のメリット・デメリット

項目内容詳細
メリット大量移植が可能一度に多くのグラフトを採取できるため、広範囲の薄毛に対応しやすい。
メリット費用が比較的安いFUE法に比べて、手術時間が短く、料金を抑えられる傾向がある。
デメリット線状の傷跡が残る後頭部に一本の線の傷跡が残るため、髪を短くできない。

広範囲の移植を希望する場合

FUT法は、一度の手術で多くのグラフト(例えば3000グラフト以上)を採取できるのが最大の強みです。頭頂部から前頭部にかけて広範囲に薄毛が進行している場合でも、効率的に移植を行うことができます。

毛根を一つひとつ採取するFUE法に比べて、手術時間が短く済む傾向があり、身体への負担を軽減できるという側面もあります。

FUT法の料金とメンテナンス

手術を受ける上で、費用は重要な判断材料です。FUT法の料金体系と、術後のケアについて解説します。

費用の内訳と相場

自毛植毛の費用は、基本料金に加えて、移植するグラフト数に応じて決まるのが一般的です。FUT法は、FUE法よりもグラフト単価が安い傾向にあり、総額の費用を抑えることが可能です。

例えば、1000グラフトを移植する場合、クリニックによって差はありますが、80万円から150万円程度が目安となります。

正確な料金は、カウンセリングで自分の状態に合わせた見積もりを出してもらう必要があります。

術後のメンテナンスの必要性

移植した髪のメンテナンスは基本的に不要ですが、ドナー部分の傷跡のケアは重要です。術後約1〜2週間で抜糸を行います。

傷跡が落ち着くまでは、激しい運動や頭皮に負担のかかる行為は避ける必要があります。医師の指示に従い、適切なケアを行うことで、傷跡をより目立たなくすることができます。

ロボット植毛による精密な移植プロセス

自毛植毛の技術は日々進化しており、その中でも注目されているのが植毛ロボット「ARTAS(アルタス)」を用いた手術です。

人の手による作業とロボットの精密さを組み合わせることで、より質の高い移植を目指します。

ここでは、ロボット植毛がどのようなもので、どのようなメリットがあるのかを解説します。

ARTAS(アルタス)植毛とは

ARTASは、FUE法におけるグラフト採取の工程を自動で行うために開発された医療用ロボットです。医師の監督のもと、ロボットアームが精密な動きでグラフトを採取します。

ARTASロボット植毛の概念図(カメラ解析とロボットアーム採取)

ロボットによるグラフト採取の精度

ARTASは、搭載された高解像度カメラと画像認識技術を用いて、頭皮の状態をリアルタイムで立体的に解析します。

そして、移植に適した健康な毛髪を一本一本見つけ出し、それぞれの毛髪の角度や向きを正確に計算しながら、最適な深さでパンチを打ち込みます。

これにより、毛根を傷つけるリスク(切断率)を最小限に抑え、質の高いグラフトを安定して採取することが可能になります。

人の手では長時間集中力を維持するのが難しい作業も、ロボットは疲れを知らずに高い精度を保ち続けます。

医師の役割とロボットの協業

ロボット植毛といっても、全てをロボット任せにするわけではありません。最終的な採取範囲の決定や、移植のデザイン、そして採取したグラフトを植え込む作業は、経験豊富な医師の手によって行われます。

特に、自然な仕上がりを左右する植え込み作業は、毛の流れや密度を考慮した芸術的なセンスが求められるため、医師の技術が不可欠です。

ロボットは「質の高いグラフトを効率的に採取する」という役割に特化し、医師は「美しいデザインを実現する」という創造的な役割を担う、まさに協業と言えるでしょう。

ロボット植毛のメリット

ロボット植毛を選択することには、患者さんにとっていくつかの明確なメリットがあります。

ロボット植毛と手作業によるFUEの比較

項目ロボット植毛(ARTAS)手作業によるFUE
グラフトの品質均一で切断率が低い術者の技術や疲労度に左右される
採取スピード高速で安定している術者により異なり、長時間では低下する可能性
客観性データに基づき最適なドナーを選択術者の経験と判断に依存する

高いグラフト品質と定着率への期待

ロボットによる精密な採取は、健康で損傷の少ないグラフトを確保することにつながります。質の高いグラフトは、移植後の頭皮にしっかりと根付きやすく、高い定着率が期待できます。

最終的な効果を最大限に引き出す上で、この点は非常に大きなメリットです。

身体的負担の軽減

手作業によるFUE法では、長時間うつ伏せの状態でいる必要がありますが、ARTASは座位(座った状態)で施術を受けることができます。

これにより、患者さんの身体的な負担が大幅に軽減されます。手術時間の短縮にもつながり、より快適に手術を受けることが可能です。

ロボット植毛の費用と注意点

多くのメリットがある一方で、費用面や導入状況には注意が必要です。

料金体系と考慮すべき点

ロボット植毛は、高度な機器を使用するため、手作業のFUE法よりも費用が高額になるのが一般的です。

料金体系はクリニックによって異なりますが、ARTASの使用料が基本料金に含まれていたり、グラフト単価が高めに設定されていたりします。

カウンセリングの際には、費用の内訳をしっかりと確認し、その価値が自分の希望に見合うものか検討することが重要です。

導入クリニックが限られるという現状

ARTASは非常に高価な医療機器であるため、導入しているクリニックはまだ限られています。

ロボット植毛を希望する場合は、まずお住まいの地域や通院可能な範囲で、対応しているクリニックを探す必要があります。

また、ロボットを操作する医師の経験も重要になるため、クリニックの実績などを事前に調べておくと良いでしょう。

施術後の経過と日常生活への影響

自毛植毛の手術が無事に終わっても、それで終わりではありません。移植した髪がしっかりと定着し、理想の仕上がりになるまでには、一定の時間と適切なケアが必要です。

ここでは、手術を受けてから髪が生え揃うまでの一般的な経過と、日常生活で気をつけるべき点について詳しく解説します。

術後から定着までのタイムライン

手術直後から、頭皮の状態は日々変化していきます。焦らず、適切な段階を踏んで回復していくことを理解しておきましょう。

術後1週間の過ごし方

手術当日から翌日にかけては、移植部とドナー部に軽い痛みや腫れが出ることがあります。処方された痛み止めを服用して対応します。

移植部は非常にデリケートな状態なので、触ったり、こすったりしないように細心の注意が必要です。就寝時も、移植部が枕に直接当たらないよう、首の下にタオルを丸めて入れるなどの工夫をします。

クリニックによっては、翌日に洗髪サービスを行ってくれるところもあります。

術後の経過目安

自毛植毛の術後経過タイムライン(0〜12か月の目安)
期間状態主な注意点
術後1週間移植部にかさぶたができる。腫れや痛み。移植部に触れない。洗髪は優しく。
2週〜1ヶ月後移植毛の一時的な脱毛が始まる(ショックロス)。自然な現象なので心配しない。
3〜4ヶ月後新しい髪が生え始める。まだ産毛のような細い毛。
半年〜1年後髪が伸びて太くなり、効果を実感。自然な仕上がりに近づく。

1ヶ月後、3ヶ月後、半年後の経過

術後2週間から1ヶ月ほど経つと、移植した髪の多くが一度抜け落ちます。これは「ショックロス」と呼ばれる正常な反応で、毛根は頭皮の中にしっかり残っているので心配はいりません。

3〜4ヶ月目になると、その毛根から新しい髪が産毛のように生え始めます。最初は細く頼りない感じがしますが、時間とともに徐々に太く、長く成長していきます。

半年も経つと、見た目にも変化が現れ、髪が増えたことを実感できるようになるでしょう。最終的な仕上がりには、個人差はありますが、おおよそ1年から1年半ほどかかります。

日常生活で注意すべきこと

移植した髪の定着を妨げないために、術後の生活にはいくつかの注意点があります。

洗髪や運動の開始時期

洗髪は、クリニックの指示に従いますが、通常は術後1〜3日後から可能です。ただし、最初の1週間は移植部を強くこすらず、指の腹で優しく洗い、ぬるま湯でそっと洗い流すようにします。

激しい運動や飲酒、サウナなどは、血行を促進し、腫れや出血の原因となるため、術後1週間程度は控える必要があります。

デスクワークなどの軽い仕事は、翌日から復帰可能な場合がほとんどです。

日常生活の制限と再開時期の目安

項目再開時期の目安
洗髪(自宅)術後1〜3日後から(優しく)
飲酒術後1週間程度控える
激しい運動術後1〜2週間後から

メンテナンスと頭皮ケア

移植した髪が定着すれば、特別なメンテナンスは必要ありません。しかし、頭皮全体の健康を保つことは、既存の髪を守り、植毛の効果を最大限に活かす上で重要です。

バランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけ、血行を良くする頭皮マッサージなどを取り入れるのも良いでしょう。

また、カラーリングやパーマは、頭皮への刺激となるため、術後少なくとも1ヶ月は控えるようにしてください。

効果を実感するまで

高額な費用をかけるからこそ、いつ効果が出るのか、本当に自然になるのかは最も気になるところです。

自然な仕上がりになるまでの期間

前述の通り、新しい髪が生え揃い、周囲の髪と馴染んで自然な仕上がりになるまでには、約1年かかります。この期間は、焦らず気長に待つ姿勢が大切です。

特に、生え際のラインや分け目の密度など、細かい部分のデザインは、この期間を経て完成します。医師は、1年後を見越して、毛の向きや流れを計算して植え込んでいます。

定着しなかった場合の対応

自毛植毛の定着率は非常に高いですが、100%ではありません。体質や術後の過ごし方によっては、定着率が想定より低くなるリスクもゼロではありません。

多くのクリニックでは、保証制度を設けており、万が一、定着率が著しく低い場合には、再手術などの対応をしてくれることがあります。

カウンセリングの際に、保証の内容や条件についてもしっかりと確認しておくことが、安心して手術を受けるためのポイントです。

自毛植毛のメリットと注意点

自毛植毛のメリットと注意点

自毛植毛は、女性の薄毛の悩みを根本から解決する可能性を秘めた治療法ですが、手術である以上、良い面と注意すべき面の両方を正しく理解することが重要です。

ここでは、自毛植毛がもたらすメリットと、事前に知っておくべき注意点やリスクを整理し、後悔のない選択をするためのポイントを解説します。

自毛植毛がもたらす最大のメリット

他の治療法にはない、自毛植毛ならではの利点は、多くの女性にとって大きな魅力となります。

自分の髪が生え続ける安心感

最大のメリットは、一度定着すれば、その髪が自分自身の髪として半永久的に生え変わり続けることです。薬のように毎日続けたり、ウィッグのように定期的にメンテナンスしたりする必要がありません。

風が吹いても、プールに入っても、自分の髪だから何も気にする必要がないという精神的な解放感は、何物にも代えがたいものでしょう。

自毛植毛の主なメリット

  • 自分の髪なので拒絶反応がない
  • 一度定着すれば半永久的に生え続ける
  • 定期的なメンテナンスが不要
  • 自然な仕上がりで周囲に気づかれにくい
  • ヘアスタイルを自由に楽しめる

自然な仕上がりとデザインの自由度

経験豊富な医師が、髪の生え方や毛の流れを計算して一本一本丁寧に移植するため、非常に自然な仕上がりを実現できます。

生え際のラインを少し下げたり、分け目の密度を濃くしたりと、自分の希望に合わせてデザインを調整できるのも大きな利点です。

まるで昔の自分に戻ったかのような、自然なボリューム感を取り戻すことが期待できます。

事前に理解すべき注意点とリスク

メリットばかりに目を向けるのではなく、デメリットやリスクもしっかりと把握し、納得した上で手術に臨むことが大切です。

費用が高額になる可能性

自毛植毛は自由診療のため、公的医療保険が適用されません。そのため、治療にかかる費用は全額自己負担となり、決して安価ではありません。

移植する本数や術式にもよりますが、100万円以上の費用がかかることも珍しくありません。料金体系を事前にしっかり確認し、無理のない資金計画を立てることが必要です。

自毛植毛の主な注意点

  • 費用が高額(保険適用外)
  • 外科手術に伴うリスク(痛み、腫れ、感染症など)
  • 既存毛が一時的に抜けるショックロスの可能性
  • ドナー(採取する髪)の数には限りがある

施術に伴う身体的リスク

自毛植毛は安全性の高い手術ですが、外科手術である以上、リスクはゼロではありません。術後の痛みや腫れ、内出血、感染症などの可能性があります。

また、麻酔に対するアレルギー反応なども考えられます。これらのリスクを最小限に抑えるためにも、衛生管理が徹底された、信頼できるクリニックを選ぶことが重要です。

持病がある方や服用中の薬がある方は、カウンセリングの際に必ず医師に申告してください。

既存毛への影響(ショックロス)

移植した毛だけでなく、移植部の周辺にある既存の髪の毛が、手術の刺激によって一時的に抜け落ちることがあります。

これも「ショックロス」の一種で、多くは数ヶ月で回復しますが、精神的な負担に感じる方もいます。特に、びまん性脱毛症のように全体的に髪が弱っている場合に起こりやすいとされています。

このリスクについても、事前に医師から十分な説明を受けることが大切です。

成功への鍵を握るカウンセリング

自毛植毛で満足のいく結果を得るためには、技術力はもちろんのこと、自分自身の希望を正確に理解し、最適なプランを提案してくれるクリニックとの出会いが不可欠です。

クリニック選びの重要性

クリニックを選ぶ際は、単に料金の安さだけで決めるべきではありません。

女性の植毛実績が豊富か、医師の経験は十分か、衛生管理は徹底されているか、アフターフォロー体制は整っているかなど、総合的に判断する必要があります。

複数のクリニックでカウンセリングを受け、比較検討することをお勧めします。

カウンセリングでの確認事項リスト

カテゴリ確認すべき項目ポイント
医師・クリニック女性の症例実績、担当医の経験写真などを見せてもらい、仕上がりのイメージを確認する。
手術内容推奨される術式とその理由、デザイン案なぜその術式なのか、メリット・デメリットを詳しく聞く。
費用・保証総額の見積もり、保証制度の有無と内容追加料金が発生しないか、保証の適用条件を確認する。

カウンセリングで確認すべき項目

カウンセリングは、医師に自分の悩みや希望を伝えるだけでなく、疑問や不安を解消する絶好の機会です。

自分は植毛の適用か、どの術式が向いているか、何本くらいの移植が必要か、そして総額の費用はいくらか。さらに、術後の経過や考えられるリスク、保証制度の有無まで、納得できるまで質問しましょう。

親身になって丁寧に説明してくれる医師であれば、安心して手術を任せることができるでしょう。

よくある質問

自毛植毛を検討する際に、多くの方が抱く疑問にお答えします。ここに記載のない疑問や不安は、ぜひクリニックのカウンセリングで直接医師に質問してみてください。

Q
びまん性脱毛症でも植毛できますか?
A

可能です。ただし、条件があります。女性に多いびまん性脱毛症は、頭部全体の髪が薄くなるため、ドナーとなる後頭部の髪の状態が重要になります。

後頭部に十分な量の健康な髪が残っていれば、分け目や生え際など、特に気になる部分の密度を高める目的で植毛を行うことは有効です。

しかし、脱毛が全体的に進行し、ドナーが十分に確保できない場合は、適用が難しいと判断されることもあります。最終的な判断は、医師による頭皮全体の診察が必要です。

Q
植毛した髪は本当に抜けないのですか?
A

移植した髪は、元の場所(後頭部など)の「薄毛になりにくい」という性質を保ったまま生着します。そのため、AGA(男性型脱毛症)の影響を受けにくく、半永久的に生え変わり続けます。

ただし、移植した髪も通常のヘアサイクル(成長期・退行期・休止期)を繰り返すため、自然な抜け毛は起こります。

また、加齢によって髪全体が細くなるなどの変化は、移植した髪にも同様に起こり得ます。

Q
傷跡はどのくらい目立ちますか?
A

術式によって異なります。メスを使うFUT法では、後頭部に一本の線状の傷跡が残ります。髪を伸ばしていれば隠れるため、女性で問題になることは稀です。

一方、メスを使わないFUE法では、点状の小さな傷跡が分散して残ります。これは治癒するとさらに目立たなくなり、髪が短くてもほとんどわかりません。

特に傷跡を気にされる方にはFUE法が推奨されます。

Q
費用は総額でいくらくらいかかりますか?
A

費用は、移植する本数(グラフト数)、術式、クリニックによって大きく変動します。

例えば、生え際や分け目に500グラフトを移植する場合、FUE法で80万円~120万円程度、FUT法で60万円~100万円程度が一つの目安ですが、これはあくまで参考です。

基本施術料や血液検査代、薬代などが別途必要な場合もあります。必ずカウンセリングで総額の見積もりを確認してください。

植毛の費用に影響する要因

要因内容
移植本数(グラフト数)本数が多いほど高額になる。
術式(FUT/FUE/ロボット)一般的に FUT < FUE < ロボット の順で高額になる傾向。
クリニックの方針基本料金やグラフト単価の設定が異なる。
Q
術後の痛みはありますか?
A

手術中は局所麻酔を使用するため、痛みを感じることはほとんどありません。

術後、麻酔が切れると、移植部とドナー部にジンジンとした痛みや突っ張り感が出ることがありますが、処方される痛み止めでコントロールできる程度です。

痛みは通常2〜3日で落ち着きます。FUE法の方がFUT法よりも術後の痛みが軽い傾向にあります。

Q
刈り上げないで手術は可能ですか?
A

はい、可能です。「刈り上げないFUE法(ノンシェーブンFUE)」という方法を選択すれば、後頭部の髪を刈り上げることなく手術を受けられます。

この方法は、術後の見た目の変化がほとんどないため、お仕事などで髪型を変えられない女性に大変人気があります。

ただし、通常のFUE法よりも手間がかかるため、費用が高くなる、一度に採取できる本数が限られるなどの制約がある場合もあります。

対応しているクリニックも限られるため、希望する場合は事前に確認が必要です。

他の選択肢も検討したい方へ

自毛植毛は根本的な治療法として非常に魅力的ですが、外科的な手術であることや費用の面で、すぐに決断するのは難しいと感じる方もいらっしゃるでしょう。

薄毛の悩みを解決する方法は一つではありません。手術以外の方法として、手軽に見た目を大きく変えることができる「ウィッグ」や、今ある髪に結びつけてボリュームアップする「増毛」も有効な選択肢です。

それぞれの方法のメリット・デメリットを比較し、ご自身のライフスタイルや価値観に最も合った方法を見つけることが大切です。

以上

参考文献