薄毛や抜け毛に悩み「絶対に生える発毛剤はないか」と切実に探している方が少なくないようです。薄毛の悩みは精神的なストレスも大きくなりがちですので、そのお気持ちは大変よく分かります。
しかし、残念ながら現時点では誰にでも100%効果がある「絶対」の発毛剤は存在しません。発毛効果には個人差があり、原因や進行度によって適した対処法も異なります。
この記事では、発毛剤に関する正しい知識、ご自身に合った製品の選び方、そして効果を最大限に引き出すための使用法について解説します。
誇大広告に惑わされず、科学的根拠に基づいた発毛への取り組みを始めましょう。
「絶対生える発毛剤」をお探しの方へ|誤解と現実
薄毛に悩む多くの方が、即効性や確実な効果を求めて「絶対生える発毛剤」という言葉に惹かれるのは自然なことです。
しかし、医学的な観点から見ると、その期待に応える製品は存在しないのが現状です。
なぜ「絶対」を求めてしまうのか
薄毛の悩みは見た目の印象を大きく左右するため、精神的な負担となるときがあります。
鏡を見るたびに気になる、人目が気になる、自信が持てないといった思いから、一刻も早く、そして確実に問題を解決したいという強い願望が生まれます。
このような切実な思いが「絶対」という言葉への期待につながるのです。
また、市場には様々な発毛・育毛関連製品が溢れており、中には効果を過剰にうたう広告も見受けられます。
そうした情報に触れるうちに、どこかに確実に効く特別な製品があるのではないかと考えてしまうのかもしれません。
発毛剤の効果には個人差がある理由
発毛剤の効果が一様でない主な理由は、薄毛の原因や種類、進行度が人それぞれ異なるためです。
代表的な男性型脱毛症(AGA)であっても、その進行パターンや速度は個人差が大きいです。さらに、生活習慣や遺伝的要因、頭皮環境なども発毛に影響を与えます。
同じ発毛剤を使用しても、これらの要因が複合的に絡み合うことで、効果の現れ方には差が生じるのです。
発毛効果に影響を与える要因
要因カテゴリ | 具体的な要因 |
---|---|
脱毛症の種類 | 男性型脱毛症(AGA)、円形脱毛症など |
進行度 | 初期、中期、後期など |
個人の体質 | 遺伝的要因、ホルモンバランス |
生活習慣 | 食事、睡眠、ストレス、喫煙 |
頭皮環境 | 乾燥、皮脂過剰、炎症の有無 |
誇大広告に惑わされないために
「絶対生える」「1週間でフサフサに」といった、効果を保証するかのような過剰な表現を用いた広告には注意が必要です。
医薬品医療機器等法(薬機法)では、医薬品や医薬部外品の効果について、承認された範囲を超える広告表現は規制されています。
科学的根拠が乏しい、または個人の体験談のみを強調するような情報には、冷静な判断が求められます。
製品を選ぶ際は広告の言葉だけでなく、配合されている有効成分や、臨床試験の結果など、客観的な情報を確認しましょう。
期待できる効果と限界を知る
発毛剤は正しく使用すれば薄毛の進行抑制や、ある程度の発毛効果が期待できる医薬品です。特に、ミノキシジルなどの有効成分は、臨床試験でその効果が確認されています。
しかし、効果が現れるまでには数ヶ月単位の継続使用が必要であり、すべての人に同じ効果が出るわけではありません。また、完全に毛根が失われてしまった部位からの発毛は困難です。
発毛剤に期待できる現実的な効果とその限界を理解した上で、治療に取り組むことが重要です。過度な期待はせず、根気強い継続が発毛への道につながります。
発毛剤の種類と作用|何が違うのか?
発毛剤と一口に言っても、その種類や作用は様々です。薬局で購入できるものから、医師の処方が必要なものまであり、それぞれ特徴が異なります。
ご自身の状況に合った製品を選ぶためには、まずどのような種類があり、それぞれがどのように働くのかを確認しましょう。
医療用医薬品と一般用医薬品の違い
発毛効果が認められている医薬品は、大きく「医療用医薬品」と「一般用医薬品(OTC医薬品)」に分けられます。
医療用医薬品は医師の診断と処方に基づいて使用される薬で、一般的に有効成分の濃度が高いなど、より効果が期待できる反面、副作用のリスクも考慮する必要があります。
一方、一般用医薬品は薬剤師や登録販売者のアドバイスのもと、薬局やドラッグストアで購入できます。比較的副作用のリスクは低いとされていますが、効果も医療用医薬品に比べると穏やかな場合があります。
発毛剤の分類
区分 | 入手方法 | 特徴 |
---|---|---|
医療用医薬品 | 医師の処方箋が必要 | 効果が高い傾向、副作用のリスクも考慮が必要 |
一般用医薬品 | 薬局・ドラッグストア等で購入可能 | 比較的安全性が高い、効果は穏やかな場合あり |
主な有効成分とその働き(ミノキシジルなど)
現在、日本で発毛効果が認められている代表的な有効成分は「ミノキシジル」です。ミノキシジルはもともと高血圧の治療薬として開発されましたが、副作用として多毛が見られたことから、発毛剤として転用されました。
血管を拡張し頭皮の血流を改善する作用や、毛母細胞に直接働きかけて毛髪の成長期を延長させる作用などにより、発毛を促進すると考えられています。
一般用医薬品としては外用薬(塗り薬)のみが販売されており、濃度に違いがあります。医療用医薬品としては、より高濃度の外用薬や内服薬(飲み薬)が処方される場合もあります。
塗り薬タイプと飲み薬タイプの特徴
発毛剤には、頭皮に直接塗布する「塗り薬(外用薬)」と服用する「飲み薬(内服薬)」があります。
ミノキシジル外用薬は、一般用医薬品としても入手可能で、気になる部分に直接塗布できるのが特徴です。
一方、ミノキシジル内服薬(通称ミノタブ)や、AGAの進行を抑制するフィナステリド、デュタステリドといった内服薬は医療用医薬品であり、医師の処方が必要です。
内服薬は体の中から作用するため全身的な効果が期待できますが、副作用のリスクも外用薬とは異なる点に注意が必要です。
塗り薬と飲み薬の比較
タイプ | 成分 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|---|
塗り薬 | ミノキシジル | 気になる部分に直接塗布、OTC薬あり | かぶれ・かゆみ等の皮膚症状 |
飲み薬 | ミノキシジル、フィナステリド等 | 体の中から作用、全身的な効果が期待可能 | 医師の処方必要、全身性の副作用も |
自分に合うタイプを見極める
どのタイプのどの発毛剤が自分に適しているかは、薄毛の原因や進行度、生活スタイルや副作用への懸念などによって異なります。
例えば、初期の薄毛で「まずは手軽に試したい」という方には一般用医薬品のミノキシジル外用薬が選択肢の一つとなるでしょう。
一方でAGAが進行しており、より効果を求めるときは、医師の診察を受けた上で医療用医薬品(高濃度ミノキシジル外用薬や内服薬)の使用を検討します。
自己判断せず、専門家である医師に相談することが、より適した選択への近道です。
自分に合った発毛剤の選び方|失敗しないためのポイント
数ある発毛剤の中から、自分にとって本当に効果的なものを選ぶのは簡単ではありません。選択を誤ると、効果が得られないばかりか、時間や費用を無駄にしてしまう可能性もあります。
薄毛の原因と進行度を把握する
発毛剤を選ぶ前に、まずご自身の薄毛がどのような原因で起こっているのか、そしてどの程度進行しているのかを正確に知ることが重要です。
薄毛の原因はAGA(男性型脱毛症)だけではありません。円形脱毛症や脂漏性脱毛症、牽引性脱毛症など、様々な種類があります。
原因が異なれば、適した対処法も異なります。AGAであればミノキシジルやフィナステリドなどが有効ですが、他の原因による脱毛症には効果がない、あるいは別の治療が必要になる場合があります。
自己判断は難しいため、専門医による診断を受けることを強く推奨します。
医師の診断を受ける重要性
薄毛の原因や進行度を正確に把握するため、そして適した治療法を見つけるためには、皮膚科やAGA専門クリニックを受診して医師の診断を受けることが非常に大切です。
医師は、問診や視診、触診、場合によっては血液検査や毛髪・頭皮の状態を詳しく調べる検査などを行い、総合的に診断します。
この診断に基づいて、医学的根拠のある治療法、例えば医療用医薬品の発毛剤の処方や、他の治療法との組み合わせなどを提案してもらえます。
自己判断で市販薬を試す前に、まずは専門家である医師に相談しましょう。
成分、濃度、剤形を比較検討する
一般用医薬品を選ぶ場合でも、具体的な製品を選ぶ際には、いくつかの要素を比較検討する必要があります。
発毛剤選びの比較要素
比較要素 | 確認するポイント |
---|---|
有効成分 | ミノキシジルなど、発毛効果が認められた成分か |
成分濃度 | 一般用医薬品(例:1%, 5%)、医療用医薬品(より高濃度も) |
剤形 | ローション、フォーム、ジェルなど、使いやすさ |
添加物 | アレルギーや刺激の原因にならないか |
特にミノキシジル外用薬の場合、一般用医薬品でも濃度が複数あります。一般的に濃度が高い方が効果も実感しやすいですが、同時に副作用のリスクも考慮する必要があります。
また、ローションタイプやフォームタイプ、ジェルタイプなど、剤形によって使用感や液だれしやすさなどが異なります。ご自身の頭皮の状態や使いやすさに合わせて選びましょう。
価格だけでなく継続しやすさも考慮する
発毛治療は効果を実感するまでに時間がかかり、継続することが何よりも重要です。そのため製品を選ぶ際には、価格も重要な要素となります。
しかし、単に安いという理由だけで選ぶのではなく、長期的に使用し続けられるかどうかを考慮する必要があります。毎月の費用負担が大きすぎると、途中で治療を断念してしまうことにもなりかねません。
効果や安全性、そしてご自身の予算のバランスを考え、無理なく続けられる製品を選びましょう。
ジェネリック医薬品(後発医薬品)を選択肢に入れるのも、費用負担を軽減する一つの方法です。
発毛剤の効果を高める正しい使い方
せっかく選んだ発毛剤も、使い方を間違えると十分な効果が得られなかったり、思わぬトラブルを招いたりする場合があります。
ここでは、発毛剤の効果を最大限に引き出し、安全に使用するための正しい使い方を見ていきましょう。
使用前に頭皮を清潔にする
発毛剤を塗布する前には、頭皮の汚れや余分な皮脂を洗い流し、清潔な状態にしておくことが大切です。シャンプーで頭皮をきれいにした後、髪と頭皮をしっかりと乾かしてから使用しましょう。
頭皮が汚れていたり濡れていたりすると、有効成分が毛穴や頭皮に浸透しにくくなり、効果が低下する可能性があります。
ただし、洗いすぎたり爪を立ててゴシゴシ洗ったりすると頭皮を傷つけ、かえって逆効果になるため注意が必要です。優しく丁寧に洗い、清潔な状態を保ちましょう。
用法・用量を守る
発毛剤の効果を早く得たいからといって、定められた量より多く塗ったり、1日の使用回数を増やしたりするのは絶対にやめてください。
用法・用量は、効果と安全性のバランスを考慮して設定されています。過剰に使用しても効果が高まるわけではなく、むしろ副作用のリスクを高めるだけです。
各製品の説明書に記載されている1回の使用量と1日の使用回数を必ず守り、正しく使用しましょう。
ミノキシジル外用薬の一般的な用法・用量例
項目 | 内容 |
---|---|
1回の使用量 | 約1mL(製品により異なる) |
1日の使用回数 | 2回(朝・晩など) |
使用間隔 | 12時間程度あける |
実際の用法・用量は、必ず各製品の説明書で確認してください。
塗布後のマッサージは必要か?
発毛剤を塗布した後に頭皮マッサージをした方が良いのかどうか、疑問に思う方もいるかもしれません。
基本的にミノキシジルなどの有効成分は、塗布するだけで頭皮に浸透するように設計されています。そのため、強くマッサージする必要はありません。
むしろ、強く揉みこむと頭皮を傷つけたり、薬剤が手に付着してしまったりする可能性があります。塗布後は、指の腹で軽く押さえる程度にとどめ、自然に乾燥させるのが良いでしょう。
効果を実感するまでの期間と継続の重要性
発毛剤の効果は、使用してすぐに現れるものではありません。ヘアサイクル(毛周期)の関係上、効果を実感するまでには早くても3~4ヶ月、通常は6ヶ月程度の継続使用が必要です。
効果が見られないからといってすぐに使用を中止してしまうと、せっかく始めた治療が無駄になってしまいます。
効果の個人差を理解し、まずは定められた期間、根気強く使用を続けることが何よりも大切です。
- 最低でも6ヶ月は継続する
- 途中で自己判断で中止しない
- 効果が見られない場合は医師に相談する
発毛剤の使用で注意すべき副作用と対策
発毛剤は医薬品であるため、効果が期待できる一方で、副作用のリスクも伴います。
安全に治療を続けるためには、どのような副作用が起こりうるのか、そして副作用が現れた場合にどう対処すべきかを確認しておきましょう。
一般的な副作用(かゆみ、かぶれなど)
特にミノキシジル外用薬(塗り薬)で比較的多く見られる副作用は、塗布した部分の皮膚症状です。
ミノキシジル外用薬の主な皮膚症状
副作用の種類 | 主な症状 |
---|---|
皮膚炎 | かゆみ、赤み、発疹 |
接触皮膚炎 | かぶれ、刺激感 |
その他 | フケ、乾燥、毛嚢炎(毛穴の炎症) |
これらの症状は、有効成分であるミノキシジル自体や製品に含まれる基剤(アルコールなど)に対するアレルギー反応や刺激によって起こります。
軽度のかゆみや赤みであれば使用を続けながら様子を見るときもありますが、症状が強い場合や長引く場合は使用を中止し、医師や薬剤師に相談する必要があります。
重篤な副作用の可能性と対処法
頻度は低いものの、注意すべき副作用もあります。
ミノキシジル外用薬では、頭皮から吸収された成分が全身に影響を及ぼして頭痛やめまい、動悸や胸の痛み、手足のむくみや急激な体重増加といった全身性の副作用が現れる可能性があります。
また、ミノキシジル内服薬やフィナステリド、デュタステリドといった内服薬では、性機能障害(リビドー減退、勃起機能不全など)や肝機能障害、抑うつ気分などが報告されています。
これらの症状が現れたときは、直ちに使用を中止し、速やかに医師の診察を受けてください。
副作用が出た場合の相談先
発毛剤を使用して何らかの異常を感じた際は、自己判断せずに専門家に相談することが重要です。一般用医薬品を使用している場合は、購入した薬局の薬剤師や登録販売者、または皮膚科医に相談しましょう。
医療用医薬品を使用しているときは、処方を受けた医師に速やかに連絡してください。
副作用の種類や程度に応じて使用中止や薬剤の変更、あるいは対症療法など、適切な指示を受けられます。
副作用リスクを低減するための注意点
副作用のリスクを完全にゼロにすることはできませんが、以下の点に注意するとリスクを低減できます。
- 用法・用量を厳守する
- 指定された部位以外に使用しない
- アレルギー歴や持病を伝える
- 他の薬剤との併用
- 体調の変化に注意する
副作用は使用を始めてすぐに現れるものばかりではありません。数カ月してから副作用が認められるケースもありますので、使用開始後しばらくは、ご自身の体調変化に気を配りましょう。
発毛剤だけでは不十分?クリニックでのAGA治療という選択肢
市販の発毛剤を試してみたけれど効果が実感できない、あるいは、より積極的に薄毛治療に取り組みたいと考えている方もいるでしょう。
そのような場合、AGA専門クリニックなど医療機関での治療が有効な選択肢となります。クリニックでは市販薬とは異なる方法で、より専門的な薄毛治療を受けられます。
AGA(男性型脱毛症)とは?
AGAはAndrogenetic Alopeciaの略で、男性ホルモン(特にジヒドロテストステロン:DHT)の影響により、思春期以降に額の生え際や頭頂部の髪が細く、薄くなっていく進行性の脱毛症です。
遺伝的な要因も関与していると考えられています。日本人男性の約3人に1人がAGAを発症するといわれており、薄毛の最も一般的な原因の一つです。
AGAは進行性のため、放置すると薄毛は徐々に進行していきます。早期に適切な対策を講じることが重要です。
クリニックで行われる専門的な診断
クリニックでは、まず医師が患者さんの薄毛の状態を詳しく診察します。問診で生活習慣や家族歴などを確認し、視診で薄毛のパターンや頭皮の状態を観察します。
必要に応じてマイクロスコープで毛髪や毛穴の状態を拡大して確認したり、血液検査でホルモン値や他の病気の可能性を調べたりする場合もあります。
これにより薄毛の原因がAGAなのか、他の脱毛症なのか、またAGAであればどの程度進行しているのかを正確に診断し、個々の患者さんに合わせた治療計画を立てられます。
内服薬による治療(フィナステリド・デュタステリド)
クリニックでのAGA治療の中心となるのが、内服薬による治療です。AGAの主な原因であるDHTの生成を抑制する薬として、「フィナステリド」と「デュタステリド」があります。
これらは、5αリダクターゼという酵素の働きを阻害することで、テストステロンがDHTに変換されるのを防ぎ、AGAの進行を抑制します。
医療用医薬品であり、医師の処方が必要です。市販の発毛剤(ミノキシジル外用薬など)と併用すると、より効果が実感しやすいケースもあります。
主なAGA治療内服薬
成分名 | 作用機序 | 期待される効果 | 注意点 |
---|---|---|---|
フィナステリド | 5αリダクターゼ(Ⅱ型)阻害 | AGA進行抑制 | 性機能関連、肝機能障害 |
デュタステリド | 5αリダクターゼ(Ⅰ型・Ⅱ型)阻害 | AGA進行抑制 | フィナステリドと同様、より注意 |
その他の治療法(注入療法、植毛など)
クリニックでは内服薬や外用薬による治療に加えて、より積極的な治療法も提供されています。
例えば「注入療法(メソセラピー)」は、発毛を促進する成分(ミノキシジル、成長因子など)を注射や特殊な機器を用いて頭皮に直接注入する方法です。
また、薄毛がかなり進行している場合には「自毛植毛」という選択肢もあります。後頭部などAGAの影響を受けにくい部位の自身の毛髪を、薄毛の部分に移植する外科的な手術です。
それぞれにメリット・デメリットがあり、費用も異なりますので、医師とよく相談して検討すると良いです。
発毛剤とクリニック治療の組み合わせ|相乗効果を狙う方法
発毛剤(特にミノキシジル外用薬)とクリニックで処方されるAGA治療薬(フィナステリドやデュタステリドの内服薬など)は、それぞれ作用する箇所が異なります。
そのため、これらを組み合わせると、単独での治療よりも発毛効果(いわゆる相乗効果)が期待できる場合があります。
なぜ併用が効果的なのか
AGAの治療においてフィナステリドやデュタステリドの内服薬は、薄毛の進行を「止める(抑制する)」守りの治療薬といえます。
これらはAGAの原因物質であるDHTの生成を抑えて抜け毛を減らし、現状維持または軽度の改善を目指します。
一方、ミノキシジル(外用薬・内服薬)は、毛母細胞を活性化させて新たな髪の毛を「生やす(促進する)」攻めの治療薬と位置づけられます。
つまり、守りの治療で抜け毛を減らしつつ、攻めの治療で発毛を促すという、二つの異なる作用を組み合わせることで、より効率的に薄毛の改善を目指せるのです。
併用する際の注意点
発毛剤とクリニックの治療薬を併用する場合、いくつか注意すべき点があります。
必ず医師の指示のもとで行うことが重要です。自己判断で市販薬と処方薬を組み合わせると、予期せぬ副作用のリスクが高まる可能性があります。
特に、ミノキシジル外用薬とミノキシジル内服薬を併用する場合などは、過剰投与にならないように医師による用量調整が必要です。
また、それぞれの薬剤の副作用についてもしっかりと理解し、体調の変化に注意を払う必要があります。
医師との連携による治療計画
併用療法を行う際は医師と十分に話し合い、個々の症状や生活スタイルに合わせた治療計画を立てましょう。
どの薬剤を、どのくらいの用量で、どのくらいの期間使用するのかを確認するのはもちろん、定期的に診察を受けて効果や副作用のチェックを行う必要があります。
治療の経過によっては、薬剤の種類や用量を調整する場合もあります。医師との良好な関係を築き、二人三脚で治療に取り組むことが成功への鍵となります。
治療効果を高める生活習慣の改善
発毛剤やクリニックでの治療効果を最大限に引き出すためには、薬だけに頼るのではなく、日々の生活習慣の見直しも非常に重要です。
髪の毛の成長には、バランスの取れた栄養や質の高い睡眠、ストレスの管理などが欠かせません。
- 栄養バランスの取れた食事
- 十分な睡眠
- ストレス軽減
- 禁煙
- 頭皮ケア
髪の成長に必要なタンパク質や亜鉛、ビタミンB群などを意識して摂取すると良いです。また、頭皮ケアとしてマッサージを行うと効果的ですが、強く力を入れすぎないように注意しましょう。
生活習慣の改善は、薬物療法の効果を高めるだけでなく、体全体の健康維持にもつながります。
よくある質問
さいごに、発毛剤や薄毛治療に関して、多くの方が疑問に思う点についてお答えします。
- Q発毛剤は女性でも使えますか?
- A
発毛剤として広く知られているミノキシジル外用薬には、女性向けの製品も販売されています。男性用とはミノキシジルの濃度が異なるものが多いです(例:男性用5%、女性用1%)。
男性用の高濃度製品を女性が使用すると、多毛などの副作用のリスクが高まる可能性があるため、必ず女性用の製品を使用するか、医師に相談してください。
また、AGA治療薬であるフィナステリドやデュタステリドは、原則として女性への投与は認められていません。特に妊娠中や授乳中の女性は胎児への影響があるため禁忌です。
女性の薄毛の原因は男性とは異なる場合も多いため、自己判断せず、皮膚科や女性の薄毛専門外来を受診することをおすすめします。
- Q効果が出ない場合どうすればよいですか?
- A
発毛剤の効果を実感するには、一般的に最低でも6ヶ月程度の継続使用が必要です。まずは、用法・用量を守って正しく使用できているか、生活習慣に問題はないかなどを確認しましょう。
それでも効果が見られないときは、いくつかの可能性が考えられます。薄毛の原因がAGAではない、AGAであっても進行度が高い、あるいは使用している発毛剤がご自身の体質に合っていない、などが考えられます。
このような場合は、自己判断で他の製品を試すのではなく、皮膚科やAGA専門クリニックを受診し、医師の診察を受けることが重要です。
原因を特定してより適切な治療法(処方薬への切り替え、併用療法、他の治療法の検討など)について相談しましょう。
- Q使用を中止するとどうなりますか?
- A
ミノキシジル外用薬やフィナステリド・デュタステリドといったAGA治療薬は、使用を中止するとその効果が徐々に失われ、治療開始前の状態に戻ってしまう可能性が高いです。
これらの薬剤はAGAの進行を抑制したり、発毛を促進したりするものですが、AGAの原因そのものを根本的に治すわけではありません。
そのため、効果を維持するためには、継続して使用する必要があります。
ただし、医師の判断により、治療経過を見ながら減量や休薬を検討するケースもあります。自己判断で中止する前に、必ず医師に相談してください。
- Qジェネリック医薬品の効果はどうですか?
- A
ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、先発医薬品(新薬)の特許期間が終了した後に同じ有効成分で製造・販売される医薬品です。
開発費用が抑えられるため、一般的に先発医薬品よりも価格が安価になります。有効成分やその含有量、用法・用量、効能・効果は先発医薬品と同等であると国によって承認されています。
そのため、適切に製造されたジェネリック医薬品であれば、先発医薬品と同等の効果が期待できます。
ただし、添加物が異なる場合があるため、まれにアレルギー反応などに違いが出ることがあります。
費用負担を抑えたい場合は、ジェネリック医薬品も有効な選択肢となりますので、医師や薬剤師に相談してみましょう。
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