円形脱毛症は突然、頭髪の一部分が円形あるいは楕円形に抜けてしまう状態で、見た目の変化が大きいため不安を感じる方が多いです。原因は自己免疫やストレスなどが考えられ、治療に時間がかかることもあります。

そのような中、塗り薬を含む市販薬によってケアを試みる方も増えています。自宅でセルフケアを行う場合は、頭皮や髪の健康を考慮した正しい選択と使い方が重要です。

目次

円形脱毛症とは

頭髪の一部分が円形または楕円形に抜け落ちる円形脱毛症は、自己免疫反応やストレスなど複数の要因が関わるといわれています。原因や症状は一様ではなく、軽度から重度まで幅広いケースがあります。

円形脱毛症の主なタイプ

円形脱毛症には、単発型や多発型などいくつかのタイプがあります。

単発型は文字どおり1カ所のみに脱毛部位ができるもので、比較的治りやすいタイプといえます。一方、多発型は複数の脱毛部位が同時または時期をずらして生じる状態を指します。

円形脱毛症のタイプ

タイプ名特徴
単発型1カ所だけ円形に脱毛する
多発型複数の脱毛部位が同時・連続的に生じる
全頭型頭部全体の髪が抜ける
汎発型頭髪だけでなく眉毛や体毛にも広範囲で脱毛が広がる

タイプが進行するほどセルフケアだけでは改善が難しくなる場合があるため、状況に応じて医療機関に相談することも必要です。

原因として考えられる要素

円形脱毛症の原因には、自己免疫の異常、ストレス、遺伝的素因などが挙げられます。日常生活の疲れや精神的なプレッシャーがきっかけになるケースもあります。

原因が単一とは限らず、複数の要因が組み合わさって発症していることもあります。

  • 自己免疫反応の問題
  • 精神的ストレスや生活習慣
  • 遺伝的素因
  • ホルモンバランスの乱れ

自己流の判断だけでは真の原因を特定しにくいため、症状が長引くときは専門家の意見を聞くと安心です。

円形脱毛症の経過

円形脱毛症は放置しても自然に回復する場合もありますが、急激に脱毛範囲が広がる例もあり経過はさまざまです。

一時的に回復するように見えても、別の箇所で再発するケースも珍しくありません。早めに対処したほうが再発のリスクを減らし、メンタル面の負担を軽減しやすくなります。

円形脱毛症の主な症状と髪・頭皮の変化

円形脱毛症は、外見からも一目でわかる脱毛部位が特徴です。しかし、進行の度合いによって頭皮や毛髪の質が変化し、症状が複雑化することがあります。

ここでは、脱毛以外に見られやすい症状や頭皮の状態を紹介します。

頭皮の炎症やかゆみ

円形脱毛症の部位は、炎症や軽度のかゆみを伴うケースがあります。自己免疫が関係していると考えられるため、頭皮のバリア機能に影響が出ると刺激を受けやすくなります。

かきむしると頭皮を傷つけるリスクが高まり、脱毛部位の悪化につながることがあるため注意が必要です。

円形脱毛症で起こりやすい頭皮症状

症状説明
炎症・発赤脱毛部分やその周辺が赤くなる
かゆみ軽度の痒みから強い痒みまで幅広い
鱗屑(フケ)皮膚のバリアが弱まることでフケが増えることがある
頭皮の乾燥頭皮のうるおいが低下し、乾燥する

頭皮に異常を感じたら無理に触らず、状態を観察して必要に応じてケア方法を変えることが大切です。

毛髪の変色や変質

円形脱毛症の脱毛部位から生えてくる髪が細くなったり、色が薄くなったりすることがあります。これは毛母細胞への免疫反応の影響や、栄養不足が関係しているとみられています。

また、毛髪の先端が細くなる「コマ状毛」と呼ばれる形状になりやすい場合もあります。こうした髪の変化は、脱毛の回復過程を見極める指標になることがあります。

精神的ストレスの増幅

脱毛が目立つほど心理的に大きなストレスを抱える場合があり、そのストレスがさらなる脱毛を招く可能性があります。髪を隠したり、外出を控えたりするなど生活の質が下がるケースもあります。

円形脱毛症は髪や頭皮だけでなく、メンタル面にも深く影響を及ぼすことを知っておくことが重要です。

進行性の脱毛パターン

円形脱毛症は局所的に抜けるだけでなく、時期をずらしながら脱毛範囲が増える可能性があります。いったん治りかけていた箇所が再び抜けるケースもあるため、経過をしっかり観察することが望ましいです。

複数箇所で脱毛が進行していると感じたときは、早い段階でのケアが回復を促しやすくなります。

自宅で円形脱毛症に対処するときの注意点

市販薬を使ってセルフケアを試みる方は多いですが、使い方を誤るとかえって症状を悪化させる可能性もあります。

ここでは、市販薬を選ぶ前に知っておきたいポイントを解説します。

脱毛の原因の見極め

円形脱毛症は自己免疫やストレス、頭皮環境の悪化など、複数の要因によって引き起こされます。原因によっては市販薬よりも専門的な治療が必要になるケースがあります。

まずは自分の脱毛がどのような原因によるものなのか、ある程度情報を集めると役立ちます。

円形脱毛症とその他の脱毛症を混同しないための比較

脱毛症の種類主な特徴市販薬でのセルフケア
円形脱毛症円形・楕円形に抜ける塗り薬やスプレーでのケアが多い
AGA(男性型)生え際や頭頂部から徐々に進行育毛トニックや内服薬など
女性型脱毛症分け目が広がる、全体的に髪が薄くなる育毛シャンプーや育毛剤など
けん引性脱毛髪を強く結ぶなど物理的なストレスが原因ヘアスタイルの変更など生活面調整

円形脱毛症かどうか判断しにくいときは、放置せずに医療機関を受診すると安心です。

定期的な頭皮チェックと記録

市販薬でセルフケアを続ける場合は、定期的に頭皮や脱毛部位の状態をチェックして変化を記録すると改善具合を把握しやすくなります。

脱毛部位の大きさや脱毛範囲の増減をメモしたり、スマートフォンで写真を撮ったりすると客観的に状態を比較できます。

  • 週に1度程度、照明の下で頭皮をチェック
  • 脱毛部位の大きさを指標にしながら記録
  • 変化が出ている場合は薬の使い方を見直す

頭皮写真を時系列で並べると変化がわかりやすく、セルフケアの効果を評価する手がかりになります。

自己流の医薬品併用を避ける

市販薬同士を組み合わせると、作用が重なって頭皮に刺激を与えすぎる場合があります。特にステロイド外用薬と育毛剤を同時に使うなど、自分なりの判断で併用すると炎症やかぶれを引き起こすリスクが高まります。

複数の市販薬を使いたい場合は、薬剤師や医師に相談したほうが安心です。

改善が見られないときの対応

セルフケアを始めて数週間から数カ月たっても改善が見られない、あるいは脱毛が広がる場合は、専門医に相談することを検討してください。

円形脱毛症の背景には、医師による診断が必要な自己免疫の問題などが含まれることがあります。無理にセルフケアを継続してもメリットを得られない可能性があるので、慎重に判断することが重要です。

円形脱毛症に使われる市販の塗り薬の種類

円形脱毛症に対する市販薬の中には、頭皮に直接塗布できるタイプが存在します。頭皮環境を整えたり、血行を促進したりするものなど複数の種類があります。

ステロイド外用薬

市販のステロイド外用薬は、かゆみや炎症を抑えるために処方なしで購入できるものがあります。強度によっては医療用医薬品となるため、ドラッグストアで手に入るものは比較的弱めのステロイドが多いです。

誤った使い方や長期連用で皮膚が薄くなったり、色素沈着が起こったりする可能性があるため、注意深い使用が求められます。

ステロイド外用薬の一般的な強さ分類

強さの段階使用されることが多い部位
強力関節部位、皮膚が厚い部分
中程度体幹部や四肢、頭皮
弱め顔・首周りやデリケートゾーン

市販のステロイド外用薬は弱めの部類に入ることが多く、強力なタイプは医師の診断が必要です。

血行促進成分配合の塗り薬

頭皮の血流を高める成分を含む塗り薬は、脱毛部位の毛母細胞へ栄養を届けやすくすることを狙いとしています。

代表的な成分としては、ビタミンE誘導体やトウガラシ成分などが挙げられます。ただし、刺激が強いため頭皮が敏感になっている場合は、かえって炎症を起こすリスクもあります。

使う前にはパッチテストを行い、肌に合うか確認すると安心です。

育毛剤タイプの塗り薬

育毛剤は発毛効果というよりは、頭皮環境を整えることを目的とする商品が多いです。女性でも使いやすい商品もありますが、円形脱毛症には直接的な免疫調整効果を期待しにくいため、あくまで頭皮ケアとして活用する考えが必要です。

一部には男性型脱毛症(AGA)に主に使うミノキシジルを含む商品もありますが、円形脱毛症での有効性は個人差が大きいです。

抗炎症成分を含む製品

頭皮の炎症を抑える目的で、非ステロイド系の抗炎症成分を含む塗り薬も市販されています。かゆみを和らげたり、頭皮の赤みを軽減したりする効果を狙います。

ステロイドを避けたい方の選択肢になりますが、効果が穏やかな場合が多く重度の炎症には向かないことがあります。

市販の塗り薬を使ったセルフケアの方法

円形脱毛症向けの塗り薬を使用する場合は、正しい使い方と頭皮環境を整える補助的なケアが重要です。やみくもに塗布するだけでは効果を十分に得られないことがあります。

1日の使用回数と使用期間の目安

市販の塗り薬によって使用回数や使用期間は異なるため、商品に記載されている用法用量を厳守してください。短期間で集中的に使う場合もあれば、数カ月単位で継続的に使うタイプもあります。

使用期間を守らずに過剰に使うと、頭皮の負担が増える場合があります。特にステロイド系の外用薬は、長期連用による副作用に注意が必要です。

市販薬を使うときのポイント

  • パッケージ記載の用法を確認する
  • 指定された回数を超えない
  • 使用期間が長期に及ぶ場合は定期的に頭皮状態を確認
  • 違和感や副作用を感じたら中断して医療機関へ相談

このように使い始める前にポイントを整理すると、トラブルを防ぎやすくなります。

頭皮の清潔を保つ

塗り薬を塗布する前には、頭皮を清潔にしておくことが欠かせません。シャンプーやコンディショナーのすすぎ残しがあると、塗り薬が頭皮までしっかり浸透しない可能性があります。

シャンプー後はしっかりと髪と頭皮を乾かし、皮膚を清潔にした状態で塗布します。湿った状態だと薬剤が広がりすぎて濃度が薄まる恐れもあります。

マッサージとの併用

塗り薬を塗布する際は、指の腹を使ってやさしく頭皮をマッサージすると血行を促しながら薬剤を馴染ませやすくなります。強くこすりすぎると頭皮を傷つけて炎症を起こしやすくなるため、力加減には気をつけてください。

1回あたり1分程度、痛みを感じない程度の圧で行うとよいでしょう。

頭皮マッサージの方法

マッサージ手順内容
頭頂部円を描くように軽く押しながら回す
側頭部耳の上あたりを指の腹でゆっくりと押す
後頭部首の付け根から上に向かって持ち上げるようにマッサージする
全体最後に頭全体を均一にほぐし、血行促進を意識する

短い時間でも継続して行うと、頭皮への負担が減って薬剤を活用しやすくなります。

ヘアスタイリング剤との併用

市販の塗り薬と整髪料を併用するときは、まず塗り薬を塗布してしばらくなじませてから整髪料を使うと、頭皮に余計な負担をかけにくくなります。整髪料が先だと、薬剤が頭皮まで届かない場合があります。

ヘアワックスなど油分が多いものは毛穴を詰まらせやすいので、洗い流すタイミングを適切にし、頭皮を不衛生な状態にしない工夫が必要です。

塗り薬以外の市販薬やケア方法

円形脱毛症に対しては、塗り薬以外にもいくつか市販薬やケア方法があります。症状の進行度や体質に合わせて上手に組み合わせると、頭皮環境をより整えやすくなります。

内服タイプのサプリメント

髪の健康維持にはタンパク質やビタミン、ミネラルが大切です。市販のサプリメントには亜鉛や鉄分、ビタミンB群などを配合したものがあり、髪と頭皮の栄養補給をサポートする役割を担います。

ただし、過剰摂取は体調不良や栄養バランスの乱れを招くため、推奨摂取量を守って継続する姿勢が重要です。

髪の健康を考える栄養素と役割

栄養素役割
亜鉛毛髪や爪の成長を促すタンパク質合成を助ける
ビタミンB群細胞分裂やエネルギー代謝をサポート
鉄分酸素の運搬にかかわり、血行を保ちやすくする
タンパク質髪を構成するケラチンの原料になる

サプリはあくまで補助的な位置づけと捉え、栄養バランスの良い食事と並行して取り入れることが望ましいです。

シャンプーやコンディショナーの選び方

脱毛部位をケアするには、頭皮全体の環境を整えることが大切です。シャンプーやコンディショナーのなかには、アミノ酸系の洗浄成分を採用したものや、保湿成分を強化したものなど頭皮のうるおいを損なわない設計の商品があります。

石油系界面活性剤を多用した刺激の強いシャンプーは、頭皮トラブルを招く可能性があるため注意が必要です。

  • アミノ酸系洗浄成分を選ぶ
  • シリコンの有無をチェックして好みで選択
  • 洗浄力が強すぎないか確かめる
  • 保湿や育毛成分配合も視野に入れる

このような視点で商品を選ぶと頭皮トラブルを回避しやすくなります。

スプレータイプの育毛剤

スプレータイプの育毛剤は広範囲に噴霧しやすく、手軽に頭皮全体をケアするのに適しています。ミノキシジル配合の商品や、血行促進成分を含むものなどバリエーションが豊富です。

ただし、円形脱毛症に対しては個人差が大きいので、大きな改善を期待する場合は専門の治療と併用することも検討してください。

生活習慣の改善

市販薬での対処と併せて、生活習慣を見直すと脱毛の進行を抑えやすくなります。十分な睡眠と栄養バランスのとれた食事、ストレケアなどが頭髪の健康には欠かせません。

過度の飲酒や喫煙は血行不良を引き起こし、毛母細胞に十分な栄養が行き渡りにくくなるので、改善の障害になりやすいです。

こんなときはクリニック受診を検討する

市販薬によるセルフケアは一定の効果が得られる場合もありますが、以下のような状況では早めに医療機関を受診することを検討しましょう。

脱毛範囲の拡大が著しい

単発の円形脱毛症が多発型に移行したり、脱毛範囲が急速に広がっている場合は、強力な外用薬や内服薬、注射など専門的な治療が必要になることがあります。

市販薬だけでは追いつかないケースもあるため、医療機関に相談したほうが安心です。

受診を検討する目安

状況対処の目安
脱毛範囲が5円玉程度から拡大市販薬を継続しつつ受診を検討
複数個所に脱毛部位が生じ始めた早期に専門医の診察を受ける
全頭にわたって薄くなり始めた即受診し、原因を詳細に確認

自己判断で対応を続けると治療のタイミングを逃し、回復に時間を要する恐れがあります。

かゆみや痛みなどの頭皮トラブルがひどい

頭皮が強くかゆんだり痛みを伴う場合、単純な円形脱毛症ではなく別の皮膚疾患が起きている可能性もあります。

外用薬では対処しきれない可能性があるため、早めの診察が望ましいです。

円形脱毛症を繰り返している

一度治ったと思っても、短期間で再発や多発を繰り返す場合は、自己免疫疾患など根底にある問題を精査する必要があるかもしれません。

専門医が血液検査などを含めた詳しい検査を行うことで、適切な治療方針を立てやすくなります。

心理的負担が強い

脱毛が見た目に大きな影響を与えると、自信を失いやすくなります。メンタル面の負担が大きい状態では、ストレスが増え、さらに症状が悪化する悪循環が生じる可能性があります。

精神的にもサポートを受けられるよう、医療機関で相談するとよいでしょう。

参考文献

LEE, Hemin, et al. Treatment patterns for alopecia areata in the US. JAMA dermatology, 2023, 159.11: 1253-1257.

NICOLAE, D. O. N. E., et al. Real-world treatment patterns among patients with alopecia areata in the usa: a retrospective claims analysis. Acta dermato-venereologica, 2023, 103: 12445.

SENNA, Maryanne, et al. Alopecia areata treatment patterns, healthcare resource utilization, and comorbidities in the US population using insurance claims. Advances in therapy, 2021, 38: 4646-4658.

GARG, Seema; MESSENGER, Andrew G. Alopecia areata: evidence-based treatments. In: Seminars in cutaneous medicine and surgery. No longer published by Elsevier, 2009. p. 15-18.

SARDESAI, Vidyadhar R.; PRASAD, Smita; AGARWAL, Trupti D. A study to evaluate the efficacy of various topical treatment modalities for alopecia areata. International journal of trichology, 2012, 4.4: 265-270.

RATTANANUKROM, Teerapong; SUCHONWANIT, Poonkiat. Are drug treatment strategies really effective against alopecia areata?. Expert Opinion on Pharmacotherapy, 2021, 22.3: 257-260.

FUKUMOTO, Takeshi, et al. Treatments for alopecia areata: a systematic review and network meta‐analysis. Dermatologic Therapy, 2021, 34.3: e14916.

MEAH, Nekma, et al. The Alopecia Areata Consensus of Experts (ACE) study: Results of an international expert opinion on treatments for alopecia areata. Journal of the American Academy of Dermatology, 2020, 83.1: 123-130.