ゼップバウンドとマンジャロの副作用比較|同じ成分での症状の違い

ゼップバウンドとマンジャロの副作用比較|同じ成分での症状の違い

ゼップバウンドとマンジャロは、どちらもチルゼパチド(tirzepatide)という同じ有効成分を含む注射薬です。体重管理と2型糖尿病という異なる目的で承認されていますが、副作用にはどのような違いがあるのでしょうか。

結論からお伝えすると、両者の副作用プロフィールは非常に似ています。吐き気や下痢などの消化器症状が中心で、多くの場合は軽度から中等度にとどまります。

ただし、適応症や用量調整の違いにより、副作用の出方や頻度に微妙な差が生じることがあります。この記事では、20年以上にわたる肥満症治療の経験をもとに、両薬の副作用を丁寧に比較していきます。

目次 Outline

ゼップバウンドとマンジャロは同じ成分チルゼパチドでなぜ副作用が似ているのか

ゼップバウンドとマンジャロの副作用が似ている最大の理由は、両者の有効成分がまったく同じ「チルゼパチド」であるためです。成分が同一であれば、体への作用も基本的に同じになります。

GIPとGLP-1の2つの受容体に働くチルゼパチドの仕組み

チルゼパチドは、GIP(グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)という2種類のホルモン受容体に同時に働きかけます。この「デュアルアゴニスト」と呼ばれる設計が、強力な血糖改善作用と体重減少効果を生み出しています。

GLP-1の作用により、胃からの食べ物の排出が遅くなります。これが満腹感の持続につながる一方で、消化器系の副作用を引き起こす原因にもなっています。GIPは脂肪代謝にも影響を与え、GLP-1と相乗的に食欲を抑えるとされています。

ゼップバウンドは体重管理、マンジャロは2型糖尿病で承認されている

マンジャロは2022年5月にFDA(米国食品医薬品局)から2型糖尿病治療薬として承認されました。一方、ゼップバウンドは2023年11月に肥満症および体重管理を目的とした薬として承認を受けています。

項目ゼップバウンドマンジャロ
有効成分チルゼパチドチルゼパチド
承認適応肥満症・体重管理2型糖尿病
製造元Eli Lilly社Eli Lilly社
投与方法週1回皮下注射週1回皮下注射
用量範囲2.5mg〜15mg2.5mg〜15mg

承認適応が異なっても有効成分が同じなら副作用は基本的に同じになる

薬の副作用は、主に有効成分の薬理作用によって決まります。ゼップバウンドとマンジャロは有効成分も用量範囲もまったく同じであるため、臨床試験で報告された副作用の種類や頻度もほぼ共通しています。

両薬の違いは「何の病気に対して処方されるか」という点に集約されるといってよいでしょう。成分が同じである以上、体に起こる反応も同じだと考えて差し支えありません。

ゼップバウンド・マンジャロに共通する消化器系の副作用を徹底解説

ゼップバウンドとマンジャロの副作用として最も多く報告されるのは、吐き気・下痢・嘔吐・便秘といった消化器系の症状です。臨床試験データによると、消化器系副作用は用量に依存して発生率が上がり、5mg投与で約39%、10mgで約46%、15mgで約49%にみられました。

吐き気と嘔吐は投与開始から数週間がピーク

吐き気はチルゼパチドの副作用で最も頻度が高い症状です。GLP-1受容体への刺激が脳の嘔吐中枢に作用するためと考えられています。多くの方で投与開始から2〜4週間ほどをピークとし、体が薬に慣れるにつれ軽快していきます。

嘔吐も同様に初期に出やすい症状ですが、吐き気に比べると頻度は低めです。食事を少量ずつ分けて摂る、脂っこいものを控えるなどの工夫で軽減できるケースが多いでしょう。

下痢と便秘が同時期に報告される理由

チルゼパチドは胃腸の動きに影響を与えるため、下痢と便秘という一見矛盾した症状が同じ薬で報告されます。これは、消化管の蠕動運動が個人差によって異なる方向に変化するためです。

下痢は全用量を通じて12〜22%程度の方に認められています。便秘も同程度の頻度で起こり得ます。どちらの症状も多くは軽度から中等度で、時間の経過とともに改善する傾向があります。

食欲減退は副作用なのか、それとも薬本来の作用なのか

食欲減退はチルゼパチドの頻繁に報告される症状ですが、体重管理薬としてのゼップバウンドにとっては「期待される効果」ともいえます。GLP-1とGIPが脳に働きかけ、食欲そのものを自然に抑える作用が背景にあります。

ただし、必要以上に食欲が低下して栄養不足にならないよう注意が必要です。極端な食欲の低下が続く場合は、早めに主治医へ相談してください。

消化器系副作用発生頻度の目安特徴
吐き気10〜24%投与初期に出やすい
下痢12〜22%軽度〜中等度が大半
嘔吐2〜13%用量増加時に多い
便秘5〜11%個人差が大きい
食欲減退頻度高い効果の一部とも解釈できる

ゼップバウンドとマンジャロの副作用で異なる点はあるのか

有効成分が同じチルゼパチドであるため、ゼップバウンドとマンジャロの副作用プロフィールに本質的な違いはありません。ただし、臨床試験の対象集団や併用薬の違いにより、いくつかの差が観察されることがあります。

臨床試験の対象が違うと副作用の出方に差が生じる

マンジャロのSURPASS試験は2型糖尿病患者を対象としており、ゼップバウンドのSURMOUNT試験は糖尿病のない肥満患者が中心です。対象集団の健康状態が異なると、同じ薬でも副作用の頻度や重症度に違いが出てきます。

たとえば、糖尿病治療薬を併用しているマンジャロ使用者では、低血糖のリスクがやや高まることがあります。特にSU薬(スルホニルウレア系薬剤)やインスリンとの併用時は注意が求められます。

ゼップバウンドの肥満治療での副作用データ

SURMOUNT-1試験では、72週間にわたるゼップバウンド投与において、消化器系の副作用が最も多く報告されました。ほとんどは軽度から中等度で、用量漸増期(投与開始から約20週間)に集中する傾向がありました。

  • 吐き気、下痢、嘔吐が3大副作用として報告
  • 副作用による投与中止率は4.3〜7.1%程度
  • 重篤な有害事象は全体的にプラセボと大差なし
  • 胆嚢炎がプラセボよりわずかに多い(0.6%以下)

マンジャロの糖尿病治療での副作用データ

SURPASS試験シリーズでは、マンジャロの消化器系副作用はGLP-1受容体作動薬全般と同様のパターンを示しました。吐き気、下痢、嘔吐が最も頻繁に認められ、これらの多くは用量漸増期に一過性で現れました。

マンジャロ特有の傾向としては、血糖降下薬との併用による低血糖リスクが挙げられます。ただし、チルゼパチド単独ではグルコース依存的にインスリンを分泌させるため、単剤使用時の低血糖リスクは低いとされています。

チルゼパチドの副作用で気をつけたい重篤な症状と注意すべきサイン

チルゼパチドの重篤な副作用は頻度こそ低いものの、甲状腺腫瘍のリスクや膵炎、重度のアレルギー反応など、見逃してはならない症状が存在します。早期に気づいて適切に対処することが大切です。

甲状腺C細胞腫瘍のリスクは動物実験で確認されている

チルゼパチドの添付文書には、動物実験(ラット)で甲状腺C細胞腫瘍が発生したという枠囲み警告が記載されています。ヒトで同じリスクがあるかどうかはまだ確定していませんが、安全性を考慮し、甲状腺髄様がんの個人歴・家族歴がある方、多発性内分泌腫瘍症2型の方には使用が禁忌とされています。

首にしこりを感じたり、飲み込みにくさや声のかすれが続いたりする場合は、念のため早めに受診することをおすすめします。

膵炎や胆嚢障害の初期症状を見逃さないために

チルゼパチド投与中に膵炎が報告されたケースがあります。頻度は低いものの、上腹部から背中にかけての強い痛みが急に現れた場合は膵炎の可能性を考える必要があります。このような症状が出たら投与を中止し、すぐに医療機関を受診してください。

また、大幅な体重減少にともなって胆石や胆嚢炎のリスクが高まることがあります。右の脇腹あたりに鈍い痛みが続く場合は、胆嚢の問題を疑うサインかもしれません。

注射部位の反応とアレルギー症状への対応

注射部位の痛み、発赤、かゆみなどは比較的よく見られる症状です。注射部位を毎回ローテーションすることで軽減できます。腹部、太もも、上腕の裏側を順番に使うとよいでしょう。

まれに、じんましんや呼吸困難、顔や喉の腫れといった重度のアレルギー反応が報告されることがあります。このような症状が現れた場合は直ちに投与を中止し、救急対応が必要です。

重篤な副作用頻度対処の目安
甲状腺腫瘍リスクヒトでは未確定首のしこりに注意
膵炎まれ激しい腹痛→即受診
胆嚢障害0.6%以下右脇腹の痛みに注意
重度アレルギーごくまれ呼吸困難→救急対応

ゼップバウンド・マンジャロの副作用を軽くするために自分でできる対策

チルゼパチドの副作用の多くは生活上の工夫で軽減できます。用量の段階的な増量を守ること、食事内容を調整すること、適切な水分補給を行うことが、快適に治療を続けるための三本柱です。

用量漸増スケジュールを守ることが副作用軽減の鍵になる

チルゼパチドは2.5mgから開始し、4週間ごとに2.5mgずつ増量する設計になっています。このスケジュールは消化器系副作用を最小限に抑えるために綿密に計画されたものです。

「早く効果を出したい」と焦って増量ペースを速めると、吐き気や嘔吐が強く出るおそれがあります。主治医が提示した増量スケジュールを忠実に守ることが、副作用を抑えながら治療効果を引き出すための基本です。

食事の工夫で吐き気や胃もたれを和らげる方法

1回の食事量を減らし、1日の食事回数を4〜5回に分ける方法が効果的です。脂質の多い食事や揚げ物は消化に負担がかかるため、特に投与初期は控えめにするとよいかもしれません。

対策効果実践のポイント
少量頻回食胃への負担軽減1回の量を腹6〜7分目に
脂質制限吐き気の軽減揚げ物・クリーム系を控える
水分摂取脱水予防1日1.5〜2Lを目安に
食事速度消化負担の分散よく噛んでゆっくり食べる

下痢や便秘が続くときの水分補給と生活習慣の見直し

下痢が続く場合は脱水に注意が必要です。経口補水液やスポーツドリンクなどで水分と電解質を補いましょう。カフェインやアルコールは脱水を助長する可能性があるため、控えることが望ましいといえます。

便秘がちな方は、食物繊維の多い野菜や海藻を積極的に取り入れ、適度な運動習慣を維持してください。それでも改善しない場合は、主治医に相談して適切な対処法を見つけることが大切です。

ゼップバウンドやマンジャロの副作用はいつ治まるのか|投与継続と中止の判断

チルゼパチドの消化器系副作用の多くは、投与開始から8〜20週間の間に軽快する傾向があります。副作用が長引く場合でも、多くは用量調整で対処できるため、自己判断で中止せずに主治医と相談しましょう。

消化器系副作用は投与初期に集中し徐々に落ち着いていく

臨床試験のデータでは、新たな消化器系副作用の発生率は投与期間が長くなるにつれて低下しています。体がチルゼパチドに順応していくためと考えられます。SURMOUNT-1試験の3年間にわたる追跡調査でも、消化器系症状の大部分は投与初期の20週間に集中していました。

この初期段階を乗り越えれば、多くの方は快適に治療を続けられるようになります。つらい時期こそ、「あと数週間で楽になる」という見通しを持つことが支えになるかもしれません。

副作用で投与を中止する方はどのくらいいるのか

SURMOUNT試験シリーズにおいて、副作用を理由にチルゼパチドの投与を中止した割合は4.3〜7.1%程度でした。これは多くの方が副作用を管理しながら治療を継続できたことを示しています。

中止に至る主な理由は消化器症状の持続ですが、全体からみると少数派です。用量を一段階戻す、あるいは増量のペースを遅くするなど、主治医と一緒に工夫する余地は十分にあります。

副作用がつらいときに主治医へ伝えるべきこと

副作用の症状がいつ始まったのか、どの程度日常生活に影響しているのか、食事や水分の摂取状況はどうか。これらの情報を具体的に主治医に伝えることで、より適切な対処が受けられます。

「我慢すべきだ」と思い込まず、困っていることは率直に伝えてください。用量調整や対症療法など、副作用を軽減するための選択肢は複数あります。治療を自分のペースで続けるためにも、遠慮なく相談することが大切です。

受診の目安具体的な症状
すぐに受診激しい腹痛、呼吸困難、重度のアレルギー症状
早めに相談嘔吐が1日3回以上続く、脱水症状がある
次の診察で報告軽い吐き気が続く、注射部位の痒みや赤み

チルゼパチドの副作用を正しく把握して安心して治療を続けるためのポイント

ゼップバウンドとマンジャロは同じチルゼパチドを含むため、副作用への備えも共通です。正しい知識を持ち、主治医との連携を密にすることが、安心して治療を続けるための土台になります。

自己判断で投与を中止するとリバウンドのリスクが高まる

SURMOUNT-4試験では、チルゼパチドの投与を中止した群では約14%の体重増加(リバウンド)が認められました。一方、投与を継続した群はさらに5.5%の追加減量を達成しています。

投与状況体重変化含意
投与継続さらに約5.5%減少効果が維持・増大する
投与中止約14%増加体重が戻りやすい

治療中に妊娠を希望する場合は事前に相談が必要

チルゼパチドの妊娠中の安全性はまだ十分に確認されていません。動物実験では胎児へのリスクが示唆されているため、妊娠を計画している方は少なくとも投与中止後2か月間は避妊を続けることが推奨されています。

妊活を考え始めた段階で、早めに主治医へ相談するようにしましょう。薬の中止タイミングや代替治療の選択肢について、計画的に準備を進めることが安心につながります。

定期的な通院と検査で副作用の早期発見につなげる

チルゼパチドによる治療中は、定期的な血液検査や体調チェックを受けることが望まれます。膵酵素(リパーゼやアミラーゼ)の値が無症状のまま上昇するケースも報告されており、定期検査でこうした変化を早期にとらえることができます。

体重や血糖値の推移を記録しておくと、主治医との相談がスムーズになります。自分の体の変化に気を配りながら、医療チームと二人三脚で治療を進めていきましょう。

よくある質問

ゼップバウンドとマンジャロの副作用にはどのような違いがありますか?

ゼップバウンドとマンジャロはどちらも有効成分がチルゼパチドであるため、副作用の種類や頻度は基本的に共通しています。吐き気、下痢、嘔吐、便秘、食欲減退といった消化器症状が中心です。

ただし、マンジャロは糖尿病治療薬との併用で低血糖が起こりやすくなる場合があります。一方、ゼップバウンドでは大幅な体重減少にともなう胆嚢関連の問題がわずかに多く報告されています。本質的な違いというよりは、治療対象の病態や併用薬の違いが反映された結果といえます。

チルゼパチドの消化器系副作用はどのくらいの期間で治まりますか?

チルゼパチドの消化器系副作用は、投与開始から約8〜20週間の間に徐々に軽快する傾向があります。臨床試験の長期データでも、新たな消化器症状の発生は投与初期に集中しており、体が薬に慣れるにつれて落ち着いていくことが確認されています。

ただし個人差があるため、症状が長引く場合は用量調整や対症療法について主治医に相談されることをおすすめします。

ゼップバウンドやマンジャロを使用中に注意すべき重篤な副作用にはどんなものがありますか?

チルゼパチドの重篤な副作用として、膵炎、甲状腺腫瘍のリスク(動物実験で確認)、重度のアレルギー反応、急性腎障害などが報告されています。頻度はいずれも低いものの、見逃してはならない症状です。

激しい腹痛や背中の痛みが突然現れた場合は膵炎の疑いがあるため、すぐに投与を中止して医療機関を受診してください。首にしこりを感じたり、飲み込みにくさが続いたりする場合は甲状腺の問題を示唆するサインかもしれません。

チルゼパチドの副作用を軽減するために日常生活で工夫できることはありますか?

消化器系の副作用を軽減するための工夫として、食事を少量ずつ分けて摂る、脂質の多い食べ物を控える、十分な水分を補給する、ゆっくりよく噛んで食べるといった方法が効果的です。

用量の段階的な増量スケジュールを守ることも非常に大切です。焦って増量ペースを速めると消化器症状が強く出やすくなるため、主治医の指示どおりに進めてください。アルコールは消化器系の副作用を悪化させる可能性があるため、特に投与初期は控えめにするとよいでしょう。

ゼップバウンドとマンジャロを同時に使用しても問題ないですか?

ゼップバウンドとマンジャロを同時に使用してはいけません。両者はまったく同じ有効成分(チルゼパチド)を含む薬であるため、併用すると実質的に二重投与になります。過量投与により副作用のリスクが大幅に高まるうえ、効果が倍増するわけではありません。

どちらを使用するかは、ご自身の病態や治療目的に応じて主治医と相談のうえ決定してください。糖尿病の管理が主な目的であればマンジャロ、体重管理が主な目的であればゼップバウンドが適応となります。

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この記事を書いた人 Wrote this article

大木 沙織 大木皮ふ科クリニック 副院長

皮膚科医/内科専門医/公認心理師 略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。 所属:日本内科学会