髪の毛の薄さや抜けやすさに関して、「遺伝と関係があるのではないか」と心配する人は少なくありません。家族や親戚の髪の傾向を見て、不安が高まることもあるでしょう。
確かに、はげが遺伝する可能性は存在しますが、すべてが血縁の要因だけで説明できるわけではなく、生活習慣やストレスなど多角的な要因も考慮が必要です。
この記事では「遺伝性のはげ」に関する仕組みや、母方からの遺伝説、隔世的に受け継ぐパターンの真相などを解説しながら、予防や治療の選択肢まで幅広く見ていきます。
遺伝性のはげとは
髪の毛の薄さや抜け方に遺伝が関わる背景を、まず簡単に整理することが重要です。
特に男性型脱毛症と呼ばれる症状の多くは遺伝との関連が指摘されていますが、実際には男女問わず複合的な要因が絡む可能性があります。
遺伝性のはげの基本的な特徴
家族や近親者の中に薄毛や抜け毛で悩む人が多い場合、同じような傾向が強く出る例があります。
たとえば、男性の場合は前髪や頭頂部から徐々に薄くなるパターンが顕著です。女性の場合も分け目が広がるように進んだり、全体的にボリュームが低下したりすることがあります。
ただし、一口に「はげが遺伝する」といっても、実際の発症時期や進行度合いは人によって変わります。遺伝子だけでなくホルモンの影響や年齢、生活習慣がなども影響するためです。
髪の毛の成長サイクルには個人差があります。
成長期・退行期・休止期という周期を経て髪の毛は生え変わりますが、そのサイクルが短縮したり休止期に長くとどまったりすると、見た目として髪が薄く感じられる状態になります。
遺伝の影響は、このサイクルの管理にもかかわってくると考えられます。
母方からの遺伝説は本当か
「はげは母方からの遺伝が強い」という話を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
これは性染色体のX染色体上に関連する遺伝子が存在するために広まった説です。母親側のX染色体を受け継ぐ男性では、薄毛につながる因子を保有する確率が高まるという考え方です。
ただし、父方からの影響や他の遺伝子も完全に無視できません。実際には複数の遺伝子が組み合わさり、さらにホルモンバランスや生活習慣が作用して、はげやすさに違いが出てきます。
「母方に薄毛の人が多いから自分も必ずはげる」というわけではなく、発症リスクが高くなる可能性がある程度にとどまる場合が多いです。
母親の家系だけでなく、父親の家系にも薄毛の人が多い場合には、遺伝性の要因が強まることもあるでしょう。
隔世的に受け継ぐパターンの有無
「隔世遺伝でいきなりはげが出る」といった話も耳にします。父の代には髪がフサフサだったのに、祖父と孫が強い薄毛の傾向を示すなど、スキップするように発症が見られる例も報告されています。
しかし、これも単独の遺伝子ではなく、複数の因子が関わるために起こると考えられます。
隔世的に受け継ぐことで表面化するケースはあるものの、必ずしも祖父や曽祖父の髪の状態がそのまま再現されるわけではなく、育った環境や食生活などでも影響は変わるのが現状です。
遺伝要因に関する特徴
要因 | 説明 |
---|---|
X染色体上の遺伝子 | 母方由来の遺伝子が男性の薄毛に影響を与える可能性がある |
多因子遺伝 | 1つの遺伝子だけでなく複数の因子が組み合わさって髪質や頭皮環境を決定 |
ホルモンバランスとの関係 | 男性ホルモン(DHT)の増加が毛根に影響し、抜け毛を促進 |
生活習慣や環境要因の寄与 | 遺伝があっても栄養バランスやケアの仕方で発症の程度や時期が変わる |
遺伝性のはげを一元的に考えず、複合的にとらえることが重要です。
家系の情報はあくまで参考程度にしながら、日頃の頭皮ケアや医療的ケアを検討するのが望ましいでしょう。
男性型脱毛症と遺伝の関係
遺伝性のはげといえば、男性に多く見られる男性型脱毛症(AGA)がよく話題に上がります。
抜け毛の増加や生え際の後退が進行しやすく、気づかないうちに薄毛が目立ってくるケースも多いです。
男性型脱毛症の特徴
男性型脱毛症は前頭部や頭頂部を中心に髪が薄くなる傾向を示します。
額が広くなってくる、生え際がM字を描くように後退する、頭頂部が透けて見えるようになるなど、見た目の変化がわかりやすい点が特徴です。
髪全体が同じペースで薄くなるわけではなく、特定の部分から徐々に進む方が多いため、本人が気づきにくい場合もあるでしょう。
男性型脱毛症を引き起こす大きな要因として、男性ホルモンのテストステロンが変換されたジヒドロテストステロン(DHT)が挙げられます。
DHTは毛根を萎縮させ、成長サイクルを短くするため、毛髪の寿命が縮まります。これに遺伝が絡むと、発症リスクが高くなるケースが見受けられます。
遺伝の仕組みと男性ホルモン
男性ホルモンと遺伝の関係を理解する上で、5α-リダクターゼという酵素の働きが注目されます。
5α-リダクターゼはテストステロンをDHTに変換する酵素で、遺伝的にこの酵素活性が高い人は、薄毛が進みやすい傾向にあると言われます。
しかし、酵素の活性度合いは個人差が大きく、一概に「○○家系だからDHTが増えやすい」と決めつけられるものではありません。
加えて、皮脂の分泌量や頭皮の血行、栄養素の摂り方も発症のしかたや進行速度に影響します。
遺伝による男性型脱毛症のリスクが高いと感じる人でも、ストレスの軽減や適切なヘアケアによって症状を抑えられる可能性があります。
男性型脱毛症の治療と予防
男性型脱毛症の治療としては、内服薬や外用薬、注入治療などさまざまな選択肢があります。
内服薬としては5α-リダクターゼの働きを弱める成分を含むものが一般的で、外用薬では毛根を活性化させる成分が配合されるものが利用されています。
遺伝的にリスクがあっても、医療機関で適切な治療を行えば、進行を遅らせたり症状を改善したりできる場合があります。
予防としては、頭皮の血行を促すマッサージや、ストレスを溜めすぎない生活習慣の工夫、バランスのよい食事などが挙げられます。
遺伝的要因は変えられない部分ですが、周辺のケアによって髪や頭皮のコンディションを改善することは可能です。
男性型脱毛症の治療法と特徴
治療法 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|
内服薬 | 5α-リダクターゼを抑制しDHTの生成を減らす | 医師の診察を受けて処方してもらう必要がある |
外用薬 | 毛根や頭皮に直接働きかけ、発毛を促進 | 正しい使用方法を守ることが大切 |
注入治療 | 有効成分を頭皮に直接注入し、毛根や頭皮にアプローチ | 施術の痛みや頻度などの考慮が必要 |
生活習慣の改善 | 血行促進のための頭皮マッサージやバランスのよい栄養の摂取 | 継続が大切であり即効性は低い |
男性型脱毛症だからといってあきらめず、自分の状態に合った治療と予防を組み合わせることで、髪を健やかに維持できる可能性が高まります。
女性の薄毛における遺伝の影響
遺伝的な薄毛のイメージは男性に強いかもしれませんが、女性にも遺伝性の薄毛が見られます。
女性の場合、びまん性脱毛症や分け目周辺のボリュームダウンなど、男性とは異なる形で進むケースが一般的です。
女性に見られる主な薄毛パターン
女性の薄毛は、頭頂部や分け目から薄くなるびまん性脱毛が多いです。全体的に髪の量が減っていくように感じるため、男性のように前髪が著しく後退するパターンはあまり見られません。
これは女性ホルモンのエストロゲンが髪の成長をサポートするためであり、エストロゲンが減少する閉経期以降に薄毛が目立ちやすくなる傾向もあります。
女性の薄毛には、分娩後脱毛症や更年期のホルモンバランス変化による一時的な抜け毛なども含まれますが、これらが慢性的なものに移行した場合は、遺伝や生活習慣など複合的な要因を疑った方がよいかもしれません。
遺伝による女性の薄毛リスク
女性も母親側、父親側の両方から遺伝する可能性があります。
男性ホルモンだけでなく、女性ホルモンや甲状腺ホルモンの働きも薄毛と関係しているため、一概に「母方だけ」「父方だけ」というわけではありません。
また、女性は出産や更年期などホルモンの変動が大きいライフイベントがあり、その影響が遺伝的な素因と相まって薄毛を進行させる場合も考えられます。
ただし、薄毛につながる家系の傾向があっても、必ず発症するとは限りません。個人の健康状態やストレスの度合い、頭皮ケアによって発症率や進行度合いは変化するからです。
女性は男性よりも薄毛を隠しやすい面があるため、気づいたときにはかなり進んでいた、ということも起こり得ます。
女性の薄毛に対するケアと治療
女性向けの薄毛治療は、内服薬や外用薬のほか、ホルモンバランスを考慮した方法が重要です。特に、貧血や甲状腺機能など全身状態をチェックして、他の原因を排除しつつ治療が行われるケースが多いです。
遺伝的な素因があっても、早期にケアを始めると進行を遅らせたり、髪質の改善を図ったりすることが期待できます。
クリニックでは医師の診察を受け、血液検査や頭皮の状態を確認してから適した治療法を提案する場合があります。
生活面では、栄養バランスを意識した食事や十分な睡眠、頭皮環境を整えるシャンプー選びなどが重要です。
女性の薄毛に関連するポイント
- 出産後のホルモン変化に伴う一時的な抜け毛
- 更年期以降のエストロゲン低下に伴う頭髪のボリューム減
- 食事や睡眠などライフスタイルの乱れが影響
- ヘアカラーやパーマなど頭皮への刺激も少なからず関係
遺伝的に薄毛のリスクを抱えていても、健康的な生活と頭皮ケアで髪を守る道は十分にあります。
女性の薄毛対策に役立つケア
ケア内容 | 具体的な方法 | 期待できるメリット |
---|---|---|
栄養バランスの見直し | タンパク質やビタミン、ミネラルの摂取 | 毛髪の構成成分が補われ、頭皮環境を整える |
正しい洗髪方法 | 頭皮をマッサージするように洗う | 血行促進と皮脂汚れの除去 |
血行改善 | 適度な運動や頭皮マッサージ | 毛根への栄養供給の向上 |
ストレスケア | 趣味やリラクゼーションの時間をつくる | ホルモンバランスを整え、抜け毛を抑える |
遺伝だけを理由にあきらめず、医療的ケアと生活習慣の見直しを組み合わせると対処が可能です。
遺伝の影響以外で考えられるはげの要因
遺伝性のはげが注目を集めやすい一方で、実際には後天的な要因が大きく関わるケースも多々あります。
薄毛の原因をしっかり把握すると、対策の精度を高められるでしょう。
生活習慣や食事の偏り
脂っこい食事ばかり取っていたり、夜更かしや睡眠不足が続いたりすると、頭皮の血行が悪くなったり皮脂が過剰に分泌されたりして、抜け毛を増やす一因になります。
特に、炭水化物や脂質に偏った食事は毛髪の成分であるタンパク質や亜鉛などが不足しやすくなり、髪の成長を妨げる恐れがあります。
薄毛を予防するうえでは、バランスのよい食事と十分な睡眠が重要です。タンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランスよく摂り、血行を促進するための適度な運動も心がけましょう。
遺伝的に抜け毛のリスクが高い人も、生活習慣の改善だけでかなり状態が変わる可能性があります。
ストレスと頭皮環境
精神的なストレスはホルモンバランスを乱し、血行不良や皮脂分泌の乱れを引き起こす原因になります。ストレスが慢性化すると、頭皮環境そのものが悪化し、髪の成長を妨げやすいです。
適度な休息や趣味の時間を設け、リラックスできる習慣を持つ心がけが薄毛の進行を抑えるうえで有効です。
頭皮環境への影響は、シャンプーやトリートメントの選び方、過度なヘアアレンジなど外的要因も含まれます。
過度なブリーチやパーマは髪や頭皮に負担をかけている可能性があるため、遺伝的に髪が弱いと感じる人は、スタイリング時のダメージを軽減する工夫をするとよいでしょう。
年齢やホルモンの変化
加齢によって髪の成長サイクルが短くなり、細くて弱い毛が増える場合があります。
男性だけでなく女性も、年齢とともにホルモンバランスが変化し、髪にハリやコシがなくなるケースが多いです。
これは遺伝とは関係なく起こる自然な体の変化でもあるため、適切なヘアケアや医療機関での検査によって原因を特定し、対策を講じる必要があります。
薄毛に影響を与えやすい生活習慣
- 夜型の生活で睡眠時間が不規則
- 食事の栄養バランスが偏っている
- 運動不足や喫煙など血行を損なう習慣
- 高頻度のカラーリングやパーマ
これらの要因は、遺伝性のはげを助長する可能性があります。特に家族に薄毛の人が多い場合は、早めに見直しを行ったほうがよいでしょう。
遺伝以外の薄毛要因と特徴
要因 | 内容 | 対策のポイント |
---|---|---|
生活習慣の乱れ | 栄養不足や睡眠不足が髪の成長を阻害 | 食事や睡眠の質を改善して頭皮環境を整える |
ストレス | 自律神経やホルモンバランスを崩し血行不良に | リラックス方法を確立し、ストレスを緩和する |
ホルモン変化 | 加齢や出産、更年期などでホルモンが変動 | 医師の診察やホルモン検査で原因を特定し対処 |
外的ダメージ | ブリーチやパーマ、ヘアアイロンの過度使用 | ヘアケアを見直し、頭皮と髪へのダメージを減らす |
遺伝要因があるかどうかを問わず、こうした後天的な影響は見過ごせません。早めの対策が、将来の髪の健康を大きく左右するでしょう。
予防とケアに重要なポイント
遺伝性のはげを完全に避けるのは難しいかもしれませんが、発症や進行を遅らせるためには、日常的な予防策とケアが欠かせません。
家族の髪質を意識しながらも、自分に合った方法でケアを継続しましょう。
頭皮マッサージと血行促進
髪の毛は血液から栄養を受け取り、成長します。血流が悪いと、十分な栄養や酸素が毛根に届きにくくなるため、抜け毛のリスクが高まります。
そこで頭皮マッサージは、頭皮の血行を高める有効な手段です。シャンプー時に指の腹を使って頭皮を軽く押すようにマッサージすると、リラクゼーション効果も期待できます。
頭皮マッサージに加えて、適度な運動やお風呂にゆっくり入るなど、全身の血行を高める習慣も役立ちます。
日常のちょっとした心がけだけでも、長期的な髪の健康をサポートできます。
生活習慣の見直し
食事や睡眠、ストレスケアなど、健康な髪を育むうえで見直したい生活習慣は多岐にわたります。
タンパク質は髪の主成分であり、亜鉛やビタミンB群などは毛髪の生成や育成に影響します。野菜や果物を豊富にとりつつ、良質なタンパク源として魚や大豆食品などを取り入れると良いです。
睡眠は成長ホルモンの分泌と密接に関係し、髪の修復と再生にも関わっています。夜更かしが常態化すると、毛髪の生え替わりサイクルが乱れやすくなるため、可能な限り規則正しい睡眠リズムを整えましょう。
また、ストレスは自律神経を乱し、頭皮の血行不良を招く可能性があります。リラックスできる趣味や運動を取り入れて気分転換を図ることが大切です。
髪のケアと健康管理の関連
ケア・管理内容 | 髪と頭皮へのメリット | 継続するコツ |
---|---|---|
適切なシャンプー選び | 皮脂や汚れを落としつつ頭皮を乾燥させすぎない | ノンシリコンや弱酸性など自分の頭皮に合うものを試す |
頭皮マッサージ | 血行促進やリラクゼーション効果 | 入浴中や就寝前に習慣として組み込む |
栄養バランスの整った食事 | 毛髪の成長に必要な栄養素を十分に補給 | 食事に彩りを加える、魚や大豆食品などの積極的摂取 |
規則正しい生活習慣 | ホルモンバランスを整え、髪の成長をサポート | 就寝時間を一定に保ち、無理な夜更かしを控える |
日々の心がけが遺伝性のはげのリスクを軽減する助けになるでしょう。
医療機関での相談
薄毛が気になり始めたら、なるべく早めに医療機関へ相談すると、状態の把握と適切な治療の検討がしやすくなります。
遺伝的要因が強い場合でも、専門家と協力して治療プランを立てれば、十分に改善を目指せる可能性があります。
頭皮や毛髪の状態を細かくチェックする機器を用意しているクリニックも多く、正確な判断を期待できます。
遺伝の背景を持つ人ほど、自力で解決しようとするよりも、専門家の知見を得ると効率の良い対策をとりやすいでしょう。
予防とケアの要点
- 頭皮や髪にやさしいシャンプーを選ぶ
- 指の腹で優しく頭皮マッサージをする
- 良質なタンパク質やミネラルを意識した食事を心がける
- 十分な睡眠とストレスケアを大切にする
- 早めに医療機関を受診し、専門家に相談する
できることから始める姿勢が、将来の髪の状態を左右するといえます。
AGAクリニックでの治療と選択肢
遺伝性のはげに対しては、セルフケアだけでなく医療の力を活用する選択肢が存在します。
特に、AGAクリニックでは専門的な治療法や検査機器を活用して、一人ひとりに合わせたプランを立てやすいです。
AGAクリニックを利用するメリット
AGAクリニックでは、医師や看護師が薄毛や抜け毛に特化した知識を持っているため、一般の皮膚科よりも踏み込んだ治療が可能です。
検査では血液検査や頭皮の状態チェックなどを行い、原因を特定したうえで内服薬や外用薬、注入治療などを組み合わせることがあります。
また、発毛カメラなどによって治療経過を視覚化できるケースも多く、自分の髪の変化を確認しながら対策を続けられる点は大きなメリットです。
心理的なサポートも受けやすく、薄毛に関する悩みを打ち明けやすい環境が整っているところが多いです。家族や友人に相談しづらいという人でも、専門のカウンセラーに気軽に相談できるメリットがあります。
治療法のバリエーション
AGAクリニックで提供される治療法は多岐にわたります。内服薬では5α-リダクターゼの働きを弱める成分や血行促進をうながす成分などが中心となり、外用薬では頭皮に直接作用するタイプが用いられます。
これに加えて注入治療は、栄養素や発毛促進成分を頭皮にダイレクトに届ける目的で行う方法です。さらに、メソセラピーや低出力レーザー治療など、複数の方法を組み合わせるケースがあります。
治療の組み合わせや期間は、遺伝要因や薄毛の進行度合い、患者さんの生活スタイルによって変わります。医師と相談しながら計画的に進めると、効果を実感しやすくなるでしょう。
治療を継続するうえでのポイント
AGAの治療は基本的に長期戦になりやすいです。早期に効果を期待してやめてしまうと、再び抜け毛が増える可能性があります。
治療費や通院ペースなどを事前に確認し、自分のペースで継続できるように準備しておくと良いです。
家族の協力やクリニックスタッフとのコミュニケーションが続けるための支えになる場合もあります。
遺伝的にはげやすい体質の人は、一時的に改善しても放置するとリバウンドが起きやすいので、定期的なケアを意識したほうがよいでしょう。
再発防止のためには生活習慣の見直しも同時に進める必要があるかもしれません。
AGAクリニックで行う治療法
治療法 | 主な目的 | メリット | 注意点 |
---|---|---|---|
内服薬 | 男性ホルモン(DHT)の抑制 | 比較的手軽に始められ、効果が出やすい | 一定期間の服用が必要で、自己判断で中断しない |
外用薬 | 頭皮に直接作用し、毛根を活性化 | 副作用が比較的少なく、自宅ケアとの併用が可能 | 正しい使用量・使用回数を守る必要がある |
注入治療 | 栄養成分を頭皮に直接届け、毛根を刺激 | 効率よく有効成分を供給でき、クリニックで管理しやすい | 費用が高くなる可能性があり、継続性が重要 |
低出力レーザー治療 | 血行促進と発毛環境の改善 | 痛みが少なく、他の治療法と併用しやすい | 定期的な通院が必要で、即効性は限定的 |
自分に合った治療を見極め、専門家と連携して継続することが効果につながります。
はげの進行を止めるためのセルフチェック
遺伝的に薄毛のリスクを抱えている人は、早期発見と早期対策が肝心です。
普段から自分の髪の状態をチェックし、少しでもおかしいと感じたら専門家の意見を聞くとよいでしょう。
髪のボリュームや抜け毛の量
シャンプー時に指に絡む抜け毛の量が増えたり、髪のボリュームが急に落ちたように感じたりしたら、はげが進行しているサインかもしれません。
一般的には1日に50本~100本程度の抜け毛であれば普通とされていますが、明らかに増えたと実感した場合は注意が必要です。
日常的に抜け毛の本数を数えるのは難しいかもしれませんが、排水口や枕の上などに抜け毛が異常に多く見られる場合は要チェックです。
さらに、髪のコシが弱まり、細くて切れやすくなっていると感じたら、頭皮環境が悪化している可能性があります。遺伝要因を抱えている人は、こうした兆候を見逃さないようにしましょう。
頭皮の色や状態
健康な頭皮は、やや青白い色をしていることが多いです。赤みがかったり脂ぎっていたりすると、炎症や皮脂の過剰分泌を疑ったほうがいいでしょう。
また、フケが多く出るようになったり、頭皮がかゆい、痛いなどの症状が続いたりする場合も、薄毛の進行を後押しする可能性があります。
頭皮トラブルは遺伝だけでなく、シャンプーの種類や洗い方、ストレスなど多くの要因が複雑に絡みます。
自己流のケアで改善しないときは、早めに皮膚科やAGAクリニックで相談することをおすすめします。
毛髪サイクルの乱れ
髪の毛は成長期、退行期、休止期というサイクルを繰り返しますが、何らかの原因でこのサイクルが乱れると、抜け毛が急増したり新しく生える髪が細くなったりします。
特に遺伝的に抜け毛のリスクが高い場合、ストレスや栄養不足で毛髪サイクルが短縮し、十分に成長する前に抜けてしまうパターンがよく見られます。
もし髪の伸びが遅く感じたり、ヘアスタイルを変えようにも思ったように髪が成長しないと感じたりする場合、毛髪サイクルが乱れているかもしれません。
医療機関で検査すると、毛穴の状態や髪の太さなどを定期的に計測して原因を探れます。
自宅でできる髪と頭皮の簡易チェック
チェック項目 | 目安や観察ポイント |
---|---|
抜け毛の量 | シャンプー後の排水口、枕元に目立つ本数が増える |
頭皮の色やコンディション | 赤みや脂っぽさ、フケの増加 |
髪のハリやコシ | 髪が細くなった、切れやすくなったと感じる |
かゆみや痛みなどの頭皮トラブル | かゆみが続いたり炎症がある場合 |
髪の伸び方 | 以前より伸びが遅い、成長途中で抜けてしまう |
セルフチェックで異常が見つかったら、一人で悩まず専門家に相談すると、適切な対処法を選びやすくなります。
よくある質問
遺伝性のはげについては、ネット上でもさまざまな情報が飛び交いがちです。以下によくある質問と簡単な回答をまとめましたので、参考にしてみてください。
- Q遺伝で薄毛になりやすいと言われましたが、本当に確定ですか?
- A
遺伝的に髪が薄くなりやすい体質を持っている可能性はあります。しかしそれだけで確定とは限りません。
生活習慣やストレスケアなどに取り組むと、発症や進行を遅らせることが期待できます。医療機関での検査やカウンセリングを活用し、自分に合った予防策を探すとよいでしょう。
- Q母方の家系に薄毛が多いのですが、父方はどうでもいいのでしょうか?
- A
よく「母方の家系を見ればわかる」と言われますが、薄毛に関わる遺伝子は複数あり、母方だけでなく父方からの影響も否定できません。
結局は多因子遺伝の要素が強いため、家族全体の髪の傾向を一通り把握しておくと良いです。
- Q自宅で使える発毛剤を使っているのですが、それだけで十分ですか?
- A
発毛剤や育毛剤には一定の効果が期待できるものがある反面、原因や状態に合わない場合、思うような効果が得られないケースもあります。
遺伝的な要素が強い場合は、医師の処方やクリニックでの専門的なケアを検討するのが望ましいです。発毛剤はあくまで補助的な位置づけと考えるとよいでしょう。
- Qクリニックで治療を受けるタイミングはいつがいいですか?
- A
薄毛が進んでいると感じた時点、あるいは家族に薄毛の人が多くて早めに対策をしたいと感じた時点で相談するといいでしょう。
早期の段階でケアを始めるほうが、効果を得やすくなる傾向があります。すでに抜け毛が増え始めている場合は、放置せずに早めに受診して状態を把握しましょう。
参考文献
HAGENAARS, Saskia P., et al. Genetic prediction of male pattern baldness. PLoS genetics, 2017, 13.2: e1006594.
LIU, Fan, et al. Prediction of male-pattern baldness from genotypes. European Journal of Human Genetics, 2016, 24.6: 895-902.
ELLIS, Justine A.; STEBBING, Margaret; HARRAP, Stephen B. Genetic analysis of male pattern baldness and the 5α-reductase genes. Journal of investigative dermatology, 1998, 110.6: 849-853.
MARCIŃSKA, Magdalena, et al. Evaluation of DNA variants associated with androgenetic alopecia and their potential to predict male pattern baldness. PloS one, 2015, 10.5: e0127852.
PIRASTU, Nicola, et al. GWAS for male-pattern baldness identifies 71 susceptibility loci explaining 38% of the risk. Nature communications, 2017, 8.1: 1584.
YAP, Chloe X., et al. Dissection of genetic variation and evidence for pleiotropy in male pattern baldness. Nature communications, 2018, 9.1: 5407.
ELLIS, Justine A.; STEBBING, Margaret; HARRAP, Stephen B. Polymorphism of the androgen receptor gene is associated with male pattern baldness. Journal of investigative dermatology, 2001, 116.3: 452-455.
HEILMANN-HEIMBACH, Stefanie, et al. Meta-analysis identifies novel risk loci and yields systematic insights into the biology of male-pattern baldness. Nature communications, 2017, 8.1: 14694.