男性の薄毛として広く知られる男性型脱毛症は、進行性の脱毛が特徴です。髪の生え際や頭頂部が薄くなるケースが多く、早い人だと20代から変化に気づくことがあります。

見た目の印象や日常生活への影響を気にして、どう向き合えばよいか悩む方も少なくありません。

この記事では、男性型脱毛症の概要や原因、進行パターンから日常のケア、治療方法に関する情報を詳しくまとめていきます。

男性型脱毛症とは

男性に多くみられる脱毛の状態として、毛髪が薄くなるばかりでなく、生え際が後退したり頭頂部が地肌の見えやすい状態になったりします。

男性ホルモンの働きや遺伝などが関連しており、若年層でも発症する可能性があります。

男性型脱毛症の基本的な定義

男性特有の脱毛症として知られる状態です。額の生え際や頭頂部を中心に、髪が細くなったり短くなったりして抜けやすくなります。

遺伝やホルモンが複雑に絡み合い、進行する人と進行しにくい人が存在します。

男性型脱毛症と他の脱毛症の違い

円形脱毛症や粃糠性(ひこうせい)脱毛症など、脱毛症には複数の種類があります。

男性型脱毛症の場合はホルモンバランスの影響が大きく、頭皮の特定の部位が薄くなる傾向が強いです。

心理的・社会的なインパクト

頭髪の変化は見た目に直接関わるため、精神的な負担を感じやすくなります。

周囲の視線が気になり外出を避けるようになったり、仕事やプライベートにおけるモチベーションの低下につながったりするケースもあります。

男性型脱毛症の発症時期

思春期以降、20代〜30代で初期症状を感じるケースが多いですが、40代以降になって顕著に進行する方もいます。

年齢に関わらず、原因となる要因が重なると早期に進みやすいと考えられます。

男性型脱毛症に関する概要

事項内容
主な症状生え際の後退、頭頂部の薄毛
発症時期早い人で20代、遅い人でも中年以降に発症する可能性
原因男性ホルモンの影響、遺伝、生活習慣など
他の脱毛症との違い円形脱毛症は突然の脱毛斑、粃糠性脱毛症はフケによる毛穴詰まりなど
進行性徐々に脱毛範囲が広がり放置すると拡大する傾向

男性型脱毛症の原因

男性型脱毛症の原因には、ホルモン的要因や遺伝的要因、生活習慣などが多角的に関与すると考えられています。

男性ホルモンと毛髪の関係

男性型脱毛症の原因としてよく言及されるのが男性ホルモンです。

テストステロンという男性ホルモンが5αリダクターゼという酵素の働きによってジヒドロテストステロン(DHT)に変換されると、毛母細胞の成長を阻害し、毛周期が短くなります。

  • テストステロンが変換される仕組み
  • 変換産物であるDHTの毛根への影響
  • 毛母細胞が短命化するプロセス
  • 個人差の要因(酵素活性やホルモンレベルの違い)

遺伝的要因の影響

父方や母方の家系で薄毛の傾向が強い場合、自分自身も男性型脱毛症を起こしやすいとの報告があります。

遺伝的体質がホルモンの影響を受けやすくする側面があると考えられます。

生活習慣と頭皮環境

不規則な生活や喫煙、飲酒や睡眠不足、ストレスなどが重なると頭皮の血流が悪化しやすくなり、髪の成長に必要な栄養が行き届きにくくなります。

また、脂質や糖質の過剰摂取によって皮脂分泌が増加し、毛穴が詰まりやすくなる懸念もあります。

ストレスとの関連

心理的な負担によって自律神経のバランスが乱れると血管収縮を起こしやすくなり、頭皮への血流が減少します。

さらにホルモンバランスが崩れると、男性型脱毛症の進行リスクが高まることがあります。

主な原因要素の関連性

要因具体的な影響補足事項
男性ホルモンDHTが毛母細胞に悪影響テストステロンと5αリダクターゼが関与
遺伝家系で薄毛傾向が強いと発症リスクが上がるホルモンの変換率が高くなりやすい
生活習慣(喫煙など)血流不良、頭皮環境の悪化睡眠不足や栄養の偏りも関連
ストレス自律神経の乱れによるホルモンバランス異常血管収縮→毛根への栄養供給減少

主な症状と進行パターン

男性型脱毛症は進行性のため、初期の段階で気づかないと、予想以上に脱毛範囲が広がることがあります。

具体的な症状と進行パターンの特徴を整理し、自分の状態を確認できるポイントを見ていきましょう。

初期症状

初期段階では、髪が細くなり始めた、シャンプー時に抜け毛の量が増えたなどの小さな変化から気づくことがあります。

あまり目立たないため、気のせいと感じて対策を後回しにする方が多いです。

M字型、O字型、U字型などの進行パターン

男性型脱毛症には、前頭部の生え際が左右から後退する「M字型」、頭頂部が円形に薄くなる「O字型」、前頭部と頭頂部の両方が薄くなっていく「U字型」など、複数の進行パターンがあります。

進行パターンの特徴

進行パターン主な特徴対策のポイント
M字型前頭部の両サイドが後退肥大化した皮脂腺や毛根周囲の炎症に着目
O字型頭頂部から円形に薄毛が広がり、頭皮が透けて見える血流促進や毛根の活性化を意識
U字型前頭部と頭頂部の脱毛が同時進行しやすく、頭頂部と生え際が徐々に繋がるように薄くなる総合的なケアと毛髪サイクルの見直しが大切

人によっては複数のパターンが同時に進むケースもあります。

進行ステージの把握

  • M字部分の後退が少し目立つ
  • 頭頂部のボリュームダウンを感じる
  • 前頭部と頭頂部が互いに広がる
  • 側頭部まで薄毛が広がり、頭髪全体が薄くなる

これらの進行ステージを客観的に把握すると、どの段階にあるのかイメージしやすくなり、早めの対策につなげやすくなります。

悩みやすいポイント

頭皮が透けて見えるようになると、外見に対するコンプレックスを強く感じがちです。

さらに、似合うヘアスタイルが限られたり、髪をセットする時間が長くなるなどの日常生活上の負担も増える傾向にあります。

日常生活における予防とケア

男性型脱毛症を遅らせるには、生活習慣の見直しや頭皮ケアが重要です。ふだんの生活で意識できる取り組みを行っていきましょう。

洗髪方法と頭皮環境の整え方

過度な洗浄力のシャンプーで頭皮を洗うと必要な皮脂まで落としてしまい、逆に皮脂の過剰分泌を招く場合があります。

適度な温度のぬるま湯で、頭皮をマッサージしながら洗い流すことを心がけると、毛穴の汚れを落としやすくなります。

頭皮を傷めにくい洗髪の手順

  1. ぬるま湯で頭皮を予洗いする
  2. シャンプーをよく泡立ててから髪全体につける
  3. 指の腹を使って優しくマッサージする
  4. すすぎ残しがないように十分に流す

基本的なことではありますが、ていねいな洗髪を心がけると頭皮を傷めにくいです。

頭皮マッサージのメリット

頭皮をマッサージすると血行が促進され、毛根に栄養が届きやすくなります。

湯船につかりながら、または就寝前に短時間行う習慣を付けると、リラックス効果と頭皮ケアを同時に得られます。

紫外線対策

紫外線は頭皮にダメージを与え、乾燥や炎症を引き起こしやすくなります。

外出時は帽子をかぶるか、日傘やUVスプレーを活用して頭皮を守りましょう。

ストレス管理

適度な運動や趣味の時間を設けるなど、ストレスを軽減する工夫も脱毛予防には大切です。

心身ともにリラックスできる環境をつくると、ホルモンバランスが保ちやすくなります。

日常で意識したいケア項目

ケア項目具体的なアクション効果
シャンプー選び刺激の少ないアミノ酸系シャンプーなど頭皮トラブルを減らし皮脂過剰を抑制
洗髪の仕方指の腹で優しくマッサージ毛穴詰まりを防ぎ血行を促す
UV対策帽子やUVケアアイテムの活用頭皮の炎症予防と乾燥防止
頭皮マッサージ入浴中や就寝前に2〜3分血流改善とリラックス効果
ストレス対策運動・趣味・休息などでリフレッシュ自律神経とホルモンバランスの安定

医薬品や外用薬の治療方法

男性型脱毛症の治療として、内服薬や外用薬がよく知られています。

それぞれの治療方法の特徴と、使用時の注意点を確認しておくと、自分に合った方法を選びやすいでしょう。

内服薬の効果と注意点

男性ホルモンの生成を抑制する薬などが代表例として挙げられます。服用を続けることで進行を食い止める働きが期待できますが、効果には個人差があります。

副作用のリスクや処方の継続が必要な場合もあるため、医師の指導のもとで取り組むのが基本です。

外用薬の作用メカニズム

頭皮に直接塗布することで、毛根の血流や細胞活性を高める外用薬もあります。

朝晩など決められた時間帯にこまめに塗布し、頭皮を清潔に保ちながら活用します。塗り忘れが続くと効果が出にくくなる点に注意が必要です。

併用療法の利点

内服薬と外用薬を組み合わせると、ホルモンの影響を抑えつつ頭皮環境を整えるという相乗効果が期待できます。

ただし、過度の使用は頭皮トラブルを招く恐れがあるため、医師の判断でバランスを取りながら進める必要があります。

費用と継続性の問題

医薬品治療は基本的に保険適用外となるケースが多く、自己負担が生じます。

ある程度の期間継続しないと効果が確認しづらいため、金銭面だけでなくモチベーションの維持もポイントになります。

内服薬と外用薬の比較

項目内服薬の例外用薬の例
服用・使用法毎日1回内服朝晩1〜2回頭皮に塗布
作用ホルモン生成抑制血行促進、細胞活性化
副作用性機能への影響などかゆみや赤みなど
長期継続医師の診察・処方が必要定期的な塗布と頭皮ケアが要
費用面月額数千円〜数万円が目安月額数千円〜が目安

生活習慣や食事の見直し方

治療薬だけに頼らず、日頃の食事や生活習慣を整えることが男性型脱毛症対策の一助になります。

タンパク質やビタミン類の摂取

髪の主成分はケラチンというタンパク質なので、肉や魚、大豆製品などタンパク質を意識して摂ることが重要です。

ビタミンB群や亜鉛は、毛髪の成長をサポートするといわれています。

髪の健康を支える栄養素

栄養素食材
タンパク質肉類、魚、卵、大豆製品
ビタミンB群レバー、豚肉、緑黄色野菜
亜鉛牡蠣、牛肉、海藻類
鉄分赤身肉、レバー、ほうれん草

過剰摂取に気をつけたい食事

脂質や糖質の過剰摂取は、皮脂の分泌を増やしやすくなり、頭皮のべたつきや毛穴の詰まりの原因となります。

ファストフードや甘い飲み物を頻繁に摂る習慣がある方は要注意です。

適度な運動と血行促進

ウォーキングや軽いランニング、ストレッチなどの有酸素運動を習慣づけると、全身の血流が良くなり頭皮にも栄養が行き届きやすくなります。

激しい運動をする必要はなく、週に2~3回程度から自分に合った運動を始めると良いでしょう。

睡眠の質を高める工夫

髪の成長ホルモンは夜間の深い眠りの間に分泌されやすくなります。

就寝前の飲酒やスマートフォンの使用を控えるなど、質の良い睡眠を確保することを心がけましょう。

食事改善や生活習慣のポイント

項目工夫の例期待できる効果
食事バランスタンパク質・ビタミン・ミネラル重視髪の成長に必要な栄養を補給
脂質・糖質の調整揚げ物や甘味飲料を控える頭皮の皮脂過多を防止
運動有酸素運動を週数回継続血流改善、ストレス軽減
睡眠の確保早めの就寝、寝る前の電子機器オフ成長ホルモン分泌を促す
ストレッチ朝晩などに軽い体操で身体をほぐす血行促進とリラクゼーション

クリニック受診のポイント

男性型脱毛症の治療は長期戦になることが少なくありません。クリニックを受診すると、専門的な診断と適切な治療方法の提案を受けられます。

専門クリニックか一般皮膚科か

男性型脱毛症に特化したクリニックでは、髪と頭皮に関する専門的な知見を持つ医師が治療を行うケースが多いです。

一方、一般の皮膚科でも相談は可能ですが、設備や治療メニューが限定的な場合もあります。

どの科を受診すれば良いのか迷う方も少なくありませんが、本格的に治療を行いたいときは専門クリニックがおすすめです。

カウンセリングで確認したいこと

医師やスタッフとのカウンセリングを通じて、自分の脱毛状況や生活習慣、予算などを総合的に考慮して治療方針を立てます。

疑問点があれば早めに質問すると、後々の不安を減らせます。

  • 自分の薄毛の進行度合い
  • 予算と治療期間の目安
  • 治療薬の作用や副作用
  • 定期受診の頻度

病院での検査や診断

頭皮の状態をマイクロスコープで確認したり、血液検査を行ったりして、脱毛の原因を総合的に判断します。

男性ホルモンや甲状腺ホルモンの値をチェックすることで、より正確な治療方針を決められます。

治療開始後のフォローアップ

治療薬の副作用や経過観察のため、定期的に通院して頭髪の状態を確認します。

疑問や悩みが生じた場合は、医師や看護師に相談しながら、治療プランを修正することも可能です。

受診前後の流れ

項目内容
予約電話やオンラインで事前に予約を取り、カウンセリング時間を確保
カウンセリング症状や家族歴、生活習慣、予算をヒアリングして治療方針を確認
検査マイクロスコープや血液検査などで頭皮・ホルモン値をチェック
治療開始内服薬や外用薬、生活指導を開始し、経過をこまめに記録
フォローアップ定期受診で進捗を確認し、副作用や効果の度合いに応じて治療を調整

自己判断で通院をやめると、せっかく抑えた進行が再加速する可能性があります。

オンライン診療を行うクリニックも増えていますので、上手に活用すると良いでしょう。

よくある質問

男性型脱毛症の治療や予防、日常生活上の注意点に関して、よく寄せられる質問をまとめました。疑問を解消して、無理なくケアを続けられるようにしましょう。

Q
治療薬はどれくらいの期間飲み続ける必要がありますか?
A

効果を感じ始めるまでに3〜6か月ほどかかることが多く、ある程度の改善を確認するには1年単位での継続が必要なケースも少なくありません。

自己判断でやめると抜け毛が再び増えることもあるため、医師と相談しながら続けましょう。

Q
市販の育毛剤でも効果を期待できますか?
A

市販の育毛剤には血行促進成分などが含まれ、頭皮環境を整える効果が期待できる場合があります。

ただし、原因が男性ホルモンの影響や遺伝要因にある場合は、医師の診断に基づく治療薬のほうが進行を抑えやすいです。

Q
髪型で目立ちにくくする方法はありますか?
A

薄毛部分を目立ちにくくするヘアスタイルを相談する方法があります。美容師に髪のボリュームをカバーしやすいカットをお願いすると、スタイリングの負担を軽減できます。

ただし、パーマやカラーをするときは、頭皮への刺激が強くならないように注意しましょう。

Q
生活習慣の改善だけで薄毛は治りますか?
A

軽度の段階であれば、生活習慣を整えると進行を遅らせたり、抜け毛の増加を抑えたりすることが可能です。

ただし、ホルモンや遺伝が絡む場合は、それだけでは対応しきれない場合があります。総合的な対策が大切です。

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