女性の髪のボリュームが減ったり地肌が透けたりしてきたと感じたら、「薄毛」のサインかもしれません。
女性の薄毛には年代や原因により様々なタイプがあり、それぞれ症状の現れ方や必要な検査、自分でできるセルフチェック方法が異なります。
本記事では、びまん性脱毛症から女性型脱毛症(FAGA)、牽引性脱毛症、円形脱毛症、産後の抜け毛、休止期脱毛症、栄養不足による脱毛、甲状腺疾患による脱毛、更年期による脱毛まで、9種類の女性の薄毛について症状・検査・セルフチェックのポイントを丁寧に解説します。
薄毛に悩む女性がご自身の状態を把握し、適切な対策や受診につなげられるようサポートいたします。

びまん性脱毛症の症状、検査およびセルフチェック方法
びまん性脱毛症の症状の特徴
びまん性脱毛症とは、頭髪全体が均一に薄くなる脱毛症です。「びまん」とは「広がりはびこる」という意味で、その名の通り頭頂部から後頭部まで髪のボリュームが全体的に減少し、地肌が透けて見えるのが特徴です。
30代後半から40代前半の女性に発症するケースが多く、髪全体のコシがなくなりボリュームダウンするため、「最近髪が細くなって地肌が見えやすい」と感じたら要注意です。

抜け毛自体は極端に一箇所に集中せず、シャンプー後やブラッシング時に抜ける髪の毛が増えた程度ですが、髪一本一本が細く弱々しくなっていきます。
びまん性脱毛症の検査方法
医療機関での検査は以下の通りです。
- 視診・触診:髪の密度、髪質、頭皮の状態を確認。
- マイクロスコープ検査:毛髪の太さや毛穴の観察。
- 血液検査:貧血、甲状腺、女性ホルモンの値を確認。
- 生活習慣の問診:ストレス、ダイエット、出産歴などを確認。
びまん性脱毛症のセルフチェック方法
髪の状態を把握するために自分でできるチェック法をご紹介します。
毛髪牽引テストの判定目安
抜けた毛の本数 | 判定 |
---|---|
0~2本 | 正常 |
4本以上 | 陽性(びまん性脱毛症の可能性) |
- 髪全体のハリやコシがなくなり、ボリュームダウンした
- シャンプー後の排水口に溜まる抜け毛が増えた
- ポニーテールの太さが以前より明らかに細くなった
- 牽引テストで毎回4本以上抜ける

女性型脱毛症(FAGA)の症状、検査およびセルフチェック方法
FAGAの症状の特徴
女性型脱毛症(FAGA)は、主に頭頂部から分け目を中心に髪が薄くなる脱毛症で、進行すると分け目が広がり地肌が目立つようになります。

以下のような特徴があります。
- 頭頂部中心に症状が出る
- 前髪の生え際は保たれる
- 髪が細くなり、ボリュームがなくなる
- 更年期前後の女性に多い
FAGAの検査方法
検査内容は以下の通りです。
検査項目 | 内容 |
---|---|
問診 | 発症時期、抜け毛の場所、家族歴、月経周期など |
視診・触診 | 分け目や頭頂部の毛の細さ・量を観察 |
マイクロスコープ | 毛髪の太さや密度をチェックし、軟毛の割合を確認 |
血液検査 | 男性ホルモン、女性ホルモン、甲状腺機能、鉄欠乏の有無などを調べる |

FAGAのセルフチェック方法
以下に心当たりがあればFAGAが疑われます。
- 抜け毛が増えた
- 抜けた毛が細く短い
- 分け目の地肌が透けるようになった
- 髪のボリュームがなくなった
- 家族に薄毛の人がいる
- 睡眠や栄養、ストレスなどの不調を感じる
FAGAの自己チェック項目(一部)
項目番号 | 内容 |
---|---|
1 | 抜け毛が以前より増えた |
2 | 抜けた毛に細い・短い毛が増えた |
3 | 頭頂部の髪が柔らかくコシがなくなってきた |
4 | 分け目が広がってきた |
5 | 睡眠不足や栄養の偏り、ストレスを感じている |
牽引性脱毛症の症状、検査およびセルフチェック方法
牽引性脱毛症の症状の特徴
牽引性脱毛症は、長期間にわたって髪を強く引っ張ることで毛根がダメージを受けて起こる脱毛です。

以下のような特徴があります。
- 髪型や分け目に沿った部位が集中的に薄くなる
- 生え際やこめかみ、分け目が後退する
- 髪をきつく結ぶ習慣がある女性に多い
- 初期は自覚しにくいが、進行すると毛が細くなり地肌が透ける
牽引性脱毛症の検査方法
医師が行う代表的な検査は以下の通りです。
- 問診:長期間同じ髪型や分け目をしていなかったか
- 視診:分け目・生え際の毛の細さ、産毛の有無、頭皮の赤みなど
- 抜け毛の毛根チェック:牽引による抜け毛には白い付着物や細長い毛根がある
- 毛穴や血行の確認:毛穴が消失していないか、血流不全が起きていないかを確認

牽引性脱毛症のセルフチェック方法
ご自身でも以下の点をチェックしてみてください。
- 抜け毛の毛根に白い膜(毛包鞘)が付着しているか
- 毛根の先端が細長く変形していないか
- 同じ分け目・髪型を長年続けていないか
- 生え際のラインが昔より後退していないか
抜け毛の毛根チェック表
毛根の状態 | 判定内容 |
---|---|
丸く太く、付着物なし | 自然な抜け毛 |
白く細長い付着物、尖った毛根 | 牽引による抜け毛(毛包ごと引き抜かれている可能性) |
以下の髪型習慣がある方は特に注意が必要です。
- 毎日ポニーテールやお団子をきつく結んでいる
- エクステをつけて長期間過ごしている
- ヘアアイロンを強く引っ張るように使っている
- 分け目を何年も変えていない
円形脱毛症の症状、検査およびセルフチェック方法
円形脱毛症の症状の特徴
円形脱毛症は、ある日突然円形に髪が抜ける自己免疫性の脱毛症です。

- 脱毛部分は10円玉大の円形〜楕円形で境界がはっきりしている
- 周囲の髪は普通に生えていて、急激に抜ける
- 痛みやかゆみは通常なし
- 重症例では複数の脱毛斑が融合する場合もある
円形脱毛症の検査方法
皮膚科で行われる検査には次のようなものがあります。
- 視診:脱毛斑の形状、びまん性でないかを確認
- 抜毛テスト:脱毛斑の周囲の毛を軽く引いて抜けやすいか調べる
- 感嘆符毛の確認:根元が細く先端が太い特殊な抜け毛を確認
- 血液検査:甲状腺異常や自己免疫疾患の有無を確認
円形脱毛症のセルフチェック方法
下記の点が確認できる場合、円形脱毛症の可能性があります。
- 突然、円形の脱毛斑ができている
- 朝起きたら髪がまとまって抜けていた
- 爪に小さな凹凸ができている(点状陥凹)
- 抜け毛の根元が細く尖った「びっくり毛」がある
円形脱毛症セルフチェック表
チェック項目 | 円形脱毛症の可能性 |
---|---|
円形に抜けた部分がある | 高い |
抜け毛が急に増えた | 高い |
爪に点状の凹凸がある | やや高い |
感嘆符毛(根元が細い毛)が抜ける | 高い |
かゆみやフケを伴う | 低い(他疾患の可能性) |
産後の抜け毛(分娩後脱毛症)の症状、検査およびセルフチェック方法
産後の抜け毛の症状の特徴
出産を終えた女性に見られる自然な一過性の脱毛です。

- 産後2~3か月頃から抜け毛が増加し、4~6か月でピークに
- 抜け毛は全体的に広がり、前髪・こめかみの地肌が透ける
- 通常は産後6〜12か月で自然回復
- 生え際に短い新生毛が生えてくるのが回復のサイン

産後の抜け毛の検査方法
通常は検査不要ですが、1年経っても回復しない場合は以下を検討します。
- 甲状腺機能検査:産後甲状腺炎の除外(TSH、FT4など)
- ホルモン検査:エストロゲン、FSHなど
- 貧血検査:産後は鉄不足になりやすいため
産後の抜け毛のセルフチェック方法
- 抜け毛が産後2~3か月頃から始まったか
- 抜ける毛は太くて長いものが中心か
- 地肌がまんべんなく透けるようになっていないか
- 生え際に短い毛(アホ毛)が目立ってきているか
産後脱毛の時期と抜け毛の変化
産後の時期 | 抜け毛の傾向 |
---|---|
〜3か月 | 抜け毛が増え始める |
4〜6か月 | 抜け毛ピーク、髪のボリュームダウンが目立つ |
7〜12か月 | 抜け毛が減少、新しい髪が生え始める |
休止期脱毛症(テロゲン・エフルビウム)の症状、検査およびセルフチェック方法
休止期脱毛症の症状の特徴
休止期脱毛症とは、髪が成長期から一斉に休止期に移行することで一時的に大量に抜ける脱毛症です。

- 強いストレス、高熱の病気、手術、出産、急激なダイエットなどが原因
- 原因となる出来事の1~3か月後に抜け毛が増える
- 髪全体が薄くなり、ボリュームダウンする
- 通常は数か月で自然に回復する
休止期脱毛症の検査方法
特別な検査は不要なことが多いですが、次のような診断が行われます。
- 問診:数か月前の体調・生活変化を確認
- 血液検査:鉄・亜鉛・甲状腺ホルモンなどを調べて他疾患を除外
- 毛根観察:クラブヘア(退縮した毛根)が多ければ休止期の割合が高い
休止期脱毛症のセルフチェック方法
下記に当てはまるかを振り返ってみましょう。
- 2〜3か月前に大きな病気や手術、高熱があった
- 過度なダイエットをしていた
- 抜け毛が急増し、1日100本以上抜けている
- 抜け毛が細くなく、太くて成熟した毛が中心
- 生活習慣を整えた後に徐々に抜け毛が減ってきた
主な原因と抜け毛の時期
誘因 | 抜け毛のピーク時期 |
---|---|
高熱・感染症 | 回復後2〜3か月後 |
出産 | 出産後2〜4か月頃 |
過度なダイエット | 食事制限開始から1〜2か月後 |
強いストレス | ストレスを受けた1〜3か月後 |
栄養不足による脱毛の症状、検査およびセルフチェック方法
栄養不足による脱毛の症状の特徴
無理な食事制限や偏食が続くと、髪の材料である栄養素が不足し、抜け毛が起こります。

- 髪が細くなり、全体のボリュームが減る
- 切れ毛やパサつき、枝毛が増える
- 爪が割れやすく、肌も荒れやすい
- 鉄・亜鉛・タンパク質・ビタミンB群の不足が主な原因
栄養不足による脱毛の検査方法
- 血液検査:血清フェリチン、血清鉄、亜鉛、アルブミンなどを確認
- 問診:食事内容、サプリメント摂取状況、体重変動、月経状況などを確認
- 髪や肌の視診:髪質の変化や肌・爪の状態を観察
栄養不足による脱毛のセルフチェック方法
- 短期間に体重が大幅に減少していないか
- 肉や魚、大豆食品を避けていないか
- 鉄分を含む食品を意識して摂っているか
- 疲れやすさや立ちくらみが続いていないか
- 爪が割れたり、肌が乾燥していないか
不足栄養素と髪への影響
栄養素 | 髪への影響 | 含まれる食品 |
---|---|---|
タンパク質 | 髪の主成分。不足すると細く弱い毛になる | 肉、魚、大豆、卵、乳製品 |
鉄分 | 毛根への酸素供給が減り、抜け毛が増える | 赤身肉、レバー、ほうれん草、貝類 |
亜鉛 | 毛髪合成に必要。不足で抜け毛・薄毛につながる | 牡蠣、牛肉、ナッツ、玄米 |
ビタミンB群 | 毛母細胞の代謝に関与。不足で成長期が短くなる | 豚肉、レバー、卵黄、緑黄色野菜 |
甲状腺疾患による脱毛の症状、検査およびセルフチェック方法
甲状腺疾患による脱毛の症状の特徴
甲状腺ホルモンの異常が髪の代謝に影響を及ぼします。

- 低下症(橋本病):髪が乾燥し、抜け毛が増える。眉毛の外側が薄くなる
- 亢進症(バセドウ病):髪が柔らかく細くなり、全体にボリュームダウン
- 全身症状(倦怠感、寒がり・暑がり、体重変動など)を伴うことが多い
甲状腺疾患による検査方法
- 血液検査:TSH、T3、T4、甲状腺自己抗体などを測定
- 問診:全身症状(動悸、冷え、むくみ、体重増減など)を確認
- 視診:眉毛の欠落、喉元の腫れ、脈拍などの身体所見をチェック
甲状腺疾患による脱毛のセルフチェック方法
- 以前より疲れやすくなり、体重が急に増減していないか
- 髪が乾燥しゴワゴワしていないか、または細くなっていないか
- 眉毛の外側1/3が薄くなっていないか
- 首の前面が腫れていないか(水を飲んだときに動くふくらみ)
- 頭髪以外の体毛(脇毛、腕毛など)が減っていないか
甲状腺タイプ別の髪への影響
甲状腺タイプ | 全身の主な症状 | 髪への影響 |
---|---|---|
機能低下症(橋本病) | 倦怠感、寒がり、むくみ、体重増加 | 髪が乾燥し、抜け毛が増える |
機能亢進症(バセドウ病) | 動悸、手の震え、体重減少、汗かき | 髪が細くなり、全体にボリュームが減る |
更年期による脱毛の症状、検査およびセルフチェック方法
更年期による脱毛の症状の特徴
更年期(45〜55歳前後)における女性ホルモン(エストロゲン)の減少により脱毛が起こります。

- FAGA(女性型脱毛症)と似たパターン
- 分け目や頭頂部の髪が細くなる
- 他の更年期症状(ホットフラッシュ、イライラ、不眠など)を伴う
- 頭皮の乾燥やフケが増えることも
更年期による検査方法
- 問診・年齢確認:閉経前後で月経不順があるか
- 血液検査:エストロゲン、FSH、甲状腺機能などを確認
- 視診・マイクロスコープ:FAGA様の薄毛パターンを確認
更年期による脱毛のセルフチェック方法
- 年齢が45〜55歳で月経が乱れてきている
- ホットフラッシュやイライラなどの更年期症状がある
- 分け目の地肌が目立ちやすくなってきた
- 髪が細く柔らかくなってボリュームが減った
- 頭皮が乾燥したり、フケが目立つようになった
よくある質問(Q&A)

Q:1日に抜け毛が何本あれば異常?
A:1日50〜100本程度なら正常範囲内です。それを大きく超えて抜け続ける場合は薄毛の兆候かもしれません。
Q:抜け毛が気になったら皮膚科?専門クリニック?
A:まずは皮膚科で相談するのがよいでしょう。必要があれば専門クリニックを紹介されることもあります。
Q:シャンプーや育毛剤で改善できますか?
A:軽度な場合は補助的に効果が期待できますが、進行した薄毛には医療的アプローチが必要なこともあります。
Q:女性はAGA治療薬(フィナステリドなど)を使えますか?
A:基本的に使用できません。妊娠中や妊娠可能性がある女性には禁忌とされています。
Q:円形脱毛症は放っておいても治りますか?
A:軽症であれば自然回復することもありますが、悪化や再発のリスクがあるため皮膚科での治療が推奨されます。
Q:日常生活での予防方法は?
A:栄養バランスの良い食事、十分な睡眠、ストレスの管理、適切なヘアケアが大切です。
次に知ってほしいこと(薄毛の原因)
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