抜け毛が増えたと感じたら、普段服用している薬が原因かもしれません。薬の副作用による抜け毛は、女性にとって深刻な悩みの一つです。
しかし、原因を特定して適切な対処を行うと、改善を目指せます。
この記事では、薬の副作用によって起こる女性の抜け毛について、その原因、症状の特徴、そして専門的な治療を含めた改善までの道のりを詳しく解説します。
薬の副作用で抜け毛?女性に起こりやすい脱毛の悩み
服用している薬が原因で髪が抜ける「薬剤性脱毛症」は、決して珍しいことではありません。
特に女性はホルモンバランスの変化など、他の要因による抜け毛も経験しやすいため、薬の副作用が見過ごされるケースもあります。
服用中の薬が原因かもしれない脱毛
持病の治療や体調管理のために薬を服用している方は多いです。しかし、その薬が予期せぬ抜け毛を引き起こしている可能性があります。
全ての薬に脱毛のリスクがあるわけではありませんが、特定の薬では副作用として報告されています。
新しい薬を飲み始めた後や長期間服用している薬がある中で抜け毛が気になり始めたら、薬の副作用を疑ってみることも大切です。原因が薬にある場合、適切な対応をとると改善が見込めます。
なぜ薬で髪が抜けるの?
薬が髪の毛に影響を与える理由は、主に二つあります。
一つは、髪の毛の成長サイクル(毛周期)に直接作用し、髪の成長を妨げる場合です。特に、細胞分裂が活発な毛母細胞に影響を与え、髪が十分に育つ前に抜けてしまう「成長期脱毛」がこれにあたります。
もう一つは、毛周期の「休止期」に入る毛包の割合を増やしてしまう場合です。これにより、通常よりも多くの髪の毛が一斉に抜け落ちる「休止期脱毛」が起こります。
脱毛を引き起こす可能性のある薬剤の種類
薬剤の種類 | 主な用途例 | 脱毛のタイプ(傾向) |
---|---|---|
抗がん剤 | がん治療 | 成長期脱毛 |
抗うつ薬・気分安定薬 | 精神疾患治療 | 休止期脱毛 |
降圧薬(β遮断薬など) | 高血圧治療 | 休止期脱毛 |
抗凝固薬(ワルファリンなど) | 血栓予防 | 休止期脱毛 |
インターフェロン製剤 | C型肝炎、がん治療 | 休止期脱毛 |
どちらのタイプになるかは、薬の種類や作用によって異なります。
女性特有の抜け毛との見分け方
女性の抜け毛の原因は多様です。加齢による変化、ホルモンバランスの乱れ(産後脱毛や更年期障害など)、甲状腺機能の異常、栄養不足、ストレス、そして自己免疫疾患などが考えられます。
これらの原因による抜け毛と薬の副作用による抜け毛を見分けるのは容易ではありません。
しかし、薬による抜け毛には、特定の薬の服用開始から数週間〜数ヶ月後に症状が現れる、薬の中止・変更で改善する傾向がある、といった特徴が見られます。
他の原因が考えにくい場合やタイミングが合致する場合は、薬の影響を考慮に入れる必要があります。
気づいたら早めに相談を
抜け毛の原因を自己判断するのは難しく、また危険も伴います。「薬のせいかも?」と思っても、自己判断で服用を中止するのは絶対に避けてください。
まずは、処方元の医師に相談することが最も重要です。症状や服用歴、他の可能性のある原因などを医師が総合的に判断し、適切なアドバイスをしてくれます。
必要であれば、皮膚科医や女性の薄毛治療を専門とするクリニックを紹介してもらうこともできます。早期に相談すると、原因の特定と適切な対策につながりやすくなります。
抜け毛を引き起こす可能性のある薬の種類
全ての薬が抜け毛を引き起こすわけではありませんが、特定の種類の薬では副作用として報告されています。
ここでは、代表的な薬剤カテゴリーと、脱毛のタイプとの関連について解説します。
代表的な薬剤カテゴリー
抜け毛の副作用が報告されている薬は多岐にわたります。特に注意が必要なのは、細胞増殖を抑える作用を持つ抗がん剤です。
その他にも、精神疾患の治療薬(抗うつ薬、気分安定薬)、高血圧治療薬(β遮断薬、ACE阻害薬など)、血液を固まりにくくする抗凝固薬(ワルファリンなど)、ウイルス感染症やがんの治療に用いられるインターフェロン製剤、脂質異常症治療薬、抗てんかん薬、一部のホルモン剤なども、原因となる可能性があります。
薬剤カテゴリーと主な該当薬
カテゴリー | 主な薬剤(一般名) |
---|---|
抗がん剤 | ドキソルビシン、パクリタキセル |
抗うつ薬・気分安定薬 | フルオキセチン、リチウム |
降圧薬 | プロプラノロール、カプトプリル |
抗凝固薬 | ワルファリン、ヘパリン |
インターフェロン製剤 | インターフェロンα |
上記はあくまで例であり、全ての薬剤で起こるわけではありません。また、ジェネリック医薬品も同様のリスクがあります。
休止期脱毛を引き起こしやすい薬
休止期脱毛は、毛周期において、成長期から退行期を経て休止期に入る毛包の割合が増加することで起こります。
全毛髪の約10%が休止期にありますが、この割合が20〜30%以上に増加すると目に見える脱毛症状として現れます。
原因となる薬の服用を開始してから実際に抜け毛が目立つようになるまでには、通常2〜4ヶ月程度の時間がかかります。
抜け方は比較的ゆっくりで、頭部全体にびまん性(広範囲)に起こりやすいのが特徴です。多くの一般的な薬剤(抗がん剤以外)による脱毛は、この休止期脱毛のタイプに分類されます。
成長期脱毛を引き起こしやすい薬
成長期脱毛は、毛母細胞の分裂が阻害されて、成長期にある毛髪が十分に成長できずに途中で切れたり抜けたりする現象です。
原因となる薬の服用を開始してから比較的早い時期、通常1〜3週間程度で急速に脱毛が進行します。抜け方も顕著で、重度の場合にはほぼ全ての髪が抜けてしまうケースもあります。
最も代表的な原因薬剤は抗がん剤です。抗がん剤はがん細胞だけでなく、分裂が活発な毛母細胞にも強く作用するため、高頻度で成長期脱毛を引き起こします。
休止期脱毛と成長期脱毛の比較
特徴 | 休止期脱毛 | 成長期脱毛 |
---|---|---|
発症時期 | 服用開始後2〜4ヶ月 | 服用開始後1〜3週間 |
脱毛の進行 | 比較的緩やか | 急速 |
脱毛の範囲 | 頭部全体(びまん性) | 重度の場合、ほぼ全体 |
主な原因薬剤 | 抗がん剤以外(多種) | 抗がん剤 |
薬の種類と脱毛の関係
全ての薬が同じように脱毛を引き起こすわけではありません。脱毛の副作用が起こる頻度や程度は、薬の種類、用量、投与期間、そして個人の体質によって大きく異なります。
同じ薬を服用していても全く脱毛しない人もいれば、軽度の脱毛が見られる人、重度の脱毛に至る人もいます。
また、複数の薬を併用している場合には、どの薬が原因となっているのか特定が難しいときもあります。薬の副作用が疑われる場合は、必ず医師や薬剤師に相談して正確な情報を得ることが重要です。
薬の副作用による抜け毛の特徴とは
薬の副作用による抜け毛には、他の原因による抜け毛とは異なるいくつかの特徴が見られる場合があります。
これらの特徴を知っておくと、原因を推測する上で役立ちます。ただし、自己判断は禁物であり、最終的な診断は医師が行います。
抜け毛が始まる時期
薬による抜け毛が始まるタイミングは、脱毛のタイプによって異なります。
休止期脱毛の場合は、原因となる薬の服用を開始してから通常2〜4ヶ月後に抜け毛が増え始めます。一方、成長期脱毛の場合は、服用開始から1〜3週間という比較的短期間で脱毛が始まります。
この「特定の薬を使い始めてから抜け毛が気になるまでの期間」は、原因を特定する上で重要な手がかりの一つとなります。
髪の抜け方(全体的か部分的か)
抜け毛のパターンも参考になります。薬の副作用による脱毛は、特定の部位だけが抜ける円形脱毛症などとは異なり、頭部全体に広範囲にわたって髪が薄くなる「びまん性脱毛」の形をとるのが一般的です。
休止期脱毛では、全体的に徐々にボリュームが減っていくように感じられることが多いでしょう。
成長期脱毛ではより急速かつ広範囲に脱毛が進行し、時には眉毛やまつ毛など頭髪以外の体毛にも影響が出るケースがあります。
他の副作用との関連性
服用している薬によっては、抜け毛以外にも様々な副作用が現れます。例えば、吐き気、倦怠感、皮膚の発疹、食欲不振などです。
もし、抜け毛と同時期に他の体調の変化も感じている場合は、それらも薬の副作用の一部である可能性があります。診察時には、抜け毛以外の症状についても医師に伝えましょう。
自分で判断する際の注意点
これらの特徴はあくまで一般的な傾向であり、個人差が大きい点を理解しておく必要があります。抜け毛の始まる時期や抜け方が典型的でない場合もありますし、複数の原因が重なっている可能性も考えられます。
例えば、薬の服用と同時期に大きなストレスがかかったり、食生活が乱れたりした場合、どちらが主たる原因か、あるいは両方が影響しているのかを見極めるのは困難です。
安易に「薬のせいだ」と決めつけず、必ず専門家である医師に相談してください。
抜け毛の原因を特定するための検査
抜け毛の原因を正確に突き止めるためには、医師による診察と必要に応じた検査が重要になります。ここでは、抜け毛の原因特定のために行われる主な検査について説明します。
まずは医師による問診
診察の第一歩は、詳細な問診です。抜け毛がいつから始まったか、どのような抜け方か、抜け毛以外に気になる症状はないかなどを詳しく尋ねます。
加えて、現在服用中の薬、過去の病歴、血縁者に薄毛の人はいるか、生活習慣、最近の環境の変化(転職、引っ越しなど)についても確認します。
これらの情報は、原因を絞り込むための重要な手がかりとなります。正直に、できるだけ詳しく伝えることが大切です。
問診で確認される主な項目
確認項目 | 具体的な内容例 |
---|---|
抜け毛について | 開始時期、進行度、抜け方、量、自覚症状(かゆみ、痛み) |
服用中の薬・サプリメント | 薬剤名、服用期間、用量、開始・変更時期 |
病歴・既往歴 | 甲状腺疾患、膠原病、貧血、婦人科系疾患など |
生活習慣 | 食事内容、睡眠時間、ストレスレベル、喫煙・飲酒習慣 |
その他 | 家族歴、最近の環境変化、パーマ・カラーリング歴 |
血液検査でわかること
問診で特定の病気や栄養状態の偏りが疑われる場合、血液検査が行われるのが一般的です。
血液検査によって、甲状腺機能(甲状腺ホルモンの異常は抜け毛の原因となる)、貧血の有無(鉄欠乏は抜け毛につながることがある)、亜鉛などのミネラルやビタミンの不足、ホルモンバランス(男性ホルモンや女性ホルモンの値)、自己免疫疾患の有無などを調べます。
これらの検査結果は、薬の副作用以外の原因を除外したり、複合的な原因を探ったりする上で役立ちます。
頭皮・毛髪の診察
視診や触診によって頭皮の状態(赤み、湿疹、乾燥、皮脂の過剰など)や毛髪の状態(太さ、密度、切れ毛の有無など)を直接確認します。
ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いて、毛穴の状態や毛髪の太さの変化などをより詳細に観察するときもあります。
これにより、びまん性か、局所性かといった脱毛のパターンや、毛髪の異常を評価し、診断の手がかりを得ます。
必要に応じて行うその他の検査
上記以外にも、原因特定のために追加の検査が必要になる場合があります。
例えば、強く引っ張った際に抜ける毛髪の本数や状態を調べる「牽引試験(pull test)」や、抜けた毛髪の毛根の状態を顕微鏡で観察する「トリコグラム(毛根像検査)」などがあります。
また、まれに皮膚の一部を採取して病理組織学的に調べる「皮膚生検」が行われることもあります。どの検査を行うかは、問診や診察の結果を踏まえ、医師が判断します。
薬による抜け毛の改善
薬の副作用による抜け毛が疑われる場合、原因となっている薬への対応が基本となりますが、自己判断は禁物です。医師との相談のもと、慎重に対策しましょう。
原因薬剤の中止・変更の検討
最も根本的な対策は、原因と考えられる薬の服用を中止すること、あるいは抜け毛の副作用が少ない別の薬に変更することです。
多くの薬剤性脱毛症(特に休止期脱毛)は、原因薬剤の中止後、数ヶ月から半年程度で自然に回復する傾向があります。
ただし、薬の変更が可能かどうか、中止しても治療上の問題がないかどうかは、元の病気の状況や代替薬の有無によって異なります。
自己判断での中止は危険
抜け毛が気になるからといって、自己判断で薬の服用を中止するのは絶対にやめてください。
服用中の薬は、特定の病気の治療やコントロールのために必要なものです。勝手にやめてしまうと、元の病気が悪化したり、重篤な健康問題を引き起こしたりする危険性があります。
例えば、高血圧の薬を急にやめると血圧が急上昇したり、抗てんかん薬を中断すると発作が再発したりする可能性があります。必ず処方元の医師に相談し、指示に従ってください。
薬剤師への相談も有効
かかりつけの薬剤師に相談するのも有効な方法です。薬剤師は薬の専門家であり、副作用に関する情報や代替薬の可能性について詳しい知識を持っています。
医師に相談する前に、まずは薬剤師に抜け毛の悩みと服用中の薬について話してみるのも良いでしょう。
ただし、薬剤師は薬の変更や中止の判断はできませんので、最終的には医師との相談が必要です。
- 医師(処方医)
- 皮膚科医
- 女性薄毛専門医
- 薬剤師
治療薬以外の選択肢
薬の中止や変更が難しい場合や抜け毛の回復を早めたい場合には、他の治療法を検討することもあります。
例えば、発毛効果が認められているミノキシジルの外用薬の使用やサプリメントによる栄養補給などが考えられます。ただし、これらの効果には個人差があり、必ずしも全ての人に有効とは限りません。
また、抗がん剤による脱毛など原因薬剤の継続が必要な場合には、ウィッグ(かつら)の使用も心理的な負担を軽減するための有効な選択肢となります。
どのような方法が適切かは、医師とよく相談して決めましょう。
専門クリニックで行う女性の薄毛治療
薬の副作用による抜け毛が改善しないときや、より積極的な治療を希望されるときには、女性薄毛を専門とするクリニックでの治療が選択肢となります。
専門クリニックでは、医学的根拠に基づいた様々な治療法が提供されています。
クリニックでの治療方針
専門クリニックでは、まず詳細なカウンセリングと診察を行い、抜け毛の原因を特定します。
薬の副作用が主な原因であると判断された場合でも、他の要因(ホルモンバランス、加齢、生活習慣など)が複合的に関わっている可能性も考慮し、個々の状態に合わせた総合的な治療計画を立てます。
治療の選択肢、期待できる効果、考えられるリスクや副作用、費用などについて十分に説明を受け、納得した上で治療を開始することが重要です。
内服薬による治療
女性の薄毛治療に用いられる内服薬としては、主に「スピロノラクトン」や「ミノキシジル(内服)」があります。
スピロノラクトンは利尿薬や降圧薬として使われていましたが、男性ホルモンの働きを抑制する作用があることから、女性の男性型脱毛症(FAGA/FPHL)の治療に応用されます。
ミノキシジルは血管を拡張し、毛母細胞の血流を改善することで発毛を促すと考えられています。
ただし、これらの内服薬には副作用のリスクもあり、医師の厳密な管理下で使用する必要があります。
主な内服治療薬
薬剤名(一般名) | 作用 | 注意点 |
---|---|---|
スピロノラクトン | 男性ホルモン抑制、抗アンドロゲン作用 | 電解質異常、月経不順、乳房痛などの可能性 |
ミノキシジル | 血行促進、毛母細胞活性化(作用機序は未解明) | 多毛、動悸、むくみ、血圧低下などの可能性 |
効果や副作用には個人差があります。医師の指示に従って正しく服用することが重要です。
外用薬による治療
女性の薄毛治療で最も一般的に用いられる外用薬は「ミノキシジル」の配合された塗り薬です。
日本では、女性向けに1%濃度のミノキシジル外用薬が市販されていますが、クリニックではより高濃度のもの(例:5%など)を処方する場合もあります。
ミノキシジル外用薬は、頭皮に直接塗布すると毛包に作用し、発毛を促進する効果が期待されます。効果が現れるまでには通常4〜6ヶ月程度の継続使用が必要です。
副作用としては、塗布部位のかゆみ、かぶれ、初期脱毛などが報告されています。
その他の治療法(注入療法など)
内服薬や外用薬以外にも、様々な治療法があります。代表的なものに「注入療法」があります。これは、発毛促進効果のある薬剤や成長因子などを、注射や特殊な機器を用いて頭皮に直接注入する方法です。
メソセラピーやHARG(ハーグ)療法などが知られています。これらの治療は薬剤を直接毛根に届けることができるためより効果が期待できるとされていますが、複数回の施術が必要であり、費用も比較的高額になる傾向があります。
その他、低出力レーザー照射なども選択肢となる場合があります。
主な注入療法
治療法名称 | 特徴 |
---|---|
メソセラピー | ビタミン、ミネラル、ミノキシジル等を注入 |
HARG療法 | 脂肪幹細胞由来の成長因子(AAPE)等を注入 |
PRP療法 | 自身の血液から抽出した多血小板血漿を注入 |
日常生活でできるヘアケアと注意点
薬の副作用による抜け毛に対処する上で、専門的な治療と並行して日々のセルフケアの見直しも大切です。
頭皮環境を整えるシャンプー選び
毎日のシャンプーは、頭皮の汚れや余分な皮脂を落として清潔に保つために重要です。ただし、洗浄力が強すぎるシャンプーは頭皮に必要な皮脂まで奪ってしまい、乾燥やかゆみの原因となるときがあります。
アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のシャンプーを選び、爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするように洗いましょう。すすぎ残しがないように、しっかりと洗い流すことも大切です。
頭皮ケアのポイント
ケアの種類 | ポイント |
---|---|
シャンプー選び | アミノ酸系など低刺激なもの、自身の頭皮タイプ(乾燥、脂性)に合わせる |
洗い方 | 指の腹で優しくマッサージ洗い、爪を立てない |
すすぎ | シャンプー剤が残らないよう、時間をかけて丁寧に |
乾燥 | 洗髪後はすぐにドライヤーで乾かす(自然乾燥は雑菌繁殖の元) |
バランスの取れた食事と栄養
髪の毛は、主にケラチンというタンパク質からできています。健やかな髪を育むためには、タンパク質を十分に摂取するのが基本です。肉、魚、卵、大豆製品などをバランス良く食事に取り入れましょう。
また、タンパク質の合成を助ける亜鉛や頭皮の血行を促進するビタミンE、細胞の代謝に関わるビタミンB群なども髪の健康に重要です。
特定の食品に偏らず、多様な食材から栄養を摂る心がけをしましょう。
- タンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)
- 亜鉛(牡蠣、レバー、牛肉)
- ビタミンB群(豚肉、レバー、マグロ、カツオ、納豆)
- ビタミンE(ナッツ類、アボカド、植物油)
ストレス管理と睡眠
過度なストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、血行不良を引き起こすため髪の成長に悪影響を与える可能性があります。
自分なりのリラックス方法を見つけ、ストレスを溜め込まないように工夫しましょう。
また、髪の成長に関わる成長ホルモンは、主に睡眠中に分泌されます。質の高い睡眠を十分にとる工夫も、健やかな髪を育むためには必要です。
寝る前のカフェイン摂取やスマートフォンの使用を控えるなど、睡眠環境を整えることも意識しましょう。
髪型やヘアケア製品の選び方
抜け毛が気になる時期は、髪や頭皮への負担が少ない髪型を選ぶと良いでしょう。強く引っ張るような髪型(ポニーテール、お団子など)は、牽引性脱毛症の原因にもなるため避けた方が無難です。
また、ヘアカラーやパーマは、薬剤が頭皮への刺激となる可能性があります。抜け毛が多い時期は控えるか、美容師に相談して低刺激な施術を選びましょう。
ヘアスプレーやワックスなどの整髪料も頭皮につかないように注意し、その日のうちにしっかりと洗い流すことが大切です。
よくある質問
薬の副作用による抜け毛に関して、患者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- Q薬をやめれば髪は元に戻りますか?
- A
原因となっている薬の服用を中止または変更できれば、多くの場合は抜け毛は改善に向かいます。
特に休止期脱毛では、中止後3〜6ヶ月程度で新しい髪が生え始め、徐々に回復していくことが期待できます。ただし、回復の程度やスピードには個人差があります。
抗がん剤による成長期脱毛の場合も治療が終了すれば多くの場合再生しますが、髪質が変わる方もいます。完全に元通りになるかどうかは、薬の種類や個人の状態によります。
- Qサプリメントは効果がありますか?
- A
髪の成長に必要な栄養素(タンパク質、亜鉛、ビタミンなど)を補う目的でサプリメントを利用することは、補助的な手段として考えられます。
しかし、サプリメントだけで薬の副作用による抜け毛が治るわけではありません。あくまで食事の補助と捉え、バランスの取れた食事を基本とするのが重要です。
特定のサプリメントが有効かどうかは科学的根拠が乏しい場合も多いため、過度な期待はせず、摂取する場合は医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
- Q治療にはどれくらいの期間がかかりますか?
- A
薬の副作用による抜け毛の治療期間は、原因薬剤の中止・変更が可能かどうか、どのような治療法を選択するかによって大きく異なります。原因薬剤を中止できれば、多くは数ヶ月単位で改善が見られます。
ミノキシジル外用薬などの治療を行う場合、効果を実感できるまでには最低でも4〜6ヶ月程度の継続が必要です。
内服薬治療や注入療法なども含め、効果の現れ方には個人差があるため、焦らず根気強く治療を続けることが大切です。
- Q費用はどのくらいかかりますか?
- A
薬の副作用による抜け毛の治療が、元の病気の治療の一環として行われる場合(例:医師の判断による薬剤変更)は基本的に保険適用となります。
しかし、薄毛治療を専門とするクリニックで行われる治療(ミノキシジル外用薬・内服薬、注入療法など)の多くは美容目的と見なされ、自由診療(保険適用外)となります。
自由診療の場合、費用は全額自己負担となり、クリニックや治療内容によって大きく異なります。カウンセリング時に治療内容ごとの費用体系や総額の見積もりについて、しっかりと確認すると良いでしょう。
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