分け目が目立つ、髪全体のボリュームが減ってきたなど、女性の薄毛の悩みは深刻です。育毛剤やサプリメントを試しても、なかなか変化を感じられずにいる方も多いのではないでしょうか。

そんな方のために、薄毛治療を行うクリニックでは、頭皮に直接有効成分を届ける「メソセラピー」という育毛治療を提供しています。

この記事では、女性の薄毛治療におけるメソセラピーの具体的な効果、費用、そして「効果がない」と感じる場合の理由まで、専門的な知見から詳しく解説します。

女性の薄毛とメソセラピーの基本

女性の薄毛は男性とは異なる原因で進行するため、適切な治療法の選択が重要です。

メソセラピーは、有効成分を頭皮に直接届けて薄毛の原因に働きかけ、健やかな髪を育む土台作りをサポートする治療法です。

女性特有の薄毛の原因

女性の薄毛は、全体的に髪の密度が低下する「びまん性脱毛症」が中心です。

その背景には、ホルモンバランスの変動や生活習慣など、複数の要因が複雑に絡み合っています。

女性の薄毛を引き起こす主な要因

要因内容具体例
ホルモンバランスの乱れ女性ホルモンの減少により、髪の成長が妨げられる。産後、更年期、ピルの服用中止など
ストレス自律神経の乱れが血行不良を引き起こし、頭皮に栄養が届きにくくなる。仕事、家庭環境、人間関係の悩み
生活習慣の乱れ食生活の偏りや睡眠不足が、髪の成長に必要な栄養素の欠乏につながる。過度なダイエット、外食中心、不規則な睡眠

メソセラピーが女性の髪に働きかける仕組み

メソセラピー育毛治療は、注射や特殊な機器を用いて、髪の成長に有効な成分を頭皮の奥深くまで直接注入する治療法です。

外用薬のように頭皮の表面で成分が留まることなく、髪を生み出す毛母細胞にダイレクトに栄養を届けます。その作用によって細胞の活動を活発にし、強く抜けにくい髪の育成を促します。

クリニックでは、患者さん一人ひとりの頭皮状態に合わせて適した成分を配合します。

どのような方にメソセラピーが向いているか

メソセラピーは、幅広い薄毛の悩みに対応できる可能性がありますが、特に以下のような方に適しています。ご自身の状況と照らし合わせて、治療を検討する際の参考にしてください。

  • 髪のハリやコシがなくなってきた
  • 抜け毛が増えて、髪全体のボリュームダウンを感じる
  • 飲み薬や塗り薬だけでは、十分な変化を感じられなかった
  • より積極的な育毛治療に取り組みたい

メソセラピー育毛の具体的な効果とは?

メソセラピー育毛治療を継続すると頭皮環境が改善され、髪質そのものに良い変化が現れます。

効果の現れ方には個人差がありますが、多くの方が髪の質の向上を実感しています。

髪のハリ・コシ・ツヤの改善

頭皮に直接栄養を補給することで毛母細胞が活性化し、一本一本の髪が太く、強くなります。

髪の内部構造がしっかりするため、ハリやコシが生まれてスタイリングしやすい健康的な髪質へと導きます。

また、頭皮の血行が促進されて髪表面のキューティクルも整いやすくなり、自然なツヤが戻ってきます。

抜け毛の減少とヘアサイクルの正常化

薄毛が進行している頭皮では、髪が十分に成長する前に抜けてしまう「成長期」の短縮が起きています。メソセラピーは、この乱れたヘアサイクルを正常な状態に戻す働きをします。

成長期が長くなると髪がしっかりと太く長くなる時間を確保でき、結果として抜け毛の減少につながります。

メソセラピーによるヘアサイクルの変化

状態治療前(乱れたサイクル)治療後(正常なサイクル)
成長期短い(数ヶ月〜1年)長い(2年〜6年)
髪の状態細く、弱々しい太く、健康に成長する
抜け毛早期に抜けてしまう寿命を全うして自然に抜ける

発毛・育毛の促進

メソセラピーで注入する薬剤には、ミノキシジルや成長因子(グロースファクター)など、発毛を強力にサポートする成分が含まれています。

これらの成分が毛母細胞に直接作用し、休止期にある毛根を刺激して新たな髪の生成を促します。

継続的な治療により髪の密度が高まり、地肌が目立ちにくくなる変化を期待できます。

「効果がない」と感じる場合の主な原因と対策

メソセラピーで効果がないと感じる主な原因は、「治療回数の不足」「薄毛原因と薬剤のミスマッチ」「ホームケア不足」の3つが考えられます。

これらの原因を正しく理解し、適切に対処すると、治療の効果を最大限に引き出せます。

治療回数が不足している可能性

メソセラピーは、一度の施術で劇的な変化が現れる治療ではありません。乱れたヘアサイクルを正常化し、新しい髪が成長するには時間がかかります。

多くの場合、効果を実感し始めるまでに複数回の治療が必要です。

一般的には、2週間から1ヶ月に1回のペースで、少なくとも4〜6回程度の治療継続が推奨されます。

治療回数と効果実感の目安

治療回数期待できる変化期間の目安
1〜3回初期変化(抜け毛の減少、髪のハリ)〜3ヶ月
4〜6回発毛・育毛の実感3〜6ヶ月
6回以降効果の定着と維持6ヶ月〜

薄毛の原因と注入成分が合っていない

女性の薄毛の原因は多岐にわたるため、原因に応じた成分を配合することが重要です。

例えば、血行不良が主な原因であれば血行促進成分を、毛母細胞の働きが弱い場合は成長因子を中心にするなど、的確な診断に基づいた薬剤の選択が効果を左右します。

事前のカウンセリングで医師としっかり話し合い、ご自身の状態に合った治療計画を立てましょう。

ホームケアや生活習慣の見直しも重要

メソセラピーは強力な治療法ですが、それだけに頼るのではなく、日々のセルフケアも効果を支える上で欠かせません。

バランスの取れた食事や十分な睡眠、ストレス管理など、体の内側からのケアを同時に行うと、治療効果は何倍にも高まります。

クリニックでの治療とご自宅でのケアは、美しい髪を育てるための両輪と考えてください。

メソセラピーの施術内容と流れ

メソセラピーの施術は、専門医によるカウンセリングと頭皮診断から始まります。

その後、患者さん一人ひとりに合わせた治療計画に基づき、痛みを最小限に抑えながら有効成分を頭皮に注入します。

カウンセリングから施術開始まで

まず、専門の医師が頭皮の状態をマイクロスコープなどで詳しく診察し、薄毛の原因を診断します。

その後、生活習慣やお悩みについて丁寧にヒアリングし、その人に会った治療計画を提案します。

治療内容や費用について十分にご納得いただいた上で、施術を開始します。

  • 問診・カウンセリング
  • 頭皮・毛髪の診察
  • 治療計画の提案と説明
  • 施術同意書の確認
  • 施術開始

注入方法の種類と特徴

薬剤を頭皮に注入する方法には、いくつか種類があります。

それぞれの方法にメリット・デメリットがあり、クリニックの方針や患者さんの希望によって使い分けます。

主な注入方法の比較

注入方法特徴痛み
手打ち(注射器)医師が気になる部分に手動で細かく注入。深度や量を調整しやすい。チクっとした痛みを感じやすい。
ダーマペンなど極細の針がついた機器で、広範囲に均一かつスピーディーに注入。痛みは比較的少ない。
ノーニードル法電気の力を利用して針を使わずに成分を浸透させる。痛みはほとんどない。

施術中の痛みやダウンタイムについて

痛みの感じ方には個人差がありますが、注入方法によってはチクっとした刺激を感じる場合があります。

ただ、多くのクリニックでは痛みを最小限に抑えるため、施術前に頭皮を冷却するなどの工夫をしています。

施術直後は頭皮に若干の赤みが出るときがありますが、通常は数時間から翌日には治まります。日常生活に大きな支障はなく、施術当日からシャワーも可能です。

治療にかかる費用と期間の目安

メソセラピーの費用は1回あたり数万円からが相場で、効果を実感するためには複数回の治療が必要です。

総額や期間は治療計画によって異なりますが、カウンセリングでご自身の予算に合わせた計画を立てられます。

1回あたりの費用相場

メソセラピーの費用は注入する薬剤の種類や量、クリニックの方針によって変動します。あくまで目安ですが、1回あたりの費用相場は数万円から十数万円程度です。

多くのクリニックでは、複数回の治療をセットにしたコース料金を設定しており、1回あたりの費用を抑えられます。

治療完了までの推奨回数と総額

前述の通り、多くの場合、効果を実感するためには複数回の治療が必要です。

一般的には、初期集中治療として6回程度、その後は効果を維持するために数ヶ月に1回のメンテナンス治療を推奨するケースが多いです。

治療計画によって大きく異なりますが、総額として数十万円程度を見込んでおくとよいでしょう。

費用と期間のモデルケース

項目内容
1回あたりの費用50,000円〜100,000円
推奨回数6回〜12回(初期治療)
総額の目安300,000円〜1,200,000円

クリニック選びと費用対効果の考え方

クリニックを選ぶ際は単純な料金の安さだけでなく、実績やカウンセリングの丁寧さ、使用している薬剤の質などを総合的に判断することが重要です。

ご自身の薄毛の原因を正確に診断し、適した治療法を提案してくれる信頼できる医師を見つけると、結果的に費用対効果の高い治療につながります。

メソセラピーと他の薄毛治療との比較

メソセラピーは、内服薬や外用薬と比べて、気になる部分へ直接的かつ集中的に有効成分を届けられる点が大きな特徴です。

他の治療法と組み合わせれば、相乗効果を期待できます。

内服薬・外用薬治療との違い

内服薬や外用薬は、自宅で手軽に続けられる点が大きなメリットです。

しかし、効果が頭皮全体に緩やかに現れるのに対し、メソセラピーは気になる部分に直接、高濃度の有効成分を届けられるため、より集中的なケアが可能です。

また、内服薬に抵抗がある方にとっても、メソセラピーは有効な選択肢となります。

各治療法の比較

治療法アプローチ特徴
メソセラピー頭皮に直接有効成分を注入即効性が高く、部分的な集中ケアが可能
内服薬体の中からヘアサイクルを整える全身に作用し、継続が容易
外用薬頭皮に塗布し毛根に働きかける自宅で手軽にケアできる

自毛植毛との相違点

自毛植毛は、後頭部などの髪が残っている部分から毛根ごと組織を採取し、薄毛の部分に移植する外科手術です。

薄毛がかなり進行した場合に効果的な方法ですが、費用が高額になり、体への負担も大きい点が異なります。

メソセラピーは、今ある髪を元気に育てる「育毛」治療であり、外科的な処置を伴わない点が大きな違いです。

複数の治療を組み合わせるメリット

それぞれの治療法には長所があり、単独で行うよりも複数を組み合わせると相乗効果を期待できます。

例えば、内服薬で体の中からヘアサイクルを整えつつ、メソセラピーで特に気になる部分に栄養を集中投下するとより早く育毛効果を実感できる可能性があります。

医師と相談の上、ご自身に合ったコンビネーション治療を検討するのも良いでしょう。

生活習慣がメソセラピーの効果を左右する?心と身体のつながり

メソセラピーの効果を最大限に引き出すには、ストレス管理やバランスの取れた食事、質の良い睡眠といった生活習慣が非常に重要です。

心と身体の状態は頭皮環境に直結しており、日々のセルフケアが治療結果を大きく左右します。

ストレスが頭皮環境に与える影響

悩みや不安は知らず知らずのうちに体を緊張させ、血管を収縮させます。頭皮の毛細血管は特に細いため、ストレスの影響を受けやすく、血行不良に陥りがちです。

血行が悪くなると髪の成長に必要な酸素や栄養が毛根まで届かなくなり、メソセラピーでせっかく注入した有効成分も十分に活用されません。

リラックスできる時間を作り、心穏やかに過ごす工夫が、何よりの育毛ケアになります。

食生活と髪の健康の関係性

髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。美しい髪を育てるには、その材料となる栄養素を食事からきちんと摂取する生活が基本です。

なかでも、タンパク質やビタミン、ミネラルは髪の成長に欠かせません。インスタント食品や偏った食事を続けていては、どんなに良い治療を受けても髪を作るための材料が不足してしまいます。

髪の成長を助ける栄養素と食品

栄養素働き多く含む食品
タンパク質髪の主成分となる肉、魚、卵、大豆製品
亜鉛タンパク質の合成を助ける牡蠣、レバー、牛肉
ビタミンB群頭皮の新陳代謝を促す豚肉、うなぎ、玄米

睡眠の質が育毛に果たす役割

髪の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。眠り始めの深いノンレム睡眠の間に最も多く分泌されるため、単に長く眠るだけでなく、「睡眠の質」を高めることが重要です。

寝る前のスマートフォン操作を控えたり、寝室の環境を整えたりするなど、質の良い睡眠を確保する工夫をしましょう。

治療を受ける前に知っておきたい注意点と副作用

メソセラピーは比較的安全性の高い治療ですが、医療行為である以上、副作用のリスクが全くないわけではありません。

治療を始める前に考えられる副作用や注意点を確認し、安心して治療に臨めるように準備しておきましょう。

主な副作用とその対処法

施術に伴う一般的な副作用として、頭皮の赤みやかゆみ、腫れや内出血などが挙げられます。これらは通常、一時的なもので数日以内に自然に軽快します。

もし症状が長引く場合や、強い痛みを感じる場合は速やかにクリニックに相談してください。

アレルギー反応が起こる可能性もゼロではないため、アレルギー体質の方は事前に医師に申告することが重要です。

治療を受けられない方の条件

安全に治療を受けていただくため、以下に該当する方はメソセラピーを受けられない場合があります。

  • 妊娠中・授乳中の方
  • 重度の皮膚疾患や感染症が頭皮にある方
  • 使用する薬剤に対してアレルギーのある方
  • 血液を固まりにくくする薬を服用中の方

ご自身の健康状態について、カウンセリング時に正確にお伝えください。

施術後の過ごし方で気をつけること

施術当日は頭皮への刺激を避けるため、激しい運動や飲酒、サウナなど血行が良くなる行為は控えてください。

洗髪は当日から可能ですが、爪を立てずに指の腹で優しく洗うように心がけましょう。

また、パーマやカラーリングは、頭皮の状態が落ち着く施術後1週間程度は避けることをお勧めします。

メソセラピー育毛に関するよくある質問

さいごに、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q
治療をやめたら元に戻りますか?
A

メソセラピーによって改善した頭皮環境やヘアサイクルも、治療を完全にやめてしまうと、加齢などにより徐々に元の状態に戻っていく可能性があります。

そのため、初期の集中治療で得られた良好な状態を維持するために、数ヶ月に1回程度のメンテナンス治療をおすすめしています。

ホームケアと併せて、長期的な視点で髪の健康を維持していきましょう。

Q
痛みはどのくらいありますか?
A

使用する注入機器や麻酔の有無によって痛みの感じ方は異なりますが、多くの方が我慢できる程度の軽い痛みです。

注射の場合はチクっとした刺激を感じますが、多くのクリニックでは冷却装置を用いるなど、痛みを最小限に抑える工夫をしています。

痛みに不安が強い方には、針を使わない注入方法も提案可能な場合があるため、気軽に相談してみましょう。

Q
他の治療と併用できますか?
A

併用できます。むしろ、内服薬や外用薬と組み合わせると、それぞれの作用が相乗効果を生み、より育毛効果を期待できます。

例えば、内服薬で薄毛の進行を抑制しつつ、メソセラピーで積極的に発毛を促すといったコンビネーション治療が非常に有効です。

Q
効果を持続させるにはどうすれば良いですか?
A

治療で得られた効果を長く維持するためには、定期的なメンテナンス治療に加えて、ご自身でのセルフケアが重要です。

バランスの取れた食事や質の良い睡眠、ストレス管理を日頃から心がけ、健やかな髪が育つための生活習慣の継続が、何よりも効果を持続させる秘訣です。

クリニックでの治療とご自身のケアの両輪で、髪の健康を守っていきましょう。

参考文献

MOFTAH, N., et al. Mesotherapy using dutasteride‐containing preparation in treatment of female pattern hair loss: photographic, morphometric and ultrustructural evaluation. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2013, 27.6: 686-693.

HUNTER, Nahla, et al. Comparing the efficacy of mesotherapy to topical minoxidil in the treatment of female pattern hair loss using ultrasound biomicroscopy: a randomized controlled trial. Acta Dermatovenerologica Croatica, 2019, 27.1: 1-1.

TANG, Ziyuan, et al. Current application of mesotherapy in pattern hair loss: a systematic review. Journal of cosmetic dermatology, 2022, 21.10: 4184-4193.

GUPTA, Aditya K., et al. Systematic review of mesotherapy: a novel avenue for the treatment of hair loss. Journal of Dermatological treatment, 2023, 34.1: 2245084.

RAMOS, Paulo Müller, et al. Female-pattern hair loss: therapeutic update. Anais brasileiros de dermatologia, 2023, 98: 506-519.

MARZBAN, Sima; AMANI, Bahman; ASGHARZADEH, Asra. Safety and efficacy of mesotherapy in the treatment of androgenetic alopecia: a systematic review. Health Technology Assessment in Action, 2017.

ALEDANI, Esraa M., et al. Mesotherapy as a promising alternative to minoxidil for androgenetic alopecia: a systematic review. Cureus, 2024, 16.5.

GAJJAR, Prachi Chetankumar, et al. Comparative study between mesotherapy and topical 5% minoxidil by dermoscopic evaluation for androgenic alopecia in male: a randomized controlled trial. International journal of trichology, 2019, 11.2: 58-67.