近年、シャンプーを使わずにお湯だけで髪を洗う「湯シャン」が注目を集めています。

頭皮への負担が少ない、髪本来の美しさを引き出すといった声も聞かれますが、一方で「本当に汚れが落ちるのか」「薄毛にはどう影響するのか」といった疑問や不安を持つ方も少なくありません。

この記事では、湯シャンと女性の薄毛の関係性について、医学的な観点も交えながら詳しく解説し、ご自身に合った正しい洗髪方法を見つけるための情報を提供します。

目次

近年注目される「湯シャン」とは?その基本を知る

ここでは、まず「湯シャン」がどのような洗髪方法なのか、基本的な知識から解説します。なぜ注目されているのか、その背景や考え方についても触れていきます。

湯シャンの定義

湯シャンとは、文字通りシャンプーやリンス、コンディショナーといった洗浄剤やヘアケア剤を一切使用せず、お湯のみで頭皮と髪の毛を洗い流す洗髪方法のことです。

古くから実践されていた方法ですが、近年、有名人や美容に関心が高い層が実践していることから、改めて注目されるようになりました。

「ノー・プー(No Poo)」と呼ばれることもあり、シャンプーによる頭皮への刺激や、必要な皮脂まで洗い流してしまうことへの懸念から、より自然なヘアケア方法として関心が高まっています。

湯シャンが注目される背景

湯シャンが注目される背景には、いくつかの要因があり、一つは、シャンプーに含まれる合成界面活性剤などの化学物質が、頭皮や髪にダメージを与える可能性があるという考え方です。

洗浄力が強すぎると、頭皮を守るために必要な皮脂まで取り除いてしまい、乾燥やかゆみ、フケなどのトラブルを起こすことがあります。また、すすぎ残しが毛穴詰まりの原因となることも懸念されます。

もう一つは、過剰な皮脂分泌を抑える効果への期待で、シャンプーで皮脂を取りすぎると、体は失われた皮脂を補おうとして、かえって皮脂分泌を活発にしてしまうことが難点です。

湯シャンによって皮脂の過剰な洗浄を避けることで、皮脂バランスが整い、頭皮環境が改善されます。

湯シャンの基本的な考え方

湯シャンの基本的な考え方は、人間の頭皮が本来持っている皮脂の自己調節機能を活かすことにあります。

頭皮から分泌される皮脂は、頭皮や髪を乾燥や外部刺激から守る天然の保護膜としての役割を果たしています。

シャンプーで毎日この皮脂を完全に洗い流してしまうと、頭皮は常に皮脂不足の状態になり、それを補おうと過剰に皮脂を分泌する悪循環に陥ることがあります。

お湯だけでも、汗やホコリ、古くなった皮脂など、日常生活で付着する汚れの多くは洗い流せるとされており、適度な皮脂を残すことで、頭皮のバリア機能や髪の潤いを保つことが目標です。

湯シャンとお湯の温度の関係

温度帯特徴頭皮への影響
38℃〜40℃程度皮脂を適度に残しながら汚れを落としやすい温度頭皮への刺激が少なく、乾燥しにくい
41℃以上皮脂を落とす力は高いが、刺激も強い頭皮の乾燥を招きやすく、必要な皮脂まで落とす可能性
37℃以下皮脂が固まってしまい、汚れが落ちにくい毛穴詰まりの原因になる可能性

シャンプーの役割との違い

シャンプーの主な役割は、強力な洗浄成分(主に界面活性剤)によって、皮脂や整髪料などの油性の汚れを効率的に洗い流すことです。

湯シャンはお湯の力だけで汚れを落とすため、シャンプーほどの強い洗浄力はありません。特に、ワックスやヘアオイルなどの油性の整髪料は落としにくい場合があります。

湯シャンは、頭皮の自浄作用を尊重し、過剰な洗浄を避けることに主眼を置いたケア方法であり、シャンプーとは目的やメカニズムが異なります。

湯シャンが薄毛に与える影響

ここでは、湯シャンが女性の薄毛に対してどのような影響を与える可能性があるのか、考えられるメリットとデメリットの両面から詳しく見ていきます。

考えられるメリット

湯シャンには、頭皮環境を改善する可能性が期待されるいくつかのメリットがあります。

皮脂バランスの正常化

シャンプーによる皮脂の取りすぎを防ぐことで、頭皮の過剰な皮脂分泌が抑えられ、皮脂バランスが整う可能性があり、適切な皮脂量は頭皮のバリア機能を維持し、外部刺激から守るために必要です。

頭皮への刺激軽減

シャンプーに含まれる合成界面活性剤や香料、防腐剤などが、人によっては頭皮への刺激となることがあります。

特に敏感肌の方や、頭皮に炎症がある場合、シャンプーの使用を控えることで、刺激によるかゆみや赤み、炎症などが軽減される可能性があります。

乾燥の防止

洗浄力の強いシャンプーは、頭皮の潤いを保つために必要な皮脂まで洗い流してしまい、乾燥を招くことがあり、頭皮の乾燥は、フケやかゆみの原因となるだけでなく、バリア機能の低下にもつながります。

湯シャンは皮脂を適度に残すため、頭皮の乾燥を防ぎ、潤いを保つ効果が期待できます。

考えられるデメリット:薄毛悪化のリスク

一方で、湯シャンには薄毛を悪化させる可能性のあるデメリットもあります。

皮脂汚れや角質の蓄積

お湯だけでは、シャンプーのように皮脂汚れや古い角質を完全に洗い流すことは難しい場合があります。

皮脂分泌が多い方や、汗をかきやすい環境にいる方は、落としきれなかった皮脂や汚れが毛穴に詰まり、酸化してしまう可能性があります。

酸化した皮脂は頭皮に刺激を与え、炎症を起こしたり、毛穴を塞いで髪の成長を妨げたりする原因となり、薄毛を悪化させることがリスクです。

雑菌の繁殖と臭い

皮脂や汚れが十分に洗い流されずに頭皮に残ると、それを栄養源として雑菌が繁殖しやすくなり、雑菌の繁殖は、頭皮の炎症、かゆみ、フケ、そして不快な臭いなどの原因です。

整髪料などの洗い残し

ワックス、スプレー、ヘアオイルなどの油性の整髪料を使用している場合、お湯だけでは十分に洗い流せないことがあります。

整髪料が頭皮や髪に残ったままだと、毛穴詰まりや頭皮トラブルの原因となり、髪の健康を損なう可能性があります。

湯シャンが薄毛に与える影響

側面具体的な内容薄毛への影響(可能性)
メリット皮脂バランスの正常化、頭皮への刺激軽減、乾燥の防止頭皮環境改善による抜け毛抑制の可能性
デメリット皮脂・角質の蓄積、雑菌の繁殖・臭い、整髪料の洗い残し頭皮環境悪化による薄毛進行のリスク

湯シャンが向いている人・向いていない人の特徴

湯シャンは誰にでも合う洗髪方法ではありません。頭皮や髪の状態、ライフスタイルによって、湯シャンの効果を感じやすい人と、逆にトラブルを招きやすい人がいます。

湯シャンが合いやすい人

以下のような特徴を持つ方は、湯シャンを試してみる価値があるかもしれません。

  • 頭皮が乾燥しやすい人、敏感肌の人

    シャンプーの洗浄成分や添加物が刺激になりやすい方、または皮脂を取りすぎることで乾燥やかゆみを感じやすい方は、湯シャンによって頭皮への負担を減らし、トラブルが改善される可能性があります。
  • 皮脂分泌が比較的少ない人

    もともと皮脂の分泌量が少ない方は、お湯だけでも汚れが落ちやすく、皮脂の洗いすぎによる乾燥も起こりにくいため、湯シャンに適している場合があります。
  • 整髪料をあまり使わない人

    ワックスやオイルなどの油性整髪料を使用しない、またはほとんど使用しない方は、お湯だけでも比較的髪や頭皮を清潔に保ちやすいです。
  • 頭皮トラブルが少ない健康な状態の人

    現在、特に頭皮に大きなトラブル(炎症、大量のフケ、強いかゆみなど)がなく、健康な状態であれば、湯シャンへの移行もスムーズに進む可能性があります。

湯シャン移行の際のポイント

  • 最初から毎日湯シャンにするのではなく、週に数日から始める。
  • シャンプーの日と湯シャンの日を交互にする。
  • 頭皮の状態をよく観察し、異常があればすぐに中止する。
  • 湯シャン前にはブラッシングで髪の汚れを浮かせる。

湯シャンが合いにくい・注意が必要な人

以下のような特徴を持つ方は、湯シャンを行うことで頭皮トラブルが悪化したり、薄毛が進行したりするリスクがあるため、注意が必要です。

  • 皮脂分泌が多い人(脂性肌の人)

    皮脂分泌が活発な方は、お湯だけでは皮脂を十分に洗い流せず、毛穴詰まりやベタつき、臭いの原因となりやすいです。酸化した皮脂が頭皮に残り、炎症や抜け毛につながる可能性があります。
  • 汗をかきやすい人、スポーツをする人

    汗を多くかくと、皮脂や汚れと混ざり合い、頭皮に残りやすくなります。お湯だけではこれらの汚れを十分に落とせず、雑菌が繁殖しやすい環境を作ってしまう可能性があります。
  • 整髪料(特に油性)を日常的に使う人

    ワックス、ヘアオイル、シリコン配合のスプレーなどを頻繁に使用する場合、お湯だけでは完全に落としきれず、頭皮や髪に蓄積してトラブルの原因となることがあります。
  • 脂漏性皮膚炎などの頭皮疾患がある人

    脂漏性皮膚炎など、特定の頭皮疾患がある場合、自己判断で湯シャンを行うのは危険です。

    皮脂やマラセチア菌(真菌の一種)のコントロールが必要な場合が多く、シャンプーによる適切な洗浄が求められます。必ず医師に相談してください。
  • 薄毛が進行している、または抜け毛が多い人

    すでに薄毛が気になっている場合、不適切な湯シャンによって頭皮環境が悪化すると、さらに薄毛が進行するリスクがあります。原因を特定し、適切なケアを行うことが先決です。

湯シャンが向いているかどうかの判断基準

特徴湯シャンが向いている可能性湯シャンが向いていない・注意が必要な可能性
頭皮タイプ乾燥肌、敏感肌脂性肌
皮脂分泌量少ない多い
発汗量少ない多い(スポーツ習慣など)
整髪料の使用少ない、または不使用多い(特に油性)
現在の頭皮状態健康脂漏性皮膚炎などの疾患あり、薄毛が進行中
ライフスタイル屋内中心屋外活動が多い、衛生環境が気になる場合

女性の薄毛の原因と種類

女性の薄毛は、男性とは異なる原因や特徴を持っていて、湯シャンは頭皮環境を整える一つの方法ですが、薄毛の根本的な原因によっては、湯シャンだけでは改善が難しいケースも少なくありません。

女性に多い薄毛のタイプと原因

女性の薄毛は、特定の部位が後退する男性型脱毛症(AGA)とは異なり、頭部全体の髪が細くなったり、分け目が目立ってきたりする「びまん性脱毛症」が最も一般的です。

しかし、それ以外にも様々な原因で薄毛が起こります。

びまん性脱毛症(FAGA:女性男性型脱毛症)

女性の薄毛で最も多いタイプです。頭頂部を中心に髪の毛が全体的に薄くなり、地肌が透けて見えるようになります。

男性のAGAのように生え際が後退することは少ないですが、髪のボリュームダウンが顕著です。

主な原因としては、加齢、ホルモンバランスの変化(特に女性ホルモンの減少)、遺伝的要因などが考えられています。

休止期脱毛症

ヘアサイクル(毛周期)の乱れによって、成長期にある毛髪が一斉に休止期に入ってしまい、一時的に抜け毛が増加する状態です。

出産後(分娩後脱毛症)、過度なダイエット、大きなストレス、甲状腺機能の異常、特定の薬剤の副作用などが原因でで、原因が解消されれば、多くの場合自然に回復しますが、長引くこともあります。

牽引性脱毛症

ポニーテールやアップスタイルなど、常に髪を強く引っ張るような髪型を続けていることで、毛根に負担がかかり、生え際や分け目部分の髪が薄くなる脱毛症です。髪型を変えることで改善が見込めます。

脂漏性脱毛症

皮脂の過剰分泌によって頭皮に炎症が起こる「脂漏性皮膚炎」が悪化し、抜け毛を引き起こす状態で、頭皮の赤み、かゆみ、ベタついたフケなどが特徴です。

不適切な洗髪、食生活の乱れ、ストレス、ホルモンバランスの乱れなどが原因となります。

円形脱毛症

自己免疫疾患の一つと考えられており、円形または楕円形に髪が突然抜け落ちる脱毛症で、原因は完全には解明されていませんが、ストレスやアトピー素因などが関与していると言われています。

女性の薄毛の主な原因

分類具体的な原因例関連する脱毛症のタイプ例
ホルモンバランスの変化加齢、更年期、妊娠・出産、ピルの服用中止びまん性脱毛症、休止期脱毛症
生活習慣の乱れ過度なダイエット、栄養不足、睡眠不足、喫煙びまん性脱毛症、休止期脱毛症
ストレス精神的・身体的ストレスびまん性脱毛症、休止期脱毛症、円形脱毛症
頭皮環境の悪化不適切なヘアケア、皮脂の過剰分泌、乾燥、血行不良びまん性脱毛症、脂漏性脱毛症
物理的な要因髪を強く引っ張る髪型、紫外線ダメージ牽引性脱毛症、びまん性脱毛症
遺伝的要因家族歴びまん性脱毛症
病気や薬剤の影響甲状腺疾患、膠原病、貧血、特定の薬剤(抗がん剤、抗うつ剤など)の副作用休止期脱毛症、その他

湯シャンと薄毛原因の関係性

湯シャンが効果を発揮しやすいのは、主に「シャンプーによる刺激や乾燥が原因で頭皮環境が悪化している」場合です。

このようなケースでは、湯シャンによって頭皮への負担が減り、皮脂バランスが整うことで、抜け毛が改善する可能性があります。

しかし、女性の薄毛の多くは、ホルモンバランスの変化、加齢、遺伝、ストレス、栄養不足、病気など、より複雑な要因が絡み合っています。

これらの根本的な原因に対して、湯シャンだけでアプローチするには限界があります。

セルフケアの限界と専門医への相談

薄毛の原因は多岐にわたるため、自己判断で「湯シャンが効くはず」と思い込むのは危険です。

もし抜け毛が増えた、髪が細くなった、地肌が目立つようになったと感じたら、まずはご自身の薄毛の原因が何であるかを正確に知ることが重要です。

セルフケアとしての湯シャンは、あくまで頭皮環境を整えるための一つの選択肢であり、万能薬ではありません。

特に、以下のような場合は、早めに皮膚科や女性の薄毛治療を専門とするクリニックを受診することを推奨します。

専門医への相談を推奨するケース

  • 抜け毛が急に増えた、または長期間続いている
  • 髪の毛が明らかに細くなった、ボリュームが減った
  • 地肌の透けが気になる
  • 頭皮にかゆみ、赤み、フケ、湿疹などの異常がある
  • セルフケアを試しても改善が見られない
  • 薄毛の原因が自分では分からない

正しい湯シャンの方法と注意点

もし湯シャンを試してみる場合、やみくもに行うのではなく、正しい方法と注意点を守ることが重要です。不適切なやり方は、かえって頭皮環境を悪化させ、薄毛を招く原因にもなりかねません。

湯シャン前の準備

湯シャンを始める前に、必ず丁寧なブラッシングを行いましょう。

乾いた髪の状態で、毛先から優しくとかし始め、徐々に根元に向かってブラッシングすると、髪についたホコリや軽い汚れ、抜け毛を取り除き、髪の絡まりをほどけます。

また、頭皮の血行を促進し、皮脂や汚れを浮き上がらせる効果もあり、このひと手間で、お湯だけで汚れを落としやすくする効果が期待できます。

ブラッシングのポイント

  • 目の粗いブラシ、できれば天然毛や木製の、先端が丸いものを選ぶ。
  • 力を入れすぎず、頭皮を傷つけないように優しく行う。
  • 髪が絡まっている場合は、無理に引っ張らない。
  • 頭皮全体を心地よく刺激するように、様々な方向からブラッシングする。

正しい湯シャンの手順

  1. お湯の温度設定

    まず、お湯の温度を 38℃ 〜 40℃ 程度のぬるま湯に設定します。熱すぎるお湯は頭皮に必要な皮脂まで奪い、乾燥を招く原因になります。逆に温度が低すぎると、皮脂汚れが十分に落ちません。
  2. 予洗い(すすぎ)

    シャワーヘッドを頭皮に近づけ、ぬるま湯で髪と頭皮全体を 1 〜 2 分程度、時間をかけて丁寧にすすぎます。この予洗いだけで、汗やホコリなどの水溶性の汚れの多くは洗い流せます。
  3. 頭皮のマッサージ洗い

    指の腹を使って、頭皮を優しくマッサージするように洗います。爪を立てると頭皮を傷つけてしまうため、絶対にやめましょう。

    生え際から頭頂部へ、襟足から頭頂部へと、下から上に向かって、頭皮全体をくまなくマッサージします。

    皮脂が多いと感じる部分(Tゾーンや耳の後ろなど)は特に念入りに行います。時間は 3 〜 5 分程度を目安です。
  4. すすぎ

    洗い終わったら、再びシャワーで頭皮と髪全体を 2 〜 3 分程度、時間をかけて十分にすすぎます。洗い残しがあると、かゆみや臭いの原因になるため、すすぎは非常に重要です。

    特に、耳の後ろや襟足などはすすぎ残しやすい部分なので、意識して丁寧に洗い流しましょう。
  5. タオルドライ

    洗い終わったら、清潔なタオルで髪と頭皮の水分を優しく押さえるように拭き取ります。ゴシゴシと強くこすると、髪のキューティクルや頭皮を傷める原因になります。

    タオルで水分を吸収させるイメージで行いましょう。
  6. ドライヤーで乾かす

    タオルドライ後、なるべく早くドライヤーで髪と頭皮を乾かします。濡れたまま放置すると、雑菌が繁殖しやすくなり、臭いやかゆみの原因となります。

    ドライヤーは頭皮から 15 〜 20 cm程度離し、同じ場所に熱風が集中しないように動かしながら、まずは根元から乾かしていきます。

    最後に冷風を当てると、キューティクルが引き締まり、髪にツヤが出やすくなります。

正しい湯シャンの手順

手順ポイント目安時間
1. 準備丁寧なブラッシングで汚れを浮かす1〜2分
2. 温度設定38℃ 〜 40℃ のぬるま湯
3. 予洗いぬるま湯で髪と頭皮全体をしっかりすすぐ1〜2分
4. 洗い指の腹で頭皮を優しくマッサージするように洗う(爪を立てない)3〜5分
5. すすぎ洗い残しがないよう、時間をかけて丁寧にすすぐ2〜3分
6. 乾燥タオルで優しく水分を拭き取り、ドライヤーで根元から乾かす速やかに実施

湯シャンを行う上での注意点

  • 頻度

    毎日行う必要はありません。最初は週に 1 〜 2 回から始め、頭皮の状態を見ながら頻度を調整しましょう。シャンプーと交互に行うのも良い方法です。
  • 整髪料

    ワックスやオイルなどの油性整髪料を使用した日は、湯シャンだけでは落としきれない可能性が高いです。その場合は無理せずシャンプーを使用しましょう。
  • 臭いやベタつき

    湯シャンを続けていて、頭皮の臭いやベタつきが気になる場合は、やり方が間違っているか、湯シャンが合っていない可能性があります。一度シャンプー洗髪に戻すか、頻度を見直しましょう。
  • かゆみやフケ

    かゆみやフケが悪化する場合も、湯シャンが合っていないサインです。無理に続けず、シャンプーを使用するか、専門医に相談しましょう。
  • 移行期間

    長年シャンプーを使用してきた人が湯シャンに切り替えると、一時的に皮脂分泌のバランスが崩れ、ベタつきや臭いが気になることがあります。

    これは体が慣れるまでの移行期間とも言われますが、不快感が強い場合や長引く場合は中止を検討してください。

薄毛が気になる女性へ

セルフケアとして湯シャンや正しいシャンプー方法を試すことは大切ですが、女性の薄毛の原因は複雑であり、自己判断だけでは根本的な解決に至らないケースも少なくありません。

もし薄毛の進行が止まらない、原因が分からない、セルフケアだけでは不安だという場合は、女性の薄毛治療を専門とするクリニックに相談することを検討しましょう。

なぜ専門クリニックへの相談が有効なのか

専門クリニックでは、医師が医学的な知識と経験に基づき、薄毛の原因を正確に診断し、自己判断では気づかなかった病気や、ホルモンバランスの乱れなどが原因である可能性もあります。

原因を特定することが、適切な対策への第一歩です。

専門クリニックで受けられること

  • 詳細な問診: 生活習慣、食生活、既往歴、家族歴、ストレス状況などを詳しくヒアリングします。
  • 視診・触診: 頭皮の状態、毛髪の密度や太さ、抜け毛のパターンなどを直接確認します。
  • マイクロスコープ検査: 頭皮や毛穴の状態、毛髪の太さなどを拡大して詳細に観察します。
  • 血液検査: ホルモンバランス、甲状腺機能、栄養状態(鉄分、亜鉛など)などを調べ、全身的な原因を探ります。
  • 原因の診断: これらの検査結果を総合的に判断し、薄毛の根本原因を特定します。
  • 治療法の提案: 診断結果に基づき、内服薬、外用薬、注入療法、サプリメント、生活習慣指導など、個々の状態に合わせた治療計画を提案します。

クリニックでの主な薄毛治療法(女性向け)

女性の薄毛治療は、男性のAGA治療とは異なるアプローチが必要です。クリニックでは、原因や症状に合わせて以下のような治療法を組み合わせることが一般的です。

内服薬

  • スピロノラクトン

    本来は利尿薬ですが、男性ホルモンの働きを抑える作用があり、FAGA(女性男性型脱毛症)の治療に用いられることがあります。ただし、副作用に注意が必要であり、医師の慎重な判断のもと処方されます。
  • ミノキシジル(内服)

    血行を促進し、毛母細胞を活性化させる作用があります。もともとは高血圧の治療薬ですが、発毛効果があることから薄毛治療に転用されています。

    日本では女性への処方は承認されていませんが、医師の判断で使用される場合があります。
  • 栄養補助(サプリメント)

    髪の成長に必要なビタミン、ミネラル(特に鉄、亜鉛)、アミノ酸などを補給します。血液検査で栄養不足が確認された場合などに処方されます。

外用薬

  • ミノキシジル(外用): 日本で唯一、女性の壮年性脱毛症(FAGA)に対する発毛効果が認められている成分です。市販薬もありますが、クリニックではより高濃度のものが処方される場合があります。

    頭皮に直接塗布することで、毛母細胞に働きかけ、発毛を促進します。

注入療法

  • メソセラピー: 発毛・育毛効果のある薬剤(ミノキシジル、成長因子、ビタミンなど)を、注射や特殊な機器を用いて頭皮に直接注入する治療法です。有効成分を直接毛根に届けることができます。
  • HARG(ハーグ)療法: ヒト脂肪幹細胞から抽出した成長因子(AAPE)を頭皮に注入する再生医療の一つです。毛母細胞や周辺組織を活性化させ、発毛を促します。

その他の治療・指導

  • LED照射療法: 特定の波長の光を頭皮に照射し、血行促進や細胞活性化を促す治療法です。
  • 生活習慣・食生活指導: 睡眠、運動、食事内容など、髪の健康に関わる生活習慣全般についてのアドバイスを行います。
  • ヘアケア指導: 患者さんの頭皮状態に合わせたシャンプーの選び方や、正しい洗髪方法などの指導を行います。

女性の薄毛治療法の選択肢

治療法カテゴリ具体的な治療法例主な作用・目的
内服薬スピロノラクトン、ミノキシジル、サプリメントホルモンバランス調整、血行促進・毛母細胞活性化、栄養補給
外用薬ミノキシジル血行促進・毛母細胞活性化(直接塗布)
注入療法メソセラピー、HARG療法有効成分・成長因子の直接注入による発毛促進
その他LED照射療法、生活習慣指導、ヘアケア指導血行促進・細胞活性化、全身・頭皮環境の改善、適切なセルフケアの実践

よくある質問

ここでは、湯シャンや女性の薄毛に関して、患者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q
湯シャンを始めたら、抜け毛が増えた気がします。大丈夫でしょうか?
A

湯シャンを始めた初期に、一時的に抜け毛が増えたように感じることがあります。

これは、シャンプーから湯シャンへの切り替えによる頭皮環境の変化や、洗髪方法に慣れていないために、もともと抜ける予定だった「休止期」の毛が、マッサージなどの物理的な刺激で抜け落ちている可能性があります。

しかし、これは一時的なものであることが多いです。

Q
湯シャンとシャンプーは、どのように使い分けるのが良いですか?
A

湯シャンとシャンプーの使い分けに、絶対的な正解はありません。ご自身の頭皮の状態やライフスタイルに合わせて調整するのが良いでしょう。以下にいくつかの例を挙げます。

  • 乾燥肌・敏感肌の方: 基本は湯シャンにし、週に 1 〜 2 回、または汚れやベタつきが気になった時に、低刺激性のシャンプーを使う。
  • 脂性肌の方: 毎日または 1 日おきにシャンプーをし、休日に湯シャンを取り入れて頭皮を休ませる日を作る。
  • 整髪料を使った日: 必ずシャンプーでしっかりと洗い流す。
  • 汗をたくさんかいた日: シャンプーで皮脂や汗を洗い流す。
  • 季節による使い分け: 汗をかきやすい夏場はシャンプーの頻度を増やし、乾燥しやすい冬場は湯シャンの頻度を増やす。
Q
湯シャンだけで、本当に頭皮の臭いは防げますか?
A

湯シャンだけで臭いを防げるかどうかは、個人の皮脂分泌量や体質、湯シャンのやり方によって大きく異なります。

お湯だけでも汗やホコリなどの水溶性の汚れはある程度落とせますが、皮脂汚れは完全に落としきれない場合があります。

残った皮脂が酸化したり、雑菌が繁殖したりすると、臭いの原因になります。

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