サクセンダの偽薬被害を防ぐ、成分不明な薬を使うリスクと確認の方法

サクセンダの偽薬被害を防ぐ、成分不明な薬を使うリスクと確認の方法

サクセンダの偽薬による被害は、痩せなかったという話だけでは終わりません。中身が別の薬にすり替わっていて、意識を失う低血糖に至った報告が海外にあります。

すでに使ってしまったなら、次の注射をやめ、現物と包装を残し、体調の移り変わりを書き留めたうえで受診するのが先になります。出所を隠さず伝えられると、診察で確かめる中身が変わります。

入手先を打ち明けにくい気持ちは自然なものですが、それを理由に受診が遅れるほうが、体にとっては重く響きかねません。

報告されている被害の中身と、すでに使ってしまった後にとる動きを、受診の目安と相談先まで含めて順に並べます。

目次 Outline

成分の分からないサクセンダを体に入れるとき、何が起きているのか

偽薬の被害の根は、注射器の中に何がどれだけ入っているのかを誰も保証していない点にあり、中身の食い違いは大きく4つの型に分かれます。型ごとに、体への響き方も違います。

中身の食い違い体に起きること本人の気づきやすさ
有効成分が入っていない体重も食欲も変わらない効かないだけに見え、気づきにくい
表示より量が多い強い吐き気や嘔吐が続く副作用として片づけられやすい
別の薬にすり替わるすり替わった薬の作用が出る予想外の症状から分かる場合がある
不純物や細菌由来の物質発熱や注射部位の腫れ感染症と紛らわしい

どの型でも、外から見ただけでは中身を言い当てられません。判断できるのは、体に入れた後の症状の形からさかのぼる道だけです。

有効成分が入っていない、または表示と量が違う

処方箋なしでセマグルチド(オゼンピックなどの有効成分)を売る海外の販売サイトを調べた2024年の研究では、試験購入した3本すべてが、規格外か偽造の疑いのある製品と判定されました。

ラベルで純度99%と書かれていた製品の実測値は7.7%から14.37%にとどまり、一方で成分の量そのものは表示を28.56%から38.69%上回っていました。

純度が低いのに量だけ多い液体を、目盛りどおりに打っているつもりで使う形になります。狙った効き目も、避けたい副作用の境目も、そこでは成り立ちません。

別の薬がすり替えられているとどうなるのか?

2025年にイタリアから報告された症例では、31歳の女性がウェブサイトで手に入れたオゼンピックを自分で注射し、低血糖の昏睡状態で救急外来に運ばれました。

毒物分析にかけたところ、バイアルの中身はセマグルチドではなくインスリンでした。血糖を下げる強さの桁が違う薬に、まるごと置き換わっていた形です。

この報告はイタリア医薬品庁と地元当局へ届けられており、1例の話ではありますが、起こりうる幅の広さを示す記録として重く扱われています。

不純物と細菌由来の物質が残る

先の販売サイト調査では、購入した検体のすべてからエンドトキシンが検出されました。細菌の外膜に由来する物質で、生きた菌そのものは見つかっていません。

測定値は1mgあたり2.1645から8.9511エンドトキシン単位の幅に散らばり、製品ごとに4倍ほどの開きがありました。注射で直に体内へ入る経路だけに、発熱や炎症の引き金になりえます。

2025年に発表されたシステマティックレビューでも、汚染と規格外は正規の流通で回収された医薬品の主な理由に挙がっており、管理の外にある製品なら、その危うさはなおさら残ります。

サクセンダと同じGLP-1薬の偽薬で報告されている被害

報告されている被害は、消化器の症状と低血糖に大きく分かれます。命に関わる転帰まで至った例も、症例報告として残っています。

意識を失う低血糖に至った31歳女性の報告

先に触れたイタリアの症例は被害の重さを一つの形で示しており、救急外来へ運ばれた時点で、この女性はすでに昏睡の状態にありました。

低血糖の昏睡は、放置した時間の長さがそのまま脳への負担に変わります。自分では糖分をとれない段階まで進むため、周りの人が異変に気づけるかどうかが大きな分かれ目になります。

医療者の側から見ると、GLP-1受容体作動薬だけでは説明のつきにくい深さの低血糖でした。中身の分析が入って、はじめてインスリンだと判明しています。

ヨーロッパの副作用報告に集まった234件

ヨーロッパの医薬品副作用データベース、EudraVigilanceを解析した2026年の研究では、偽造の疑いがあるセマグルチド関連の個別症例報告が234件見つかりました。

対象は2018年1月1日から2025年12月31日までで、234件のうち172件(73.5%)が女性でした。報告された有害事象のうち、89.3%が重篤に分類されています。

頻度が高かったのは嘔吐、吐き気、低血糖です。偽造でないセマグルチドと比べると、低血糖と「薬が効かない」の報告割合が高く出ていました。

オンラインで買った薬で起きたケトアシドーシス

2026年にベルギーから報告された症例では、持病のない18歳の女性が、オンラインで買ったセマグルチドを自己判断で増量しながら使い、3日続く吐き気と嘔吐で受診しました。

検査ではpH 7.24、重炭酸イオン14mmol/L、アニオンギャップ24mEq/Lと代謝性アシドーシスを示し、ケトン体の一つが5.9mmol/Lまで上がっていました。

血糖値は60mg/dLと下がりきっておらず、血糖の数字だけでは危険が見えない形でしたが、点滴とブドウ糖の投与で回復し、36時間後に退院しています。

報告の出どころ薬と入手の経路報告された内容
イタリア(2025年・1例)オゼンピック・ウェブサイト中身はインスリン。低血糖の昏睡で救急搬送
ベルギー(2026年・1例)セマグルチド・オンライン血糖が下がりきらないケトアシドーシス
ヨーロッパ(2026年・234件)偽造が疑われるセマグルチド89.3%が重篤。嘔吐・吐き気・低血糖が上位

効かないサクセンダの偽薬が奪う、体重以外の被害

何も起きなかった偽薬も被害の一つに数えます。減量が進まない時間そのものが、その人を必要な治療の入り口から遠ざける働きをするためです。

体重が減らないだけで済む話なのか?

先のEudraVigilanceの解析では、「薬が効かない」という報告が偽造でない製品より高い割合で挙がっており、体感としては、打っているのに何も変わらない状態です。

自分の体質が原因だと受け取り、量を増やしたり打つ回数を足したりする流れに入りやすくなります。中身が分からない以上、増やした先で何が起きるかも読めません。

受診が遅れて治療の入り口を失う

肥満症の診療は、体重だけでなく血圧や血糖、脂質、睡眠時無呼吸まで含めて組み立てるため、自己流の注射を続けている間、その見直しは止まったままになります。

効かない注射に半年を費やせば、その半年ぶんの検査も生活の調整も後ろへずれ、数字が悪くなってから受診する形になりやすく、始まりの位置が下がります。

費用と時間は戻ってこない

支払った代金は、中身が違っていても返らない場面がほとんどです。連絡先が消える、返答が途絶えるといった形で終わる話も珍しくありません。

失うのは代金だけではありません。打ち方を調べ、届くのを待ち、体調を気にしながら過ごした時間も、そのまま戻らないまま消えていきます。

  • 減量が進まないまま過ぎた期間
  • 血圧や血糖の見直しが止まった時間
  • 支払った代金と、返らない手数料
  • 中身の分からない薬を打ち続けた不安

いずれも表には出にくい被害で、健康を害さずに済んだのだから問題は無かった、とは言い切れません。

サクセンダの偽薬を使ってしまったときに、最初に行う4つの動き

まず注射を止め、現物と包装を残し、体調を書き留めてから受診します。この4つには順番に意味があり、後の診察で使える手がかりを消さないまま残しておくための動きです。

次の注射をやめる

迷ったら、次の1回を打たないところから始めます。中身の分からない薬は、打ち続けるほど何がどれだけ体に入ったのかを後から追いにくくなります。

正規のサクセンダ(リラグルチド3.0mg)であれば、続けるか止めるかの相談は診察の場で行うのが筋道ですが、出所の分からない薬に、その筋道はあてはまりません。

残った分をどう扱うかは次の項目に関わるため、捨てずに、そのままの形で手元へ置いておきます。

現物と包装を捨てずに保管する

中身を確かめられる材料は、現物と包装しか残りません。イタリアの症例でインスリンだと分かったのも、持ち込まれたバイアルを分析にかけられたからです。

ペン本体、外箱、添えられていた説明書、送られてきた封筒や伝票まで、まとめて一つの袋へ入れておきます。針は刺さらない固い容器に分けます。

残すもの何の手がかりになるか扱いの注意
ペン本体と残った液成分の種類と量の分析冷蔵のまま袋へ入れる
外箱とラベル表示と製造番号の照合破らず、剥がさない
説明書や同梱物出どころをたどる材料濡らさず一緒に保管
封筒や送り状届いた経路の記録写真も撮っておく

保管は、後から誰かを責めるための準備ではなく、自分の体に何が入ったのかを詰めていくための材料になります。

体調の変化を日付とともに書き留める

打った日、打った量、そのあと出た症状を時刻まで添えて残しておくと、診察では、症状の順番と時間の間隔が判断の材料になります。

冷や汗、動悸、手の震え、強い空腹感といった低血糖を疑う症状は、いつ出ていつ収まったかが特に重要です。血糖を測っていれば、その数字も併せます。

記憶だけに頼ると順番が入れ替わりやすくなるため、短いメモでかまわないので、その場で書き留めておきます。

受診して出所まで含めて伝える

受診先は、かかりつけの内科でも、肥満症の診療を行う医療機関でもかまいません。伝える中身は、いつ何をどれだけ打ったか、どこから手に入れたか、今どんな症状があるかの3つです。

出所の説明が抜けると、医師は正規のサクセンダを使った前提で考えを進めるため、中身が違う可能性を最初から視野に入れられるかどうかで、確かめる検査が変わります。

サクセンダの入手先を正直に話しにくいと感じたときの受診

話しにくさは、受診しない理由にはなりません。医療機関が知りたいのは責任の所在ではなく、体に何がどれだけ入り、今どのような状態にあるかという点です。

責められるのではないかと身構えていませんか?

打ち明けにくさは、特別な弱さではありません。ヨルダンで行われた2025年の調査では、規格外や偽造の薬に出会った一般市民のうち81%が、どこにも届け出ていませんでした。

理由として挙がったのは、届け出る先を知らなかったという点です。責められる怖さと、手続きの分からなさは、同じ場所で人の足を止めます。

診察室で問われるのは購入の善し悪しではなく、症状に説明がつくかどうかを、医師は先に見ています。

出所が分かると診察で見る中身が変わる

出所が分かれば、血糖やケトン体、電解質、肝臓と腎臓の働きといった項目を、はじめから確かめる判断につながり、低血糖の深さについても想定の幅が広がります。

逆に正規品の前提で進むと、消化器の副作用として様子を見る流れに入りやすく、インスリンがすり替わっていた症例のような形は、そこでは浮かびません。

話しにくければ書いて渡す

口で言いにくければ、紙に書いて渡す方法があります。いつ、どこから、何を、どれだけ使ったかを短く並べたメモを渡せば、それだけで診察は前へ進みます。

付き添いの人から渡してもらう形でも通じるので、伝わりさえすれば、伝え方の形式までは問われません。

  • 使い始めた日と、最後に打った日
  • 1回に打った量と、打った回数
  • 手に入れた経路の、大まかな説明
  • 出た症状と、症状が出た順番
  • 手元に残っている現物の有無

この5つが揃えば診察は具体的な話から始まりますし、細かい記憶が抜けていても差し支えありません。

サクセンダの偽薬による被害で、受診と救急を分ける目安

意識がはっきりしないときは、迷わず救急要請です。それ以外でも、低血糖を疑う症状、続く強い腹痛、じんましんや息苦しさは、その日のうちの受診にあたります。

症状疑うもの動き方
冷や汗・動悸・手の震え・強い空腹感低血糖糖分をとり、その日のうちに受診
吐き気と嘔吐が1日以上続く脱水やケトアシドーシスその日のうちに受診
強い腹痛が背中まで抜ける膵臓の炎症その日のうちに受診
じんましん・唇や喉の腫れ・息苦しさ全身のアレルギー反応救急要請
呼びかけへの反応が鈍い重い低血糖救急要請

低血糖を疑うサイン

冷や汗、動悸、手の震え、強い空腹感、集中しにくさが重なったら、低血糖を疑います。糖尿病のない人でも、インスリンがすり替わっていれば同じ形で現れます。

意識があるうちにブドウ糖やジュースで糖分をとり、そのうえで受診します。アメリカの中毒センターの記録では、低血糖に至った8人の最低血糖値は平均49.6mg/dLでした。

吐き気と嘔吐が続くとき

吐き気と嘔吐が1日以上続いて水分もとれない状態ならその日のうちに受診する形になり、先のベルギーの症例でも、3日続いた嘔吐の先にケトアシドーシスが待っていました。

量の分からない薬では10倍の過量投与が起こりえます。アメリカの中毒センターへ寄せられた3例の報告では、うち2例が10倍量を自分で注射していました。

3例とも吐き気、嘔吐、腹痛が数日続いており、1例は医療機関で吐き気止めと点滴を受けて、経過は落ち着きました。

腹痛が背中まで抜けるほど強い場合は、膵臓の炎症も念頭に置きます。吐き気や嘔吐と重なって痛みが引かないときほど、その日のうちに診てもらう判断が要ります。

じんましんや息苦しさが出たとき

注射のあとにじんましんが広がる、唇や喉が腫れる、息が吸いにくいといった症状が重なったら、救急要請にあたります。全身のアレルギー反応が、分単位で進んでいくためです。

不純物や添加物が何なのか分からない製品では原因の特定も後回しになりがちなので、持参できる現物があれば、そのまま持って行きます。

意識がはっきりしないときは救急へ

呼びかけへの反応が鈍い、ろれつが回らない、けいれんが起きたときは、本人の判断に任せません。周囲の人が救急車を呼ぶ場面です。

イタリアの症例でも昏睡の状態で救急外来へ運ばれており、糖分を口から入れられない段階では、点滴による治療が要ります。

偽薬の被害を次の人に回さないための相談先

相談する先は、買った相手ではありません。医薬品の安全を扱う公的な窓口と、実際に診てもらった医療機関だけが、記録として残せる場所になります。

購入元に問い合わせても止まらない

販売した側へ連絡しても、返答が途絶える、連絡先が変わるといった形で終わる例が目立ちます。そもそも、成分を保証する立場に立っていない相手です。

返金の交渉に時間を使う間に体調の記録は薄れていくので、優先するのは受診と記録で、金銭の話は後ろへ置きます。

公的な窓口へ届ける

日本では、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が医薬品の副作用や品質に関する相談を受け付けており、偽造品が疑われる場面では、保健所や自治体の薬務担当も窓口になります。

イタリアの症例でも、担当した医療機関がイタリア医薬品庁と地元当局へ報告しており、診察を受けた医療機関から届け出につながる道も開いています。

報告されない被害は数に入らない

先のヨルダンの調査では、規格外や偽造の薬に出会った市民の81%が届け出ておらず、調査に答えた医療者では、出会った人の全員が届け出ていませんでした。

届かなかった情報は統計にも注意喚起にも反映されず、回収や警告が動く土台は、こうした一件ずつの報告に支えられています。

相談先扱う内容期待できる働き
受診した医療機関症状の診療と検査診療録に残り、届け出の起点になる
PMDA医薬品の副作用や品質の相談全国の情報として集まる
保健所・自治体の薬務担当無承認医薬品や偽造品の情報流通の調査につながる

使ってしまった事実は変えられませんが、そこから先にとる動きは自分で選べ、止める、残す、書き留める、受診するの4つが起点になります。

よくある質問

サクセンダの偽薬による被害には、どのようなものが報告されていますか?

海外の症例報告では、中身がインスリンにすり替わっていた製品で低血糖の昏睡に至った例や、オンラインで買った製品でケトアシドーシスを起こした例があります。

ヨーロッパの副作用データベースの解析では、偽造が疑われる製品の報告234件のうち89.3%が重篤に分類され、嘔吐、吐き気、低血糖が上位に挙がっていました。

サクセンダの偽薬を1回だけ使ってしまった場合も、受診したほうがよいですか?

1回でも、中身の分からない注射を受けた事実は残ります。症状が無くても、打った日と量、手に入れた経路を伝えたうえで、一度診てもらう形をおすすめします。

症状が出ている場合は、その日のうちの受診にあたります。冷や汗や動悸、強い空腹感がある段階では、先に糖分をとってから医療機関へ向かうほうが安全です。

サクセンダの偽薬で体調が変わらなければ、被害は無かったと考えてよいですか?

症状が出ないままでも、減量が進まなかった期間と、治療を組み立て直すはずだった機会は失われています。効かない薬を使い続けた時間そのものが、後の出発点を下げます。

体調に変わりが無い場合でも現物と包装は残しておくと、後から症状が出たときに、中身をたどる手がかりが手元にあるかどうかで話が変わります。

サクセンダの入手先を医師に正直に伝えると、診察を断られますか?

入手の経路を理由に診察を断る運用は一般的ではなく、医師が知りたいのは、体に何がどれだけ入り、今どのような状態にあるかという点です。

出所を伝えないまま進むと、正規品を使った前提で判断が動きます。確かめる検査そのものが変わるため、言いにくくても伝えるほうが、結果として自分の利益になります。

サクセンダの偽薬と思われる現物は、捨ててしまってもよいですか?

捨てずに保管するほうが先です。ペン本体、外箱、説明書、届いた封筒や送り状まで残しておくと、中身の分析や経路の確認に使えます。

針だけは刺さらない固い容器に分けて入れておき、受診の際に持参できれば、診察の場でそのまま材料として扱えます。

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この記事を書いた人 Wrote this article

大木 沙織 大木皮ふ科クリニック 副院長

皮膚科医/内科専門医/公認心理師 略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。 所属:日本内科学会