円形脱毛症は、ある日突然、頭髪の一部が円形に近い形で抜け落ちることが大きな特徴です。本人の意識とは無関係に進行する場合があり、仕事や学校などの日常生活へ影響を及ぼすこともあります。

さらに、円形脱毛症には複数の種類が存在し、抜け方や経過が異なることも知られています。

この記事では、円形脱毛症の基礎知識から診断、他の脱毛症との違い、そして日常生活で気をつけたいポイントまでを詳しく解説いたします。

目次

円形脱毛症とは

円形脱毛症は、頭髪が円形や楕円形の範囲で抜ける脱毛症です。突然目立つ範囲の髪が抜け落ちるため、本人はもちろん周囲の人も気づきやすくなります。

精神的なストレスと関連するイメージが強い一方で、実際には自己免疫の関与も指摘されており、多面的に捉える必要があります。

円形脱毛症とは?

円形脱毛症とは、自己免疫機能や遺伝的背景など、複数の要因が重なって頭部の特定部分の毛根が障害を受け、髪が抜ける状態を指します。

円形脱毛症の中には単発性のものから多発性のもの、さらには頭全体の髪が抜ける全頭型など、さまざまなパターンが存在します。

円形脱毛症が疑われるケース

  • 急に頭髪の一部が、丸く地肌が見えるほど抜けてしまった
  • 抜け毛の部分がなかなか生え揃わない
  • 頭だけでなく眉毛やまつ毛にも脱毛が広がる
  • 以前にも同じような脱毛の経験がある

これらのケースに心当たりがある場合は、円形脱毛症の可能性があります。早めに医療機関を受診することが大切です。

年齢や性別との関係

円形脱毛症は年齢や性別を問わず発症する可能性があります。

子どもの頃に発症し、大人になってからも再発を繰り返すケースや、高齢になってから突然発症するケースも見受けられます。

性別に関しても男性・女性どちらも起こり得ますが、女性は髪の毛が長い場合などに抜け毛が目立ちやすく、精神的負担が大きくなる傾向があります。

日常生活への影響

脱毛部分を常に意識しなければならないため、外出や人前に立つ場面で心理的負担を感じることがあります。

帽子やウィッグを使うなど工夫して髪を隠す場合もあり、そのために普段と異なる生活スタイルを求められるケースもあります。

本人が抱えるストレスが新たな脱毛を誘発する悪循環に陥ることもあるため、メンタルケアや家族のサポートが重要です。

円形脱毛症が及ぼす主な心理的影響

心理的負担の例具体的な状況
自信の喪失見た目への変化により外出や人前での発言をためらう
ストレスの増加「治るのか」「さらに広がるのか」など先行きが見えず不安になる
社会生活への影響職場や学校での人間関係がギクシャクし、行動が制限されることがある

円形脱毛症の主な症状

円形脱毛症 症状として挙げられるのは、主に頭髪が部分的に抜けることです。

しかし、抜け方や頭皮の状態などには特徴があるため、ここでは主な症状について整理します。

脱毛が起こる部分と広がり方

単発の脱毛なら小さな円形部分だけで収まることもありますが、場合によっては複数の脱毛斑が拡大し、隣接して広がることもあります。

さらに、全頭の髪が抜けてしまう全頭型や、体毛を含めてあらゆる毛が抜け落ちる汎発型に至る症例も存在します。

進行の速さと個人差

円形脱毛症は突然髪が抜け始めるケースが多く、進行の仕方には大きな個人差があります。

数日から数週間で目立つサイズの脱毛班ができあがることもあれば、長期間かけて少しずつ進行していくこともあります。

早期に発見して適切な対策を取ることで、拡大を抑えたり発毛を促したりしやすくなります。

円形脱毛症の進行に関する特徴

  • 初期は頭皮に痒みや痛みを感じる人はそれほど多くない
  • 髪の抜け方が円形や楕円形であることが多い
  • 時期によっては、抜けた周辺がうぶ毛のような細い毛で覆われ始める
  • 成長途中の毛が再び抜ける場合もあり、回復の道のりには波がある

頭皮の状態や触感

脱毛した部分の頭皮は比較的なめらかで、炎症などが見られない場合も多いです。

ただし、毛包が何らかの影響を受けているときは赤みを帯びるなど、軽い炎症の兆候が出る場合もあります。

併発しやすい症状

自己免疫の異常が関係していると、円形脱毛症だけでなくアトピー性皮膚炎などを併発しているケースがあります。

また、ストレスが増大した結果として、睡眠不足や不安障害が強まることもあるため、体全体のコンディションを整えることが欠かせません。

円形脱毛症と併発する可能性のある主な症状

症状例関連する背景
アトピー性皮膚炎自己免疫機能やアレルギー体質との関連が指摘される
甲状腺機能異常免疫システムのバランス崩壊が影響すると考えられる
自律神経の乱れ強いストレスや生活習慣の乱れによって悪化する

円形脱毛症の種類と特徴

円形脱毛症にはいくつかのタイプがあり、それぞれの抜け方や進行度、治りやすさに差があります。医療機関で治療を進める際は、自分がどのタイプに該当するかを把握しておくと対応しやすくなります。

単発型

頭髪の一部分だけに円形脱毛が認められる状態を指します。

一般的に最も多く見られるタイプで、脱毛班は1つだけの場合が多いです。比較的、自然治癒する可能性が高いといわれています。

多発型

単発型が複数同時に現れたり、時間差で次々と脱毛班が増えたりする状態です。

単発型よりも進行が早い場合があり、部位によっては複数の脱毛班が隣り合って大きな面積に拡大するケースもあります。

多発型の特徴

  • 複数の脱毛班が同時または時差をもって生じる
  • 頭皮のいろいろな部位に散在し、鏡で確認しづらい場合もある
  • 部分によっては治りかけても、別の場所で新たに脱毛が始まることがある
  • 放置すると範囲が拡大しやすい傾向がある

全頭型

頭全体の髪が抜けてしまうタイプです。多発型が進行して全頭型に至るケースもあれば、比較的短期間のうちに頭全体へ急速に広がる場合もあります。

全頭型まで進行すると日常生活に大きな心理的負担を感じやすくなります。

汎発型

頭部だけではなく、まつ毛や眉毛、体毛など体のあらゆる毛が抜けてしまうタイプです。

円形脱毛症の中でも重症とされ、治療期間や回復までの過程が長引くことがあります。

円形脱毛症の主なタイプと特徴

タイプ抜け方特徴
単発型頭髪の1部のみ自然治癒の可能性が比較的高い
多発型複数の脱毛斑が点在する放置すると範囲拡大のリスクが上がる
全頭型頭全体の髪が抜ける身体的・心理的負担が大きくなる
汎発型頭髪から体毛まで全て抜ける長期にわたるケアが必要となる可能性がある

円形脱毛症が起こる原因の考え方

円形脱毛症の原因をひと言で断定するのは難しく、自己免疫異常、遺伝、ストレス、ホルモンバランスなどのさまざまな要因が影響し合うと考えられています。

自己免疫異常

本来であれば外敵から身を守る免疫システムが、誤って自分の毛根を攻撃するのではないかという説があります。

自己免疫系のトラブルにより、毛包が正常に機能しなくなると脱毛が進む可能性があります。

ストレスとの関連

精神的なストレスは円形脱毛症の引き金になる可能性が高いといわれています。

ただし、ストレスだけが原因ではなく、他の要因と組み合わさることで症状が顕在化しやすくなるとも考えられています。

ストレスと円形脱毛症の関連性

観点内容
急性ストレス事故や災害、身近な人の死など突然の強いストレスによって発症しやすくなる
慢性ストレス過重労働や対人関係のトラブルが長く続くと、症状が出やすくなる
精神的ダメージ脱毛そのものがコンプレックスになり、悪循環につながる場合がある

遺伝的要素

家族に円形脱毛症の既往があると、発症リスクがやや高まるとの報告があります。

しかし、遺伝的要素があっても必ず発症するわけではなく、その他の環境要因や免疫の状態によって左右される部分が大きいです。

円形脱毛症に影響を与える可能性のある環境要因

  • 栄養バランスの偏り
  • 睡眠不足や不規則な生活
  • 過度なダイエットによる体調不良
  • 生活習慣病やほかの持病の影響

ホルモンバランスの乱れ

女性の場合、妊娠や出産、更年期などのホルモンバランス変化が、円形脱毛症の症状を強めるきっかけになることがあります。

男性もストレスや加齢によりホルモン分泌のリズムが乱れると、毛の成長サイクルに影響が及ぶケースがあります。

円形脱毛症の診断方法と検査

円形脱毛症を正しく診断するには、医療機関での受診が重要です。問診と視診をベースに、必要に応じて各種検査を行い、他の脱毛症との鑑別を進めます。

問診・視診

医師が脱毛斑の形状や分布、頭皮の状態を視診し、ストレスや生活習慣の有無、家族歴などを問診します。

ここで円形脱毛症が強く疑われる場合は、治療方針を決定するために追加検査に進みます。

血液検査

甲状腺機能や自己免疫疾患の有無をチェックするために血液検査を行う場合があります。

特に自己免疫疾患が疑われる際には詳細な血液検査が必要になるときもあります。

診断時に考慮される主な検査項目

検査項目主な目的
甲状腺機能検査甲状腺ホルモンの異常による脱毛の可能性を排除または確認
自己抗体検査自己免疫疾患の関与を確かめる
血液一般検査栄養状態や炎症反応の確認

皮膚生検

頭皮のごく一部を採取し、顕微鏡で毛包や皮膚組織の状態を確認する検査です。

侵襲的であるため、すべてのケースで行われるわけではありませんが、診断が難しい場合に実施されることがあります。

他の脱毛症との鑑別

AGA(男性型脱毛症)や女性のびまん性脱毛症など、ほかの脱毛症と混同されないよう注意が必要です。

毛髪の抜け方や進行パターンが異なるため、視診や問診でおおよその見当がつくことが多いですが、必要に応じて頭皮写真の比較などを行って総合的に判断します。

他の脱毛症との違い

  • AGA:生え際や頭頂部から徐々に進行していく
  • 女性のびまん性脱毛症:頭頂部のボリュームが全体的に減る
  • 円形脱毛症:境界がはっきりした円形や楕円形の脱毛斑が出現する

AGAや薄毛との関連と見分け方

円形脱毛症とAGA(男性型脱毛症)、その他の薄毛は、同じ「脱毛」という点では共通点がありますが、原因や特徴が異なります。間違えないように見分けることが大切です。

AGAの特徴

AGAは男性ホルモンの影響を受けて、前頭部や頭頂部から徐々に髪が薄くなっていくのが特徴です。

進行が緩やかな一方で、自然に目立たなくなることはほとんどなく、対策を取らないと確実に進行していく傾向があります。

円形脱毛症とAGAを見分けるときのポイント

  • 円形脱毛症は境界のはっきりした脱毛斑ができやすい
  • AGAは髪の生え際やつむじ周辺の毛が全体的に細くなる
  • 円形脱毛症はストレスや自己免疫との関連が深く、AGAはホルモン影響が大きい

円形脱毛症とAGAの比較

項目円形脱毛症AGA(男性型脱毛症)
脱毛パターン円形または楕円形に抜けることが多い前頭部・頭頂部中心に徐々に薄毛が進行
原因の代表例自己免疫・ストレス男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)
発症年齢幅広い年齢層で発症思春期以降に多い
治療のアプローチ免疫抑制療法や外用薬ホルモン抑制薬や育毛剤、生活習慣改善

AGA治療と薄毛治療

円形脱毛症の治療をきっかけに頭皮全体の状態を見直して、AGA治療や薄毛対策へ関心をもつ人も少なくありません。

特に男性であれば、円形脱毛症が落ち着いた後に前髪や頭頂部の薄毛が気になり、AGAのケアを並行して検討するケースがあります。

女性の薄毛との混同

女性の薄毛はびまん性に髪全体が薄くなるのが特徴です。

円形脱毛症のように特定の部分だけがはっきり抜けるわけではないため、見分けがつきやすい反面、中には部分的な進行がゆるやかに進むものもあるため、専門家の診断を受けることが大切です。

薄毛で悩む女性が確認したいこと

  • 抜け毛の増加数や髪質の変化
  • 産後や更年期などホルモンバランスの乱れ
  • 頭皮環境の悪化(フケやかゆみ)
  • 育毛剤や生活習慣改善の効果の有無

円形脱毛症に対する初期対策

円形脱毛症と診断されても、適切な対応を取れば回復を期待できるケースが多々あります。早い段階での対策が重要です。

生活習慣の見直し

ストレス軽減や栄養バランスの整備は、自己免疫の乱れを落ち着かせる可能性を高めるために大切です。

規則正しい睡眠や適度な運動、栄養バランスのとれた食事を心がけることで、改善に向かう可能性があります。

円形脱毛症初期に意識したい生活習慣

生活習慣ポイント
食事タンパク質・ビタミン・ミネラルをしっかり摂取
睡眠毎日同じ時間帯に就寝し、質の良い睡眠を確保
運動適度な有酸素運動やストレッチで血行を促進
ストレスケア読書や音楽鑑賞、趣味などでリラックスを意識

医師の指導による外用薬・内服薬

炎症を抑えるための外用ステロイドや免疫を調整する内服薬など、医療機関では症状の段階に応じた薬物療法を検討します。

ただし、薬物療法の効果には個人差があるため、医師と相談しながら進めることが重要です。

物理的ケアと頭皮環境の保護

脱毛部分をウィッグや帽子でカバーする場合、ムレやかぶれを起こさないよう頭皮の清潔を保つ必要があります。

洗髪時には刺激の少ないシャンプーを使い、トリートメントなどで保湿を十分に行うと安心です。

頭皮環境を健やかに保つコツ

  • 熱いお湯よりもややぬるめの温度で洗髪する
  • 指の腹でマッサージしながら洗い、爪を立てない
  • シャンプー剤はしっかりすすぐ
  • ドライヤーは頭皮に直接熱風を当てないように注意

心理的サポート

円形脱毛症は精神的な負担が大きくなりがちです。家族や友人に相談するだけでなく、心療内科やカウンセリングを利用する選択も視野に入れるとよいでしょう。

心理的なストレスを和らげることが、症状の改善を促す一助になる場合があります。

日常生活で気をつけたいポイントと受診の必要性

円形脱毛症の改善や再発予防には、日常生活のケアが欠かせません。また、受診を迷うケースもありますが、適切なタイミングで医療機関を受診することが回復に大きく影響します。

ストレス管理

趣味やリラクゼーション、運動を取り入れるなど、自分に合った方法でストレスを軽減する工夫が必要です。

仕事や家庭で溜まったストレスを小まめに発散することで、免疫システムの不調を和らげられる可能性があります。

ストレス軽減につながる習慣

  • 深呼吸や簡単なヨガ、瞑想を取り入れる
  • 音楽やアロマなどのリラクゼーションを活用する
  • 疲労がたまったら意識して休息をとる
  • 可能なら時々旅行や遠出をして気分転換を図る

定期的な頭皮チェック

入浴後のタオルドライや洗髪時に抜け毛の量や頭皮の状態を観察すると、小さな変化にも気づきやすくなります。

日頃から鏡や手鏡を使って頭頂部や後頭部も確認し、異変を感じたら早めに医師に相談することを心がけてください。

頭皮チェックで意識したいポイント

チェック項目確認内容
抜け毛の本数一時的な増減はあるが、明らかに多い場合は注意
抜け毛の根本短い毛が多いか、毛根に異常があるかなど
頭皮の色合い赤みや炎症、フケや皮脂の過剰分泌がないか
うぶ毛の生え方円形脱毛症の回復兆候として細い毛が生えてきていないか

受診のタイミング

円形脱毛症は放置しても自然に治るケースがありますが、再発を繰り返したり広範囲にわたる脱毛が見られたりする場合には、できるだけ早い受診が望ましいです。

自己判断で市販薬を使い続けても改善しない場合は、クリニックで専門的な見立てを受けましょう。

AGAや薄毛との併発を疑う場合

円形脱毛症がある状態で、生え際や頭頂部の髪も徐々に細くなり始めた場合は、AGAやほかの薄毛が併発している可能性があります。

この場合、円形脱毛症だけでなく、男性ホルモンの影響を考慮した治療や生活習慣の改善が必要になることもあります。

受診を考える目安

状況受診を検討する目安
円形脱毛症の脱毛範囲が拡大している数週間〜1か月経っても脱毛範囲が拡大し続ける場合
何度も再発を繰り返している年に何度も同じような脱毛班が生じる場合
AGAや薄毛を併発している恐れがある円形部分以外でも髪が細くなり、頭皮の透けが目立つ場合
精神的な負担が大きく日常生活に支障不安やストレスが強くなり、眠れない、外出がつらい等

円形脱毛症は単なる「一時的な抜け毛」ではなく、免疫やホルモン、ストレスなど多角的な要因が絡み合う病態です。

ストレスや生活習慣の改善だけでなく、必要に応じて医療機関での治療を受けることで、円形脱毛症が改善する可能性は十分にあります。

また、円形脱毛症をきっかけとしてAGAなどほかの薄毛リスクに気づくこともあるため、早めの受診と専門家の意見を取り入れることが、より健やかな頭髪を保つうえで重要です。

参考文献

PRATT, C. Herbert, et al. Alopecia areata. Nature reviews Disease primers, 2017, 3.1: 1-17.

HORDINSKY, Maria K. Overview of alopecia areata. In: Journal of Investigative Dermatology Symposium Proceedings. Elsevier, 2013. p. S13-S15.

HARRIES, M. J., et al. Management of alopecia areata. Bmj, 2010, 341.

RAJABI, F., et al. Alopecia areata: a review of disease pathogenesis. British Journal of Dermatology, 2018, 179.5: 1033-1048.

WHITING, David A. Histopathologic features of alopecia areata: a new look. Archives of dermatology, 2003, 139.12: 1555-1559.

TRÜEB, Ralph M.; DIAS, Maria Fernanda Reis Gavazzoni. Alopecia areata: a comprehensive review of pathogenesis and management. Clinical reviews in allergy & immunology, 2018, 54: 68-87.