男性の薄毛や抜け毛について考えるときは、DHT(ジヒドロテストステロン)という男性ホルモンの存在を抜きには語れません。

髪の毛の成長サイクルを乱す代表的な要因として知られており、AGA(男性型脱毛症)治療のカギを握る存在ともいえます。

この記事では、DHTとは具体的に何か、どのように薄毛を進行させるのか、そしてDHTを抑える方法にはどのような選択肢があるのかを詳しく紹介します。

DHTとは?

男性ホルモンの一種であるDHTは、髪の成長を抑制する働きがあることで注目を集めています。

単なる男性ホルモンというだけでなく、薄毛の原因として取り上げられるのには理由があります。まずはDHTの概要と、なぜ薄毛に影響を与えるのかを確認しましょう。

DHTの基礎知識

DHTはテストステロンから変換されたホルモンです。テストステロン自体も男性らしさを司る重要な役割を担っていますが、DHTはさらに強力な作用を持っています。

髪の毛の成長はヘアサイクルによって支えられており、成長期・退行期・休止期のサイクルが正常に維持されているときは健康な髪が保たれやすくなります。

しかしDHTが増えすぎると、毛包に対して強い刺激を与えてしまい、髪の成長期を短くしてしまう場合があるのです。特にAGAの発症には深くかかわっていると考えられています。

男性ホルモンの種類

ホルモン名主な特徴
テストステロン筋肉増強や骨格形成など男性的特徴を促す
DHT(ジヒドロテストステロン)テストステロンから変換される。より強力に男性的特徴を発現し、薄毛とも関連
エストロゲン女性的特徴の形成にかかわるが、男性にも少量存在する

上の表にもあるように、DHTはテストステロンから変換されて濃縮された形ともいえます。

その分だけ作用が強く、過剰になると髪の毛に対してはマイナスの影響を与えるのが特徴です。

5αリダクターゼの関与

DHTは5αリダクターゼと呼ばれる酵素の存在によって作られます。テストステロンがこの酵素と結合するとDHTへと変換されるのです。

5αリダクターゼは主に頭皮や前立腺などに多く存在し、個人差はありますが、遺伝的要素によって活性化しやすいタイプを持つ人ほど、DHTが生成されやすい傾向にあります。

5αリダクターゼには1型と2型があり、どちらも薄毛に影響を与える可能性がありますが、2型がより大きく関与するという見解があります。

DHTとテストステロンの違い

  • DHTはテストステロンより強い男性ホルモン作用を持つ
  • 変換には5αリダクターゼが必要となる
  • 頭皮の毛包に結合するとヘアサイクルを乱しやすい
  • 体毛は濃くするが頭髪には逆の方向に働きやすい

DHTを減らすためには、5αリダクターゼの働きを抑えるのが重要と考えられます。そのためAGA治療では、5αリダクターゼを阻害する薬の処方が行われる場合があります。

男性ホルモンと薄毛の関係

男性ホルモンは筋肉や骨格、性機能などに影響する大切な物質です。

一方でDHTのように強力な男性ホルモンが毛包を萎縮させたり、成長期を短縮させたりする働きを持つ場合、髪の密度や太さが徐々に失われていきます。これは特に遺伝的な素因が強い方で顕著になります。

頭頂部や生え際が急激に後退するパターンは、まさに男性ホルモンが毛髪に与える影響を象徴する例といえるでしょう。

髪の毛の成長に必要な栄養や酸素を届けるには頭皮環境を整えるのも大切ですが、ホルモンバランスを整える意識も持つとより効果的です。

DHTの生成や働きが活発になりすぎないようにコントロールする取り組みが薄毛対策の要ともなります。

AGAとDHTの関連性

AGA(男性型脱毛症)は、頭頂部や生え際の髪が徐々に細く短くなり、やがて抜け落ちていく進行型の脱毛症を指します。多くの場合、DHTが頭皮の毛包に作用していることが原因のひとつとされます。

AGAが疑われるときは、DHTの量や5αリダクターゼの活性をチェックし、必要に応じて薬剤による治療や生活習慣の改善を検討するのが一般的です。

クリニックでは血液検査や頭皮の状態確認を通じて、DHTとの関連性を見極めながら治療方針を立てます。

DHTが薄毛の原因となる仕組み

DHTがどのように薄毛を進行させるのかを知ると、自分に合った予防策や治療方法を見極めやすくなります。

DHTの作用は毛母細胞やヘアサイクル、その他のホルモンとの関係性に注目すると理解が深まります。

毛母細胞への作用

毛母細胞は髪の成長を支える重要な細胞群です。髪の毛が太く長く成長するためには、毛母細胞が活発に分裂する必要があります。

しかし、DHTが増えすぎると毛母細胞の活動が低下してしまい、十分に髪を成長させるためのエネルギーを発揮できなくなるときがあります。結果として髪が細くなり、抜け毛が増えてしまうのです。

毛母細胞の役割とDHTの影響

項目内容DHTの影響
毛母細胞の働き髪の毛を作り出す元となる細胞DHTが高まると分裂が抑えられ、健康な髪を育みづらい
栄養供給頭皮の血流から栄養素を取り込み髪を成長させるDHTによる血流障害のリスクで毛母細胞へ届く栄養が減少
ヘアサイクル成長期・退行期・休止期を繰り返し髪が生え変わるDHTが多いと成長期が短くなる

DHTは毛母細胞の動きを低下させるだけでなく、頭皮の血流や皮脂の分泌量にも影響を与える場合があります。

この相乗効果によって毛母細胞は栄養不足に陥りやすく、髪の成長がスムーズに行われなくなります。

ヘアサイクルへの影響

ヘアサイクルは髪の毛が抜けては生え変わるサイクルで、健康な状態では成長期が最も長い期間を占めます。成長期には毛母細胞が活発に活動し、髪がしっかりと伸びていきます。

一方、DHTの量が増えると成長期が短縮されるため、髪の毛は十分に伸びる前に抜けてしまう可能性が高くなります。

これが進行すると全体の髪のボリュームが減ってしまい、頭頂部や前頭部が目立ちやすくなります。

ヘアサイクルが乱れた状態を疑うサイン

  • 抜ける髪の毛が細く、短い状態が続く
  • 髪のボリュームが以前と比べて明らかに減少した
  • 頭頂部や生え際の地肌が透けるようになってきた
  • 成長期が十分に保たれず、休止期の割合が増えている感覚がある

こうしたサインに気づいたら、早めに頭皮やホルモンバランスを専門的に確認するのが望ましいです。

特にDHTの影響が大きいと考えられる場合、内服薬や外用薬などによる対処が効果的なケースがあります。

テストステロンとの比較

同じ男性ホルモンでも、テストステロンとDHTでは薄毛に及ぼす影響が異なります。

テストステロンが正常な範囲で働いているうちは、筋肉や骨など身体をつくるうえで役立つ面が大きいです。

しかしDHTに変換されると薄毛を促しやすい性質が強まるため、テストステロンとDHTを混同せずに理解することが必要です。

テストステロンとDHTの比較

ホルモン影響特徴
テストステロン筋肉増強、性欲、体毛の増加など適度な量ならば健康維持に寄与する
DHT(ジヒドロテストステロン)薄毛の進行、頭皮の皮脂分泌増加など男性ホルモンとしての作用がより強く、毛母細胞を萎縮させやすい

テストステロン自体は必ずしも髪に害を与えるわけではありませんが、5αリダクターゼによりDHTが作られすぎると髪の成長にとってネガティブな影響をもたらす点が問題となります。

DHTの働きが高まる要因

DHTが増えやすい要因には、遺伝やストレス、食生活の乱れなど複数の要素が絡み合う場合があります。

遺伝的に5αリダクターゼの活性が高い人はもちろん、仕事や家庭の事情などで大きなストレスを抱えているとホルモンバランスが崩れ、DHTの生成が促進されることもあるのです。

また、脂っこい食事や喫煙、睡眠不足なども男性ホルモンバランスに影響しやすいと考えられています。

こうした要因を一つずつ見直すと、DHTの働きが過剰にならないように対策できます。

DHTを抑制するための治療方法

DHTが原因で薄毛が進行している場合、治療ではまずDHTを抑えることを視野に入れます。5αリダクターゼを阻害する内服薬や頭皮に直接塗布する外用薬を組み合わせる選択肢がよく検討されます。

ここでは代表的な治療法の概要とメリット・デメリットを解説します。

内服薬の種類

5αリダクターゼを阻害する代表的な内服薬としては、フィナステリドやデュタステリドなどが知られています。

これらの薬はAGA治療において重視され、特に生え際や頭頂部の進行を遅らせるうえで有用とされています。

服用を続けるとDHTの産生量を減らし、毛髪の成長期を少しずつ正常に近づける効果が期待できます。

ただし、効果の実感には数カ月から半年以上を要するケースが多く、根気よく続ける必要があります。

代表的なDHT抑制薬

  • フィナステリド(5αリダクターゼの2型を阻害)
  • デュタステリド(5αリダクターゼの1型・2型を阻害)
  • 作用メカニズムは似ているが、抑制できる酵素の範囲に違いがある
  • 服用には医師の処方が必要で、定期的な受診が推奨される

内服薬の作用機序や副作用については服用前にしっかりと確認しましょう。

肝機能や性機能への影響を気にされる方もおられますが、正しく使用すれば大きなリスクを回避できる場合がほとんどです。

外用薬の活用

内服薬とセットでよく使用されるのが、頭皮に直接作用する外用薬です。ミノキシジル製剤などは、血行促進作用によって毛包への栄養供給を助けるとされます。

DHT抑制薬と組み合わせると、ヘアサイクルの改善をより高める可能性があります。

外用薬の使用方法とポイント

項目内容ポイント
使用タイミング朝晩の頭皮が清潔なタイミングが推奨洗髪後にしっかりと乾かしてから塗布するのが望ましい
塗布量医師や薬剤の指示を守り決められた量を使用多く塗っても効果が大幅に変わるわけではない
作用機序血行促進や毛母細胞への栄養供給をサポートするDHTを直接抑えるというよりは、毛髪の成長環境を整える
継続的な使用の重要性中断すると効果が途切れやすい効果を実感するまで半年程度を見込むと良い

外用薬の大きなメリットは、頭皮に直接働きかけられる点です。内服薬との相乗効果で髪の成長をサポートしつつ、頭皮環境を整えて抜け毛の進行を遅らせることが期待されます。

メリットとリスク

内服薬や外用薬を利用する際には、効果とリスクの両面を把握しましょう。

内服薬はDHTの産生量を抑えて髪の成長期を長くするメリットがありますが、性欲減退や軽い肝機能障害など副作用の可能性もゼロではありません。

一方、外用薬は局所的に作用するため全身的な副作用は少ないものの、頭皮のかぶれやかゆみなど局所的な刺激が起こる場合があります。

いずれも医師と相談しながら自身に合った方法を選択するとよいでしょう。

クリニックでのケア

治療薬を使用するだけでなく、専門の医療機関で定期的に頭皮の状態や治療経過を確認するケアも大切です。

頭皮環境の改善や生活指導を受けると、DHTを増やす要因を減らしやすくなります。あわせて血液検査やホルモン値を観察すると、治療がうまく進んでいるかを客観的に判断できます。

クリニックでのケア内容

ケア内容実施例期待できる効果
頭皮マッサージ専門家による頭皮ケア、マッサージ機器などを活用する血行促進や頭皮のコリ改善
メソセラピー有効成分を直接頭皮に注入する治療法毛包周辺への効果的なアプローチ
LED照射などの機器利用頭皮にやさしい光や微弱なエネルギーで毛母細胞を活性化毛母細胞への刺激を補助し、ヘアサイクルの改善を狙う
生活指導食生活やストレス管理など、日常的な習慣の見直しDHTが増える要因を減らし、治療効果を高める

医師の診察を受けながらケアを続けると、DHTの抑制や毛髪の成長を維持しやすいです。効果をより実感するためにも、自己判断で治療を中断しないようにしましょう。

日常生活におけるDHT対策

薄毛治療においては、薬による働きかけだけではなく生活習慣の改善も重視されます。

DHTが増える要因にはストレスや食生活の乱れ、運動不足なども挙げられるため、普段の生活を見直すことで薄毛の進行を遅らせる可能性があります。

食生活の工夫

血行を良好に保ち、必要な栄養素をしっかりと摂取するのが重要です。特にたんぱく質やビタミン、ミネラルをバランスよく摂ると毛母細胞が活動しやすくなります。

一方、脂質や糖質の過剰摂取は皮脂の分泌を増やし、DHTの産生にも影響すると考えられるため、偏食や暴飲暴食は避けるよう心がけたいところです。

食事のポイント

  • たんぱく質は肉・魚・大豆製品などからバランスよく摂取する
  • ビタミンやミネラルは野菜・果物だけでなく海藻類なども活用する
  • 過度なアルコール摂取は控えめにする
  • 脂質や糖質を過剰に取りすぎないように気をつける

以上のような食事を心がけると、頭皮環境の改善だけでなく全身の健康状態も向上しやすくなります。

運動や睡眠の重要性

適度な運動は血行を促進し、全身に栄養と酸素が行き渡りやすくなります。これは頭皮にも良い影響をもたらし、毛母細胞の働きを助けると考えられます。

さらに睡眠不足が続くとホルモンバランスが崩れやすく、DHTの生成が過剰になる可能性が高まるため、質の高い睡眠を確保すると良いです。

運動と睡眠が与える頭皮への影響

項目運動の効果睡眠の効果
血流促進有酸素運動などで血管が拡張し頭皮にも好影響成長ホルモンの分泌を活性化し、毛母細胞の修復を助ける
ストレス緩和運動によるリフレッシュ効果深い眠りがストレスホルモンを減らす
ホルモン調整過度な運動は逆効果だが、適度なら安定に寄与睡眠が不足するとホルモンバランスが崩れ、DHTが増えやすい
頭皮環境への影響正常なヘアサイクルを維持しやすい長期的に見ると脱毛の進行を遅らせる可能性がある

心地よい疲労感をもたらす程度の運動と、十分な睡眠時間はDHTの増加を抑える要素のひとつです。

寝る直前の激しい運動は逆に交感神経を刺激する場合があるので、タイミングにも注意が必要です。

ストレス管理

ストレスを感じると交感神経が優位になり、血管が収縮しやすくなります。頭皮の血流が悪化すると毛母細胞へ届く栄養も限られ、さらにホルモンバランスが乱れやすくなる悪循環が生じかねません。

趣味や適度な運動、リラクゼーション法などを取り入れてストレスをうまく発散する工夫をすると、DHTの増加を抑える一助となります。

精神的に安定すると睡眠の質も向上するため、相乗効果で髪の成長環境が整いやすくなるでしょう。

頭皮環境の改善

頭皮の皮脂や汚れを放置すると毛穴が詰まり、抜け毛の原因となるケースがあります。

また過度な洗浄や、刺激の強すぎるシャンプー剤も頭皮を乾燥させて防御機能を下げるため、適切なケアを意識しましょう。

頭皮マッサージや保湿ケアなどを日常的に取り入れると、DHTが悪さをしにくい健やかな土台作りを目指せます。

頭皮ケアで心がけたいこと

  • 洗浄力が強すぎないシャンプーを選ぶ
  • 指の腹を使い、優しくマッサージするように洗う
  • 洗髪後は頭皮をしっかり乾かして雑菌の繁殖を防ぐ
  • 過度なヘアスタイリング剤は頭皮に残らないよう洗い流す

頭皮環境を良好に保つ工夫は、内服薬や外用薬の効果をより引き出す下地ともなり得ます。

クリニックで行う治療方法

専門のクリニックでは、ただ薬を処方するだけでなく患者さん一人ひとりの状況に合わせた総合的な治療を考えています。

カウンセリングや検査を通じてDHTの影響度合いや生活習慣を把握し、より効果が見込める治療計画を立案する流れです。

カウンセリングの流れ

来院時にはまず医師やスタッフが現在の症状、薄毛の進行度、生活習慣、家族歴などをヒアリングします。

必要に応じて頭皮のチェックや血液検査を行い、ホルモンバランスや栄養状態を確認します。

その結果を踏まえて、内服薬・外用薬の処方やその他の治療法を提案するのが一般的な流れです。

段階内容目的
問診症状・既往歴・家族歴の把握薄毛のタイプと原因を大まかに絞り込む
頭皮チェックマイクロスコープなどを活用し、毛穴や毛髪の状態を観察DHTの影響度合い、頭皮環境を具体的に把握する
血液検査ホルモン値や栄養状態、肝機能などを確認安全に治療を進めるための情報収集
治療方針の決定内服薬・外用薬・その他の治療法の提案患者に合わせた効果的な治療計画を立てる

このように細かい段階を踏むと、無理やムラのない治療を進めていけます。医師とのコミュニケーションを大切にし、自分の体質や生活スタイルに合った治療法を見極めましょう。

検査や診断のポイント

血液検査ではテストステロンやDHTに直接言及できる数値は限定的ですが、肝機能や甲状腺ホルモン、貧血などを確認すると薄毛に影響を与える可能性のある全身状態を把握できます。

頭皮の状態も、マイクロスコープによって毛穴の詰まり具合や毛髪の太さ・本数などを見極められるため、DHTの影響がどれくらい出ているかを推測する材料となります。

検査で確認する項目

  • 肝機能(薬の代謝に関連)
  • 甲状腺ホルモン(体全体の代謝に影響)
  • 血中鉄分やフェリチン(貧血の有無)
  • 頭皮写真やマイクロスコープで毛穴・毛髪の状態

これらの検査結果をもとに、DHTを抑制する薬が適切かどうか、外用薬を併用すべきかなどを総合的に判断します。

薬剤処方の選択基準

内服薬を処方する際には、患者の年齢や健康状態、薄毛の進行度合い、家族歴など多角的な要素を考慮します。

たとえば、すでに進行がかなり進んでいる場合にはフィナステリドよりもデュタステリドを選択するケースがあり、頭頂部だけでなく生え際の後退も気になる場合にも有力な選択肢となります。

加えて、外用薬による働きかけを同時に行うと、毛髪の成長環境の改善も期待できます。

医師が治療効果と副作用のリスクを踏まえながら、患者さんと相談して服用量や期間を決定していきます。

一般的に内服薬の効果を実感するまでには時間を要するため、少なくとも数カ月は継続して試すことが望まれます。

定期的なフォローアップ

薬を飲み始めてからの経過観察も大切です。治療の効果は個人差が大きいため、数カ月ごとに頭皮の状態や血液検査の結果を確認しながら軌道修正を図ります。

副作用の有無や薄毛の進行度合いを慎重に判断し、必要に応じて薬の種類や用量を変えるながら、DHTを効率的にコントロールしていきます。

フォローアップ時のチェック項目

チェック項目内容重要性
頭皮の状態毛髪の太さや抜け毛の量、かゆみや炎症の有無など治療効果を視覚的に把握し、必要ならケアを追加
血液検査の結果肝機能やその他のホルモン値を定期的にチェック薬の安全な継続や副作用の早期発見
副作用の有無性機能や体調変化、皮膚トラブルなど治療の継続に際して安全性を確保
治療プランの見直し治療を継続・変更・追加するかを相談患者の状況に合った最良の治療を行うための指針を得る

このように定期的なフォローアップを実施して、DHTを中心とした男性ホルモンバランスの状態を把握し、最終的に治療効果を最大限に引き出すことを目指します。

DHT以外の薄毛原因にも目を向ける

薄毛を引き起こすのはDHTだけではありません。遺伝的要素や生活習慣、ホルモンバランス全体の乱れなど、複数の要因が重なり合うケースもよくあります。

DHT対策をしながら、これら他の要因にも目を向けると良いでしょう。

遺伝的要素

AGAの発症には遺伝子が関与しやすい点が知られています。家族・親族に薄毛の方が多い場合、自分も遺伝的に5αリダクターゼが活性化しやすかったり、毛母細胞がDHTの刺激に弱かったりする可能性があります。

しかし遺伝だけで全てが決まるわけではなく、生活習慣やストレスケア次第で発症時期や進行速度を遅らせられます。

遺伝的要素を示唆する特徴

  • 父親や祖父に同じような生え際後退や頭頂部脱毛がある
  • 複数の親族が似たパターンで薄毛を発症している
  • 若いころから髪質の変化を感じやすかった
  • AGA検査で5αリダクターゼの遺伝子多型が検出される

遺伝がある場合でも、適切な治療や生活改善で髪を守ることが十分に可能です。

生活習慣との関係

喫煙や睡眠不足などの生活習慣は、ホルモンバランスを乱しやすい要因として知られています。とくに喫煙は血管を収縮させ、頭皮への血流を妨げます。

睡眠不足や深酒なども同様に体の回復力を低下させ、DHTが優位になりやすい環境を作り出すと考えられます。

日々の生活習慣を見直して、髪だけでなく全身の健康を守る意識を持つことが望ましいでしょう。

ホルモンバランスの乱れ

男性ホルモンの過剰分泌だけでなく、甲状腺ホルモンの異常や副腎疲労なども薄毛の原因になる場合があります。

ストレスの蓄積や栄養不足はホルモン分泌を乱す要因となりやすいため、DHTだけに注目するのではなく、総合的な健康状態の把握が髪の悩み解決への近道となります。

ホルモンバランスを乱す要因と対応策

要因具体例対応策
ストレス過多慢性的な精神的ストレス、睡眠不足リラックス法や適度な運動、十分な睡眠を確保
栄養バランスの偏り炭水化物や脂質ばかりの食事、ビタミンやミネラル不足バランスの良い食事、サプリメントの活用
疲労の蓄積仕事や家事、育児などで休息を取る時間がない定期的な休養と身体をほぐす軽い運動
加齢による変化中年期以降、自然にホルモンバランスが変わる場合がある定期的な健康診断や必要に応じた内科的アプローチ

男性ホルモンバランスの乱れをきっかけに、DHTを含む様々なホルモンが正常値から外れてしまう場合があります。

自分では気づきにくい症状も多いため、不安がある場合は医療機関での相談を検討してみましょう。

複合的な視点が大切

薄毛にはDHTの増加だけでなく、遺伝や生活習慣、ストレスなどの要因が絡み合っているケースが多いです。

そのため、治療では「DHTの抑制」という一点だけに固執するのではなく、複合的な視点を持ちながら総合的に対策を考えていくことが大切です。

例えば、薬でDHTを抑えても、生活習慣が乱れていれば十分な効果が得られない場合があります。逆に、薬を飲まずとも生活習慣を改善するだけで進行が遅れるケースもあり得ます。

自分自身の状況を客観的に把握し、必要に応じて医師のアドバイスを受けながら適切なケアを続けると良いでしょう。

よくある質問

DHTや薄毛に関して、患者さんからは多くの疑問が寄せられます。ここではAGA治療の期間や女性への影響など、代表的な質問とその概要をまとめました。

Q
AGA治療の期間はどのくらい?
A

AGA治療では、目に見えた効果が実感できるまで数カ月から半年程度を要するのが一般的です。

内服薬や外用薬を開始した当初は抜け毛が一時的に増える「初期脱毛」が見られる場合もありますが、これは薬が作用してヘアサイクルが切り替わる過程で起こる現象とされています。

治療を始めたら、少なくとも半年から1年は継続することを視野に入れておくほうが良いでしょう。

短期間で効果を判断してしまうと、本来得られるはずの改善傾向を見落としてしまうリスクがあります。

Q
女性もDHTが関係する?
A

女性の薄毛(FAGA:女性男性型脱毛症)の場合も、男性ホルモンや5αリダクターゼが関与するケースがあります。

ただし女性は男性に比べてエストロゲンが多く、テストステロンの分泌量が少ないため、同じようにDHTが急増することは少ないと考えられます。

そのため、女性向けの治療では栄養不足やホルモンバランス全体の乱れ、血行不良などを重視する場合が多いです。

Q
市販の育毛剤は効果ある?
A

市販の育毛剤には、血行促進や保湿成分が含まれているものが多く、頭皮環境を整える点では一定の効果が期待できます。しかしD

HTを直接抑える成分を含む医薬品とは区別されることが多く、AGA治療としては効果が限定的な場合が多いです。

進行度合いが軽度であれば市販品だけでも改善が期待できるかもしれませんが、重度のAGAであれば医師の診察を受けて薬剤処方を検討するほうが確実性が高いと言えます。

Q
費用はどれくらいかかる?
A

AGA治療は保険適用外となるケースが一般的です。

内服薬や外用薬の費用、クリニックでのメソセラピーなどの施術費用、定期的な受診料などを合計すると月に数千円から数万円ほどかかる場合があります。

治療の内容やクリニックによって大きく差があるため、まずは無料カウンセリングを行っている医療機関で見積もりを確認してみることをおすすめします。

費用だけでなく通院頻度や治療効果の持続性なども考慮し、自分に合ったプランを検討すると良いでしょう。

参考文献

TRÜEB, Ralph M. Molecular mechanisms of androgenetic alopecia. Experimental gerontology, 2002, 37.8-9: 981-990.

ENGLISH JR, Robert S. A hypothetical pathogenesis model for androgenic alopecia: Clarifying the dihydrotestosterone paradox and rate-limiting recovery factors. Medical hypotheses, 2018, 111: 73-81.

REBORA, Alfredo. Pathogenesis of androgenetic alopecia. Journal of the American Academy of Dermatology, 2004, 50.5: 777-779.

UPADHYAY, Deepak K., et al. Mechanism of androgenic alopecia: Addressing speculations through empirical evidences. Dermatologic therapy, 2019, 32.6.

KAUFMAN, Keith D. Androgens and alopecia. Molecular and cellular endocrinology, 2002, 198.1-2: 89-95.

WILSON, Jean D. Role of dihydrotestosterone in androgen action. The Prostate, 1996, 29.S6: 88-92.

KAUFMAN, Keith D. Androgen metabolism as it affects hair growth in androgenetic alopecia. Dermatologic clinics, 1996, 14.4: 697-711.

LOLLI, Francesca, et al. Androgenetic alopecia: a review. Endocrine, 2017, 57: 9-17.