薄毛や抜け毛の悩みは、多くの男性にとって深刻な問題です。その対策として、まず「育毛剤」を思い浮かべる方は少なくないでしょう。
しかし、ドラッグストアには様々な製品が並び、どれを選べば良いのか、本当に効果があるのか、疑問に思うことも多いはずです。
この記事では、育毛剤と発毛剤の違いを明確にし、AGA(男性型脱毛症)の進行度に応じた適切な治療の選択肢を解説します。
市販の製品から医療用の治療薬まで、それぞれの効果と限界、副作用、費用対効果を詳しく比較・検証し、あなたの薄毛の悩みを解決するための一歩をサポートします。
市販の育毛剤による頭皮環境改善とその限界
薄毛対策の第一歩として、多くの方がドラッグストアで「育毛剤」を手に取ります。手軽に始められる市販の育毛剤は、頭皮環境を整え、健康な髪が育つ土台作りをサポートするものです。
しかし、その効果には限界があることも理解しておく必要があります。ここでは、市販育毛剤の役割と成分、正しい使い方、そして「発毛」との違いについて詳しく解説します。
育毛剤の役割と主な成分

頭皮の血行促進と栄養補給
市販の育毛剤の主な目的は、「今ある髪を健康に育てる(育毛)」ことと、「抜け毛を防ぐ(予防)」ことです。髪の成長には、毛根にある毛母細胞へ十分な酸素と栄養が届けられることが必要です。
育毛剤に含まれるセンブリエキスやビタミンE誘導体などの成分は、頭皮の血行を促進し、毛母細胞の働きを活発にします。これにより、髪にハリやコシを与え、健やかな成長をサポートします。
保湿・抗炎症成分で頭皮を守る

頭皮の乾燥や炎症は、フケやかゆみの原因となるだけでなく、抜け毛を引き起こす要因にもなります。健康な髪を育てるためには、畑である頭皮の環境を良好に保つことが大切です。
多くの育毛剤には、グリチルリチン酸ジカリウムなどの抗炎症成分や、ヒアルロン酸、コラーゲンといった保湿成分が配合されています。
これらの成分が頭皮のコンディションを整え、抜け毛の起こりにくい環境を作ります。
市販育毛剤の主な有効成分と期待される効果

成分の種類 | 代表的な成分名 | 期待される効果 |
---|---|---|
血行促進成分 | センブリエキス、ビタミンE誘導体 | 頭皮の血流を改善し、毛根へ栄養を届ける |
抗炎症成分 | グリチルリチン酸2K | 頭皮の炎症を抑え、フケやかゆみを防ぐ |
保湿成分 | ヒアルロン酸、セラミド | 頭皮の乾燥を防ぎ、潤いを保つ |
ドラッグストアで手に入る育毛剤の使い方
正しい塗布方法とタイミング
育毛剤の効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方が重要です。基本的には、洗髪後で頭皮が清潔な状態で使用します。
髪をしっかりと乾かした後、育毛剤のノズルを直接頭皮につけ、気になる部分を中心に塗布します。その後、指の腹を使って、頭皮を優しくマッサージするように揉み込み、成分を浸透させます。

1日に1〜2回の使用を推奨する製品が一般的ですが、製品ごとの使い方を必ず確認しましょう。
育毛剤選びのポイントと比較
ドラッグストアには多種多様な育毛剤があり、ランキングや口コミを参考にすることも一つの手ですが、最終的にはご自身の頭皮の状態に合わせて選ぶことが大切です。
例えば、頭皮の乾燥が気になる方は保湿成分が豊富なものを、皮脂が多い方はさっぱりとした使用感のものを選ぶと良いでしょう。
いくつかの製品を比較検討し、継続して使用できる価格帯や香りのものを見つけることも、長くケアを続けるためのポイントです。
市販育毛剤の効果の限界と注意点
「発毛」ではなく「育毛」が目的
市販の育毛剤を使用する上で最も重要な注意点は、その目的を正しく理解することです。育毛剤は、あくまで医薬部外品であり、その目的は頭皮環境を整えて「育毛」を促進することです。
すでに髪が抜けてしまった毛穴から、新たに髪を生やす「発毛」の効果は認められていません。この違いを理解しないまま使用を続けると、「効果がない」と感じてしまう原因になります。
AGAの進行抑制効果はない
市販の育毛剤は頭皮環境を改善しますが、AGAの根本原因である男性ホルモンの働きを直接抑制する効果はありません。
そのため、AGAが進行している場合、育毛剤だけでは抜け毛の進行を食い止めることは困難です。
抜け毛が減らない、薄毛が明らかに進行していると感じる場合は、育毛剤によるケアの限界と捉え、次のステップである「発毛剤」の使用や専門医への相談を検討する必要があります。
市販発毛剤(ミノキシジル外用薬5%)の発毛効果と適応
育毛剤で効果を感じられなかった方や、より積極的に薄毛を改善したいと考える方にとって、次の選択肢となるのが「発毛剤」です。
特に、有効成分「ミノキシジル」を5%配合した市販の発毛剤は、ドラッグストアなどで購入でき、その発毛効果が国に認められています。
ここでは、発毛剤と育毛剤の決定的な違いや、ミノキシジルの具体的な効果、どのような人におすすめかについて解説します。
発毛剤と育毛剤の決定的な違い

医薬品としての発毛効果
発毛剤と育毛剤の最も大きな違いは、その分類と目的にあります。育毛剤が「医薬部外品」であり、主な目的が育毛や抜け毛予防であるのに対し、発毛剤は「第一類医薬品」に分類されます。
医薬品であるということは、病気の治療を目的としており、「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防。」という明確な効能・効果が厚生労働省によって承認されていることを意味します。
つまり、新しい髪を生やす「発毛効果」が科学的に認められているのです。
ミノキシジルが髪を生やす働き
市販の発毛剤の主成分である「ミノキシジル」は、もともと高血圧の治療薬として開発された成分ですが、その過程で多毛の副作用が見られたことから、発毛剤として転用されました。
ミノキシジルには、頭皮の血管を拡張して血流を改善する働きと、毛根の毛母細胞に直接働きかけて、その活動を活性化させる働きがあります。
これにより、AGAによって短縮された髪の成長期を正常な状態に近づけ、小さく細くなった髪の毛(軟毛)を太く長く育て、休止期にある毛根を刺激して新たな発毛を促します。
市販ミノキシジル外用薬5%の具体的な効果

臨床試験で認められた発毛効果
日本国内で市販されている男性向けの発毛剤には、ミノキシジルが最大5%まで配合されています。このミノキシジル5%外用薬は、製造販売後の調査において、多くの使用者で薄毛の改善効果が確認されています。
軽度から中等度のAGA患者を対象とした臨床試験では、使用者の多くで毛髪数の増加が認められており、その発毛効果は客観的なデータによって裏付けられています。
効果を実感するまでの期間
発毛効果を実感するまでには、ある程度の期間が必要です。髪の毛には「ヘアサイクル」と呼ばれる成長の周期があり、ミノキシジルを使い始めてすぐに髪が生えてくるわけではありません。
一般的に、効果を判断するためには、最低でも4ヶ月から6ヶ月間、毎日継続して使用することが推奨されています。根気強くケアを続けることが、効果を得るための鍵となります。
市販発毛剤(ミノキシジル5%)の期待される効果
項目 | 内容 | 補足 |
---|---|---|
発毛 | 休止期の毛根を刺激し、新しい髪の毛を生やす | 育毛剤にはない、医薬品としての効果 |
育毛 | 細く短い髪の毛を、太く長い髪に育てる | 髪の成長期を延長させる働きによる |
脱毛予防 | 抜け毛の進行を予防し、現状を維持する | AGAの進行を緩やかにする |
市販発毛剤がおすすめな人と使い方
壮年性脱毛症の初期段階にある男性
ミノキシジル5%配合の市販発毛剤は、AGA(壮年性脱毛症)を発症している成人男性に適しています。特に、生え際の後退や頭頂部の薄毛が気になり始めた初期から中期の段階の方に、高い効果が期待できます。
ただし、AGA以外の原因(円形脱毛症など)による脱毛には効果がありません。また、未成年者の使用は認められていません。
正しい使い方と塗布量の遵守
市販発毛剤は医薬品であるため、定められた用法・用量を守ることが極めて重要です。通常は1日2回、1回1mLを薄毛の気になる部分に塗布します。
多く使ったからといって効果が高まるわけではなく、むしろ副作用のリスクを高めるだけです。
また、ミノキシジルは女性に対しては異なる濃度(通常1%)の製品が用意されており、男性用の高濃度製品を女性が使用することは避けるべきです。
購入時には薬剤師からの説明をしっかりと受け、正しい使い方を理解しましょう。
医療用発毛剤(ミノキシジル外用薬6%以上)による高濃度治療
市販の発毛剤で満足のいく効果が得られなかった場合や、より積極的な発毛治療を望む場合、次の選択肢として医療機関で処方される高濃度のミノキシジル外用薬があります。
市販薬の濃度(最大5%)を超えるこれらの治療薬は、医師の診断と管理のもとで使用することで、さらなる発毛効果が期待できます。
ここでは、なぜ高濃度ミノキシジルが医療機関でのみ扱われるのか、その効果とリスクについて解説します。
なぜ高濃度ミノキシジルは医療機関で処方されるのか
市販薬を超える発毛効果への期待
ミノキシジル外用薬は、一般的に濃度が高くなるほど発毛効果も高まる傾向にあると考えられています。
市販薬の上限である5%を超える濃度(6%以上、クリニックによっては15%を超えるものも)のミノキシジルは、毛根に対してより強力に働きかけ、市販薬では改善が難しかったケースでも発毛を促す可能性があります。
特に、薄毛が進行している方や、より早く、より確実な効果を求める方にとって、高濃度治療は有力な選択肢となります。
医師の診断と管理の必要性
効果が高まる可能性がある一方で、濃度の上昇に伴い、副作用のリスクも高まります。
頭皮のかぶれやかゆみといった皮膚症状が強く出たり、動悸やめまいといった全身性の副作用が現れる可能性もゼロではありません。
そのため、高濃度のミノキシジル外用薬は、医師が患者一人ひとりの頭皮の状態や健康状態を診断し、治療が適切かどうかを判断した上で処方します。
治療開始後も、定期的な診察を通じて効果と副作用の有無を確認し、安全に治療を継続できるよう管理することが重要です。
高濃度ミノキシジル外用薬の比較

濃度による効果と副作用の違い
ミノキシジルの濃度を選択する際は、効果と副作用のバランスを考慮する必要があります。
一般的に、5%から濃度を上げていくと発毛効果の実感は高まる傾向にありますが、それに比例して皮膚への刺激も強くなる可能性があります。
どの濃度が自分にとって最適かは、自己判断で決めるべきではありません。
医師との相談を通じて、ご自身のAGAの進行度や肌質、治療への期待値を伝え、最も適した濃度の薬剤を選択することが、満足のいく結果につながります。
ミノキシジル外用薬の濃度別比較
濃度 | 主な特徴 | 入手方法 |
---|---|---|
1% | 女性の壮年性脱毛症向け。副作用のリスクが低い。 | 市販(第一類医薬品) |
5% | 男性の壮年性脱毛症向け。市販薬の最大濃度。 | 市販(第一類医薬品) |
6%以上 | より高い発毛効果が期待できるが、副作用のリスクも上昇。 | 医療機関での医師の処方 |
クリニック処方のメリット
個々の症状に合わせた処方
薄毛治療専門のクリニックを受診する最大のメリットは、専門医による正確な診断に基づいた、オーダーメイドの治療を受けられる点です。
マイクロスコープで頭皮の状態を詳細に確認し、AGAの進行度を正確に把握した上で、最適な濃度のミノキシジル外用薬を処方します。
また、ミノキシジルだけでなく、他の有効成分を独自に配合した処方薬を提供しているクリニックもあり、より多角的なアプローチが可能です。
内服薬との併用治療という選択肢
クリニックでは、ミノキシジル外用薬(塗り薬)だけでなく、AGAの進行を内側から抑制する内服薬(飲み薬)を併用する治療も行えます。
代表的な内服薬には、フィナステリドやデュタステリドがあり、これらはAGAの根本原因であるDHTの生成を阻害します。
ミノキシジルで「発毛を促進」し、内服薬で「抜け毛を抑制する」という二つのアプローチを組み合わせることで、単剤での治療よりも高い効果が期待でき、薄毛の悩みを根本から改善へと導きます。
各治療法の効果比較と費用対効果の検証
薄毛対策には、市販の育毛剤から始まり、発毛剤、そしてクリニックでの専門治療まで、様々な選択肢があります。それぞれの方法は、期待できる効果、目的、そして必要となる費用が大きく異なります。
ご自身の薄毛の進行度や目指すゴール、そして予算に合わせて最適な選択をするために、各治療法を多角的に比較・検証してみましょう。
育毛剤・市販発毛剤・医療用発毛剤の比較
目的と効果の違いを再確認
これまでの解説の通り、3つの選択肢は目的が根本的に異なります。市販の「育毛剤」は、頭皮環境を整えて抜け毛を予防し、今ある髪を健康に保つことが目的です。
一方、市販および医療用の「発毛剤」は、有効成分ミノキシジルの働きにより、新しい髪を生やし、細い髪を太く育てることが目的の医薬品です。
この違いを理解することが、適切な製品選びの第一歩です。
治療法別 効果と目的の比較
治療法 | 分類 | 主な目的 |
---|---|---|
市販育毛剤 | 医薬部外品 | 育毛、脱毛予防、頭皮環境改善 |
市販発毛剤 | 第一類医薬品 | 発毛、育毛、脱毛の進行予防 |
医療用発毛剤 | 医療用医薬品 | より積極的な発毛促進 |
費用対効果で考える薄毛治療

月々のコストと長期的な視点
治療を選択する上で、費用は重要な判断材料です。一般的に、市販の育毛剤が最も手頃な価格帯で、次に市販発毛剤、そしてクリニックでの治療が最も高額になります。
しかし、単純な価格だけで判断するのは早計です。例えば、進行したAGAに対して安価な育毛剤を使い続けても効果は限定的であり、結果的に時間とお金を浪費してしまう可能性があります。
一方で、初期段階からクリニックで適切な治療を受ければ、結果的にトータルの費用を抑えられることもあります。
長期的な視点で、どの治療法が最も自分の投資に見合った結果(効果)をもたらすかを考えることが大切です。
治療法別 月間費用の目安
治療法 | 月間費用の目安 | 備考 |
---|---|---|
市販育毛剤 | 2,000円~8,000円 | 製品によって価格差が大きい |
市販発毛剤 | 6,000円~8,000円 | ミノキシジル5%配合製品の場合 |
医療機関での治療 | 15,000円~30,000円 | 外用薬と内服薬の併用など治療内容による |
ランキングや口コミに惑わされない選び方
インターネット上には、育毛剤や発毛剤のおすすめランキング、口コミサイトが溢れています。これらは製品選びの参考にはなりますが、鵜呑みにするのは危険です。
なぜなら、薄毛の原因や進行度は人それぞれであり、ある人に効果があった製品が、自分にも同じように効くとは限らないからです。
ランキングや口コミはあくまで個人の感想と捉え、最終的には成分や価格、そして自分の症状に合っているかどうかで判断することが重要です。
抜け毛予防から発毛促進まで
自分のゴール設定が重要
薄毛治療を始めるにあたり、「どのような状態になりたいか」というゴールを明確に設定しましょう。
「これ以上抜け毛を増やしたくない」という予防が目的ならば、市販の育毛剤や生活習慣の改善から始めるのも良いでしょう。
「少し薄くなってきた部分を元に戻したい」という発毛が目的ならば、市販の発毛剤やクリニックでの治療が選択肢となります。
自分のゴールを明確にすることで、数ある選択肢の中から、今やるべきことが見えてくるはずです。
治療開始のタイミングと継続期間の判断基準
AGA治療において、効果を最大限に引き出すためには「いつ治療を始め、いつまで続けるか」という判断が非常に重要です。
多くの方が「まだ大丈夫だろう」と先延ばしにしがちですが、早期に開始し、適切な期間継続することが、満足のいく結果への近道です。
ここでは、治療をスタートするべきサインと、効果を評価し治療を続けるための基準について解説します。
「抜け毛が気になる」が治療開始のサイン

早期治療が効果を高める
AGA治療は、毛根の細胞がまだ生きている状態で始めるほど、高い効果が期待できます。
枕元の抜け毛が増えた、髪のハリやコシがなくなった、スタイリングがうまく決まらなくなった、地肌が透けて見えるようになった、といった些細な変化は、AGAが進行し始めているサインかもしれません。
これらのサインに気づいた時が、治療を開始する絶好のタイミングです。「気のせいかもしれない」と放置せず、早めに行動を起こすことが、将来の髪を守る上で最も効果的な対策です。
自己判断せず専門家へ相談
抜け毛の原因はAGAだけとは限りません。ストレスや生活習慣の乱れ、他の病気が原因である可能性もあります。
自己判断で市販薬を使い始める前に、一度、薄毛治療を専門とするクリニックで医師の診断を受けることをおすすめします。
専門医は、あなたの薄毛が本当にAGAなのか、進行度はどのくらいなのかを正確に診断し、あなたにとって最適な治療法を提案してくれます。正しい診断が、効果的な治療への第一歩です。
治療効果の評価と継続の判断
最低でも6ヶ月は継続が必要
発毛治療の効果は、すぐには現れません。髪の毛が生え変わるヘアサイクルには数ヶ月単位の時間が必要なため、治療を開始してから効果を実感するまでには、一般的に最低でも6ヶ月程度の継続使用が必要です。
最初の1〜2ヶ月で効果が見られないからといって諦めてしまうのは非常にもったいないことです。まずは半年間、根気強く治療を続けるという心構えが大切です。
- 抜け毛の本数の変化
- 髪の毛の太さやハリ・コシの変化
- 産毛の発生
- 薄毛部分の地肌の見え方の変化
効果が見られない場合の選択肢
6ヶ月以上治療を継続しても、期待した効果が得られない場合もあります。その際は、治療法が合っていない可能性があります。
例えば、市販の育毛剤や発毛剤を使用している場合は、クリニックでのより専門的な治療へのステップアップを検討する時期かもしれません。
高濃度のミノキシジル外用薬や、内服薬との併用など、より強力な治療法に切り替えることで、改善が見られるケースは少なくありません。自己判断で中断せず、医師に相談しましょう。
治療をやめるとどうなるか
AGA治療は継続が基本
ミノキシジル外用薬やAGA内服薬による治療は、AGAの進行を抑制したり、発毛を促したりするものですが、AGAそのものを完治させるわけではありません。
そのため、治療を中断すると、薬の効果によって保たれていた状態が失われ、AGAは再び進行し始めます。数ヶ月かけて得られた発毛効果も、徐々に治療前の状態に戻ってしまう可能性が高いです。
満足のいく状態になった後も、その状態を維持するためには、治療を継続することが基本となります。減薬や休薬については、必ず医師と相談の上で判断してください。
副作用とリスク管理 – 安全な治療選択のために

医薬品である発毛剤、特にミノキシジル外用薬を使用する上では、その効果だけでなく、起こりうる副作用についても正しく理解しておくことが重要です。
ほとんどの副作用は軽微で一時的なものですが、事前に知識を持つことで、万が一症状が出た場合にも冷静に対処できます。
安全に薄毛治療を進めるために、副作用の種類や対処法、そして使用上の注意点を学びましょう。
ミノキシジル外用薬の主な副作用
皮膚症状(かゆみ、かぶれ、発疹)
ミノキシジル外用薬で最も報告が多い副作用は、塗布した部分に生じる皮膚症状です。具体的には、頭皮のかゆみ、赤み、発疹、かぶれ、フケなどが挙げられます。
これらは、ミノキシジル成分そのものや、薬剤に含まれる他の添加物(基剤など)に対するアレルギー反応や刺激によって引き起こされることがあります。
多くの場合、症状は軽度ですが、我慢できないほど強い場合や、長期間続く場合は使用を中止し、医師や薬剤師に相談する必要があります。
初期脱毛とは何か
治療を開始して2週間から1ヶ月ほどの時期に、一時的に抜け毛が増えることがあります。これを「初期脱毛」と呼びます。
これは、ミノキシジルの効果によって乱れたヘアサイクルが正常化する過程で、古い髪の毛が新しい強い髪の毛に押し出されるために起こる現象です。
副作用というよりは、むしろ薬が効き始めている証拠と捉えることができます。通常は1〜2ヶ月程度で収まり、その後、新しい髪が生え始めるため、ここで使用を中断しないことが大切です。
ミノキシジル外用薬の主な副作用と対処法
副作用の種類 | 主な症状 | 対処法 |
---|---|---|
皮膚症状 | かゆみ、赤み、かぶれ、フケ | 使用を中止し、医師・薬剤師に相談する |
初期脱毛 | 治療開始初期の一時的な抜け毛の増加 | 治療を継続する(通常1〜2ヶ月で改善) |
全身性の副作用 | 動悸、めまい、頭痛、むくみ | 直ちに使用を中止し、医師の診察を受ける |
副作用が出たときの対処法
まずは使用を中止して様子を見る
頭皮のかゆみや赤みなど、何らかの異常を感じた場合は、まず使用を中止してください。軽度の症状であれば、使用を中断するだけで改善することがあります。
症状が改善した後、再度使用してみて同じ症状が繰り返されるようであれば、その製品があなたの体質に合っていない可能性が高いです。
医師や薬剤師への相談
皮膚症状が強い場合や、使用を中止しても改善しない場合、あるいは動悸やめまいといった全身性の副作用が疑われる場合は、自己判断で放置せず、速やかに医師や薬剤師に相談してください。
特に市販薬を使用している場合は、製品の箱や説明書を持参して相談すると、より的確なアドバイスを受けられます。
クリニックで処方された薬剤の場合は、処方元の医師に連絡を取り、指示を仰ぎましょう。
女性や未成年者の使用について
男性向け製品の女性への影響
市販の男性用ミノキシジル5%発毛剤は、女性の使用が認められていません。女性が使用した場合、多毛症(体毛が濃くなる)などの副作用が強く現れる可能性があります。
また、妊娠中や授乳中の女性が使用すると、胎児や乳児に影響を及ぼす危険性もあります。女性には、ミノキシジル1%配合の女性専用製品が用意されているため、必ずそちらを使用してください。
安全な治療のための注意点
ミノキシジル外用薬は、壮年性脱毛症と診断された成人男性・女性のための医薬品です。未成年者の使用は安全性が確認されていないため、認められていません。
また、心臓や腎臓に持病のある方、高血圧・低血圧の方、甲状腺機能障害のある方は、使用前に必ず医師に相談してください。
安全な治療のためには、定められた用法・用量を守り、禁忌事項を正しく理解することが何よりも重要です。
よくある質問
育毛剤や発毛剤に関する治療を検討するにあたり、多くの方が抱く疑問にお答えします。
ここに記載のない疑問や、ご自身の症状に関する具体的なご相談は、専門のクリニックまでお気軽にお問い合わせください。
- Q育毛剤と発毛剤は併用できますか?
- A
自己判断での併用はおすすめしません。成分が重複したり、互いの効果を妨げたり、予期せぬ副作用を引き起こす可能性があります。
特に医薬品である発毛剤を使用する場合は、他の頭皮ケア製品との組み合わせについて、医師または薬剤師に相談することが重要です。
クリニックでは、患者さまの状態に合わせて最適な薬剤の組み合わせを提案します。
- Q効果がなかった場合、返金保証はありますか?
- A
製品やクリニックによって対応は異なります。市販の製品の中には、条件付きで返金保証制度を設けているものもありますが、非常に稀です。
クリニックでの治療は医療行為にあたるため、一般的に返金保証はありません。
契約前に、費用や治療内容について十分に説明を受け、納得した上で開始することが大切です。
- Qドラッグストアの薬剤師におすすめを聞いても良いですか?
- A
もちろんです。第一類医薬品である市販の発毛剤を購入する際は、薬剤師からの説明が義務付けられています。
ご自身の症状を伝え、どの製品が合いそうか、また正しい使い方や副作用について相談することは非常に有益です。
ただし、薬剤師はAGAの確定診断を行うことはできません。より確実な診断と治療を望む場合は、医師の診察を受けることを推奨します。
- Q遺伝だと諦めるしかないのでしょうか?
- A
諦める必要は全くありません。AGAの発症に遺伝的要因が強く関わっているのは事実ですが、それは「治療しても無駄」ということを意味しません。
遺伝的な素因があっても、早期から適切な治療(ミノキシジル外用薬や内服薬など)を行うことで、薄毛の進行を抑制し、発毛を促すことは十分に可能です。
多くの方が治療によって悩みを改善しています。
- Q女性用の育毛剤や発毛剤と男性用は何が違いますか?
- A
主な違いは、配合されている成分やその濃度です。特に医薬品である発毛剤の場合、男性用はミノキシジル濃度が5%まで認められていますが、女性用は1%が一般的です。
これは、女性の方が副作用の影響を受けやすいためです。
また、女性の薄毛の原因は男性とは異なる場合も多いため、女性用の製品はホルモンバランスの乱れや頭皮の血行不良に着目した成分構成になっていることが多いです。
必ずご自身の性別に合った製品を選んでください。
抜け毛の予防や頭皮環境の改善を目的とした「市販の育毛剤」にも様々な種類があり、薄毛対策の第一歩として有効な場合があります。
どのような成分があり、ご自身の目的に合った製品をどう選べば良いのか、より詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。あなたの頭皮ケアのヒントが見つかるかもしれません。