テストステロンは男性ホルモンの代表格であり、筋肉や骨格の発達、性機能の維持など、男性の心身の健康に重要な役割を担っています。
しかし、テストステロンが特定の酵素と結びついて変換されるジヒドロテストステロンは、AGAの主な原因物質となることが知られています。
「テストステロンが多いと薄毛になる」という俗説を耳にする場合もありますが、その関係は複雑です。
テストステロンとは?男性ホルモンの基本
男性らしさを形作る上で中心的な役割を果たすホルモンがテストステロンです。ここでは、
テストステロンが体内のどこで生まれ、どのような基本的な役割を担っているのか、そして年齢と共にその量はどう変化するのか、基本的な知識を解説します。
テストステロンの生成場所と主な役割
テストステロンは、主に男性の精巣(睾丸)で作られます。女性でも副腎や卵巣で少量ながら生成されますが、男性の分泌量は女性の約10倍から20倍にもなると言われています。
体内で多様な働きをしますが、その主な役割は第二次性徴の発現と維持に関わるものです。
テストステロンの主な役割
分類 | 具体的な役割 |
---|---|
身体的特徴 | 筋肉量の増加、骨密度の維持、体毛の成長促進 |
性機能 | 性欲の維持・亢進、勃起機能のサポート、精子の形成 |
精神・認知 | 意欲・決断力の向上、競争心の維持、空間認識能力 |
テストステロンは、男性の活動的な生活や心身の健康を支える上で非常に重要なホルモンと言えます。
年齢によるテストステロン分泌量の変化
テストステロンの分泌量は一生を通じて一定ではありません。一般的に思春期に急激に増加し、20代をピークにその後は加齢とともに徐々に減少していく傾向があります。
この減少の度合いには個人差が大きいものの、中高年期になるとテストステロンの低下に伴う様々な心身の変化を感じる人も少なくありません。
年齢別テストステロン基準値の一般的な目安
年代 | 総テストステロン(ng/dL) | フリーテストステロン(pg/mL) |
---|---|---|
20代 | 300~1000 | 8.7~25.1 |
40代 | 250~850 | 6.6~18.1 |
60代 | 200~700 | 5.4~14.5 |
上記はあくまで一般的な目安であり、検査機関や測定方法によって基準値は異なります。正確な値は医療機関での検査が必要です。
加齢によるテストステロンの減少は自然な現象ですが、極端な低下はLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)などを引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
テストステロン値の測定方法
ご自身のテストステロン値を知りたい場合、医療機関で血液検査を受けるのが一般的です。
血液中のテストステロンにはタンパク質と結合している「結合型テストステロン」と結合していない「フリーテストステロン(遊離型テストステロン)」が存在します。
体内で実際に作用を発揮するのは主にフリーテストステロンであるため、この値が重要視される場合が多いです。
テストステロン測定検査
- 総テストステロン検査
- フリーテストステロン検査
- バイオアベイラブルテストステロン検査(フリーテストステロンとアルブミン結合型テストステロンの合計)
どの検査を行うかは、目的や症状に応じて医師が判断します。気になる症状がある場合は、泌尿器科や内分泌科、あるいは男性更年期外来などを設置している医療機関に相談してみましょう。
テストステロンの多様な働きと身体への影響
テストステロンは男性ホルモンの代表として知られていますが、その影響は性機能だけに留まりません。筋肉や骨の健康維持、さらには精神活動や認知機能に至るまで、全身の様々な機能に関与しています。
筋肉・骨格への作用
テストステロンの最もよく知られた作用の一つが、筋肉量の増加と筋力の向上です。タンパク質の合成を促進することで筋肉の成長を助け、運動能力の維持に貢献します。
また、骨に対しても重要な役割を果たしており、骨の形成を促して骨密度を維持することで骨粗しょう症のリスクを低減させる効果が期待されます。
加齢とともにテストステロンが減少すると、筋力低下や骨密度の低下が起こりやすくなるのはこのためです。
精神・認知機能への関与
テストステロンは、精神面にも大きな影響を与えます。
意欲や決断力、チャレンジ精神といった、いわゆる「やる気」に関わる部分をサポートすると考えられています。テストステロン値が高い人は、活動的で競争心が強い傾向があるとも言われます。
また、空間認識能力などの一部の認知機能にも関与している可能性が指摘されています。
テストステロンの低下が、気分の落ち込みや意欲減退、集中力の低下といった精神的な不調の一因となるケースもあります。
性機能との関連性
テストステロンは男性の性機能において中心的な役割を担っています。性欲(リビドー)の維持・亢進に直接関わるほか、勃起のメカニズムにも影響を与えます。
また、精巣での精子形成を促進する働きもあり、生殖能力にも重要です。テストステロン値の低下は性欲減退、勃起不全(ED)、精子数の減少などを引き起こす可能性があります。
その他の身体機能への影響
上記以外にも、テストステロンは体内の様々な機能に関わっています。例えば、赤血球の産生(造血作用)を促進する働きがあります。これにより、酸素運搬能力の維持に貢献しています。
また、脂質代謝にも関与しており、内臓脂肪の蓄積を抑制する方向に働くとも言われています。
テストステロンのバランスが崩れると、貧血のリスクが高まったり、メタボリックシンドロームに繋がりやすくなったりする可能性も考えられます。
テストステロンが関わるその他の身体機能
機能 | 関与する内容 |
---|---|
造血 | 赤血球の産生促進 |
脂質代謝 | 内臓脂肪蓄積の抑制傾向 |
体毛の成長 | 髭や胸毛などの第二次性徴に関わる体毛 |
このように、テストステロンは男性の心身の健康を維持するために、全身で多様な働きを担っているのです。
テストステロンと髪の毛の関係性
テストステロンと髪の毛、特に薄毛との関係は、多くの男性が気にするところでしょう。
「テストステロンが多いとはげる」といった話も耳にしますが、単純にそうと言い切れません。
ここでは、髪の毛が生え変わる仕組み(毛髪サイクル)の基本から、テストステロンが毛髪にどのように関わっているのかを解説します。
毛髪サイクル(ヘアサイクル)の基礎知識
髪の毛は、一定の周期で生えたり抜けたりを繰り返しています。これを毛髪サイクル(ヘアサイクル)と呼びます。
毛髪サイクルは、大きく分けて「成長期」「退行期」「休止期」の3つの期間から成り立っています。
毛髪サイクルの各期とその期間
期間 | 特徴 | 期間の目安 |
---|---|---|
成長期 | 毛母細胞が活発に分裂し、髪の毛が太く長く成長する期 | 2~6年 |
退行期 | 毛母細胞の分裂が停止し、毛球が縮小する期 | 約2週間 |
休止期 | 毛根が浅くなり、自然に脱毛するのを待つ期 | 約3~4ヶ月 |
健康な状態であれば、ほとんどの髪の毛(約85~90%)が成長期にあり、残りが退行期・休止期にあるとされています。このサイクルが正常に繰り返されることで、髪全体のボリュームが保たれます。
テストステロンが毛母細胞に与える影響
テストステロン自体が、直接的に毛母細胞に作用して髪の成長を妨げるわけではありません。むしろ、髭や胸毛などの体毛の成長を促す作用を持っています。
しかし、頭髪、特に前頭部や頭頂部の毛髪に対しては、テストステロンが別の物質に変換されて、間接的に影響を与えることになります。
この点が、テストステロンと薄毛の関係を理解する上で重要です。
直接的な薄毛の原因ではない?
「テストステロンが多い=薄毛になる」という考えは、正確ではありません。
薄毛やAGA(男性型脱毛症)の直接的な原因となるのはテストステロンそのものではなく、テストステロンが特定の酵素によって変換されたDHT(ジヒドロテストステロン)という、より強力な男性ホルモンです。
テストステロンの量が多くてもDHTへの変換が少なかったり、毛根がDHTの影響を受けにくい体質であれば、必ずしも薄毛が進行するとは限りません。
つまり、重要なのはテストステロンの量そのものよりも、DHTへの変換のしやすさや毛根の感受性といった要因なのです。
5αリダクターゼとDHT(ジヒドロテストステロン)への変換
テストステロンが薄毛に関わる際、鍵となるのが「5αリダクターゼ」という酵素と、それによって生成されるDHT(ジヒドロテストステロン)です。
テストステロン自体が直接薄毛を引き起こすのではなく、この変換過程がAGA(男性型脱毛症)の発症に深く関与しています。
5αリダクターゼとは
5αリダクターゼ(5-alpha reductase)は、体内に存在する還元酵素の一種です。この酵素は、テストステロンをDHT(ジヒドロテストステロン)という、より強力な男性ホルモンに変換する働きを持っています。
5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型の2つのタイプが存在し、それぞれ体内の分布場所や役割が異なります。
5αリダクターゼの種類と主な分布場所
種類 | 主な分布場所 | AGAとの関連 |
---|---|---|
Ⅰ型 | 全身の皮脂腺、肝臓、頭皮(側頭部・後頭部) | 低い |
Ⅱ型 | 前立腺、精嚢、毛乳頭細胞(前頭部・頭頂部) | 高い |
特にAGAの発症に深く関わっているのは、頭皮の前頭部や頭頂部の毛乳頭細胞に多く存在するⅡ型の5αリダクターゼです。
この酵素の活性度が高い人ほどDHTが生成されやすく、AGAを発症・進行しやすい傾向があると考えられています。
DHTが生成される仕組み
DHTが生成される流れは比較的シンプルです。血液中のテストステロンが毛乳頭細胞に取り込まれると、そこにある5αリダクターゼ(特にⅡ型)の作用を受けます。
この酵素反応によって、テストステロンの化学構造が変化し、DHTへと変換されます。
生成されたDHTは、毛乳頭細胞内にある男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)と結合します。
DHTの主な作用と特徴
DHTは、テストステロンよりも強力な生理活性を持つ男性ホルモンです。
胎児期においては男性外性器の分化・発達に重要な役割を果たしますが、思春期以降は、主に以下のような作用を示すことが知られています。
DHTの主な作用
作用対象 | 作用内容 |
---|---|
頭髪(前頭部・頭頂部) | 毛母細胞の増殖を抑制し、毛髪の成長期を短縮させる(AGAの原因) |
体毛(髭、胸毛など) | 成長を促進する |
皮脂腺 | 皮脂の分泌を促進する(ニキビの原因になることも) |
前立腺 | 前立腺の肥大を促す(前立腺肥大症の原因の一つ) |
このように、DHTは体の部位によって異なる作用を示します。特に頭髪に対しては毛髪の成長を妨げる方向に働くため、AGAの最大の原因物質と考えられています。
AGAの治療では、このDHTの生成を抑制したり、その作用をブロックしたりすることが基本的な方法となります。
DHTが引き起こすAGA(男性型脱毛症)の進行
AGA(Androgenetic Alopecia)は成人男性に最も多く見られる脱毛症のタイプであり、その発症と進行にはDHT(ジヒドロテストステロン)が深く関わっています。
DHTがどのようにして髪の毛の成長を妨げ、薄毛を引き起こすのか、その流れと特徴、そしてご自身で確認できるセルフチェック方法について解説します。
AGAの発症とDHTの関係
AGAは、遺伝的な要因とDHTの作用が組み合わさることで発症すると考えられています。
テストステロンが5αリダクターゼによってDHTに変換され、このDHTが毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合することが引き金となります。
この受容体の感受性は遺伝的に決まる部分が大きく、感受性が高い人ほどDHTの影響を受けやすく、AGAを発症しやすい傾向があります。
つまり、「5αリダクターゼの活性度」と「男性ホルモン受容体の感受性」という2つの遺伝的素因がAGAの発症リスクに大きく関わっているのです。
DHTが毛髪サイクルを乱す流れ
DHTが男性ホルモン受容体と結合すると、脱毛因子であるTGF-βなどが産生されます。このTGF-βが毛母細胞に対して、「成長を停止せよ」という指令を送ります。
その結果、通常であれば数年間続くはずの毛髪の成長期が、数ヶ月から1年程度に短縮されてしまいます。
成長期が短くなると、髪の毛は十分に太く長く成長する前に退行期・休止期へと移行してしまい、細く短いうぶ毛のような状態のまま抜け落ちてしまいます。
この毛髪サイクルの乱れが繰り返されることで、徐々に薄毛が目立つようになるのです。
AGAの進行パターンと特徴
AGAによる薄毛の進行パターンには、ある程度の定型性が見られます。
多くの場合、生え際から後退していくパターン、頭頂部から薄くなるパターン、あるいはその両方が混合して進行するパターンに分類されます。
AGAの進行パターン分類
進行パターン | 特徴 |
---|---|
M字型 | 額の両サイド(M字部分)の生え際が後退していく |
O字型 | 頭頂部(つむじ周辺)が円形に薄くなっていく |
U字型(M+O型) | 生え際の後退と頭頂部の薄毛が同時に進行し、繋がっていく |
進行の仕方やスピードには個人差がありますが、側頭部や後頭部の髪はDHTの影響を受けにくいため、最後まで残る方が多いのもAGAの特徴です。
また、AGAは進行性であるため、放置すると薄毛は徐々に広がっていきます。
AGAのセルフチェック方法
ご自身の薄毛がAGAによるものかどうか、気になる方もいるでしょう。以下のような点に当てはまる場合は、AGAの可能性があります。
AGAのセルフチェック項目
- 家族(特に父方・母方の祖父、父、兄弟)に薄毛の人がいる
- 以前と比べて、生え際が後退してきた、または頭頂部が薄くなってきたと感じる
- 髪の毛全体のハリやコシがなくなり、細く柔らかくなった
- 抜け毛の中に、細く短い毛が多く混じるようになった
- 思春期以降に薄毛が気になり始めた
これらの項目に複数当てはまる場合は、AGAの可能性を考慮し、早めに皮膚科やAGA専門クリニックなどの医療機関に相談すると良いでしょう。
テストステロンと薄毛に関する誤解と正しい知識
テストステロンと薄毛の関係については様々な情報や俗説が飛び交っており、中には誤解に基づいたものも少なくありません。
ここでは、よくある疑問や誤解を取り上げ、科学的な根拠に基づいた正しい知識を解説します。誤った情報に惑わされず、適切な理解を深めましょう。
筋トレをすると薄毛になる?
筋力トレーニングを行うと、テストステロンの分泌が一時的に促進されることが知られています。
この事実から、「筋トレをするとテストステロンが増えて、結果的に薄毛になるのでは?」と心配する声を聞くときがあります。
しかし、現在のところ、筋トレが直接的にAGAを悪化させるという明確な科学的根拠はありません。
筋トレによるテストステロンの増加は一時的なものであり、AGAの主な原因である遺伝的素因(5αリダクターゼ活性や受容体感受性)を大きく変えるものではないと考えられます。
むしろ、適度な運動は血行を促進し、ストレスを軽減するなど、頭皮環境にとって良い影響を与える可能性もあります。健康維持のために適度な筋トレを続けるのは問題ないでしょう。
食生活や生活習慣の影響
特定の食品を食べればテストステロンが劇的に増えたり薄毛が治ったりするということはありませんが、バランスの取れた食事や規則正しい生活は、ホルモンバランスを整えて髪の健康を維持する上で重要です。
例えば、タンパク質、亜鉛、ビタミンなどは髪の成長に必要な栄養素です。
一方、過度な飲酒や喫煙、睡眠不足、栄養バランスの偏った食事などは、ホルモンバランスを乱したり血行を悪化させたりして頭皮環境に悪影響を与える可能性があります。
直接的なAGAの原因にはならなくても、髪の健康状態を悪化させる要因にはなり得ます。
ストレスとホルモンバランス
過度なストレスは、自律神経やホルモンバランスの乱れを引き起こす可能性があります。
ストレスによって血行が悪化し、頭皮への栄養供給が滞ったりホルモンバランスが崩れたりして、間接的に抜け毛が増えるケースがあります。
これはAGAとは異なる円形脱毛症や休止期脱毛の原因となる場合もありますが、AGAの進行を助長する可能性も否定できません。
ストレスを溜め込まないように自分なりのリラックス方法を見つけて心身の健康を保つ工夫も、健やかな髪を維持するためには大切です。
テストステロン・DHTと向き合う薄毛対策
AGAの原因となるDHTの働きを理解した上で、次に重要となるのが具体的な対策です。AGAは進行性のため、放置せずに適切な対策を講じましょう。
対策の基本方針:DHTの抑制
AGA対策の最も基本的な考え方は、その原因物質であるDHTの生成を抑制すること、あるいはDHTが毛乳頭細胞に作用するのを阻害することです。
DHTが毛髪の成長期を短縮させて毛髪サイクルを乱す元凶であるため、このDHTの影響をいかに抑えるかが鍵となります。
セルフケアだけでDHTを効果的に抑制するのは難しく、医学的な方法が必要となる場合がほとんどです。
医療機関(クリニック)でのAGA治療
現在、AGA治療には医学的根拠に基づいた有効な方法が確立されています。
皮膚科やAGA専門クリニックなどの医療機関では、医師の診断のもと治療法を組み合わせて行います。
AGA治療薬の種類と作用機序
治療薬の種類 | 主な薬剤名 | 作用機序 | 投与方法 |
---|---|---|---|
5α還元酵素阻害薬 | フィナステリド | Ⅱ型5αリダクターゼの働きを阻害し、DHTの生成を抑制する | 内服 |
5α還元酵素阻害薬 | デュタステリド | Ⅰ型・Ⅱ型両方の5αリダクターゼを阻害し、DHTの生成をより強力に抑制 | 内服 |
外用発毛剤 | ミノキシジル | 毛母細胞を活性化し、血流を改善して発毛を促進する | 外用 |
これらの治療薬は、医師の処方が必要です。
特に5α還元酵素阻害薬は、DHTの生成を根本から抑えることでAGAの進行を抑制する効果が期待できます。ミノキシジル外用薬は、毛母細胞に直接働きかけ、発毛を促す効果が認められています。
治療効果や副作用には個人差があるため、医師と相談しながら、ご自身の状態に合った治療法を選択しましょう。
医療機関で行われるその他の治療法
- 自毛植毛術
- メソセラピー(成長因子注入など)
これらの治療法は、内服薬や外用薬と併用される場合もあります。
生活習慣の見直しによるサポート
頭皮環境を整えて髪の健康をサポートする上で、医療機関での治療と並行した生活習慣の見直しも役立ちます。
直接的なAGA治療効果はありませんが、治療効果を高めたり、髪全体のコンディションを良くしたりする助けになります。
生活習慣の見直しポイント
カテゴリ | 具体的なポイント |
---|---|
食事 | バランスの取れた食事(タンパク質、ビタミン、ミネラル、特に亜鉛)を心がける |
睡眠 | 質の高い睡眠を十分にとる |
ストレスケア | 適度な運動、趣味などでストレスを発散する |
頭皮ケア | 頭皮を清潔に保つ、強く洗いすぎない、血行促進マッサージ |
喫煙・飲酒 | 禁煙、過度な飲酒を控える |
これらの生活習慣の改善はあくまでAGA治療の補助的な役割ですが、全身の健康維持にも繋がるため積極的に取り組む価値があります。
自己判断の危険性と専門医への相談
市販の育毛剤やサプリメントなども多く存在しますが、AGAに対して医学的に効果が証明されているものは限られています。自己判断で対策を続けるうちに、AGAが進行してしまうケースも少なくありません。
「もしかしてAGAかも?」と感じたらまずは皮膚科やAGA専門クリニックを受診し、専門医の診断を受けることが適切な対策への第一歩です。
医師が薄毛の原因や進行度を正確に診断し、適した治療法を提案してくれます。
よくある質問(FAQ)
テストステロンやAGA治療に関して、患者さんから寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
- Qテストステロン補充療法は薄毛改善に効果がありますか?
- A
一般的にテストステロン補充療法はAGA(男性型脱毛症)の改善には繋がりません。
むしろ、補充したテストステロンがDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されることで、AGAを進行させてしまう可能性があります。
テストステロン補充療法はLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)などテストステロン値の低下による特定の症状を改善する目的で行われる治療であり、薄毛治療とは目的が異なります。
薄毛の悩みに対してはAGAのメカニズムに基づいた適切な治療(5α還元酵素阻害薬やミノキシジルなど)が必要です。
- Q女性の薄毛とテストステロンの関係は?
- A
女性の体内でもテストステロンは少量分泌されており、女性の薄毛(FAGA:女性男性型脱毛症など)にも男性ホルモンが関与していると考えられています。
ただし、男性のAGAとは原因やメカニズムが完全には同じではなく、より複雑な要因が絡み合っているケースが多いです。女性の場合、閉経後のホルモンバランスの変化などが影響することもあります。
女性の薄毛治療では男性とは異なる方法が必要となるため、専門医にご相談ください。
- QAGA治療薬の副作用について教えてください。
- A
AGA治療薬にも、他の医薬品と同様に副作用の可能性があります。
例えば、5α還元酵素阻害薬(フィナステリド、デュタステリド)では、頻度は低いものの、性欲減退、勃起機能不全、肝機能障害などが報告されています。
ミノキシジル外用薬では、頭皮のかゆみ、かぶれ、初期脱毛(使用開始後に一時的に抜け毛が増える現象)などがみられる場合があります。
これらの副作用の多くは軽微であり、使用を中止すれば改善する方がほとんどですが、気になる症状が現れた場合は自己判断せず、必ず処方を受けた医師に相談しましょう。
- Q治療はいつから始めるべきですか?
- A
AGAは進行性の脱毛症であるため、治療はできるだけ早期の開始が推奨されます。「抜け毛が増えた」「薄くなってきたかも」と感じた時点が、治療開始を検討するタイミングと言えます。
治療開始が早いほど、毛髪の状態を維持・改善できる可能性が高まります。
毛母細胞が完全に活動を停止してしまうと治療薬の効果も得られにくくなるため、手遅れになる前に専門医に相談して適切な診断と治療を受けることが大切です。
自己判断で様子を見ている間に進行してしまうケースも多いので、まずは気軽に相談してみましょう。
参考文献
GRYMOWICZ, Monika, et al. Hormonal effects on hair follicles. International journal of molecular sciences, 2020, 21.15: 5342.
FISCHER, Tobias W.; HIPLER, U. C.; ELSNER, P. Effect of caffeine and testosterone on the proliferation of human hair follicles in vitro. International journal of dermatology, 2007, 46.1: 27-35.
KONDO, S.; HOZUMI, Y.; ASO, K. Organ culture of human scalp hair follicles: effect of testosterone and oestrogen on hair growth. Archives of dermatological research, 1990, 282: 442-445.
INUI, Shigeki; ITAMI, Satoshi. Androgen actions on the human hair follicle: perspectives. Experimental dermatology, 2013, 22.3: 168-171.
NATARELLI, Nicole; GAHOONIA, Nimrit; SIVAMANI, Raja K. Integrative and mechanistic approach to the hair growth cycle and hair loss. Journal of clinical medicine, 2023, 12.3: 893.
STENN, K. S.; PAUS, Ralf. Controls of hair follicle cycling. Physiological reviews, 2001, 81.1: 449-494.
RANDALL, Valerie Anne. Hormonal regulation of hair follicles exhibits a biological paradox. In: Seminars in Cell & Developmental Biology. Academic Press, 2007. p. 274-285.
STENN, K. S., et al. What controls hair follicle cycling?. Experimental dermatology, 1999, 8.4: 229-236.