以前とは違う分け目の広がりや髪のボリューム不足に気づき、不安な気持ちを抱えている女性は少なくないようです。
毎日のスタイリングが決まらず、外出することさえ億劫になってしまうときもあるでしょう。
市販の育毛剤やシャンプーを試しても変化を感じられず、解決の糸口が見つからないまま時間を過ごしてしまうと、精神的にも大きな負担となります。
頭皮注射による治療は、有効成分をダイレクトに毛根へ届け、発毛環境を内側から整える積極的な選択肢です。
この記事では、なぜ頭皮注射が女性の薄毛に対して有効なのか、どのような成分が使われ、どういった計画で治療を進めるべきかを詳しく解説します。
女性の薄毛原因と頭皮注射が選ばれる理由
女性の薄毛はホルモンバランスの乱れや血流低下など複合的な要因が絡み合っていますが、頭皮注射は必要な栄養や薬剤を直接毛根周辺に届けられるため、他の手段よりも効率的に発毛環境へ働きかけられます。
内服薬や外用薬だけでは限界を感じている方にとって、頭皮注射は停滞していた治療を前進させるための力強い選択肢となります。
ホルモンバランスの変化と血行不良
女性の髪が薄くなる主な原因の一つに、加齢やストレス、過度なダイエット、生活習慣の乱れに伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少が挙げられます。
エストロゲンは髪の成長期を持続させ、健康で太い髪を育てる役割を担っていますが、この分泌量が低下するとヘアサイクル(毛周期)における成長期が短縮され、十分に育つ前に髪が抜けてしまうようになります。
その結果、全体的に髪のボリュームが減り、地肌が透けて見える状態になってしまうのです。
加えて、頭皮の血行不良も深刻な問題です。髪の毛を作り出す工場である毛母細胞は、血液によって運ばれる酸素や栄養素を唯一のエネルギー源として活動しています。
しかし、頭皮が凝り固まったり、冷えや自律神経の乱れによって血管が収縮したりすると、十分な栄養が毛根まで届きません。
栄養不足に陥った毛根は活動を弱め、細く抜けやすい髪しか作れなくなってしまいます。
頭皮注射は、こうした血行不良の改善を促す成分や、減少した成長因子を直接補えるため、根本的な原因に対して物理的かつ化学的に働きかけられる点が専門家からも高く評価されています。
外用薬や内服薬で効果を感じにくい場合
薄毛治療の第一歩として、頭皮に塗布する外用薬や、口から摂取する内服薬を選択する方は多くいらっしゃいます。
これらは自宅で手軽に始められる反面、効果の実感までに長い時間を要したり、体質によっては思うような結果が得られなかったりするケースも散見されます。
特に外用薬の場合、頭皮の表面にある角質層というバリア機能が薬剤の浸透を阻んでしまう場合があり、有効成分が毛根の深部にある毛乳頭まで十分に届かないのが課題となるときがあります。
薄毛治療法の比較と頭皮注射の位置づけ
| 治療法 | 成分の到達経路 | 主な特徴とメリット |
|---|---|---|
| 頭皮注射(注入治療) | 注射針等で頭皮深部へ直接注入 | バリア機能を突破し、毛根へ高濃度の成分を直接届ける。効果の実感が比較的早く、局所的な集中ケアが可能。 |
| 外用薬(塗り薬) | 頭皮表面から浸透 | 自宅で手軽に続けられる。ただし、皮膚のバリア機能により浸透効率が下がる場合がある。 |
| 内服薬(飲み薬) | 消化管吸収を経て血流で到達 | 体の内側から作用し、継続しやすい。全身への作用があるため、副作用や飲み合わせの管理が必要。 |
一方、内服薬は全身に作用するため、成分が血液に乗って頭皮に到達するまでに時間がかかり、摂取した成分が必ずしもすべて髪のために優先的に使われるとは限りません。
これに対し、頭皮注射は「メソセラピー」とも呼ばれ、物理的にバリア機能を通過させて薬剤を皮下に注入します。
その結果、高濃度の有効成分をロスなくダイレクトに毛包周辺に浸透させられるため、外用薬や内服薬単独では改善が難しかった症例でも、前向きな変化を期待できるのです。
直接的な働きかけが持つメリット
頭皮注射の最大の利点は、患部に対する「直接性」と「即時性」にあります。必要な場所に、必要な成分を確実に届けられるため、休止期に入ってしまった毛根の発毛スイッチを強力に押す役割を果たします。
特に、全体的に髪が薄くなる「びまん性脱毛症」や、女性特有の薄毛(FAGA)において、弱った毛母細胞を活性化させるためには、成長因子などのタンパク質を直接補う取り組みが極めて有効です。
さらに、内服薬の副作用(全身の多毛症や内臓への負担など)を懸念する方にとっても、局所治療である頭皮注射は比較的安心して受けられる治療法といえます。
全身への影響を最小限に抑えつつ、気になる頭皮部分にだけ集中的に作用させられるからです。
治療の選択肢を広げ、より確実性の高い結果を求める方にとって、この直接的な方法は大きなメリットをもたらします。
頭皮注射(メソセラピー)の主要な成分と働き
頭皮注射で使用される薬剤には、細胞の分裂を促す成長因子や、発毛を助ける医薬品成分、頭皮環境を整える栄養素などがバランスよく配合されています。
クリニックによって「カクテル」と呼ばれる配合の詳細は異なりますが、それぞれの成分が持つ役割を正しく理解すると、自分に必要な治療が何なのかを判断しやすくなります。
成長因子(グロースファクター)の役割
頭皮注射の主役ともいえる成分が「成長因子(グロースファクター)」です。
これは、私たちの体内にもともと存在するタンパク質の一種で、細胞の増殖や分化をコントロールする重要なシグナルの役割を果たしています。
年齢とともにこの成長因子の分泌量は自然と減少していきますが、これを外部から補うと、老化して働きが鈍った毛母細胞や、休止期に入ってしまった毛包を再び活動期へと誘導できます。
具体的には、血管の新生を促して栄養供給ルートを確保する「VEGF(血管内皮細胞増殖因子)」や、毛包の成長を促進する「KGF(ケラチノサイト増殖因子)」、細胞の分裂を活性化させる「IGF-1(インスリン様成長因子)」などが含まれます。
これらの因子が複雑かつ精巧に連携し合って細く頼りなくなった髪を太く育て、抜けにくい強い髪質へと変化させていきます。
女性の薄毛治療において、この成長因子の補給は、本来の発毛力を取り戻すための鍵となります。
ミノキシジルやフィナステリドの配合
成長因子だけでなく、発毛効果が医学的に広く認められている「ミノキシジル」を混合液に加えるのも一般的です。ミノキシジルには血管を拡張させ、毛乳頭細胞に直接働きかけて発毛を促す作用があります。
外用薬として頭皮に塗布するよりも、注射で直接皮下に届けると、より高い吸収率と確実な効果を期待できます。
主な注入成分とその期待される働き
| 成分カテゴリー | 主な成分名 | 具体的な働きと女性へのメリット |
|---|---|---|
| 成長因子 | VEGF, KGF, IGF-1等 | 「発毛の指令」を出すシグナル。休眠している毛母細胞を叩き起こし、細胞分裂を活性化させる。 |
| 発毛促進成分 | ミノキシジル | 血管を広げて血流を増やし、毛乳頭を刺激して発毛を促す。注入して浸透効率を高める。 |
| 栄養・補助成分 | ビタミン, 亜鉛, アミノ酸 | 髪の材料となるケラチンの合成をサポートし、頭皮環境を整えて抜け毛を防ぐ土台を作る。 |
場合によっては男性ホルモンの影響を抑える成分(フィナステリドやデュタステリドなど)を微量配合するケースもありますが、女性の場合は妊娠への影響など、ホルモンバランスへの作用を慎重に考慮する必要があります。
そのため、女性専用の薄毛治療メニューでは、これらに代わる安全性の高い成分を選定したり、濃度を適切に調整したりするなど女性の体に配慮した処方が行われます。
医師と十分に相談し、自分の薄毛のタイプやライフステージに合わせた成分配合を選びましょう。
ビタミン・ミネラル等の補助成分
健康な髪の成長には、土台となる頭皮の状態も大きく関わっています。
そのため、多くの薬剤には成長因子や発毛成分に加え、ビタミン類(ビタミンB群、ビタミンHなど)、ミネラル(亜鉛など)、アミノ酸といった必須栄養素が豊富に含まれています。
これらは、髪の主成分であるケラチンの合成を助けたり、頭皮の抗酸化作用を高めて老化(酸化ストレス)を防いだりする役割を担います。
さらに、保湿成分であるヒアルロン酸やコエンザイムQ10などを配合すると、乾燥して硬くなった頭皮に潤いと弾力を与え、健康な髪が根付きやすい肥沃な土壌を整えられます。
このように、頭皮注射は単に髪を生やすだけでなく、頭皮環境そのものを改善するためのトータルケアとしての側面も持っており、髪質の根本的な改善に寄与します。
治療の流れと実際の施術について
治療を検討する際、実際の施術がどのように進むのか、痛みはあるのかといった具体的なイメージを持つと安心感につながります。
短時間で終了し、日常生活への影響が少ない点もこの治療の特徴です。
カウンセリングと頭皮診断
治療の第一歩は、専門医による丁寧なカウンセリングから始まります。現在の髪の悩み、薄毛が気になり始めた時期や生活習慣、ストレスの有無や過去の病歴などを詳しくヒアリングします。
女性の薄毛は複雑な要因が絡み合っているため、ここでの対話が非常に重要です。
- 専門医による詳細な問診とヒアリング
- マイクロスコープを用いた頭皮環境の確認
- 一人ひとりの状態に合わせた治療計画の立案
続いて、マイクロスコープを使って頭皮の状態を拡大して確認します。肉眼では見えない毛穴の詰まりや炎症の有無、髪の太さのバラつき、一つの毛穴から生えている本数などをチェックします。
この検査によって、薄毛の進行度やタイプ(びまん性、FAGAなど)を正確に診断できます。
診断結果に基づき、注入薬剤の種類や回数、併用する内服薬などを提案し、費用や期間についても明確な説明が行われます。
痛みを抑える麻酔や冷却方法
頭皮に注射をすると聞くと、強い痛みを想像される方も多いかもしれません。しかし、近年の治療では痛みを最小限に抑えるための様々な工夫が凝らされています。
多くのクリニックで採用されているのが、施術部位を瞬時に冷却する方法です。冷気によって皮膚の感覚を一瞬麻痺させて、針を刺す瞬間の痛覚を鈍らせ、痛みを大幅に軽減します。
使用する針も髪の毛よりも細い特殊な極細針(33Gや34Gなど)を使用するため、刺入時の抵抗が少なく、痛みを感じにくくなっています。
また、針を使わずに高圧ジェットや電気パルスを利用して薬剤を深部まで浸透させる「ノーニードル」という手法を導入しているクリニックもあります。
痛みに特に敏感な方には、クリーム状の表面麻酔やブロック麻酔の併用も可能ですので、不安な場合は遠慮なく相談してみましょう。
施術時間とダウンタイムの目安
実際の注入にかかる時間は、範囲にもよりますがわずか10分から20分程度です。
受付からカウンセリング、施術、帰宅の準備を含めても1時間以内で終わるケースが多く、仕事帰りや買い物の合間に気軽に立ち寄って受けられます。
忙しい現代女性にとって、時間の負担が少ない点は大きなメリットです。
ダウンタイム(回復にかかる時間)もほとんどありません。
施術直後は頭皮に若干の赤みやポツポツとした注射痕が見られる場合がありますが、髪の毛で隠れる程度であり、数時間から半日程度で自然に引く方がほとんどです。
シャンプーや洗髪は当日から可能な場合が多いですが、薬剤の浸透を妨げないよう、施術後数時間は控えるよう指示されるときもあります。
パーマやカラーリングについては、頭皮への刺激を避けるため、施術前後1週間程度空けることが推奨されます。
期待できる効果と実感までの期間
頭皮注射は比較的即効性を期待しやすい治療法ではありますが、髪の毛には成長サイクル(ヘアサイクル)があるため、効果を目で見て実感するまでには一定の期間が必要です。
焦らずに体の変化を観察し、段階的に現れる改善のサインを見逃さないことが、治療を前向きに続けるコツとなります。
初期脱毛と発毛のサイン
治療を開始して最初の1ヶ月から2ヶ月頃に、「初期脱毛」と呼ばれる一時的な抜け毛の増加が見られるときがあります。
これは副作用で悪化したのではなく、古く弱っていた髪が、毛根の奥で新しく生まれてきた強い髪に押し出されて抜ける現象です。
つまり、ヘアサイクルが正常に戻り、新しい髪の工場が本格的に稼働し始めたというポジティブなサインといえます。
初期脱毛はすべての人に起こるわけではありませんが、もし起こっても一時的なものですので、過度に心配せず治療を継続しましょう。
この時期を過ぎると毛穴から産毛のような新しい髪が生え始め、指で触れたときにチクチクとした感触を感じたり、頭皮の脂っぽさが改善されたりと、小さな変化が現れ始めます。
髪のハリ・コシの変化
発毛量が増える前の段階で、多くの患者さんが感じる変化として「髪質の改善」が挙げられます。
治療開始から3ヶ月程度経過すると、既存の髪に十分な栄養が行き渡り、根本から立ち上がるような力強いハリやコシが出てきます。
「毎朝のスタイリングでボリュームが出やすくなった」「髪を結んだ時のゴムの感触が以前より太く感じる」といった感想を持たれる方が多いのはこの時期です。
治療期間ごとの変化と目安
| 経過期間 | 頭皮と髪の状態 | 患者様が感じやすい変化 |
|---|---|---|
| 1ヶ月〜2ヶ月 | ヘアサイクルの正常化開始 | 一時的な抜け毛(初期脱毛)が起こる場合がある。頭皮の脂っぽさが減るなど環境変化を感じる。 |
| 3ヶ月〜4ヶ月 | 発毛開始と髪質改善 | 産毛が生えてくる。髪の根元に立ち上がりが生まれ、ハリやコシを実感しやすくなる。 |
| 6ヶ月以降 | 見た目のボリュームアップ | 地肌の透け感が改善される。ヘアスタイルを楽しめるようになり、周囲からも変化に気づかれる。 |
髪一本一本が内部から太く丈夫になるため、全体的なボリューム感がアップして見えます。
この変化は髪を洗っている時や、ドライヤーで乾かしている時に特に実感しやすく、治療の効果が目に見えて現れている確かな証拠となります。鏡を見るのが少しずつ楽しみになってくるのもこの頃からです。
見た目の変化が現れる時期
周囲の人から「髪が増えた?」「雰囲気が若々しくなった」と気づかれるような明確な見た目の変化は、一般的に治療開始から6ヶ月前後で現れます。
この頃になると新しく生えた髪がある程度の長さに成長し、地肌の露出が目立たなくなってきます。分け目が目立たなくなり、ヘアアレンジの幅も広がるでしょう。
もちろん個人差はあり、早い方では4ヶ月程度で大きな変化を感じる場合もありますが、髪の伸びる速度は1ヶ月に約1センチ程度ですので、劇的な変化には半年から1年程度のスパンを見積もっておくのが現実的です。
治療開始前と現在の写真を比較するとご自身の変化を客観的に確認できるため、定期的に記録を残しておくと良いでしょう。
治療計画の立て方と継続の重要性
薄毛治療は「一度注射を打てば終わり」というものではありません。効果を最大限に高め、その後も良い状態を長期的に維持するためには、適切な頻度と期間を設定した治療計画が必要です。
医師と相談しながら、生活スタイルや予算に合わせた無理のない計画を立てましょう。
集中治療期間とメンテナンス期間
治療は大きく分けて「発毛を促す集中治療期間」と「生えた髪を維持するメンテナンス期間」の2段階で考えます。
最初の半年間は、眠っている毛根を強力に刺激し、乱れたヘアサイクルを正常化させる必要があるため、2週間から1ヶ月に1回程度の頻度で集中的に施術を行うことが推奨されます。
この期間にしっかりと土台を作る取り組みが、最終的な仕上がりを左右するといっても過言ではありません。
一般的な治療スケジュールの例
| 段階 | 推奨頻度 | 目的とアクション |
|---|---|---|
| 導入期(1〜3ヶ月目) | 2週〜4週に1回 | 発毛スイッチを入れる最重要期間。集中的に栄養を与え、ヘアサイクルの乱れを正す。 |
| 成長期(4〜6ヶ月目) | 4週に1回 | 生えてきた髪を太く育てる期間。効果が見え始めるため、焦らずじっくりと継続する。 |
| 維持期(7ヶ月目以降) | 2ヶ月〜3ヶ月に1回 | 改善した状態をキープする期間。経過を見ながら徐々に間隔を空け、メンテナンスへ移行する。 |
ある程度満足のいく毛量まで回復した後は、その良好な状態をキープするためのメンテナンス期間に入ります。この段階では、施術の間隔を2ヶ月、3ヶ月と徐々に空けていけます。
完全に治療をやめてしまうのではなく定期的なケアを続けると、再び薄毛が進行するのを防ぎ、若々しい髪を長く保てます。
予算に応じたコース設定
頭皮注射は自由診療であるため、クリニックによって料金設定やコース内容は異なります。高額なコース契約だけが正解ではなく、1回ごとの支払いが可能なプランや、モニター価格を利用できる場合もあります。
大切なのは、経済的に無理をして途中で断念してしまうのを避けることです。
内服薬や外用薬との併用で注射の回数を調整するなど、予算内で最大の効果を出せるような組み合わせを医師に相談しましょう。
例えば、最初の3ヶ月だけ注射を集中的に行い、その後は内服薬メインで維持するといったプランも可能です。
信頼できるクリニックであれば、患者さんの経済状況を考慮した現実的かつ持続可能なプランを提案してくれるはずです。
途中での中断が及ぼす影響
治療の効果が現れ始めた矢先に自己判断で治療を中断してしまうと、せっかく正常化しつつあったヘアサイクルが再び乱れ、元の状態に戻ってしまうリスクがあります(リバウンド)。
特に、治療開始初期はまだ毛根が安定していないため、継続的な刺激が必要です。薄毛治療はマラソンのようなもので、ペースを調整しながらでも走り続ける努力が重要です。
もし転勤や多忙などで通院が難しくなった場合は完全にやめるのではなく、内服薬のみに切り替えたり、ホームケア製品を医療機関専売のものに変更したりするなど、何らかの形で医療的なケアを継続する方法があります。
中断を検討する際は必ず担当医師に相談し、急激な悪化を防ぐための対策を講じましょう。
副作用と施術を受ける前の注意点
頭皮注射は比較的安全性の高い治療ですが、医療行為である以上、副作用やリスクがゼロではありません。
事前にどのような症状が出る可能性があるかを知っておくと、万が一の際も冷静に対処できます。また、自身の体調や体質によっては施術を受けられない場合もあるため、事前の確認が大切です。
施術後の赤みや腫れ
頭皮への注入治療において最も一般的な反応は、施術部位の赤みや腫れです。これは針を刺すという物理的な刺激や、薬剤が入るために起こる一時的な反応です。
多くの場合、数時間から1日程度で自然に治まりますが、稀に数日間続くケースもあります。
- 施術直後の一時的な赤みや熱感
- 稀に生じる小さな内出血(青あざ)
- 血行促進に伴う一時的なかゆみ
内出血が生じた場合でも、頭皮は髪の毛で覆われているため目立つことは少なく、1週間から2週間程度で消失します。
また、薬剤によって血行が良くなるため、一時的にかゆみを感じる方もいます。
この時、患部を爪で強く掻いてしまうと雑菌が入る原因となるため、冷たいタオル等で冷やすか、軽く叩く程度にして落ち着かせましょう。
アレルギー反応のリスク
注入する薬剤に含まれる成分に対して、アレルギー反応を起こす可能性もゼロではありません。
特に、過去に薬や化粧品で肌トラブルを起こした経験がある方や、特定の物質にアレルギーをお持ちの方は注意が必要です。問診の際に、ご自身のアレルギー歴を正確に医師に伝えてください。
一部の成長因子製剤にはヒト由来の成分が含まれる場合があります。これらは厳格な感染症検査をクリアし、滅菌処理された安全なものですが、使用にあたっては同意書による確認が必要です。
心配な方や重度のアレルギー体質の方は、本格的な治療を始める前に少量の薬剤でパッチテストを行えるか、クリニックに相談してみると良いでしょう。
妊娠中・授乳中の対応
妊娠中や授乳中はホルモンバランスが非常に特殊な状態にあり、胎児や乳児への安全性を最優先するため、使用できる薬剤に制限があります。
特に発毛成分であるミノキシジルは、胎児の心臓に負担をかける可能性があるため、使用は禁忌とされています。
産後の薄毛(分娩後脱毛症)に悩む女性は多いですが、これは一時的なホルモン変動によるもので、通常は自然回復します。回復が遅く治療を希望される場合は、授乳終了後に治療を開始するのが一般的です。
妊娠の可能性がある場合や、現在妊活中の方も、使用する薬剤を調整する必要がありますので必ず医師にその旨を伝えてください。
クリニック選びで重視すべきポイント
頭皮注射による治療は、どのクリニックで受けても同じ結果になるわけではありません。使用する薬剤の種類、注入技術、医師の経験値によって、効果や満足度は大きく変わります。
後悔しないために、以下のポイントを基準にして信頼できるクリニックを選びましょう。
注入方法の種類と痛みの少なさ
同じ頭皮注射でも、医師が手作業で注射器を使う「手打ち法」、専用の注入機器を使う「メソガン法」、電気パルスを使う「ノーニードル法」など、様々な手法が存在します。
痛みに弱い方は、痛みを最小限に抑える最新機器(U225など)を導入しているクリニックや、笑気麻酔などのオプションが充実している場所を選ぶと、ストレスなく通院を続けられます。
一方、機械打ちの場合は深さや注入量を均一に保てるメリットがあり、手打ちの場合は医師が頭皮の状態を見極めながら気になる部分に重点的に注入できるメリットがあります。
それぞれの特徴を丁寧に説明し、あなたの希望や痛みの感受性に沿った方法を提案してくれるかどうかが、良いクリニックを見極める判断基準となります。
明確な料金体系と説明
薄毛治療は継続が必要なため、総額でどのくらいの費用がかかるかを事前に把握しておくことが非常に重要です。
1回あたりの料金だけでなく、コース料金や再診料、検査代や併用する薬代などがホームページや説明資料に明記されているかを確認しましょう。
不透明な追加料金が発生しないか、高額な医療ローン契約を強引に勧めてこないかもチェックポイントです。
クリニック選びのチェック
| 確認項目 | チェックする理由 | 理想的な条件 |
|---|---|---|
| 注入技術と機器 | 痛みや効果の出方に影響するため | 痛みの少ない最新機器や、実績豊富な医師による施術が選べる。 |
| 費用の透明性 | 経済的な計画を立てるため | 総額が明確で、無理な勧誘がなく、予算に合わせた提案がある。 |
| 環境と対応 | 継続的な通院のストレスを減らすため | プライバシーが守られ、スタッフの対応が親切で相談しやすい。 |
初回のお試し価格が極端に安くても、2回目以降が高額になるケースもあります。
「ホームページの表示価格と実際の見積もりが大きく違う」といったトラブルを避けるため、カウンセリング時にしっかりと見積書をもらい、納得した上で契約へ進むと良いです。
通いやすさとプライバシーへの配慮
治療は数ヶ月にわたって続くため、自宅や職場からのアクセスの良さは重要な要素です。無理なく通える立地であるか、予約は希望通りに取りやすいかを確認しましょう。
また、薄毛の悩みは非常にデリケートなため、待合室で他の患者さんと顔を合わせないような動線の工夫がされているか、個室でカウンセリングが受けられるかといったプライバシーへの配慮も、精神的な負担を減らすために大切なポイントです。
スタッフや医師の対応が丁寧で、些細な質問に対しても親身に答えてくれる環境であれば、不安を感じた時にも相談しやすく、安心して治療を続けられます。
治療は二人三脚ですので、信頼関係を築けるクリニックを選んでください。
Q&A
- Q痛みはどの程度ですか?
- A
痛みの感じ方には個人差がありますが、多くのクリニックでは冷却装置や極細の針、あるいは麻酔を使用して痛みを最小限に抑える工夫をしています。
「チクッとする程度」「爪で押されるような感覚」と表現される方が多く、我慢できないほどの激痛を伴うケースはほとんどありません。
痛みに特に敏感な方は、事前に相談すると麻酔クリームの使用などの対策が可能です。
- Q治療をやめると元に戻りますか?
- A
薄毛治療は加齢による変化に抗う行為であるため、治療を完全にやめて何もしなくなると時間の経過とともに効果は薄れ、徐々に元の状態に戻っていく可能性があります。
しかし、急激に全ての髪が抜けるわけではありません。せっかく生えた髪を維持するためには、注射の間隔を空けてメンテナンスを行ったり、内服薬や外用薬でケアを継続したりするのがおすすめです。
- Q白髪にも効果はありますか?
- A
頭皮注射は主に「発毛」や「育毛」を目的としており、黒髪を作る色素細胞(メラノサイト)を直接復活させる治療ではありません。
そのため、すでに白髪になっている髪を黒く戻す直接的な効果は期待しにくいのが現状です。
ただし、頭皮環境が改善され血流が良くなるため、これから生えてくる髪が健康的になり、結果的に白髪の発生を遅らせたり、髪にツヤが出たりする副次的な効果を感じる方はいます。
- Q他の治療薬と併用できますか?
- A
多くの場合で併用が可能です。むしろ、内服薬や外用薬と頭皮注射を組み合わせると、相乗効果が期待できます。
内側からのケアと外側からの直接的なアプローチを同時に行うと、より早くより確実な発毛を目指せます。
ただし、現在服用している薬がある場合は飲み合わせの確認が必要ですので、必ず医師に伝えてください。
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