シャンプーが抜け毛にどのような影響を与えているのでしょうか。とくにシャンプーを変えたあとに抜け毛が増えたように感じるとき、何が原因なのかを疑問に思う方が多いです。
髪と頭皮の健康には適切なシャンプー選びや洗い方が重要ですが、生活習慣やストレスなど複数の要素も関わります。
本記事では、抜け毛が増えたと感じる理由や改善策を具体的に解説し、さらにAGA(男性型脱毛症)などの治療についてもまとめます。
抜け毛が増えたと感じるときの背景
抜け毛の量が突然増えたように見えるとき、シャンプーそのものだけが原因ではないかもしれません。
髪は常に生え変わるサイクルをもっていますが、生活習慣の乱れやストレス、ホルモンバランスの変化などさまざまな要因が複雑に絡み合います。
抜け毛のメカニズム
髪は成長期・退行期・休止期というサイクルを経て自然に抜け落ち、新しい髪に生え変わります。通常は1日に50~100本程度抜けるといわれます。
しかし、髪の成長期が短くなったり、頭皮環境が悪化したりすると、抜け落ちる量やタイミングが変わり、一時的に抜け毛が多く見えるケースがあります。
髪と頭皮の状態を左右する代表的な要素
要素 | 髪や頭皮への影響 |
---|---|
ホルモンバランス | 男性ホルモンや女性ホルモンの働きが乱れると、髪の成長サイクルに変化を及ぼす |
栄養状態 | タンパク質やビタミン、ミネラル不足で髪のハリ・コシが弱くなる |
血行不良 | 頭皮への血流が滞ると栄養が行き届きにくく、髪の成長が鈍くなる |
ストレス | 自律神経やホルモンのバランスを崩し、髪の生え変わりのリズムが乱れる |
生活習慣 | 不規則な睡眠や喫煙・飲酒などで髪の成長に必要な環境を妨げる |
シャンプーの役割
シャンプーは頭皮や髪についた汚れを洗い流すと同時に、頭皮環境を整える役割をもっています。
洗い方や選ぶ製品によっては、頭皮の皮脂を必要以上に落として乾燥を招き、結果的に髪が弱って抜け毛が増えたように見えるケースもあるでしょう。
また、洗浄力が強すぎる製品を使うと頭皮トラブルを引き起こし、かゆみや炎症などを通して抜け毛につながる可能性があります。
髪と頭皮のサイクル
髪の成長サイクルは個人差がありますが、大まかには以下のように進みます。
成長期は髪が太く長く伸び続ける期間で、この期間が十分に確保できなければ毛が細くなって早く抜けてしまいます。
サイクル名 | 期間の目安 | 主な状態 |
---|---|---|
成長期 | 2~6年程度 | 毛母細胞が活発に分裂して髪が長く伸びていく |
退行期 | 約2~3週間 | 毛母細胞の活動が落ち着き始め、髪が伸びにくくなる |
休止期 | 約3~4カ月 | 髪の成長が止まり、やがて抜け落ちる |
精神的ストレスとの関係
精神的なストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、血行不良を起こしやすくします。頭皮の血流が悪くなると毛根への栄養が行き届かなくなり、抜け毛につながる場合があります。
ストレスによって睡眠の質も落ちると、髪の成長に影響が及ぶ場合があるため注意が必要です。
シャンプーが抜け毛を引き起こす可能性とは
シャンプーで抜け毛が増えたと感じる場合、実際には複数の要素が絡んでいることが多いです。その中でシャンプーに含まれる成分や洗髪時の洗い方が関わっているケースが少なくありません。
刺激が強い成分の影響
シャンプーの洗浄成分の種類によっては、頭皮のうるおいまで奪ってしまい、結果的に頭皮や毛根を弱らせる場合があります。
とくに石油系界面活性剤などは洗浄力が高い一方で、頭皮のバリア機能を乱すときもあります。
シャンプー選びで重視したい成分の特徴
成分の種類 | 特徴 |
---|---|
アミノ酸系界面活性剤 | 比較的マイルドな洗浄力で頭皮にやさしい傾向がある |
石油系界面活性剤 | 洗浄力が高いが頭皮の油分を取りすぎて乾燥や刺激を感じやすくなることがある |
植物由来界面活性剤 | ナチュラル志向の製品に使われることが多く、頭皮への負担が小さい場合がある |
洗髪時の摩擦ダメージ
髪が水に濡れている状態ではキューティクルが開きやすく、物理的なダメージを受けやすくなります。シャワーを強く当てる、爪を立ててゴシゴシ洗うなどの行為が加わると、抜け毛につながりやすくなります。
頭皮を強くこすりすぎると、余計な皮脂を取り除くだけでなく頭皮にも小さな傷をつくってしまう可能性があります。
シャンプーのすすぎ残し
シャンプーやコンディショナーを十分にすすがないと、頭皮や髪に成分が残ってトラブルを引き起こす場合があります。
すすぎ残しが原因のかゆみや炎症が続くと髪が抜けるリスクが高まりますので、洗うとき以上にしっかりすすぐことが大切です。
シャンプー後のすすぎの目安
洗い時間 | 推奨目安 |
---|---|
プレ洗い | 1分以上 |
シャンプー後のすすぎ | 2~3分以上を目安に、頭皮を中心に丁寧に流す |
コンディショナー後のすすぎ | コンディショナーが髪にやや残る程度でOK。ただし頭皮につかないように注意 |
自己流ケアによるトラブル
髪の悩みを抱えている方の中には、自己流でさまざまなシャンプーを試してみたり、インターネットの情報だけを参考に過度なケアを行ったりするケースがあります。
個人の髪質や頭皮の状態には差があるため、合わないケアがかえって抜け毛を増やす結果になっている方も見受けられます。
抜け毛を増やさないために見直したいポイント
抜け毛が増えたように感じるときは、まずは日々のケアを見直すことが大切です。自分の頭皮状態や髪質に合ったシャンプーや洗い方を意識し、トラブルを回避しましょう。
正しい洗髪方法
洗髪で重要なのは「プレ洗い→シャンプー→すすぎ→コンディショナー→すすぎ」という流れを丁寧に行うことです。
髪が摩擦を受けにくいように、ぬるめのお湯で優しく洗ってください。爪を立てて洗うのではなく、指の腹でマッサージするように洗うのが望ましいです。
洗髪前後で気をつけたい流れ
- ブラッシングでほこりや髪のもつれを解消する
- シャンプーは泡立ててから頭皮に乗せる
- お湯の温度は38℃前後を目安にする
- タオルドライでこすりすぎないように注意する
シャンプーの選び方
シャンプーは洗浄力・保湿成分・肌への刺激などを総合的に考えて選ぶとよいでしょう。
乾燥気味の頭皮にはうるおいを保つ成分を多く含むシャンプー、脂性傾向が強い場合には余分な皮脂をさっぱり洗い流せるシャンプーが合いやすいです。
シャンプー選択時に比較したいポイント
項目 | 乾燥頭皮向け | 脂性頭皮向け |
---|---|---|
洗浄力 | マイルド | やや強め |
保湿成分 | ヒアルロン酸やセラミドなどを配合している | 必要最小限の保湿成分を配合 |
香りや添加物 | 刺激の少ないタイプを選びやすい | 清涼感のあるタイプが好まれる傾向 |
洗浄力と頭皮への負担のバランス
洗いすぎは頭皮の乾燥を招きますし、洗わなさすぎも皮脂や汚れが溜まり、頭皮トラブルを招きます。
頭皮の匂いやベタつきが気になるからと洗浄力の強い製品を使いすぎると、皮脂の分泌が過剰になりかえって髪や頭皮が不安定になりやすいです。
コンディショナーやトリートメントの活用
髪の表面をコーティングし、ダメージから守る効果が期待できます。
ただし、頭皮まで塗布すると毛穴が詰まる恐れがあるため、髪の中間から毛先を中心になじませるのが望ましいです。すすぎ残しのないように注意して使用しましょう。
AGAや薄毛との関係
「シャンプーを変えたら抜け毛が増えた気がする」と感じたとき、実はAGA(男性型脱毛症)が発症の背景にある場合があります。
AGAは男性ホルモンと遺伝的要因が関わって起きる脱毛症で、放置すると進行してしまう方が多いです。
AGAの基本的なしくみ
AGAは、男性ホルモン(テストステロン)がDHT(ジヒドロテストステロン)というホルモンに変換され、毛根に影響を与えて髪の成長期を短くします。
その結果、細く短い髪が増え、抜け毛が増えたように感じます。
項目 | 内容 |
---|---|
原因 | 男性ホルモンの働き、遺伝など |
症状 | 前頭部や頭頂部の毛が薄くなりやすい |
進行の特徴 | 生え際や頭頂部から徐々に進行し、放置すると広範囲に及ぶ |
予防や対策 | 早期のケアやクリニック受診、生活習慣の見直し |
シャンプー選択の重要性
AGAが疑われる場合でも、頭皮環境を整えるためにシャンプーの選択が大切です。刺激の強い成分を避け、頭皮ケアに重点を置いた製品を使うと、抜け毛の進行を緩やかにすることが期待できます。
ただし、シャンプーだけで根本的にAGAを抑制するのは難しいため、医療機関の診断も検討してください。
抜け毛とホルモンの相互作用
AGAのようにホルモンが大きく関係する脱毛症の場合、どれだけ頭皮ケアを行ってもホルモンバランスの乱れが続く限り抜け毛が進むケースもあります。
シャンプーで抜け毛が増えたように見えるときでも、実際にはホルモン要因が強く影響していることも考えられます。
抜け毛の原因を見極める指標
- 生え際や頭頂部だけが薄くなる
- 父や祖父など近親者に同様の脱毛パターンがある
- 抜け毛の本数だけでなく髪のコシや太さが変化する
- 生活習慣を改善しても抜け毛の減少が見られにくい
早期受診を検討すべき兆候
前頭部や頭頂部などの局所的な薄毛が進んでいる、あるいは抜け毛の量が増える一方で髪が細くなっている場合、早めに医師に相談することをおすすめします。
症状の進行度を見ながら適切な治療やケアを選択することが大切です。
生活習慣と食事から考える抜け毛対策
髪や頭皮の健康は、毎日の生活習慣や食事内容にも大きく左右されます。シャンプー選びや洗い方を改善しても、栄養や睡眠が十分でなければ抜け毛に歯止めがかからないケースもあります。
たんぱく質と栄養バランス
髪の主成分はケラチンと呼ばれるたんぱく質です。
肉や魚、大豆製品などから良質なたんぱく質を摂取し、さらにビタミンやミネラルをバランスよく取り入れるようにしましょう。特に亜鉛や鉄分は頭皮や毛根にとっても重要な成分です。
栄養素 | 代表的な食品 | 期待される効果 |
---|---|---|
たんぱく質 | 肉、魚、大豆製品、卵 | 髪を構成する主成分で、ハリ・コシを保ちやすくする |
亜鉛 | 牡蠣、牛肉、ナッツ類 | 毛母細胞の活性化に役立ち、抜け毛予防に寄与する |
鉄分 | レバー、赤身肉、ほうれん草 | 頭皮や髪への酸素供給を高め、健やかな髪の成長を促す |
ビタミンB群 | 豚肉、納豆、胚芽米 | タンパク質の代謝をサポートし、髪の生成を助ける |
ビタミンE | アーモンド、かぼちゃの種 | 血行をサポートして頭皮の状態を安定させる |
睡眠とホルモン分泌
睡眠中には成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生が進みやすくなります。
睡眠不足が続くと髪を育てる過程に影響が出て、抜け毛が増えやすくなる可能性があります。1日あたり6~7時間を目安に質の良い睡眠をとりましょう。
喫煙・飲酒の影響
喫煙は血管を収縮させ、頭皮の血行を悪化させます。飲酒も過度に続くと肝臓に負担がかかり、髪の成長に必要な栄養が行き届かなくなるかもしれません。
やめられない場合でも本数や量を減らす工夫を考えると良いでしょう。
適度な頭皮マッサージ
頭皮をマッサージすると血流が促され、毛根への栄養供給が高まる可能性があります。
ただし、強くこすりすぎると逆効果です。シャンプー前後や就寝前などに、指の腹を使って軽く刺激するのがおすすめです。
簡単に取り入れやすい頭皮マッサージ
- 耳の周囲から頭頂部に向かって指を滑らせる
- 百会(頭頂部中央)を軽い円を描くように刺激する
- 首筋から頭の後ろにかけて指で押し上げるようにほぐす
抜け毛の改善と治療の選択肢
抜け毛対策としてシャンプーの見直しや生活習慣の改善を行った上で、さらに状態が深刻な場合はクリニックでの治療も検討するとよいでしょう。
AGA治療を始めるタイミング
抜け毛が顕著に増えた場合、早めの受診がよい結果につながることが多いです。抜け毛の原因がAGAなのか、それ以外なのかを見極めるためにも、まずは医師の診断を受けることを考えてください。
遺伝的要因やホルモンバランスの乱れがある場合は、生活習慣だけでは改善が難しいケースもあります。
内服薬と外用薬
AGA治療では内服薬(フィナステリド、デュタステリドなど)や外用薬(ミノキシジルなど)が一般的です。
内服薬はホルモンの働きを抑制し、抜け毛の進行を鈍らせることが期待できます。外用薬は頭皮の血行を促し、発毛を助ける役割が中心です。
種類 | 例 | 効果・特徴 |
---|---|---|
内服薬 | フィナステリド | DHTの産生を抑えることで抜け毛を緩和しやすい |
内服薬 | デュタステリド | フィナステリドより広い範囲で男性ホルモンの変換を抑える場合がある |
外用薬 | ミノキシジル | 血管拡張作用により発毛を促進しやすく、男女ともに使用できることが多い |
クリニックでの治療方法
医療機関によっては、内服薬や外用薬に加え、育毛メソセラピーやPRP療法などの治療を行っている場合もあります。
これらは頭皮に直接有効成分を注入したり、自身の血液成分を利用して発毛環境を整えたりする方法です。
施術名 | 特徴 |
---|---|
育毛メソセラピー | カクテル状の有効成分を頭皮に注射し、直接毛根に働きかける |
PRP療法 | 自分の血小板を濃縮して注入し、組織の再生や修復を促す |
HARG治療 | 成長因子やタンパク質を含む溶液を注入し、細胞活性を促す |
医師との相談が大切な理由
抜け毛の原因は個人の体質や生活環境など多岐にわたります。自己流で治療やケアを続けても改善が見られない場合やAGAを疑う症状が出てきた場合は、医師の診断を受けることが大切です。
早期に対策を講じれば、抜け毛の進行を抑えて発毛を促す選択肢が広がるでしょう。
よくある質問
シャンプーや抜け毛、AGA治療に関してよく寄せられる疑問点をまとめました。日頃のケアや治療を考える際の参考にしてみてください。
- Qシャンプーを変えただけで抜け毛は減る?
- A
シャンプーを頭皮状態に合った製品に替えることで、頭皮環境が良くなり抜け毛が減るケースがあります。
ただし、ホルモンバランスや生活習慣、ストレスの影響などが強い場合はシャンプーだけでは効果が限定的なことも多いです。
- Q育毛剤はどのように選ぶ?
- A
育毛剤は頭皮の血流を促進したり、毛根に栄養を与えたりする成分が配合されています。成分表をチェックし、できるだけ頭皮に負担の少ないものを選ぶのがポイントです。
医薬部外品や医薬品として認められた製品を使用すると、一定の効果が期待できるでしょう。
- Qシャンプーの頻度はどのくらいが適切?
- A
一般的には毎日1回が基本ですが、汗をかきやすい人や脂性傾向が強い人は頭皮の状態によって調整してください。
ただし、1日に何度も洗いすぎると皮脂の取りすぎで乾燥が進む場合があるため注意が必要です。
- QAGA治療で完全に回復する?
- A
AGA治療では抜け毛の進行を抑えたり、発毛を促したりする効果が期待できますが、誰でも完全に元通りになるとは限りません。
進行度合いや治療の組み合わせによって結果は異なるため、クリニックでのカウンセリングや診断を受けることが大切です。
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