オゼンピックの在庫不足の現状と見通し|処方できない場合の代替治療

オゼンピックの在庫不足の現状と見通し|処方できない場合の代替治療

「オゼンピックを処方してもらいたいのに、在庫がないと言われた」——そんな経験はありませんか。2022年から続いた供給不足は、多くの患者さんを不安にさせました。

2025年2月にFDAが不足解消を宣言し、海外では供給が安定しつつあります。一方で日本国内では依然として地域差があり、手に入りにくい状況も残っています。

この記事では、オゼンピックの在庫不足がなぜ起きたのか、今後の見通し、そして処方できない場合に検討できる代替治療について、肥満症を専門とする医師の視点からわかりやすく解説します。

目次 Outline

オゼンピックの在庫が不足した背景と原因を振り返る

オゼンピックの在庫不足は、製造拠点のトラブルと適応外使用の急増が重なって発生しました。どちらか一方だけでは、これほど深刻な供給不足にはならなかったでしょう。

欧州の製造拠点でなぜ生産が止まったのか

オゼンピック皮下注SD(セマグルチド)は、ノボノルディスク社が製造販売する2型糖尿病治療薬です。製造工程の一部は欧州の提携企業に委託されていました。

2021年12月、この提携企業がFDA(米国食品医薬品局)の査察でGMP(医薬品の製造管理基準)上の指摘を受け、製造と輸出を一時的に中止すると報告しました。その結果、2022年3月頃から日本国内でもSD製剤の出荷調整・出荷停止が始まったのです。

適応外使用の急増が供給を圧迫した

もう一つの大きな要因は、ダイエット目的での適応外使用です。オゼンピックはあくまで2型糖尿病の治療薬として承認されています。しかしSNSやメディアで「やせる薬」として話題になり、美容・痩身クリニックでの需要が急増しました。

日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は「美容・痩身・ダイエット等を目的とした適応外使用は控えるように」と繰り返し注意喚起を行いました。適応外使用による在庫の偏りが、本来治療を必要とする糖尿病患者さんの薬へのアクセスを妨げたのです。

オゼンピックの在庫不足が起きた経緯

時期出来事
2021年12月欧州の提携製造企業がFDA指摘を受け製造・輸出を一時中止
2022年2月日本糖尿病学会が出荷調整への対応を発表
2022年3月SD製剤(0.25mg・0.5mg・1.0mg)の出荷停止
2023年5月新規格オゼンピック皮下注2mgが発売再開
2025年2月FDAがセマグルチド注射剤の供給不足解消を宣言

日本糖尿病学会はどう対応したのか

日本糖尿病学会は、医療現場が混乱しないよう迅速に動きました。代替薬への切り替え方法や、切り替え時の投与開始量に関する情報を公式サイトで公開しています。

さらに厚生労働省に対して、美容クリニック等での不適切な大量確保を防ぐ対策を要望しました。糖尿病患者さんへの薬の安定供給を守ろうとする姿勢が明確に示されたといえるでしょう。

SD製剤の販売終了と2mg製剤への切り替え

その後、従来のSD製剤(使い切りタイプ)は経過措置期間を経て販売が終了しました。代わりに登場したのが、オゼンピック皮下注2mg(複数回使用タイプ)です。

新製剤は1本で複数回投与できるため、コストや利便性の面でメリットがあります。ただし使用前に針の装着や空打ちが必要になるなど、操作方法が従来と異なるため、医師や薬剤師からの指導をしっかり受けてください。

オゼンピックの在庫状況は2026年現在どうなっているのか

2026年4月時点で、海外ではセマグルチドの供給不足は解消されたと公式に発表されています。日本国内でも流通は改善しつつありますが、地域や医療機関によって差が残っています。

海外ではFDAが供給不足の解消を宣言した

2025年2月21日、FDAはセマグルチド注射製剤(オゼンピックおよびウゴービ)を医薬品不足リストから除外しました。約3年にわたった不足がようやく公式に解消されたのです。

ノボノルディスク社による60億ドル以上の製造設備拡大投資が実を結び、現在の需要に十分対応できるだけの生産体制が整ったとFDAは判断しました。

日本国内の流通は安定を取り戻しつつある

日本国内では、2023年にオゼンピック皮下注2mgが発売されて以降、供給状況は徐々に改善しています。糖尿病の専門医を中心に処方が可能な医療機関も増えてきました。

ただし地域によっては在庫が潤沢とはいえない場合もあるため、処方を希望する方はかかりつけ医に早めに相談することをおすすめします。

2mg製剤のペン型注入器は手に入りやすくなった

複数回使用できるペン型の2mg製剤は、SD製剤と比べて流通が安定しやすい構造になっています。1本で0.25mgなら8回、0.5mgなら4回、1.0mgなら2回使用できるため、医療機関での在庫管理もしやすくなりました。

とはいえ「確実に手に入る」と断言できる状況ではないため、処方の継続性を保つには主治医との連携が大切です。

オゼンピック各製剤の供給状況比較

製剤供給状況備考
SD製剤(0.25mg/0.5mg/1.0mg)販売終了経過措置期間は2025年3月末で終了
皮下注2mg流通改善中複数回使用ペン型。地域差あり

オゼンピックが手に入らないときに検討したいGLP-1受容体作動薬

オゼンピックの在庫が確保できない場合でも、同じGLP-1受容体作動薬(腸から分泌されるホルモンの働きを強めて血糖値を下げ、食欲を抑える薬のグループ)には複数の選択肢があります。主治医と相談しながら、ご自身に合った代替薬を検討しましょう。

リベルサス(経口セマグルチド)は飲み薬として注目される

リベルサスは、オゼンピックと同じセマグルチドを有効成分とする飲み薬です。注射に抵抗がある方にとって、大きなメリットがあるでしょう。

朝の空腹時にコップ半分以下の水で服用し、服用後30分は飲食を避ける必要があります。吸収率を高めるため、この服用ルールを守ることがとても大切です。

トルリシティ(デュラグルチド)は週1回投与で使いやすい

トルリシティは、針の付いたペンを押し当てるだけで投与できるデバイスが特徴の週1回注射薬です。操作が簡単なので、自己注射に慣れていない方でも使いやすいと評価されています。

心血管イベントの抑制効果が大規模臨床試験(REWIND試験)で示されており、心臓や血管の健康が気になる方にも選択肢となります。

主なGLP-1受容体作動薬の比較

薬剤名投与方法投与頻度
オゼンピック(セマグルチド)皮下注射週1回
リベルサス(セマグルチド)経口毎日
トルリシティ(デュラグルチド)皮下注射週1回
ビクトーザ(リラグルチド)皮下注射毎日
マンジャロ(チルゼパチド)皮下注射週1回

ビクトーザ(リラグルチド)は長い実績がある

ビクトーザは、GLP-1受容体作動薬のなかでも古くから使われている毎日投与タイプの注射薬です。安全性データが豊富に蓄積されており、処方経験のある医師も多い薬剤といえます。

週1回投与のオゼンピックから毎日投与のビクトーザに切り替える場合は、投与開始量や副作用への配慮が必要になるため、必ず主治医の指示に従ってください。

マンジャロ(チルゼパチド)はGIP/GLP-1のダブル受容体に作用する

マンジャロは、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1の両方の受容体に働きかける、新しいタイプの注射薬です。臨床試験(SURMOUNT-1)では、15mg投与群で72週後に約20.9%の体重減少が確認されています。

体重減少効果が高い一方で、消化器系の副作用(吐き気・下痢など)が現れることもあります。主治医と効果・副作用のバランスを十分に話し合ったうえで使用を検討しましょう。

オゼンピックからの切り替え時に気をつけたい副作用と注意点

オゼンピックから別のGLP-1受容体作動薬に切り替えるとき、最も注意したいのは消化器症状と血糖値の変動です。自己判断で薬を変えることは絶対に避け、主治医に相談してください。

消化器症状はGLP-1受容体作動薬に共通する副作用

吐き気、嘔吐、下痢、便秘といった消化器症状は、GLP-1受容体作動薬全体に共通してみられる副作用です。多くの場合、投与開始から数週間以内に現れ、体が慣れるにつれて軽減していきます。

薬を切り替えると、いったん落ち着いていた消化器症状が再び出ることがあります。新しい薬は少量から開始し、ゆっくり増量するのが基本です。

切り替え後の血糖コントロールの変動に注意する

オゼンピックと代替薬では、血糖値を下げる力や効き方のスピードが異なります。切り替え直後は血糖コントロールが一時的に乱れることがあるため、普段よりもこまめに血糖値を確認しましょう。

とくに低血糖(めまい、冷や汗、手の震えなど)や高血糖(口の渇き、倦怠感など)のサインを見逃さないことが大切です。体調に変化を感じたら早めに主治医に連絡してください。

自己判断での中断はリバウンドにつながりやすい

「在庫がないから仕方ない」と薬を突然やめてしまうと、体重が元に戻るリバウンドや血糖値の急上昇が起こりやすくなります。STEP 1試験のフォローアップデータでは、セマグルチド投与中止後1年で、減った体重の約3分の2が戻ったと報告されています。

肥満症は慢性の疾患であり、長期的な治療継続が重要です。薬の入手が難しい時期でも、主治医と連携して治療を途切れさせない工夫をしましょう。

切り替え時に確認しておきたいポイント

  • 切り替え先の薬の投与開始量と増量スケジュール
  • 消化器症状が出た場合の対処法と相談先
  • 血糖値の自己測定の頻度と記録方法
  • 次回受診日までの薬の手持ち量の確認

オゼンピック以外の肥満症治療で体重を減らす方法

肥満症の治療は薬だけで完結するものではありません。食事療法・運動療法・行動療法が治療の土台であり、薬物療法はこれらを補助する位置づけです。薬が手に入らない時期こそ、生活習慣の見直しに取り組むチャンスかもしれません。

食事療法と運動療法は治療の土台になる

1日の摂取カロリーを適正に管理し、バランスの取れた食事を心がけることが基本です。急激な食事制限ではなく、1日あたり500kcal程度を無理なく減らすことが、長続きするコツでしょう。

運動は週150分以上の有酸素運動が推奨されます。ウォーキングや水泳など、膝や腰への負担が少ない運動を選ぶと続けやすくなります。

認知行動療法は食行動を見直すきっかけになる

認知行動療法とは、食べすぎや間食の習慣の裏にある思考パターンに気づき、行動を少しずつ変えていく心理療法です。「ストレスで食べてしまう」「夜中に冷蔵庫を開けてしまう」といった習慣に心当たりのある方には、とくに効果が期待できます。

肥満症の専門外来では、管理栄養士や公認心理師と連携した行動療法プログラムを提供している施設もあります。まずはかかりつけ医に相談してみてください。

薬物療法以外の肥満症治療法

治療法概要
食事療法適正カロリー管理と栄養バランスの改善。1日500kcal減を目安にする
運動療法週150分以上の有酸素運動。ウォーキングや水泳がおすすめ
認知行動療法食行動の思考パターンを見直し、習慣を改善する心理療法
肥満外科手術BMI35以上で健康障害がある場合に検討される外科的治療

肥満外科手術(バリアトリック手術)が適応になるケース

食事・運動・薬物療法で十分な効果が得られない重度肥満(一般的にBMI35以上で、糖尿病や睡眠時無呼吸症候群などの合併症を伴う場合)には、外科手術が選択肢に入ることがあります。

日本でも腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が行われており、術後に大幅な体重減少と合併症の改善が期待できます。手術には入院やフォローアップが必要になるため、専門施設での十分な説明を受けたうえで判断しましょう。

オゼンピックの在庫不足に備えて今からできる準備

今後も一時的に在庫が逼迫する可能性はゼロではありません。万が一のときに慌てないよう、普段から主治医や薬局と連携し、代替策を準備しておくことが安心につながります。

かかりつけ医と代替薬を事前に相談しておく

オゼンピックが手に入らなくなったとき、すぐに別の薬に切り替えられるよう、あらかじめ主治医と話し合っておきましょう。「もしオゼンピックが入手できなくなったら、どの薬に切り替えるか」を決めておくだけでも、心理的な安心感が違います。

お薬手帳にアレルギー情報や過去に使用した薬の記録を正確に残しておくことも、スムーズな切り替えに役立ちます。

複数の薬局に在庫を確認する習慣をつける

処方箋を受け取ったら、かかりつけ薬局だけでなく近隣の薬局にも在庫状況を確認してみてください。大手チェーン薬局では在庫の取り寄せ対応が可能な場合もあります。

また処方箋の有効期限は4日間(交付日を含む)です。期限切れで薬が受け取れないといったトラブルを防ぐためにも、早めの行動を心がけましょう。

自費診療のリスクを正しく把握する

ダイエット目的でオゼンピックを自費で処方している美容クリニックを見かけることがあるかもしれません。しかし自費診療では医師の管理体制や副作用への対応が十分でないケースも報告されています。

WHOも、GLP-1受容体作動薬の不足に乗じた偽造品の流通リスクについて警告を出しました。安全に治療を受けるためには、肥満症や糖尿病を専門とする医療機関を選ぶことが賢明です。

在庫不足に備えておきたい行動

  • 主治医と代替薬の優先順位を決めておく
  • 複数の薬局の連絡先をスマートフォンに登録しておく
  • 処方箋を受け取ったら当日中に薬局へ持参する
  • お薬手帳の記録を常に正確に保つ
  • 信頼できる医療機関で処方を受ける

オゼンピックの供給回復はいつ頃になるのか

グローバルではセマグルチドの供給不足は解消されましたが、日本を含む一部の地域では依然として流通の不均衡が残っています。今後の生産拡大計画や新薬の開発動向にも目を配っておくとよいでしょう。

ノボノルディスク社の製造拡大計画を確認する

ノボノルディスク社は、セマグルチド関連製品の需要増大に対応するため、世界各地で製造設備の増強を進めています。2026年から2027年にかけて追加の生産ラインが本格稼働する予定と報じられています。

日本市場向けの供給も、グローバルでの生産能力拡大に伴って安定する方向に向かうと見込まれます。

セマグルチドの供給見通し

項目見通し
グローバル供給2025年2月にFDAが不足解消を宣言。安定傾向
日本国内供給2mg製剤の流通は改善中。地域差あり
追加生産ライン2026〜2027年にかけて本格稼働の見込み
バイオシミラー2031年以降に登場する見通し

後発品(バイオシミラー)は2031年以降と見込まれる

オゼンピックのジェネリック(正確にはバイオシミラー)が登場すれば、価格の引き下げと供給量の増加が期待できます。しかし現在の特許保護期間を考えると、バイオシミラーの発売は2031年以降になる見通しです。

それまでの間は、ノボノルディスク社が唯一の供給元であり続けます。供給リスクを減らすためにも、主治医と相談して代替薬の選択肢を把握しておくことが安心につながるでしょう。

新薬の開発パイプラインにも注目が集まる

肥満症治療の分野では、GLP-1受容体作動薬以外にも新しいタイプの薬が開発中です。たとえばグルカゴン/GLP-1/GIP受容体の3つに作用するトリプルアゴニストや、アクチビンII型受容体に働きかけて筋肉量を保ちながら脂肪を減らす薬剤が臨床試験に進んでいます。

複数の治療選択肢が増えることで、1つの薬に供給が集中するリスクも分散されるかもしれません。今後の承認動向に注目していきましょう。

よくある質問

オゼンピックの在庫不足は2026年現在も続いていますか?

海外では2025年2月にFDAがセマグルチド注射製剤の供給不足解消を正式に宣言しており、グローバルでは供給が安定しています。日本国内でも2mg製剤の流通は改善しつつありますが、一部の地域や医療機関では在庫が十分でないケースが残っています。

処方を受けたい方は、事前にかかりつけ医や薬局に在庫状況を確認しておくと安心です。

オゼンピックの代わりになるGLP-1受容体作動薬にはどのような種類がありますか?

代替となるGLP-1受容体作動薬には、飲み薬のリベルサス(経口セマグルチド)、週1回注射のトルリシティ(デュラグルチド)、毎日注射のビクトーザ(リラグルチド)などがあります。

また、GIPとGLP-1の両方の受容体に作用するマンジャロ(チルゼパチド)も選択肢に含まれます。それぞれ投与方法や効果に違いがあるため、主治医と相談して自分に合った薬を選ぶことが大切です。

オゼンピックを自己判断で中断するとどうなりますか?

オゼンピック(セマグルチド)の投与を突然中断すると、体重のリバウンドや血糖値の急上昇が起こりやすくなります。臨床試験では、投与中止後1年間で減少した体重の約3分の2が戻ったと報告されています。

在庫が手に入らない場合でも、自己判断で薬をやめるのではなく、主治医に相談して代替薬への切り替えや治療計画の調整を行ってもらいましょう。

オゼンピックのバイオシミラー(後発品)はいつ頃発売される見込みですか?

オゼンピックの有効成分であるセマグルチドのバイオシミラーは、現在の特許保護期間を考慮すると、2031年以降に登場する見通しです。それまではノボノルディスク社が唯一の製造元となります。

バイオシミラーが発売されれば価格の低下や供給量の増加が期待できますが、まだ数年先の話です。現時点では代替のGLP-1受容体作動薬を主治医と検討しておくのが現実的な備えでしょう。

オゼンピックをダイエット目的で自費処方してもらうことにリスクはありますか?

オゼンピックは2型糖尿病治療薬として承認された医薬品であり、ダイエット目的での使用は適応外にあたります。自費の美容クリニックでは、副作用の管理体制や長期的なフォローアップが十分でない場合もあるため注意が必要です。

さらにWHOは、GLP-1受容体作動薬の不足に乗じた偽造品の流通リスクについて警告を発しています。安全に治療を受けるためには、肥満症や糖尿病を専門とする医療機関で正規の診療を受けることを強くおすすめします。

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この記事を書いた人 Wrote this article

大木 沙織 大木皮ふ科クリニック 副院長

皮膚科医/内科専門医/公認心理師 略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。 所属:日本内科学会