薄毛や抜け毛にお悩みで、「髪が生える効果的な方法はないか」「髪に良い食事や栄養素を知りたい」とお考えの方が多いようです。
髪の健康は、日々の生活習慣や食事が大きく関わっています。
しかし、自己流のケアだけではなかなか改善が見られないケースも少なくありません。正しい知識を身につけ、適切な対策を行うことが重要です。
髪の成長と薄毛の基本的な知識
ここでは、髪の毛がどのように生え、なぜ薄毛や抜け毛が起こるのか、基本的な知識について解説します。髪の健康を考える上で、まずはその仕組みを理解することが大切です。
髪の毛はどのように生えてくるのか
髪の毛は、皮膚の下にある毛包という器官で作られます。毛包の最も奥にある毛球部には、毛母細胞と毛乳頭が存在します。
毛乳頭が毛細血管から栄養や酸素を受け取り、毛母細胞に指令を送ります。この指令を受けて毛母細胞が分裂・増殖し、角化して硬くなることで髪の毛となり、皮膚の外へと伸びていきます。
つまり、髪の成長には毛包の働きと、そこへの十分な栄養供給が欠かせません。
ヘアサイクル(毛周期)とは
髪の毛は、一定の周期で生え変わりを繰り返しています。これをヘアサイクル(毛周期)と呼びます。
ヘアサイクルは主に「成長期」「退行期」「休止期」の3つの期間に分けられます。
時期 | 期間の目安 | 状態 |
---|---|---|
成長期 | 2年~6年 | 毛母細胞が活発に分裂し、髪が伸び続ける |
退行期 | 約2週間 | 毛母細胞の分裂が停止し、成長が止まる |
休止期 | 約3ヶ月~4ヶ月 | 髪が毛包から離れ、自然に抜け落ちる |
髪の大部分(約85~90%)は成長期にあり、残りが退行期・休止期にあるため、1日に50本から100本程度の抜け毛は自然な現象です。
しかし、何らかの原因でこのヘアサイクルが乱れると、薄毛や抜け毛が進行します。
薄毛や抜け毛が起こる主な原因
薄毛や抜け毛は、様々な要因が絡み合って起こります。主な原因としては、遺伝的要因、男性ホルモンの影響、加齢、生活習慣の乱れ(食生活、睡眠不足、ストレス)、頭皮環境の悪化、特定の病気や薬の副作用などが挙げられます。
これらの要因がヘアサイクルを乱して成長期が短くなったり、休止期にとどまる毛包が増えたりすると、髪全体のボリュームが減少します。
AGA(男性型脱毛症)について
成人男性の薄毛の多くは、AGA(Androgenetic Alopecia:男性型脱毛症)が原因と考えられています。
AGAは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、頭皮に存在する還元酵素「5αリダクターゼ」によって、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換されるのが主な原因です。
DHTが毛乳頭細胞にある受容体と結合すると髪の成長を抑制する信号が出され、ヘアサイクルの成長期が短縮されます。
その結果、髪が十分に太く長く成長する前に抜け落ちてしまい、徐々に薄毛が進行していきます。AGAは進行性の脱毛症であり、放置すると薄毛は進んでいきます。
自分でできる髪を育むための対策
専門的な治療も重要ですが、まずはご自身でできることから始めるのが大切です。ここでは、頭皮環境の改善や生活習慣の見直しなど、髪を健やかに育むためのセルフケアについて解説します。
頭皮環境を整える正しいヘアケア
健やかな髪は、健康な頭皮から生まれます。頭皮環境を整えるためには、毎日のヘアケアが重要です。
洗浄力が強すぎるシャンプーは、頭皮に必要な皮脂まで洗い流してしまい、乾燥やかゆみの原因となる場合があります。ご自身の頭皮タイプに合った、アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のシャンプーを選びましょう。
シャンプー前にはブラッシングで髪のほこりや汚れを落とし、ぬるま湯で髪と頭皮を十分に予洗いします。
シャンプーは手のひらでよく泡立ててから、指の腹を使って頭皮を優しくマッサージするように洗います。爪を立ててゴシゴシ洗うのは、頭皮を傷つける原因になるため避けてください。
すすぎ残しは毛穴詰まりや炎症の原因になるため、時間をかけて丁寧に洗い流しましょう。
洗髪後は、タオルで優しく水分を拭き取り、ドライヤーで根元からしっかりと乾かします。自然乾燥は雑菌が繁殖しやすいため避け、頭皮が湿ったままにならないように注意が必要です。
血行促進のための頭皮マッサージ
頭皮の血行が悪くなると、髪の成長に必要な栄養や酸素が毛母細胞まで十分に届きにくくなります。頭皮マッサージは血行を促進し、頭皮を柔らかく保つ効果が期待できます。
入浴中や洗髪後など、頭皮が温まっている時に行うのがおすすめです。指の腹を使って、頭皮全体を優しく揉みほぐします。
生え際から頭頂部へ、側頭部から頭頂部へ向かって、心地よいと感じる強さでマッサージしましょう。強い力で擦ったり、爪を立てたりしないように注意してください。毎日数分でも継続することが大切です。
ストレス管理と質の高い睡眠
過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて頭皮の血行不良を引き起こす可能性があります。
また、ストレスはホルモンバランスにも影響を与え、抜け毛の原因となる場合があります。自分に合ったストレス解消法を見つけてリラックスできる時間を作る工夫が大切で、適度な運動、趣味の時間、瞑想などが有効です。
質の高い睡眠も髪の成長には欠かせません。睡眠中には成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生が活発に行われます。
入眠後最初の深い眠り(ノンレム睡眠)の時間帯に多く分泌されるため、寝る前のカフェイン摂取やスマートフォンの使用を控え、規則正しい睡眠習慣を心がけましょう。
睡眠の質を高めるポイント
- 毎日同じ時間に寝起きする
- 寝る前のカフェインやアルコール摂取を控える
- 寝室の環境(温度、湿度、明るさ、音)を整える
- 寝る直前の激しい運動は避ける
喫煙や過度な飲酒の影響
喫煙は血管を収縮させて血行を悪化させるだけでなく、体内のビタミンCを大量に消費します。ビタミンCはコラーゲンの生成に必要であり、頭皮の健康維持にも関わっています。髪の健康のためには、禁煙するのが望ましいです。
過度な飲酒も、肝臓でのアルコール分解に多くのビタミンやミネラルが消費されるため、髪に必要な栄養素が不足する可能性があります。
また、アルコールは睡眠の質を低下させるときもあります。飲酒は適量を心がけ、休肝日を設けるなど、節度を守るようにしましょう。
髪の成長をサポートする食事の基本
髪の毛は、私たちが日々摂取する食事から作られています。健やかな髪を育むためには、バランスの取れた食事が基本となります。
バランスの取れた食事が重要な理由
髪の主成分はケラチンというタンパク質です。しかし、タンパク質だけを摂取すれば良いというわけではありません。タンパク質を効率よく利用するためには、ビタミンやミネラルなどの栄養素も必要です。
これらの栄養素が互いに協力し合うことで、健康な髪の成長が促されます。
特定の食品だけを食べるのではなく、様々な食品を組み合わせてバランス良く栄養を摂取すると髪の健康維持につながります。
髪に必要な三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)
髪の成長には、エネルギー源となる三大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)が基本となります。
栄養素 | 主な役割 |
---|---|
タンパク質 | 髪の主成分であるケラチンの材料となる |
脂質 | 細胞膜の構成成分、ホルモンの材料となる |
炭水化物 | 体や脳の主要なエネルギー源となる |
これらの栄養素が不足すると、髪の成長に必要なエネルギーや材料が足りなくなり、髪が細くなったり抜けやすくなったりする可能性があります。
特にタンパク質は髪の土台となるため、毎食意識して摂取することが大切です。
ただし、脂質や炭水化物の摂りすぎは肥満や生活習慣病につながり、頭皮環境にも悪影響を与える可能性があるため適量を心がけると良いです。
過剰な食事制限や偏食のリスク
ダイエットなどのために極端な食事制限を行うと、髪に必要な栄養素が不足しがちです。特にタンパク質やビタミン、ミネラルが不足すると髪の成長が妨げられ、薄毛や抜け毛の原因となる場合があります。
また、好きなものばかり食べる偏った食生活も栄養バランスの偏りを招きます。例えば、インスタント食品やファストフード中心の食生活では、脂質や塩分の過剰摂取、ビタミンやミネラルの不足が懸念されます。
健康な髪を育むためには、特定の食品に偏らず、多様な食品からバランス良く栄養を摂取する意識が大切です。無理な食事制限は避けて健康的な食生活を継続すると長期的な髪の健康につながります。
健康な髪を育むための重要な栄養素
バランスの取れた食事が基本ですが、特に髪の成長に重要とされる栄養素があります。
ここでは、タンパク質、亜鉛、ビタミン、ミネラルといった栄養素の働きと、それらを多く含む食品について解説します。
タンパク質(アミノ酸)の役割と摂取源
髪の約90%はケラチンというタンパク質で構成されています。タンパク質は体内でアミノ酸に分解されて吸収され、ケラチンの合成に利用されます。
そのため、良質なタンパク質を十分に摂取する工夫が、健康な髪の土台作りには必要です。
タンパク質を多く含む食品
食品分類 | 具体例 |
---|---|
肉類 | 鶏むね肉、ささみ、赤身肉、レバー |
魚介類 | 青魚(サバ、イワシ)、鮭、貝類、エビ |
大豆製品 | 豆腐、納豆、豆乳 |
卵 | 鶏卵 |
乳製品 | 牛乳、ヨーグルト、チーズ |
特に、ケラチンを構成するアミノ酸の中でも「メチオニン」は体内で合成できない必須アミノ酸であり、食事からの摂取が大切です。メチオニンは肉類、魚介類、卵、大豆製品などに含まれています。
亜鉛の重要性と含まれる食品
亜鉛は、タンパク質の合成を助ける重要なミネラルです。髪の主成分であるケラチンの合成にも関与しており、不足すると髪の成長が妨げられる可能性があります。
また、亜鉛は細胞分裂にも関わっているため、毛母細胞の分裂・増殖にも影響を与えます。さらに、AGAの原因とされる5αリダクターゼの働きを抑制する効果も期待されています。
亜鉛を多く含む食品例
食品分類 | 具体例 |
---|---|
魚介類 | 牡蠣、うなぎ、ホタテ |
肉類 | 赤身肉、レバー |
大豆製品 | 納豆、きな粉 |
種実類 | ごま、ナッツ類(アーモンドなど) |
亜鉛は吸収率があまり高くないミネラルですが、ビタミンCやクエン酸と一緒に摂取すると吸収率が高まると言われています。
各種ビタミンの働きと摂取のポイント
ビタミンは体の機能を正常に保つために必要な栄養素であり、髪の健康にも深く関わっています。
ビタミンは単体で働くのではなく、互いに協力し合って効果を発揮します。そのため、様々な食品からバランス良く摂取することを心がけましょう。
ビタミンA
頭皮の新陳代謝を促し、健康な状態に保つ働きがあります。不足すると頭皮が乾燥しやすくなります。
緑黄色野菜(人参、ほうれん草)、レバー、うなぎなどに多く含まれます。
ビタミンB群
特にビタミンB2、B6、ビオチンなどが重要です。ビタミンB2は皮脂の分泌を調整し、頭皮環境を整えます。
ビタミンB6はタンパク質(アミノ酸)の代謝を助け、ケラチンの合成をサポートします。
ビオチンは皮膚や粘膜の健康維持を助けます。レバー、魚介類、卵、大豆製品、緑黄色野菜などに含まれます。
ビタミンC
コラーゲンの生成を助け、頭皮の血管や組織を丈夫に保ちます。また、抗酸化作用により、活性酸素から頭皮を守る働きもあります。
果物(柑橘類、キウイ、イチゴ)、野菜(パプリカ、ブロッコリー)、いも類に多く含まれます。
ビタミンE
強い抗酸化作用を持ち、血行を促進する働きがあります。頭皮の血行が良くなることで、毛母細胞への栄養供給がスムーズになります。
ナッツ類(アーモンドなど)、植物油、アボカド、緑黄色野菜に含まれます。
ミネラル(鉄など)の必要性
ミネラルも髪の健康維持に欠かせません。特に鉄は、血液中のヘモグロビンの成分となり、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。
鉄が不足すると頭皮への酸素供給が滞り、毛母細胞の働きが低下して髪の成長に影響が出る可能性があります。特に女性は月経により鉄不足になりやすいため、意識して摂取すると良いでしょう。
食品分類 | 具体例 |
---|---|
肉類 | レバー、赤身肉 |
魚介類 | カツオ、マグロ、あさり、しじみ |
大豆製品 | 納豆、豆腐 |
野菜・海藻 | 小松菜、ほうれん草、ひじき |
鉄は、ビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が高まります。動物性食品に含まれるヘム鉄の方が、植物性食品に含まれる非ヘム鉄よりも吸収されやすいという特徴があります。
髪に良いとされる食品と避けたい食品
日々の食事でどのような食品を選び、どのような食品を避けるべきかを確認すると、髪の健康を考える上で役立ちます。
積極的に摂りたい食品例
タンパク質やミネラル、ビタミンなどの栄養素をバランス良く含む食品を積極的に取り入れましょう。
食品群 | 主な栄養素 | 期待される働き |
---|---|---|
緑黄色野菜 | ビタミンA, C, E, ミネラル | 頭皮環境改善、抗酸化作用、血行促進 |
大豆製品 | タンパク質, イソフラボン, 亜鉛 | 髪の材料供給、ホルモンバランス調整補助 |
青魚 | タンパク質, EPA, DHA, ビタミンD | 髪の材料供給、血行促進、炎症抑制 |
ナッツ類 | ビタミンE, 亜鉛, 良質な脂質 | 抗酸化作用、血行促進、ミネラル補給 |
海藻類 | ミネラル(ヨウ素など), 食物繊維 | 甲状腺ホルモン合成補助、腸内環境改善 |
レバー | タンパク質, ビタミンA, B群, 鉄, 亜鉛 | 総合的な栄養補給 |
これらの食品を日々の食事にバランス良く取り入れると、髪の成長に必要な栄養素を効率的に摂取できます。特定の食品に偏るのではなく、多様な食品を組み合わせることが重要です。
髪の成長を妨げる可能性のある食品
一方で、摂りすぎると髪の健康に悪影響を与える可能性のある食品もあります。
完全に避ける必要はありませんが、過剰摂取にならないよう、量や頻度を意識することが大切です。
高脂肪食
揚げ物や脂身の多い肉など、脂肪分の多い食事は、皮脂の過剰分泌を招き、頭皮環境を悪化させる可能性があります。毛穴が詰まると、炎症や抜け毛の原因となるときがあります。
高糖質食
糖分の多いお菓子や清涼飲料水などの過剰摂取は、血糖値の急上昇を招き、皮脂分泌を増加させる可能性があります。
また、糖化(体内のタンパク質と糖が結びつく現象)が進むと、頭皮の老化を早める可能性も指摘されています。
塩分の多い食品
塩分の摂りすぎは、高血圧のリスクを高め、血行不良につながる可能性があります。頭皮への血流が悪くなると、髪の成長に必要な栄養が届きにくくなります。
刺激物
香辛料の効いた辛い食べ物やカフェインの過剰摂取は、皮脂分泌を促進したり睡眠の質を低下させたりする可能性があるため、摂りすぎには注意が必要です。
加工食品や外食との付き合い方
加工食品や外食は手軽で便利な反面、脂質、糖質、塩分が多くなりがちで、ビタミンやミネラルが不足しやすい傾向があります。頻繁に利用する場合は、栄養バランスが偏らないように注意が必要です。
外食の際は、定食メニューを選んで主食・主菜・副菜を揃える、野菜の多いメニューを選ぶ、丼ものや麺類単品を避けるなどの工夫をすると良いでしょう。
加工食品を利用する際も栄養成分表示を確認し、野菜やタンパク質源をプラスするなど、バランスを意識することが大切です。
自炊の機会を増やし、栄養バランスの整った食事を心がけると、髪の健康維持につながります。
サプリメントの活用と考え方
食事だけで必要な栄養素を十分に補うのが難しいときや、特定の栄養素を集中的に摂取したいときに、サプリメントの活用を考える方もいるでしょう。
ここでは、髪の成長を目的としたサプリメントの考え方や注意点について解説します。
髪の成長を助けるサプリメントとは
髪の成長に関連するサプリメントとしては、髪の主成分であるケラチンの材料となるアミノ酸、タンパク質の合成を助ける亜鉛、頭皮環境を整えるビタミンB群、血行促進に関わるビタミンEなどが一般的です。
また、AGAの原因に働きかけるとされるノコギリヤシエキスなども販売されています。
これらのサプリメントは、食事からの栄養摂取を補完する目的で利用されます。
サプリメント選びの注意点
サプリメントは医薬品ではなく、あくまで食品の一種です。そのため、劇的な発毛効果を謳うような製品には注意が必要です。「髪が生える」と断言するような広告は、科学的根拠が不確かな場合もあります。
選ぶ際は、成分表示をよく確認し、どのような成分がどのくらい含まれているかを把握しましょう。信頼できるメーカーの製品を選び、過剰な広告に惑わされないことが大切です。
また、複数のサプリメントを自己判断で併用すると、特定の栄養素の過剰摂取につながるリスクもあります。
サプリメント利用時のチェックポイント
- 成分と含有量
- 製造元の信頼性
- 過剰な広告表現がないか
- アレルギー成分の有無
サプリメントだけに頼ることの限界
サプリメントは、あくまで食事の補助的な役割です。栄養摂取の基本は、バランスの取れた食事です。
サプリメントだけで髪の悩みがすべて解決するわけではありません。髪の成長には栄養だけでなく、適切なヘアケア、十分な睡眠、ストレス管理など、総合的な生活習慣の見直しが重要です。
サプリメントに頼りすぎるのではなく、まずは日々の食生活や生活習慣の改善を優先しましょう。
医師への相談の重要性
薄毛や抜け毛の原因は様々であり、自己判断でサプリメントを選んでも、原因に合っていなければ効果は期待できません。場合によっては、特定の病気が原因で薄毛が進行している可能性もあります。
サプリメントの利用を検討する前に、まずは薄毛治療を専門とするクリニックの医師に相談することをおすすめします。
自己判断での対策に時間や費用を費やすよりも専門家の診断を受けることが、結果的に早期改善への近道となるでしょう。
薄毛・抜け毛の悩みは専門クリニックへ相談を
セルフケアや食事改善を試みてもなかなか薄毛や抜け毛の改善が見られないときには、専門的な治療が必要な可能性があります。
ここでは、専門クリニックへの相談の重要性や、行われる治療について解説します。
セルフケアだけでは改善が難しい場合
正しいヘアケア、バランスの取れた食事、生活習慣の改善は、髪の健康を保つ上で基本となります。
しかし、AGA(男性型脱毛症)のように、男性ホルモンや遺伝が関与する進行性の脱毛症の場合、セルフケアだけで進行を食い止めたり、発毛を促したりするのは難しいのが現状です。
また、他の病気が原因で脱毛が起きている可能性も考えられます。効果が見られないまま自己流のケアを続けるよりも、早めに専門家の診断を受けることが重要です。
クリニックで行われる薄毛治療の種類
薄毛治療専門のクリニックでは、医師による診察のもと、医学的根拠に基づいた様々な治療法が提供されています。
主な治療法には以下のようなものがあります。
治療法 | 特徴 |
---|---|
内服薬治療 | AGAの原因(DHT生成)を抑制する薬や、発毛を促進する薬を服用する |
外用薬治療 | 発毛効果のある成分(ミノキシジルなど)を含む薬剤を頭皮に塗布する |
注入治療(メソセラピー) | 髪の成長に必要な成分(成長因子、ビタミン、ミネラルなど)を頭皮に直接注入する |
自毛植毛 | ご自身の後頭部などの毛髪を、薄毛が気になる部分に移植する手術 |
LED・レーザー治療 | 特定の波長の光を頭皮に照射し、血行促進や毛母細胞の活性化を促す |
これらの治療法の中から医師が患者さんの薄毛の原因、進行度、希望などを考慮して適した治療計画を提案します。単一の治療だけでなく、複数の治療法を組み合わせる場合もあります。
早期相談・早期治療のメリット
AGAなどの進行性の脱毛症は、放置すると症状が悪化していきます。治療を開始するタイミングが早いほど、毛包の機能が残っている可能性が高く、治療効果も得られやすくなります。
「まだ大丈夫だろう」と自己判断せず、抜け毛が増えた、髪が細くなったなど、変化を感じたら、なるべく早い段階で専門クリニックに相談すると良いです。
早期に適切な治療を開始すると、薄毛の進行を抑制して改善の可能性を高められます。
自分に合ったクリニックの選び方
薄毛治療は継続が必要な場合が多いため、信頼できるクリニックを選ぶことが重要です。
クリニックを選ぶ際は、以下の点を参考にすると良いでしょう。
専門性 | 薄毛・AGA治療を専門に扱っているか。 |
治療実績 | 豊富な治療経験や実績があるか。 |
治療法の選択肢 | 様々な治療法を扱っており、自分に合った治療を提案してくれるか。 |
カウンセリング | 医師が丁寧に診察し、分かりやすく説明してくれるか。質問しやすい雰囲気か。 |
費用 | 料金体系が明確で、事前に総額の目安を提示してくれるか。 |
通いやすさ | 立地や診療時間など、継続して通院しやすいか。 |
無料カウンセリングなどを実施しているクリニックも多いので、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。複数のクリニックで話を聞いて比較検討するのも良いでしょう。
よくある質問
ここでは、髪の毛や薄毛治療に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- Q食事を変えればすぐに髪は生えますか?
- A
食事改善は髪の健康にとって非常に重要ですが、食事を変えたからといってすぐに髪が生えてくるわけではありません。
髪の毛はヘアサイクルに沿ってゆっくりと成長するため、効果を実感するには時間がかかります。通常、数ヶ月から半年以上の継続が必要です。
また、食事が原因でない薄毛(AGAなど)の場合は、食事改善だけでは十分な効果が得られないケースもあります。
バランスの取れた食事は、あくまで健康な髪を育むための土台作りと捉え、必要に応じて専門的な治療と組み合わせることが大切です。
- Q育毛シャンプーだけで髪は生えますか?
- A
育毛シャンプーは、頭皮環境を整え、髪が育ちやすい状態にするためのものです。
洗浄成分がマイルドであったり、血行促進成分や保湿成分が配合されていたりしますが、シャンプーだけで積極的に髪を生やす効果(発毛効果)は医学的には認められていません。
頭皮の清浄や保湿には役立ちますが、AGAなどによる薄毛の根本的な改善には、医薬品による治療などが必要となる場合が多いです。
- Qサプリメントはどのくらい続ければ効果が出ますか?
- A
サプリメントは医薬品ではないため、明確な効果や効果が出るまでの期間を保証するものではありません。
髪の成長はヘアサイクルに依存するため、仮にサプリメントが栄養補給として役立ったとしても、変化を感じるまでには食事改善と同様に数ヶ月単位の時間が必要と考えられます。
また、効果の感じ方には個人差があります。サプリメントはあくまで補助的なものと考え、過度な期待はせず、まずは医師に相談すると良いでしょう。
- Qクリニックの治療は痛いですか?
- A
クリニックで行われる薄毛治療には様々な種類があり、痛みの感じ方も治療法によって異なります。内服薬や外用薬の治療は、基本的に痛みはありません。
注入治療(メソセラピー)は、注射を用いるためチクッとした痛みを感じることがありますが、多くのクリニックでは痛みを軽減するための工夫(冷却、麻酔クリームなど)を行っています。
自毛植毛は局所麻酔下で行う手術ですので、麻酔の注射時以外は痛みを感じることはほとんどありません。
治療前に医師から痛みの程度や対策について説明がありますので、不安な点は遠慮なく質問してください。
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