最近「つむじ周りの髪が薄くなってきた気がする」「地肌が透けて見えるようになった」と感じている方も多いのではないでしょうか。

女性にとって髪は容姿の印象を大きく左右するため、つむじ部分の薄毛、いわゆる「つむじハゲ」は深刻な悩みとなります。

しかし、一人で悩みを抱え込まず、適切な知識を得て行動することが大切です。

目次

女性の「つむじハゲ」とは?見分け方の基本

はじめに、女性特有のつむじ周辺の薄毛について、その基本的な見分け方やセルフチェックの方法を解説します。

つむじ周辺の薄毛が気になる女性が増えています

つむじは頭頂部にあり、髪が渦を巻いている部分です。

もともと地肌が見えやすい箇所ではありますが、以前よりも明らかに地肌の見える範囲が広がったり、髪の毛が細くなったりして薄毛を自覚する女性が増えています。

分け目を変えても隠しきれなくなったり、スタイリングが決まりにくくなったりすることで悩みが深まるケースも少なくありません。

正常なつむじと薄いつむじの違い

正常なつむじは、毛流れの中心である「渦」がはっきりしており、その周辺の地肌はあまり目立ちません。

一方、つむじハゲが進行している場合は渦の中心部分だけでなく、その周りの地肌も広範囲に見えるようになります。髪の毛一本一本が細く弱々しくなり、密度が低下するのも特徴です。

つむじの状態比較

状態特徴地肌の見え方
正常なつむじ渦が明瞭、髪にハリ・コシがある中心部が少し見える程度
薄いつむじ渦がぼやけている、髪が細く少ない広範囲に透けて見える
さらに進行つむじ周辺全体のボリュームが低下している地肌が目立つ

ご自身のつむじと見比べて、状態を確認してみましょう。

つむじハゲをセルフチェックする方法

鏡を使って自分のつむじの状態を確認することは、変化に気づくための第一歩です。合わせ鏡を使ったり、スマートフォンで撮影したりすると、より客観的に観察できます。

セルフチェックのポイント

チェック項目確認する点
地肌の見える範囲以前と比べて広がっていないか
髪の太さ・ハリ・コシつむじ周りの髪が他の部分と比べて細く弱々しくないか
抜け毛シャンプー時やブラッシング時の抜け毛が増えていないか
頭皮の色赤みやかゆみ、フケなどが出ていないか
つむじの渦の明瞭さ渦の中心がはっきりしているか、ぼやけていないか

これらの点を定期的にチェックし、変化が見られた場合は注意が必要です。

なぜ女性のつむじが薄くなるの?つむじハゲの主な原因

女性のつむじ部分が薄くなる背景には、さまざまな原因が考えられます。つむじハゲの原因を知ると適切な対策や治療へと繋げられます。

加齢によるホルモンバランスの変化

女性の髪の健康には、女性ホルモンであるエストロゲンが深く関わっています。

エストロゲンは髪の成長を促進してハリやコシを保つ働きをしますが、加齢とともにその分泌量は減少していきます。

特に更年期を迎えるとエストロゲンの減少が顕著になり、相対的に男性ホルモンの影響が強まるため髪が細くなったり抜け毛が増えたりして、つむじ周辺の薄毛が目立ちやすくなる方が増えます。

生活習慣の乱れと血行不良

健やかな髪を育むためには、十分な栄養と酸素が毛根に供給されることが必要です。しかし、睡眠不足や偏った食生活、運動不足といった生活習慣の乱れは、頭皮の血行不良を引き起こす可能性があります。

血行が悪くなると髪の成長に必要な栄養素が毛根まで届きにくくなり、髪が細くなったり抜けやすくなったりする原因となります。

頭皮の血行を促進する生活習慣

習慣の種類具体的な行動期待される効果
食事バランスの取れた食事、タンパク質・ビタミン・ミネラルの摂取髪の栄養補給
睡眠質の高い睡眠を十分にとる成長ホルモンの分泌促進
運動適度な運動で全身の血行を促進するストレス軽減、血行改善
入浴湯船に浸かりリラックスする血行促進、リラックス効果

日々の生活を見直し、改善できる点がないか考えてみましょう。

ストレスが頭皮環境に与える影響

過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて血行不良を引き起こす一因となります。また、ストレスはホルモンバランスにも影響を与え、皮脂の過剰分泌を招くケースもあります。

皮脂が過剰になると毛穴が詰まりやすくなり、頭皮環境が悪化して炎症やかゆみを引き起こし、結果として抜け毛や薄毛につながりやすいです。

間違ったヘアケアや頭皮への負担

毎日行うヘアケアも、方法を間違えると頭皮や髪にダメージを与え、つむじハゲの原因となる場合があります。

洗浄力の強すぎるシャンプーの使用、爪を立ててゴシゴシ洗う、すすぎ残し、ドライヤーの熱を当てすぎる、頻繁なカラーリングやパーマ、髪を強く引っ張るヘアスタイルなどが頭皮に負担をかけ、毛根を弱らせる可能性があります。

つむじハゲのサイン?見逃せない初期症状

つむじハゲは、ある日突然現れるわけではありません。多くの場合は徐々に進行し、初期段階では気づきにくい傾向があります。

つむじハゲの早めにサインに気づくことが、早期対策への鍵となります。

髪のボリュームダウンやつむじ周りの地肌の透け

以前と比べてつむじ周りの髪のボリュームが減ったと感じる、あるいは髪をかき上げたときに地肌が透けて見える範囲が広くなったと感じるときは注意が必要です。

これは、髪の毛一本一本が細くなっている(軟毛化)、または髪の毛の本数自体が減少しているサインかもしれません。

抜け毛の増加やつむじ部分の髪質の変化

シャンプーやブラッシングの際の抜け毛が明らかに増えたと感じる場合も、薄毛が進行している可能性があります。特に、短くて細い毛が多く抜けるようになったら注意が必要です。

また、つむじ周辺の髪だけが他の部分の髪と比べて細く、柔らかく、コシがなくなったと感じる場合も薄毛の初期症状と考えられます。

抜け毛・髪質の変化チェック

症状の種類具体的な状態
抜け毛の量排水溝に溜まる毛量、枕につく毛量が増えた
抜ける毛の質細く短い毛、弱々しい毛が増えた
つむじ周りの髪質他の部分より明らかに細い、柔らかい、ハリ・コシがない
髪の成長以前より髪が伸びるのが遅くなった気がする

これらの変化に気づいたら、一度専門家に相談することを検討しましょう。

頭皮のかゆみやフケ、赤み

頭皮環境の悪化も薄毛につながるサインの一つです。頭皮にかゆみを感じる、フケが目立つようになった、頭皮が赤みを帯びているなどの症状があるときは頭皮で何らかのトラブルが起きている可能性があります。

炎症などが原因で、髪の健やかな成長が妨げられていることも考えられます。

髪の分け目が広がる、スタイリングがしにくい

いつも同じ分け目にしていると、その部分の地肌が目立ちやすくなるケースがあります。

分け目やつむじ周りの地肌が以前よりもくっきりと見えるようになった、分け目がパックリと割れてしまう、スタイリング剤を使っても髪が立ち上がりにくくなった、ヘアスタイルが決まりにくくなったと感じる場合も、髪のボリュームダウンや密度の低下が原因かもしれません。

つむじハゲを放置するリスクとは

「まだ大丈夫」「そのうち治るかも」と、つむじの薄毛のサインを見て見ぬふりをしてしまうと、さまざまなリスクが生じる可能性があります。

ここでは、つむじハゲを放置することによって起こりうる問題について解説します。

薄毛の範囲が広がる可能性

つむじハゲは多くの場合、進行性の脱毛症の初期症状です。放置していると、薄毛はつむじ周辺だけでなく、頭頂部全体や側頭部、後頭部へと広がる可能性があります。

進行が進むほど、改善には時間と費用がかかる傾向があります。

薄毛の進行パターン例(女性)

ステージ状態見た目の変化例
初期つむじ周りの地肌がやや透ける、髪が細くなるボリュームダウンを感じ始める
中期つむじを中心に薄毛が広がり、分け目も目立つ地肌の露出が気になる
進行期頭頂部全体の地肌がかなり透けて見える髪で隠すのが難しくなる

髪全体の印象が変化し老けて見えることも

髪は顔の額縁とも言われ、見た目の印象を大きく左右します。

つむじ周辺の髪が薄くなりボリュームが失われると、髪全体のシルエットが変化して実年齢よりも老けて見られたり、疲れた印象を与えてしまったりする場合があります。

自己肯定感の低下と精神的な負担

薄毛の悩みは、他人の視線が気になったり、自信を失ったりするなど精神的な負担につながることが少なくありません。

好きな髪型を楽しめなくなったり、外出がおっくうになったりするなど、日常生活の質(QOL)の低下を招く可能性もあります。一人で抱え込まず、悩みを共有できる相手や専門家に相談するのも大切です。

治療の選択肢が狭まる、改善に時間がかかる

一般的に、薄毛治療は早期に開始するほど効果が出やすく、改善までの期間も短くなる傾向があります。

放置して薄毛が進行してしまうと毛根自体の機能が低下し、治療の選択肢が限られてしまったり、効果が現れるまでに時間がかかったりする可能性があります。

なぜ早期治療が大切なのか?つむじハゲ改善への第一歩

つむじの薄毛に気づいたら、できるだけ早く専門的な対策や治療を開始することが、改善への最も有効な道筋です。

進行を食い止め、改善の可能性を高める

女性の薄毛の多くは進行性です。早期に治療を開始すると、薄毛の進行を食い止め、さらなる悪化を防ぐことが期待できます。

毛根が完全に機能を失う前に治療を始めれば、発毛を促して元の状態に近い髪を取り戻せる可能性も高まります。治療開始が早ければ早いほど、改善の見込みは大きいです。

より少ない負担で治療できる場合が多い

薄毛が進行すればするほど、治療にも時間と費用がかかる傾向があります。

初期段階であれば比較的シンプルな治療法(例えば、外用薬や内服薬、生活習慣の改善指導など)で効果が見られるケースも多く、結果的に治療にかかる身体的、経済的な負担を軽減できる可能性があります。

精神的なストレスを軽減する

薄毛の悩みが深刻な精神的ストレスとなってしまっている方も見受けられます。

早期に治療を開始して改善への道筋が見えることで、「このまま薄くなってしまうのでは」という不安や焦りが和らぎ、精神的な負担を軽くできます。

前向きな気持ちで治療に取り組むことは、治療効果を高める上でも重要です。

自分に合った治療法を早く見つけられる

薄毛の原因や進行度合いは、人それぞれ異なります。そのため、効果的な治療法も一人ひとり違います。

早期に専門医の診察を受けると、自分の薄毛の原因を正確に把握して、数ある治療法の中から自分に合った方法を早く見つけられます。試行錯誤の期間を短縮し、効率的に改善を目指すことが可能です。

女性のつむじハゲに対する専門的な治療法

セルフケアだけでは改善が難しい場合や、原因を特定して適切な治療を受けたい方は、薄毛治療を専門とするクリニックへの相談が有効です。

クリニックでのカウンセリングと頭皮診断

まずは専門医によるカウンセリングで、悩みや症状、生活習慣などを詳しくヒアリングします。

その後、マイクロスコープなどを用いて頭皮の状態や毛穴、毛髪の太さなどを詳細に観察し、薄毛の原因や進行度を診断します。

必要に応じて血液検査を行い、ホルモンバランスや栄養状態などをチェックする場合もあります。

主な診断項目

  • 問診(生活習慣、既往歴、家族歴など)
  • 視診(薄毛の範囲、パターン)
  • マイクロスコープ検査(頭皮、毛穴、毛髪の状態)
  • 血液検査(ホルモン値、甲状腺機能、栄養状態など)

これらの診察・検査結果に基づいて、一人ひとりに合った治療計画を立てます。

内服薬や外用薬による治療

女性の薄毛治療では、主にミノキシジル配合の外用薬や、スピロノラクトンなどの内服薬が用いられます。

ミノキシジルは毛母細胞を活性化させ、発毛を促進する効果が期待されます。スピロノラクトンは男性ホルモンの働きを抑制する作用があり、ホルモンバランスの乱れが原因の薄毛に用いられる場合があります。

医師の診察のもと適切な薬剤を選択し、用法・用量を守って使用することが重要です。

主な治療薬

薬剤の種類作用期待される効果
ミノキシジル外用薬毛母細胞活性化、血行促進発毛促進、育毛
スピロノラクトン内服薬抗アンドロゲン作用抜け毛抑制(一部の症例)
その他栄養補助(サプリメント)、漢方薬など頭皮環境改善、栄養補給

効果や副作用には個人差があります。必ず医師の指示に従いましょう。

頭皮への直接的な働きかけ(注入療法など)

薬剤による治療と並行して、または単独で、頭皮に直接有効成分を注入する治療法も行われます。

代表的なものに、発毛に必要な成長因子などを直接頭皮に注入するメソセラピーや、自身の血液から抽出した多血小板血漿(PRP)を注入するPRP療法などがあります。

これらの治療は、毛根周辺の環境を整えて発毛をサポートする効果が期待されます。

生活習慣指導やヘアケアアドバイス

薬物療法や注入療法と合わせて、髪の成長に良い影響を与える生活習慣の改善指導や、正しいヘアケア方法のアドバイスも行います。

食事や睡眠、ストレス管理や運動習慣など、日常生活の見直しを通じて頭皮環境を整え、治療効果を高めることを目指します。

シャンプーの選び方や洗い方、ドライヤーの使い方など、具体的なアドバイスを受けられるのがメリットです。

よくある質問

さいごに、女性のつむじハゲ治療に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q
治療はどのくらいの期間が必要ですか?
A

治療期間は薄毛の原因や進行度、選択する治療法や個人の反応によって大きく異なります。一般的に、効果を実感し始めるまでに最低でも3ヶ月から6ヶ月程度はかかると考えてください。

目に見える改善を得て、その状態を維持するためには、年単位での継続的な治療が必要となる場合が多いです。治療開始前に、担当医から治療期間の目安について説明を受けてください。

Q
治療に痛みはありますか?
A

内服薬や外用薬による治療には、通常痛みは伴いません。頭皮への注入療法(メソセラピーやPRP療法など)の場合は、注射針を刺す際にチクッとした軽い痛みを感じるときがあります。

痛みの感じ方には個人差がありますが、多くのクリニックでは痛みを最小限に抑えるために冷却や麻酔クリームなどを使用する工夫をしています。

心配な場合は、事前に医師やスタッフに相談すると安心です。

Q
保険は適用されますか?
A

女性の薄毛(FAGA:女性男性型脱毛症など)の治療は美容目的とみなされることが多く、原則として健康保険の適用外(自由診療)となります。

ただし、甲状腺疾患など他の病気が原因で薄毛が引き起こされている場合は、その原因疾患の治療に対して保険が適用される可能性があります。

まずは診察を受け、原因を特定することが大切です。治療費用については、カウンセリング時に詳しく確認しましょう。

Q
自宅でのケアだけで改善しますか?
A

軽度の薄毛や生活習慣の乱れが主な原因である場合は、セルフケア(育毛剤の使用、生活習慣の見直し、正しいヘアケアなど)である程度の改善が見られる可能性もあります。

しかし、FAGAなど進行性の脱毛症が原因の場合や、薄毛が進行している場合は、セルフケアだけでの改善は難しいケースが多いです。

原因を特定して医学的根拠に基づいた適切な治療を受けることが、確実な改善への近道となります。自己判断せず、一度専門医に相談すると良いでしょう。

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