男性ホルモンの一種であるテストステロンは、健康的な発毛サイクルや男性らしさを支える上で大切なホルモンです。
ところが、食生活の乱れやストレスなどによってテストステロンのバランスが崩れて薄毛につながる場合があるため、日々の食事によってテストステロンバランスを意識して薄毛予防を行うことが大切です。
本記事では、テストステロンを整えるために役立つ食品の選び方や薄毛予防のための食事のポイントについて詳しく解説します。
テストステロンと薄毛の基本知識
テストステロンは男性機能の維持に関連するホルモンとして有名ですが、薄毛の進行とも深いかかわりがあります。
テストステロンとは
テストステロンは男性ホルモンの代表的なものの1つで、筋肉量や骨の健康を支えるだけでなく、性機能にも影響を与えます。
男性だけでなく女性の体内にも少量ながら存在し、生命維持にかかわるさまざまな働きを担っています。
テストステロンの産生量は個人差がありますが、加齢やストレス、過度なダイエットなどによって分泌が低下すると考える専門家も多いです。
体内のテストステロン濃度が下がると、筋力の低下や疲れやすさ、意欲の減退などが起こりやすくなります。食事や運動、生活習慣の見直しがテストステロンのバランスを保つうえで大切だとされています。
薄毛との関連性
テストステロンは、薄毛の原因とも言われるDHT(ジヒドロテストステロン)に変換される性質を持ちます。
DHTは毛根を萎縮させ、ヘアサイクルを短くする働きがあるとされています。そのためテストステロンが過度にDHTに変換されると、薄毛が進行しやすくなる可能性が指摘されています。
ただし、テストステロン自体が悪者というわけではありません。テストステロンが極端に不足しても男性機能に悪影響が生じるため、あくまでテストステロンの“バランス”を意識する必要があります。
髪の状態には遺伝や加齢などさまざまな要因が複雑に関わりますが、テストステロンの過不足は重要なポイントの1つとされています。
バランスが崩れた場合の影響
テストステロンの分泌量が極端に多く、DHTへの変換が増える状況も問題ですが、テストステロンが不足しすぎる場合も体調や髪の状態に影響します。
筋力が衰えやすくなるほか、抑うつ傾向が強くなる、性欲が減退するなどの症状が出るケースがあります。
薄毛の要因としてはDHTに注目されることが多いものの、テストステロン全体の量が必要以上に低下すると男性ホルモンらしさが損なわれ、髪のハリやコシにも影響する可能性があります。
薄毛対策としては、テストステロンのバランスを保つような食事や生活習慣を意識すると良いです。
テストステロンと薄毛に関わる症状
症状 | 内容 |
---|---|
DHT増加 | 毛根が萎縮してヘアサイクルが短くなる |
テストステロン不足 | 筋力低下、抑うつ気分、性欲の減退、髪のハリの低下など |
ストレス過多 | ホルモンバランスが乱れてテストステロンが減少しやすい |
食生活の乱れ | 脂質や糖質過多で健康な発毛環境が損なわれる |
テストステロンを意識した食べ物の選び方
テストステロンのバランスを保つためには、栄養バランスを考えた食事が重要です。
たとえばタンパク質やビタミン、ミネラルを含む食品をしっかり摂取すると、体内でのテストステロン合成を助けると考える専門家もいます。
タンパク質の役割と摂取源
テストステロンをつくり出すうえで、タンパク質の摂取は重要です。人間の体は約20種類のアミノ酸によって構成されており、テストステロン産生に関わる酵素やホルモンの合成にもタンパク質が深く関与します。
肉や魚、卵、大豆製品など多様な食材からバランスよく摂取するのがポイントです。
タンパク質不足は筋肉の減少や免疫力の低下につながり、テストステロン値にも悪影響を与える場合があります。過度に偏った食生活を避け、1日に必要な量を目安に摂取することが大切です。
一般的には体重1kgあたり1g〜1.5g程度を目指すとよいと提案されます。
ミネラルとビタミンの重要性
テストステロンの合成には亜鉛やマグネシウム、ビタミンD、ビタミンB群などの栄養素も重要です。これらの栄養素が不足するとテストステロンの産生効率が下がる恐れがあります。
ミネラルやビタミンは単独で作用するのではなく、相互に連携して体内の反応をサポートするため、偏りなく摂取するのが望ましいです。
栄養素 | 食材 |
---|---|
亜鉛 | 牡蠣、牛肉、レバー、ナッツ類など |
マグネシウム | ナッツ、海藻、豆類、緑黄色野菜など |
ビタミンD | 魚類、キノコ類、日光浴でも合成促進 |
ビタミンB群 | レバー、豚肉、大豆、卵、緑黄色野菜など |
良質な脂質の重要性
テストステロンはコレステロールを材料にして体内で合成されるため、適度な脂質摂取も必要です。
しかし、加工食品に多く含まれるトランス脂肪酸や過度の飽和脂肪酸は体内で炎症を招く恐れがあるため、摂りすぎには注意が必要です。
オリーブオイルやアボカド、魚の脂など、不飽和脂肪酸を含む食品を中心に取り入れると、健康的なホルモンバランスを保ちやすくなります。
極端に低脂質の食事を続けると、テストステロン産生が減る場合があるため、適度に良質な脂質を取り入れることが大切です。
トータルでのカロリー摂取量のバランスも配慮しながら、良質な脂質を意識するのがポイントとなります。
良質な脂質を含む食品の特徴
食品 | 特徴 |
---|---|
アボカド | オレイン酸を含み、ビタミンEなどの抗酸化成分も豊富 |
青魚(サバ・サンマ) | EPAやDHAなど不飽和脂肪酸が豊富で抗炎症作用が期待される |
ナッツ類 | ビタミンやミネラルを豊富に含み、血糖値の急上昇を抑えやすい |
オリーブオイル | 一価不飽和脂肪酸が多く、酸化しにくい特性がある |
テストステロンを意識するうえで避けたい食品
テストステロンのバランスを乱す恐れがある食品には、糖質や悪い脂質、過度のアルコールなどがあります。
甘いお菓子や清涼飲料水に含まれる過剰な糖質は血糖値の急上昇を招き、インスリン分泌を増やすためホルモンバランスが乱れやすくなります。
また、トランス脂肪酸を多く含むファストフードや揚げ物などの過剰摂取も体内の炎症や肥満につながり、テストステロン値を下げる可能性が指摘されています。
飲酒は少量であれば問題になりにくいですが、過度に摂取すると肝臓への負担が増し、ホルモンバランスの維持が難しくなる場合があります。
ほかにも喫煙や加工食品の添加物過多などもテストステロンの生成に影響すると考えられており、注意が必要です。
テストステロンのバランスと薄毛のメカニズム
テストステロンが不足すると髪の状態に悪影響が出る一方で、DHTへの変換が増えると薄毛が進行しやすくなるという複雑な仕組みがあります。
DHT(ジヒドロテストステロン)の働き
テストステロンは5α-リダクターゼという酵素の働きによってDHTに変換されます。DHTは男性らしい体毛の発達を促す一方で、頭頂部や生え際の毛根には縮小を促す働きがあると言われています。
遺伝的にこの酵素が活発な人や、テストステロン量が多すぎる場合には、薄毛が進行しやすくなると考えられます。
ホルモンバランスと頭皮環境
頭皮環境が乱れる原因の1つにホルモンバランスの乱れが挙げられます。男性ホルモンだけでなく、ストレスにより分泌が増えるコルチゾールなどのホルモンも薄毛に影響を与えると言われています。
ホルモンバランスが乱れた状態が続くと、頭皮の皮脂分泌が過剰になったり、血行が悪くなったりして髪に十分な栄養が届けられにくくなります。
薄毛リスクを高める要因
- 遺伝的要素(5α-リダクターゼの活性度)
- テストステロンの過不足
- ストレスによるコルチゾール増加
- 血行不良や皮脂分泌過多
食生活の乱れによる影響
食事の偏りや過度のダイエットなどによって栄養不足が続くと、テストステロン値だけでなく全身の代謝や血液循環にも悪影響が及びます。
エネルギー源となる炭水化物、筋肉やホルモンの材料となるタンパク質、各種酵素の働きを助けるビタミン・ミネラルなどを総合的に摂取しないと、健やかな髪を育む力が低下します。
また、揚げ物やファストフードなど過度の脂質摂取は、肥満を招きやすく、インスリン抵抗性を高める可能性があります。
こうした状態が続くとテストステロンの生成にも影響し、薄毛を進行させる一因になると考えられています。
薄毛を進行させやすい食生活の特徴
状態 | 具体例 |
---|---|
栄養バランスの欠如 | タンパク質不足、野菜不足、ビタミン・ミネラル不足 |
過度の脂質摂取 | 揚げ物・ファストフード・トランス脂肪酸の多い菓子類 |
過度の糖質摂取 | 清涼飲料水、スイーツ、白米・白パンばかりの偏った食事 |
アルコールの過剰摂取 | 大量飲酒による肝臓機能の低下、ホルモン代謝の乱れ |
テストステロンを意識した生活習慣
食事と同様に運動や睡眠、ストレスケアなどもテストステロン値に大きく関わります。筋力トレーニングや有酸素運動はテストステロン分泌をサポートすると言われており、適度な運動を継続することが大切です。
また、睡眠が不足するとホルモンバランスが乱れやすく、薄毛リスクが高まる場合があります。
ストレスが溜まりすぎると、コルチゾールというストレスホルモンの分泌が増えてテストステロン産生が低下しやすくなります。
自分に合ったストレス発散法を見つけ、精神的な健康を保つ心がけも薄毛予防に役立ちます。
テストステロンを高めるための食事法
テストステロンを高めるうえで欠かせないのが、日々の食事習慣です。ここでは具体的な食事法のポイントをまとめながら、テストステロンのバランスを整える方法を紹介します。
バランスよくタンパク質を摂る
筋肉量の維持・増強はテストステロン値を高めるうえで大切です。そのためにはタンパク質が不足しないようにすることが重要です。
朝・昼・晩の3食でタンパク質を分散して摂取し、1日の摂取量を確保すると効率的に体づくりを行えます。
タンパク質を効率的に摂取できる食材
食材 | タンパク質量(100gあたり) | 特徴 |
---|---|---|
鶏ささみ | 約23g | 脂質が少なくヘルシー |
豚ヒレ | 約22g | 低脂質でビタミンB群も豊富 |
牛もも | 約21g | 亜鉛や鉄分もバランスよく含む |
サバ | 約20g | 不飽和脂肪酸(EPA・DHA)が豊富で心血管系の健康をサポート |
大豆(乾燥) | 約33g | 植物性タンパク源で食物繊維やミネラルも豊富 |
ビタミンとミネラルを意識した献立
野菜や果物、海藻類などにはビタミンとミネラルが豊富に含まれ、ホルモン合成や代謝をサポートします。
偏りなく摂取できるように、毎食に野菜を取り入れるなど、彩りや季節感を大切にした献立づくりがポイントです。
- 朝食に卵や緑黄色野菜をプラスする
- 昼食に海藻や豆類を含む副菜を取り入れる
- 夕食に魚や赤身肉などミネラルが多い食材を使う
野菜が不足しがちな場合は、スープやみそ汁に入れる、果物をデザートに追加するなど、少しの工夫で補いやすくなります。
食卓に色とりどりの食材が並ぶようになると、自然と必要な栄養素を摂取しやすくなります。
良質な脂質をバランス良く取り入れる
テストステロンを合成するうえでコレステロールが必要になるため、適度な脂質は必須です。不飽和脂肪酸の多い魚やナッツ、オリーブオイルなどを使い、過度に揚げ物などを摂取しないようにするのが大切です。
外食が続くとトランス脂肪酸や飽和脂肪酸の摂取が増えやすいため、できる限り自炊を心がけるとよいでしょう。
調理方法も油を大量に使った揚げ物ではなく、焼く・蒸すなどヘルシーな調理法にすると、体に負担をかけすぎずに脂質を摂取できます。
良質な脂質を含むおすすめレシピ
レシピ名 | 主な材料 | 特徴 |
---|---|---|
アボカドとサーモンのサラダ | アボカド、サーモン、レタス、トマト | オレイン酸とDHAを同時に摂取できる |
イワシの梅煮 | イワシ、梅干し、しょうが | 不飽和脂肪酸とビタミンB群が豊富 |
ナッツ入りトマトパスタ | トマト、オリーブオイル、ナッツ類 | 抗酸化作用のあるリコピンと良質な脂質を組み合わせ |
血糖値の急上昇を抑える工夫
血糖値が急上昇すると、インスリンの過剰分泌につながり、ホルモンバランスが乱れやすくなります。
白米や白パンなどの精製された穀物だけでなく、甘い菓子類やジュースなどの過度な摂取は避けるのがおすすめです。
炭水化物を摂取する場合は食物繊維を多く含む玄米や全粒粉パン、野菜などを組み合わせて、血糖値の急激な変動を和らげる工夫が大切です。
薄毛予防をサポートする生活スタイル
テストステロンのバランスを整えるためには、食事に加えて生活習慣全体の見直しが有効です。
適度な運動のメリット
有酸素運動や筋力トレーニングには、体脂肪を減らして血行を促進し、テストステロン分泌を助ける効果が期待できます。
特に筋力トレーニングは、男性ホルモンの分泌を促進するうえで注目されています。スクワットやベンチプレスなど大きな筋肉を動かす種目を取り入れると効率的です。
- 筋トレは週2〜3回を目安に取り入れる
- 有酸素運動(ジョギングやウォーキングなど)は1回20分以上を目指す
- 無理せず継続できるメニューを選ぶ
質の良い睡眠の確保
睡眠中には成長ホルモンやテストステロンなどの分泌が活発になるため、質の良い睡眠は薄毛予防にも直結します。
睡眠時間が不足するとホルモンバランスが崩れやすくなり、頭皮や髪に十分な栄養が行き届かなくなる場合があります。
寝る前にスマホやパソコンの画面を見すぎない、飲酒やカフェインを控えるなど、睡眠環境の整備が大切です。
睡眠とホルモンバランスを保つためのポイント
- 就寝2時間前には激しい運動を控える
- 暗く静かな環境を作り、睡眠の質を高める
- 寝る前の食事を控えて胃腸を休める
ストレス管理
仕事や人間関係などのストレスによって、副腎皮質からコルチゾールが分泌され、テストステロン生成が妨げられる場合があります。
ストレスを完全に避けるのは難しいため、うまく解消できる方法を探すと良いです。音楽や入浴、趣味の時間、カウンセリングの活用など、自分に合ったストレスケアを継続しましょう。
- 趣味や運動で気分転換を図る
- 深呼吸や瞑想で自律神経を整える
- スケジュールに余裕を持たせる
頭皮ケアと適切なヘアケア
頭皮に余分な皮脂が溜まっていたり、毛穴が詰まっていたりすると、髪への栄養供給が妨げられます。適度な洗髪やマッサージで頭皮の血行を促進し、健康的な髪が育ちやすい環境を整えましょう。
また、過度に刺激が強いシャンプーや整髪料を避け、低刺激で頭皮に優しい製品を選ぶのも一つの手です。
薄毛を予防・改善するために意識したい具体的な食事例
ここでは、薄毛予防に役立つ食事メニューを1日の流れに沿って紹介します。
テストステロンを意識した栄養バランスを維持しながら、飽きずに続けられるようにする工夫がポイントです。
朝食:たんぱく質とビタミンをプラス
朝は1日の活動を始めるエネルギー源が必要です。炭水化物だけでなく、卵やヨーグルト、納豆などでタンパク質を補い、果物や野菜ジュースなどでビタミンを摂取すると効率的です。
血糖値の急上昇を防ぐために、GI値の低い食品を選ぶと良いでしょう。
朝食の簡単メニュー
献立 | ポイント |
---|---|
全粒粉パン + 卵焼き + ミニサラダ + ヨーグルト | タンパク質と食物繊維を同時に摂取でき、腹持ちが良い |
玄米ごはん + 納豆 + 豆腐のみそ汁 + フルーツ | 大豆製品を取り入れて植物性たんぱく質とビタミン・ミネラルを補給 |
昼食:魚や肉でしっかりタンパク質を
昼食では体を動かすエネルギー源と筋肉維持のためのタンパク質を確保することが大切です。
揚げ物などは過度にならない範囲で取り入れ、野菜も一緒に食べて血糖値の急上昇を緩やかにしましょう。
- 焼き魚定食(焼き魚・玄米・野菜の小鉢・みそ汁)
- ささみと野菜たっぷりのサンドイッチ + スープ
- 牛ももステーキとサラダ、玄米を組み合わせたランチプレート
夕食:良質な脂質とビタミンを意識
夕食は1日の終わりにゆったりと食事を楽しみながら、栄養を補うチャンスになります。青魚や赤身肉をメインディッシュにし、ビタミン・ミネラルを補うために野菜を積極的にとるようにしましょう。
就寝時間が近い場合は、腹八分目を目安にし、消化に負担をかけすぎないように注意します。
夕食のイメージ
メイン食材 | サイドメニュー例 | 栄養面の特徴 |
---|---|---|
サバの塩焼き | ほうれん草のおひたし、豆腐のみそ汁、玄米 | 不飽和脂肪酸とミネラル、ビタミンB群をバランスよく摂取 |
牛ヒレ肉のステーキ | ブロッコリーのソテー、トマトサラダ、雑穀米 | 亜鉛と鉄分、ビタミン類をしっかり補給 |
間食やおやつの工夫
小腹が空いたときに甘いスナックを食べ続けると血糖値が乱高下し、ホルモンバランスに悪影響を及ぼします。
ナッツやチーズ、ドライフルーツなど、テストステロンにプラスになりやすい栄養が含まれる食品を選ぶと安心です。飲み物は糖分の多いジュースや炭酸飲料ではなく、水やお茶を中心にすると良いでしょう。
薄毛が気になり始めたら検討すべきこと
食事や生活習慣を整えても薄毛の進行が気になる場合は、早めに専門家へ相談することが大切です。
AGAクリニックでの検査と相談
男性型脱毛症(AGA)はテストステロンから変換されたDHTが毛髪の成長を妨げることが主な要因の1つとされています。
専門クリニックでは、血液検査や頭皮の状態チェックなどを行い、適した治療方法を提案するのが一般的です。発毛を促す薬剤や外用薬の使用に加え、生活習慣指導やサプリメントの提案を受ける場合もあります。
内服薬・外用薬の活用
医療機関では、テストステロンからDHTへの変換を抑える薬剤や、毛髪の成長を促す外用薬などが処方される場合があります。
早期に対策を取れば、薄毛の進行を遅らせたり、改善を見込めたりする可能性があります。ただし、薬剤には個々で副作用のリスクもあるため、医師と相談しながら使用するようにしましょう。
AGA治療に用いられる薬剤
薬剤名 | 作用 | 留意点 |
---|---|---|
フィナステリド | 5α-リダクターゼの活性を抑制 | 女性や未成年には使用できない、個人差のある副作用 |
デュタステリド | 5α-リダクターゼのⅠ型・Ⅱ型をともに抑制 | フィナステリドが効きにくい人に対して検討される場合も |
ミノキシジル | 血管拡張作用により毛母細胞を活性化 | 一時的な脱毛期(初期脱毛)などが見られることがある |
ストレスケアや頭皮ケアの専門プログラム
薄毛の原因はホルモンバランスだけでなく、ストレスや頭皮トラブルによる影響も大きいです。
クリニックによっては、頭皮マッサージやメソセラピーなどを組み合わせ、総合的に薄毛を改善するプログラムを提供しているところもあります。
クリニックを選ぶ際には、自分の生活スタイルや要望に合ったケアが受けられるかどうかを確認すると安心です。
サプリメントの導入
テストステロンをサポートする栄養素(亜鉛、マグネシウム、ビタミンDなど)を、食事だけで十分に補いきれない場合はサプリメントの活用も1つの方法です。
ただし、サプリメントは薬ではなく、あくまでも栄養補助の位置づけです。過剰摂取を避けながら、医師や栄養士など専門家のアドバイスのもとで適切に選ぶ必要があります。
よくある質問
薄毛予防とテストステロンに関して、患者さんから寄せられる疑問や不安にお答えします。食事のことや生活習慣の工夫など、皆さんが気になる内容をまとめました。
- Q薄毛を予防するために鶏むね肉ばかり食べても大丈夫でしょうか?
- A
鶏むね肉はタンパク質が豊富で脂質が少ない良い食材ですが、そればかりに偏ると栄養バランスを崩す恐れがあります。
他の肉や魚、大豆製品、野菜、果物などを組み合わせて、多様な栄養素を摂取することが重要です。
亜鉛やビタミン、ミネラルなども合わせて補うとテストステロンバランスを整えやすくなります。
- Q毎日卵を食べるとコレステロールが気になります。テストステロンにはどう影響しますか?
- A
卵に含まれるコレステロールは、ホルモン合成の材料として必要です。過度な摂取は避けるべきですが、1日1〜2個程度なら健康な人にとって大きな問題になるリスクは低いと考えられます。
卵のタンパク質やビタミン類はテストステロンを支えるうえでも有益です。ただし、持病がある場合はかかりつけ医に相談して下さい。
- QAGA治療薬を使用しながらテストステロンを高める食事をしても大丈夫でしょうか?
- A
AGA治療薬で5α-リダクターゼを抑えつつ、テストステロン値を維持・向上させる食事を心がけることは問題ありません。
ただし、薬の作用や副作用については個人差があり、血液検査などで定期的に状態を確認する必要があります。医師に相談しながら、バランスの良い食習慣を続けることが大切です。
- Q加工食品やファストフードを完全にやめられません。どのくらい控えれば大丈夫ですか?
- A
加工食品やファストフードはトランス脂肪酸や塩分、添加物が多い傾向があります。
完全にやめるのが難しい場合は、まず週1〜2回程度まで抑えるなど、頻度を減らすところから始めてみてください。
同時に野菜や果物、魚などの健康的な食材を増やし、ホルモンバランスに必要な栄養を補うよう意識すると良いです。
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