生理が近づくにつれて、決まってあご周りや口元に現れる赤く痛いニキビに、毎月憂鬱な気分になっていませんか。鏡を見るたびにため息が出てしまうこの現象は、決してあなたのスキンケア不足や生活の怠慢だけが原因ではありません。

大人ニキビが悪化する背景には、女性の体内で毎月繰り返されるダイナミックなホルモン変動、特に黄体ホルモンによる皮脂分泌の増加と肌のバリア機能の低下が深く関わっています。

しかし、自身の周期を正しく理解し、肌が敏感になるタイミングに合わせてスキンケアや生活習慣を微調整することで、これらのトラブルは未然に防ぐことが可能です。

この記事では、ホルモンバランスと肌の関係を紐解き、繰り返す肌悩みを断ち切るための具体的かつ実践的な対策を網羅しました。自分の肌と丁寧に向き合い、生理前でも健やかな状態を保つための知識を持ち帰ってください。

目次
  1. 生理前に大人ニキビが悪化する根本的な原因
    1. 黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きと皮脂分泌
    2. 生理周期と肌バリア機能の低下関係
    3. ストレスホルモンとの相互作用による炎症
  2. 黄体ホルモンが毛穴と角質に与える影響
    1. 角質肥厚が起こる仕組みと毛穴詰まり
    2. アクネ菌が増殖しやすい肌環境の変化
    3. 炎症を誘発する物質の増加と赤み
  3. 周期的な肌荒れを防ぐスキンケアの基本
    1. 洗顔時の摩擦低減と皮脂汚れの除去
    2. ノンコメドジェニック製品の選び方
    3. 保湿によるバリア機能のサポート
    4. 抗炎症成分を取り入れたアイテム活用
  4. 食事と栄養素でホルモンバランスを整える
    1. 血糖値の急上昇を抑える食事法
    2. ビタミンB群とビタミンCの積極的な摂取
    3. 大豆イソフラボンの効果的な取り入れ方
  5. 睡眠と自律神経の管理による予防策
    1. 良質な睡眠が肌の修復を促す理由
    2. 入浴による深部体温調節とリラックス効果
    3. 軽い運動による血行促進と老廃物排出
  6. 生理前の精神的な不調と肌への影響
    1. PMSによるイライラが皮脂腺を刺激する
    2. メンタルケアが肌質改善につながる理由
    3. リラクゼーション時間の確保と重要性
  7. 市販薬や漢方薬を活用したセルフケア
    1. 炎症を抑える塗り薬の正しい使い方
    2. ホルモンバランスを整える漢方薬の選択肢
    3. サプリメントを利用する際の注意点
  8. よくある質問

生理前に大人ニキビが悪化する根本的な原因

生理前の肌トラブルは、排卵後から生理開始までの期間に分泌量が急増する黄体ホルモンが皮脂腺を刺激し、同時に肌を守るバリア機能を低下させることが最大の要因です。

黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きと皮脂分泌

生理周期の後半、いわゆる黄体期に入ると、女性の体内では黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が活発になります。このホルモンは受精卵が着床しやすい環境を整え、妊娠を維持するために非常に重要な役割を担っていますが、美容面では少々厄介な性質を持っています。

黄体ホルモンは男性ホルモンであるアンドロゲンと似た分子構造をしており、皮脂腺にある受容体に結合しやすいという特徴があります。この結合がスイッチとなり、皮脂腺細胞が刺激され、必要以上の皮脂が生成されてしまうのです。

普段は乾燥肌や混合肌で悩んでいる人でも、生理前だけはTゾーンやフェイスラインが脂っぽく感じたり、メイク崩れが早くなったりするのはこのためです。過剰に分泌された皮脂は、行き場を失うと毛穴の中に留まりやすくなり、これがニキビの初期段階である微小面ぽう(コメド)の形成を直接的に促します。

生理周期と肌バリア機能の低下関係

生理前は、肌の潤いや弾力を守るエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が相対的に減少します。エストロゲンは「美肌ホルモン」とも呼ばれ、肌の水分量を保ち、ヒアルロン酸やコラーゲンの生成を助ける働きがあるため、このホルモンが減ることで肌は無防備な状態になります。

水分保持能力が低下した肌は乾燥しやすく、外部からの刺激を跳ね返すバリア機能が著しく低下します。健康な状態なら問題にならない程度の紫外線や埃、あるいは自分の髪の毛先の接触といった些細な刺激にも、肌が過敏に反応してしまうようになります。

ホルモンバランスと肌状態の変化

時期ホルモンの状態肌への主な影響
卵胞期
(生理後〜排卵)
エストロゲン優位水分量が多く、肌のキメが整いやすい。新しい化粧品を試すのに良い時期。
黄体期前期
(排卵後)
プロゲステロン上昇皮脂分泌が徐々に増え始める。毛穴が開きやすくなり、詰まりのリスクが高まる。
黄体期後期
(生理直前)
両ホルモン減少へバリア機能が最低レベルに低下。乾燥と脂っぽさが混在し、炎症や過敏反応が起きやすい。

この表からも分かるように、ホルモンの波は肌の状態を大きく左右します。特に黄体期後期におけるバリア機能の低下は、ニキビだけでなく、赤みやかゆみといった肌トラブル全般を引き起こす引き金となります。この「守る力」の弱まりこそが、大人ニキビが悪化しやすく治りにくい大きな背景となっているのです。

ストレスホルモンとの相互作用による炎症

生理前はホルモンバランスの急激な変動により、自律神経のバランスが乱れやすくなります。これにより、些細なことでイライラしたり落ち込んだりしやすくなり、体はこれをストレスとして認識します。すると、副腎皮質からコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。

コルチゾールには、本来炎症を抑える働きがありますが、過剰に分泌されると免疫機能のバランスを崩し、逆に肌の炎症反応を助長してしまうことがあります。また、コルチゾールが分解される過程で活性酸素が発生し、これが細胞を傷つけることも分かっています。

黄体ホルモンによる皮脂の過剰分泌という「燃料」がある状態で、ストレスによる炎症反応という「火種」が投下されることで、一気に燃え上がるような炎症性ニキビが発生します。赤く腫れ上がり、触れると痛みを感じるようなニキビは、こうした体内での複雑な相互作用の結果として現れるのです。

黄体ホルモンが毛穴と角質に与える影響

黄体ホルモンは皮脂を増やすだけでなく、毛穴の出口付近の角質を厚くし、排出を妨げることでニキビ菌が繁殖しやすい密閉空間を作り出してしまいます。

角質肥厚が起こる仕組みと毛穴詰まり

黄体ホルモンには、体内の水分や塩分を溜め込む作用があります。これが肌細胞のレベルで起きると、毛穴周辺の皮膚組織が微細にむくみ、毛穴の出口(毛漏斗部)が圧迫されて狭くなります。出口が狭くなることで、皮脂や老廃物の排出がスムーズにいかなくなります。

さらに、この時期は肌のターンオーバー(生まれ変わり)のリズムが乱れやすくなるため、本来であれば垢となって剥がれ落ちるはずの古い角質が、肌表面に留まってしまいます。これを「角質肥厚」と呼び、肌がゴワゴワしたり硬く感じたりする原因となります。

生理前の毛穴トラブルを招く要因

  • 皮脂の過剰分泌により、物理的に毛穴が内側から押し広げられる
  • ターンオーバーの乱れで角質が厚くなり、毛穴の出口に蓋をしてしまう
  • アクネ菌が好む嫌気性環境(酸素がない状態)が形成される
  • むくみによる皮膚組織の圧迫で、老廃物の排出が停滞する

出口が狭くなり蓋をされた毛穴に対して、内部からは増加した皮脂が絶えず供給され続けます。逃げ場を失った皮脂は毛穴の中で凝固し、角質と混ざり合って角栓となります。これが生理前に急に発生する、白ニキビや黒ニキビの正体であり、すべての悪化の始まりです。

アクネ菌が増殖しやすい肌環境の変化

私たちの肌に常に存在するアクネ菌は、酸素を嫌い、脂質を好むという性質を持っています。健康で通気性の良い肌環境であれば、アクネ菌は肌を弱酸性に保つなど良い働きもしますが、生理前の環境変化は彼らにとって絶好の増殖条件となります。

毛穴が厚くなった角質で完全に塞がれると、内部への酸素供給が遮断されます。さらに、そこには餌となる皮脂がたっぷりと充満しています。この「密閉された空間」と「豊富な餌」という二つの条件が揃うことで、アクネ菌は爆発的なスピードで増殖を開始します。

増殖したアクネ菌は、皮脂を分解して遊離脂肪酸という物質を作り出します。また、ポルフィリンなどの代謝物を排出し、これらが皮膚組織を直接刺激します。普段はおとなしい常在菌が、環境の変化によって肌を攻撃する要因へと変わってしまうのです。

炎症を誘発する物質の増加と赤み

アクネ菌が異常に増殖すると、人間の体はこれを異物として認識し、排除しようとする免疫システムが作動します。白血球の一種である好中球が毛穴周辺に集まり、活性酸素を放出して菌を攻撃し始めます。これが炎症反応の始まりです。

この免疫反応による戦いが激しくなると、菌だけでなく周囲の正常な細胞組織まで傷つけてしまいます。その結果、毛穴の壁が壊れて内容物が真皮層に漏れ出し、強い赤みや腫れ、熱感を伴う深い炎症性ニキビへと発展します。

生理前は体の免疫バランスも不安定な時期であるため、一度炎症が起きると鎮静化しにくく、治りも遅くなる傾向があります。この時期特有の、芯があり触れると激痛が走るようなニキビは、肌の奥深くで起きている激しい炎症の結果なのです。

周期的な肌荒れを防ぐスキンケアの基本

生理前のデリケートで不安定な肌には、過剰な皮脂を優しく取り除きつつ、低下したバリア機能を補うための高保湿かつ低刺激なケアが必要です。

洗顔時の摩擦低減と皮脂汚れの除去

皮脂が多いからといって、洗浄力の強い洗顔料を使ってゴシゴシと擦り洗いをするのは逆効果です。肌に必要な潤い成分(NMFやセラミド)まで洗い流してしまうと、肌は乾燥を感じて防御反応を起こし、さらに多くの皮脂を分泌しようとします。

大切なのは、たっぷりの濃密な泡を作り、肌に直接手が触れないように洗うことです。泡のクッションを挟んで転がすように洗い、泡の吸着力だけを利用して毛穴の汚れを優しく浮かせましょう。摩擦は角層を傷つけ、バリア機能をさらに低下させる最大の敵です。

また、すすぎの際は熱いお湯ではなく、体温より少し低いぬるま湯(32〜34度程度)を使用してください。熱いお湯は必要な皮脂膜を一瞬で溶かしてしまい、急激な乾燥を招きます。洗顔後は清潔で柔らかいタオルを使い、水滴を優しく押さえるように拭き取ることが重要です。

時期に合わせたスキンケアのポイント

ケアの工程生理前(黄体期)の対策期待できる効果
クレンジングジェルやミルクなど摩擦の少ないものを使用肌への物理的負担を減らし、バリア機能を守る
洗顔週1回程度、酵素洗顔を取り入れるタンパク質分解酵素が古い角質を除去し、詰まりを防ぐ
保湿ノンオイルや低油分の保湿剤を重ね付けする油分過多を防ぎつつ、必要な水分をしっかり保持する

ノンコメドジェニック製品の選び方

生理前の期間だけでも、使用する基礎化粧品やメイクアップ製品を見直してみる価値は十分にあります。パッケージに「ノンコメドジェニックテスト済み」と記載された製品は、ニキビの初期段階であるコメドができにくい処方になっています。

これらの製品は、油分が少なめに調整されていたり、毛穴を詰まらせにくい成分が厳選されていたりと、ニキビ肌への配慮がなされています。特に、長時間肌に密着するファンデーションや化粧下地などは、この表記があるものを選ぶのが賢明です。

ただし、「テスト済み」であればすべての人にニキビができないわけではありません。自分の肌質に合うかどうか、まずはサンプルなどで試してから使用することをおすすめします。生理前は肌が敏感になっているため、新しい化粧品を試す際は慎重に行いましょう。

保湿によるバリア機能のサポート

「肌がベタつくから」という理由で、化粧水だけで済ませたり、乳液やクリームを省略したりするのは大きな間違いです。生理前の肌は、表面は皮脂で潤っているように見えても、内部は水分が枯渇している「インナードライ」状態になりがちです。

水分が不足すると、肌はその蒸発を防ごうとして、代わりとなる皮脂を過剰に分泌しようとします。この悪循環を断つためには、セラミドやヒアルロン酸、アミノ酸などの保湿成分が高配合された化粧水でたっぷりと水分を与えることが大切です。

そして、与えた水分が逃げないように、油分の少ないジェルや乳液で薄く蓋をします。十分に保湿されて水分が行き渡った肌は、角質がふっくらと柔らかくなり、毛穴の出口が柔軟になるため、皮脂詰まりも起こりにくくなります。

抗炎症成分を取り入れたアイテム活用

少しでも赤みや炎症の兆候が見られたら、抗炎症成分が配合されたスキンケアアイテムに切り替えるのも有効な戦略です。グリチルリチン酸ジカリウムやアラントイン、トラネキサム酸などの有効成分は、肌の炎症を穏やかに鎮める効果が期待できます。

これらが配合された薬用化粧水(医薬部外品)を日常的に使用することで、ニキビが悪化して赤く腫れ上がる前の段階で食い止めることができます。特に、生理予定日の1週間ほど前から使い始めると、予防効果が高まります。

また、ビタミンC誘導体も非常に優秀な成分です。過剰な皮脂分泌を抑制する働きと、抗酸化作用による炎症抑制、さらにはメラニン生成を抑えてニキビ跡の色素沈着を防ぐ働きを併せ持っており、生理前のトータルケアに適しています。

食事と栄養素でホルモンバランスを整える

内側からのケアとして、血糖値を急激に上昇させない食事を心がけ、皮脂コントロールや肌の代謝に深く関わるビタミン群を積極的に摂取することが重要です。

血糖値の急上昇を抑える食事法

糖質や脂質の摂りすぎは、皮脂の分泌を直接的に増やす要因となります。特に、精製された砂糖や小麦粉を多く含む菓子パン、スイーツ、清涼飲料水などは、摂取後に血糖値を急激に上昇させます。

血糖値が急上昇すると、それを下げるために膵臓からインスリンというホルモンが大量に分泌されます。インスリンには、男性ホルモンを刺激して皮脂腺を活性化させる作用があるため、結果として皮脂の過剰分泌を招いてしまいます。

食事の際は、野菜や海藻、きのこ類などの食物繊維から先に食べる「ベジファースト」を意識しましょう。また、白米を玄米や雑穀米に変えるなどして、血糖値の上昇を緩やかにする「低GI食品」を選ぶことが、食後の皮脂分泌過多を防ぐ第一歩となります。

ビタミンB群とビタミンCの積極的な摂取

ビタミンB群、なかでもビタミンB2とB6は「皮脂コントロールのビタミン」とも呼ばれ、脂質の代謝を助けて過剰な皮脂分泌を抑える重要な働きがあります。これらが不足すると、肌が脂っぽくなり、Tゾーンのテカリやニキビの発生につながりやすくなります。

肌荒れ予防におすすめの栄養素と食材

栄養素主な働き多く含まれる食材
ビタミンB2脂質の代謝促進、皮脂抑制、皮膚や粘膜の保護レバー、うなぎ、卵、納豆、海苔、アーモンド
ビタミンB6タンパク質の代謝、ホルモンバランスの調整カツオ、マグロ、バナナ、鶏ささみ、玄米
ビタミンC抗酸化作用、コラーゲン生成、皮脂分泌の抑制赤ピーマン、ブロッコリー、キウイ、イチゴ

また、ビタミンCは強力な抗酸化作用を持っており、ストレスや炎症によって発生した活性酸素を除去し、ニキビの悪化を防ぐ助けとなります。コラーゲンの生成にも不可欠なため、ニキビ跡の修復を早める効果も期待できます。

これらのビタミン、特にB群とCは水溶性であり、体内に長時間蓄積しておくことができません。一度に大量に摂取しても尿として排出されてしまうため、朝・昼・晩の食事や間食で、こまめに摂取することが大切です。

大豆イソフラボンの効果的な取り入れ方

大豆や大豆製品に含まれるイソフラボンは、体内でエストロゲンと似た分子構造を持ち、似た働きをする「植物性エストロゲン」として知られています。生理前に減少してしまうエストロゲンの働きを穏やかに補う効果が期待できます。

ホルモンバランスの乱れによる肌荒れや、PMSの症状を緩和するために、納豆、豆腐、豆乳、味噌などの大豆製品を日常的に食事に取り入れるのがおすすめです。朝食に豆乳を飲んだり、味噌汁を飲む習慣をつけるのも良いでしょう。

ただし、サプリメントなどで特定の成分だけを過剰に摂取しすぎると、逆に体内のホルモンバランスを崩してしまうリスクもあります。基本的には、毎日の食事から自然な形で摂取することを心がけてください。

睡眠と自律神経の管理による予防策

良質な睡眠は成長ホルモンの分泌を促して肌の修復を行い、自律神経を整えることでホルモンバランスの乱れを最小限に抑える効果があります。

良質な睡眠が肌の修復を促す理由

私たちの肌は、寝ている間に日中に受けたダメージを修復し、新しい細胞を生み出す再生作業を行っています。この修復プロセスの鍵を握るのが、入眠直後の深い眠り(ノンレム睡眠)の時に脳下垂体から集中的に分泌される「成長ホルモン」です。

成長ホルモンは肌のターンオーバーを正常化し、紫外線ダメージの回復や、炎症を起こした組織の修復を強力にサポートします。生理前はプロゲステロンの影響で体温が高くなり、眠りが浅くなりやすい時期でもあります。

だからこそ、寝室の温度や湿度を快適に保つ、寝る前のスマートフォンの使用を控えてブルーライトを避けるなど、睡眠の質を高める工夫が必要です。睡眠不足はターンオーバーを停滞させ、角質肥厚を招く直接的な原因となってしまいます。

入浴による深部体温調節とリラックス効果

シャワーだけで済ませず、湯船にしっかりと浸かることは、生理前のニキビ予防において非常に有効です。38〜40度くらいのぬるめのお湯に15分ほどゆっくり浸かることで、副交感神経が優位になり、高いリラックス効果が得られます。

良質な睡眠のためのナイトルーティン

  • 就寝90分前に入浴を済ませ、一度上げた深部体温が下がるタイミングで布団に入る
  • 夕食は就寝の3時間前までに終え、消化器官を休ませて睡眠の質を確保する
  • 寝る前のカフェインやアルコール摂取を控え、ハーブティーなどを選ぶ
  • 照明を暗めの暖色系にし、リラックスできる音楽やアロマを活用する

入浴によって一度深部体温を上げると、お風呂上がりに徐々に体温が下がっていく過程で自然な眠気が訪れ、スムーズな入眠につながります。この体温変化のリズムを作ることが、質の高い睡眠への近道です。

さらに、入浴による発汗作用は毛穴を開かせ、詰まった皮脂や汚れを排出しやすくする効果もあります。全身の血行が良くなることで、肌の末端の細胞まで酸素や栄養が行き渡りやすくなり、顔色も明るく健康的になります。

軽い運動による血行促進と老廃物排出

生理前は体がだるく重くなりがちで、動くのが億劫になることも多いですが、無理のない範囲でのストレッチやヨガ、ウォーキングなどの軽い運動は積極的に取り入れたい習慣です。

適度な運動によって筋肉を動かし血行を促進すると、滞りがちな血流が改善され、肌の細胞に必要な栄養素が届きやすくなります。同時に、リンパの流れも良くなり、体内の老廃物の排出もスムーズになります。

また、リズム運動は幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌を促し、ストレス解消にも役立ちます。ストレスが減れば、皮脂腺を刺激するコルチゾールの分泌も抑えられます。激しい運動は逆に活性酸素を増やすため、心地よいと感じる程度の有酸素運動が効果的です。

生理前の精神的な不調と肌への影響

PMS(月経前症候群)によるイライラや不安は、脳から過剰な皮脂分泌指令を出させて肌荒れを加速させるため、メンタルケアも立派なスキンケアの一つと言えます。

PMSによるイライラが皮脂腺を刺激する

生理前のイライラ、落ち込み、情緒不安定といった精神的な不調は、脳の視床下部にダイレクトに影響を与えます。視床下部は自律神経やホルモン分泌の司令塔であるため、ここがストレスを感じて混乱すると、交感神経が過剰に活発になります。

交感神経が優位な状態、つまり「戦闘モード」が続くと、体は防御反応として男性ホルモンの分泌を促します。その結果として皮脂腺が刺激され、皮脂量が急増してしまうのです。「イライラするとニキビができる」というのは、単なる迷信ではなく、こうした生理学的な根拠に基づいています。

したがって、心の状態を穏やかに保つことは、洗顔や保湿といった物理的なスキンケアと同じくらい、あるいはそれ以上に、皮脂対策として重要な意味を持っています。

メンタルケアが肌質改善につながる理由

心と肌は密接に繋がっており、専門的には「皮脳相関(ひのうそうかん)」とも呼ばれます。強いストレスを感じると血管が収縮し、肌への血流が悪くなります。これにより肌の温度が下がり、バリア機能や代謝機能が低下してしまいます。

逆に、リラックスして心が満たされている状態では、副交感神経が働いて血管が拡張し、血流が良くなります。栄養が行き渡った肌はツヤが増し、トラブルへの抵抗力も高まります。

生理前の期間は「今は無理をしない期間」と割り切り、自分を甘やかしてあげる時間を作ることが大切です。メンタルヘルスを整えることは、遠回りのようでいて、実は肌質改善への確実な近道となります。

リラクゼーション時間の確保と重要性

忙しい日常の中でも、意識的にリラックスする時間をスケジュールに組み込むことを強くおすすめします。アロマテラピーを楽しんだり、好きな本を読んだり、あるいは何もせずにぼーっとする時間を持ったりすることも立派なケアです。

ストレス軽減のためのセルフケア方法

方法期待される効果実践のコツ
深呼吸・瞑想副交感神経の活性化、心拍数の安定、脳の休息1日5分でも良いので、静かな場所で目を閉じて行う
アロマ活用嗅覚からの直接的な脳へのリラックス作用ゼラニウムやラベンダーなど、ホルモン調整作用のある香りで
デジタルデトックス脳疲労の軽減、睡眠の質の向上、眼精疲労緩和寝る1時間前はスマホを別室に置く

特に、ゼラニウムやイランイラン、クラリセージなどの精油は、女性ホルモンのバランスを整える働きがあると言われています。お風呂に入れたり、ハンカチに垂らして香りを嗅いだりするだけで、心が落ち着きを取り戻します。

また、仕事中などにイライラを感じたら、深くゆっくりとした呼吸を数回繰り返すだけでも、自律神経のスイッチを副交感神経側に切り替える効果があります。自分の心と体の声に耳を傾け、ストレスを溜め込まない工夫をすることが、生理前の肌トラブルを回避する鍵となります。

市販薬や漢方薬を活用したセルフケア

スキンケアや生活習慣の改善だけでは追いつかない場合は、炎症を抑える医薬品や体質改善を目指す漢方薬を適切に取り入れることも、賢い選択肢の一つです。

炎症を抑える塗り薬の正しい使い方

すでに赤く腫れてしまったニキビや、痛みを感じるような炎症を起こしたニキビには、抗炎症成分や殺菌成分が配合された市販のニキビ治療薬を使用しましょう。

成分としては、炎症を鎮めるイブプロフェンピコノールや、アクネ菌を殺菌するイソプロピルメチルフェノールなどが一般的です。また、角質を柔らかくして毛穴詰まりを解消するイオウが配合されたものもありますが、乾燥しやすいので注意が必要です。

使い方のポイントは、洗顔後の清潔な肌に、患部を覆うように優しく塗布することです。顔全体に予防的に塗るのではなく、あくまでニキビができている部分にピンポイントで使用してください。薬剤によっては乾燥を招くこともあるため、塗布部分以外の保湿はしっかりと行うことが大切です。

ホルモンバランスを整える漢方薬の選択肢

毎月繰り返す生理前の不調や肌荒れには、東洋医学のアプローチである漢方薬が体質に合う場合があります。漢方では、血(けつ)の巡りや水(すい)の巡りを改善することで、肌トラブルを含む全身のバランスを整えると考えます。

例えば、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」は、滞った血流を改善する駆瘀血(くおけつ)作用があり、生理痛が重く、肩こりやのぼせがある人のニキビに効果的とされています。

大人ニキビによく用いられる漢方薬

漢方薬名適した体質・症状主な働き
桂枝茯苓丸比較的体力があり、のぼせや赤ら顔、肩こりがある血流を良くし、ホルモンの乱れによる肌荒れを整える
加味逍遙散イライラしやすく、精神不安や不眠傾向がある気の巡りを良くし、精神的な安定を図りながら肌を整える
当帰芍薬散色白で冷え性、むくみやすく、貧血気味である体を温めて血行を促し、水分代謝を改善する
清上防風湯顔の赤みが強く、脂性肌でニキビが膿みやすい顔の上部にこもった熱を冷まし、炎症を鎮める

漢方薬は自分の体質(証)に合わないと効果が得られないばかりか、副作用が出ることもあります。自己判断で購入せず、薬局の薬剤師や登録販売者に相談し、自分の体質や症状を詳しく伝えて選んでもらうことが重要です。

サプリメントを利用する際の注意点

食事だけで必要な栄養素をすべて摂取するのが難しい場合は、サプリメントで補うのも一つの有効な手段です。ビタミンB群やビタミンC、皮膚の健康維持に関わる亜鉛などは、ニキビケアの定番です。

また、月経前症候群(PMS)の緩和に効果があるといわれるハーブ「チェストベリー」などが配合された女性向けサプリメントも数多く販売されています。

しかし、サプリメントはあくまで食品であり、薬のような即効性はありません。継続して摂取することで徐々に効果を感じるものです。また、特定の成分を過剰に摂取することは健康被害のリスクもあります。すでに病院で処方されている薬がある場合は、飲み合わせの問題もあるため、必ず医師や薬剤師に確認してから摂取を開始してください。

よくある質問

生理前の肌トラブルに関して、多くの人が抱える疑問や不安に対して、医学的・美容的な観点から回答をまとめました。

Q
生理が終われば自然に治りますか?
A

生理が始まると黄体ホルモンの分泌が急激に減少し、卵胞ホルモンが増えてくるため、皮脂分泌が落ち着き自然と炎症が引いていくケースが多いです。しかし、炎症が真皮層などの深部まで達していたり、間違ったケアで悪化させたりした場合は、生理が終わっても赤みや色素沈着が残ったり、しこりが残ったりすることがあります。自然治癒をただ待つだけでなく、悪化させないための早期ケアが重要です。

Q
ピルを服用するとニキビは改善しますか?
A

低用量ピルには排卵を抑制し、体内のホルモンバランスを一定に保つ働きがあるため、生理前の急激なホルモン変動によるニキビの改善に高い効果を示すことがあります。特に男性ホルモンの影響を強く受けやすい、フェイスラインのニキビには有効とされています。ただし、ピルは医薬品であり、血栓症などの副作用のリスクもゼロではありません。服用を希望する場合は、必ず婦人科医と相談し、リスクとベネフィットを理解した上で検討する必要があります。

Q
チョコレートや甘いものは完全に禁止ですか?
A

完全に禁止してストレスを溜める必要はありませんが、食べる量とタイミングには注意が必要です。糖質や脂質の過剰摂取は、皮脂の質の変化や分泌量の増加を招き、炎症を悪化させる要因になり得ます。ストレス解消のために少量を楽しむ程度なら問題ありませんが、生理前は血糖値が上がりやすい時期でもあります。カカオ含有量の高いダークチョコレートを選んだり、空腹時を避けて食後に食べたりするなど、血糖値を急上昇させない工夫が推奨されます。

Q
跡に残さないために一番大切なことは何ですか?
A

絶対に「触らない」「潰さない」ことです。これが最もシンプルかつ重要な鉄則です。ニキビを潰すと皮膚の組織が物理的に破壊され、クレーター状の凹凸や色素沈着の原因となります。また、手についた雑菌が傷口に入り込み、炎症をさらに広げる恐れもあります。気になっても鏡を見る回数を減らし、髪の毛が当たらないようにまとめ、患部に刺激を与えないことが、綺麗に治すための最短ルートです。

Q
洗顔は1日何回が適切ですか?
A

基本的には朝と夜の1日2回で十分です。皮脂が気になるからといって、1日に何度も洗顔をすると、肌に必要な保湿成分(細胞間脂質やNMF)まで洗い流してしまい、乾燥によるバリア機能の低下を招きます。その結果、肌は自分を守ろうとしてかえって皮脂を過剰に分泌させるという悪循環に陥ります。日中のベタつきがどうしても気になる場合は、あぶらとり紙やティッシュで軽く押さえる程度に留めましょう。

参考文献