「最近、抜け毛が増えた気がする」「髪のボリュームが減ってきたかもしれない」と感じていませんか。それはAGA(男性型脱毛症)のサインかもしれません。
AGAは進行性のため、早期の気づきと適切な対応が重要です。
この記事では、ご自身で確認できるAGAの具体的な症状から、今日から始められるセルフチェックの方法、そして専門家である医師に相談する際のポイントまでを詳しく解説します。
ご自身の状態を正しく把握し、未来の髪のために今できることを始めましょう。
AGA(男性型脱毛症)の初期症状 – 見逃しやすい3つのサイン
AGA(男性型脱毛症)は、ある日突然始まるわけではありません。多くの場合、本人も気づかないような些細な変化から始まります。
この初期症状を見逃さずに捉えることが、早期対策への第一歩です。ここでは、特に注意して観察したい3つのサインについて解説します。
これらの変化は、乱れたヘアサイクルが引き起こす薄毛の序章かもしれません。
抜け毛の量だけでなく「質」の変化

AGAの最も分かりやすい初期症状の一つが、抜け毛の変化です。しかし、注目すべきは単に本数が増えることだけではありません。
健康なヘアサイクルでは太く長い髪が寿命を迎えて自然に抜け落ちますが、AGAが始まると、まだ成長途中にある細く短い髪が抜けるようになります。
これは、男性ホルモンの影響で髪の成長期が短縮されることが原因です。枕元や排水溝に、以前は見られなかったような弱々しい抜け毛が増えていないか確認することが大切です。
抜け毛の質で判断するヘアサイクルの乱れ
抜け毛の特徴 | 考えられる状態 | AGAとの関連 |
---|---|---|
太く、長く、毛根がしっかりしている | 正常なヘアサイクルでの自然な脱毛 | 低い |
細く、短く、産毛のよう | ヘアサイクルの成長期が短縮されている可能性 | 高い(初期症状の可能性) |
毛根が小さい、または付着していない | 髪が十分に成長できていない可能性 | 高い |
髪全体のハリ・コシが失われる
「ヘアセットが決まりにくくなった」「髪がペタッとしてボリュームが出ない」といった感覚も、AGAの重要な初期症状です。

これは「軟毛化」と呼ばれる現象で、髪の毛一本一本が細く、弱々しくなってしまうために起こります。AGAの原因物質が毛母細胞の働きを弱め、髪が太く丈夫に育つのを妨げます。
その結果、髪全体が密度を失い、薄毛という印象につながっていきます。手で髪をかき上げたときの感触や、鏡で見たときのボリューム感を意識的にチェックしましょう。
頭皮のベタつきやかゆみ
AGAの直接的な症状ではありませんが、頭皮環境の悪化は薄毛を進行させる一因となり得ます。AGAの原因となる男性ホルモンの一種(DHT)は、皮脂腺を刺激して皮脂の分泌を活発にすることがあります。

過剰な皮脂は毛穴を詰まらせ、炎症を引き起こし、かゆみやフケの原因となります。これが健康な髪の成長を妨げ、AGAの進行を助長する可能性があります。
頭皮が以前よりベタつく、赤みがある、かゆみを感じるといった変化も、注意すべきサインです。
前頭部と頭頂部に現れる特徴的な薄毛パターン
AGAによる薄毛は、頭部全体で均一に進行するわけではありません。特定の部位から薄毛が始まるという、はっきりとした特徴があります。
これは、薄毛の原因となる男性ホルモンの影響を受けやすい毛包が、前頭部(生え際)と頭頂部に集中しているためです。
ご自身の薄毛がどのパターンに当てはまるかを知ることは、AGAの可能性を判断する上で非常に重要です。
生え際から後退するM字パターン
額の左右の生え際、いわゆる「剃り込み」部分から後退していくのがM字パターンです。正面から見るとアルファベットの「M」のような形に生え際が変化していくため、このように呼ばれます。

初期段階では自分では気づきにくく、他人から指摘されて初めて認識するケースも少なくありません。
以前の写真と現在の生え際の位置を比較したり、額のシワから生え際までの距離を指で測ったりすることで、変化を確認できます。
M字パターンの確認ポイント
チェック項目 | 確認方法 | AGAのサイン |
---|---|---|
生え際の形 | 鏡で正面から額全体を見る | 左右の剃り込み部分が中央に比べて後退している |
産毛の増加 | 生え際をよく観察する | 後退した部分に細く短い産毛が増えている |
過去との比較 | 1年以上前の写真と比較する | 明らかに生え際の位置が変わっている |
頭頂部から薄くなるO字パターン
頭のてっぺん、いわゆる「つむじ」周辺から円形に薄毛が広がっていくのがO字パターンです。上から見るとアルファベットの「O」のように地肌が透けて見えるようになります。

このパターンは自分自身の視線では確認が難しいため、最も発見が遅れがちなタイプです。合わせ鏡を使ったり、家族や友人に頭頂部の状態を見てもらったりして、定期的にチェックすることが重要です。
頭頂部の髪が細くなり、地肌が目立つようになってきたら注意が必要です。
M字とO字の混合パターン
AGAがある程度進行すると、生え際の後退(M字)と頭頂部の薄毛(O字)が同時に進行する混合パターンに移行することがあります。

最終的には前頭部と頭頂部の薄毛部分がつながり、U字型と呼ばれる状態になります。この段階になると、薄毛はかなり目立つようになります。
AGAの治療は早期に始めるほど効果を実感しやすいため、混合パターンに気づいた場合は、速やかに専門のクリニックに相談することをお勧めします。
AGA(男性型脱毛症)の進行度を判定するハミルトン・ノーウッド分類
ご自身の薄毛がどの程度進行しているのかを客観的に把握するために、国際的に用いられている基準が「ハミルトン・ノーウッド分類」です。
この分類法は、AGAの進行パターンをいくつかの段階に分けて定義しており、医師が診断や治療方針を決定する際の重要な指標となります。
ご自身の状態がどの段階に近いかを知ることで、AGAへの理解を深め、クリニックでの相談をよりスムーズに進めることができます。
ハミルトン・ノーウッド分類とは

ハミルトン・ノーウッド分類は、AGAの進行状態をⅠ型からⅦ型までの7段階(さらに細分化された型もある)で評価します。Ⅰ型が最も軽度で、数字が大きくなるほど進行していることを示します。
この分類は主に生え際の後退と頭頂部の薄毛の状態に基づいており、M字型、O字型、U字型といった典型的なパターンを網羅しています。
ハミルトン・ノーウッド分類の主な段階
分類 | 主な特徴 | 状態の目安 |
---|---|---|
Ⅰ型 | AGAの症状はほとんど見られない | 正常な状態、またはごくわずかな後退 |
Ⅱ型 | 生え際がわずかに後退し、M字の形が見え始める | AGAの初期症状段階 |
Ⅲ型 Vertex | 生え際の後退に加え、頭頂部にも薄毛が見られる | M字とO字の混合が始まる段階 |
Ⅴ型 | 前頭部と頭頂部の薄毛部分がかなり広がる | 薄毛がかなり進行した状態 |
Ⅶ型 | 側頭部と後頭部以外、ほとんどの髪が失われる | 最も進行した状態 |
分類で知る治療の必要性
ご自身の状態をこの分類に当てはめてみることで、AGAの進行度を客観視できます。例えば、Ⅱ型やⅢ型であれば、早期治療によって進行を食い止め、改善する可能性が高い段階です。
治療薬であるフィナステリドやミノキシジルは、こうした初期から中期の段階で開始することが推奨されます。
進行が進んだⅤ型以降になると、治療の効果を実感するまでに時間がかかったり、満足のいく改善が得られにくくなったりする場合があります。
そのため、分類上で軽度であっても、変化を感じた時点で専門クリニックに相談することが重要です。
毎日できるセルフチェック – 抜け毛の本数と質の確認方法
AGAの進行を早期に察知するためには、日々のセルフチェックが欠かせません。特別な道具は必要なく、毎日の生活習慣の中で少し意識を向けるだけで実践できます。
特に「抜け毛」は、体の内側で起きている変化を教えてくれる貴重なサインです。ここでは、抜け毛の本数と質を確認する具体的な方法を紹介します。
シャンプー時の抜け毛を数える

1日の中で最も髪が抜けやすいのがシャンプーの時です。健康な人でも1日に50本から100本程度の髪は自然に抜けますが、AGAが進行するとその本数が明らかに増えます。
毎回正確に数えるのは大変ですが、排水溝にたまる髪の毛の量を意識的に確認するだけでも変化に気づけます。
「最近、排水溝のネットにたまる髪の量が明らかに増えた」と感じる場合は、100本を超えている可能性があります。
枕元の抜け毛をチェックする
朝起きたときに枕についている抜け毛の数も、チェックすべきポイントです。睡眠中は比較的抜け毛が少ないため、枕元の抜け毛が目立つ場合は注意が必要です。
特に、細く短い毛が多く見られる場合は、ヘアサイクルが乱れているサインかもしれません。毎朝枕をチェックする習慣をつけ、抜け毛の量や質に変化がないか観察しましょう。
抜け毛の質のチェックリスト
チェック項目 | 正常な抜け毛 | AGAが疑われる抜け毛 |
---|---|---|
太さ | ある程度の太さとハリがある | 細く、弱々しい |
長さ | 比較的長い | 短い、産毛のような毛が多い |
毛根の形 | マッチ棒のように丸く膨らんでいる | 尖っている、または萎縮している |
鏡を使った頭皮と生え際の観察ポイント
抜け毛のチェックと合わせて行いたいのが、鏡を使った視覚的な確認です。特にAGAが進行しやすい生え際と頭頂部は、定期的に観察することで微妙な変化を捉えることができます。
スマートフォンで写真を撮って記録しておくと、過去の状態と比較しやすく、客観的な判断の助けになります。
生え際の位置を定期的に記録する
生え際の後退は、AGAの典型的なパターンです。眉毛を上げたときにできる一番上のシワから生え際までの距離を、指を使って測る方法があります。

指が2本、3本と入るようであれば、生え際が後退している可能性があります。また、毎回同じ場所、同じ照明の下で、正面と左右の生え際の写真を撮っておきましょう。
数ヶ月ごとに比較することで、M字の進行具合を客観的に把握できます。
合わせ鏡で頭頂部の地肌を確認する
自分では見えにくい頭頂部は、手鏡と洗面台の鏡などを利用した「合わせ鏡」でチェックします。髪をかき分けて、地肌がどの程度透けて見えるかを確認してください。
つむじ周りの毛が細くなり、地肌の見える範囲が広がっている場合、O字パターンの薄毛が進行しているサインです。
髪が濡れている状態だと地肌が目立ちやすいため、乾いた状態で確認するのがポイントです。
頭皮の状態観察ポイント
観察ポイント | 健康な状態 | 注意が必要な状態 |
---|---|---|
色 | 青白い | 赤い、茶色い、黄色っぽい |
皮脂 | 適度な潤いがある | ベタついている、または乾燥してフケが多い |
硬さ | 柔らかく、指で動く | 硬く、突っ張っている |
AGA以外の脱毛症との見分け方
薄毛や抜け毛の原因は、AGAだけではありません。他の脱毛症や疾患が原因である可能性も考えられます。自己判断で「AGAだ」と決めつけてしまうと、適切な対応が遅れてしまうこともあります。
ここでは、AGAと間違えやすい代表的な脱毛症との違いを解説します。正確な診断は専門のクリニックで行う必要がありますが、ご自身の症状を正しく理解するための参考にしてください。
円形脱毛症との違い
円形脱毛症は、自己免疫疾患が主な原因と考えられており、AGAとは発症の仕組みが全く異なります。最大の特徴は、コインのような円形または楕円形の脱毛斑が突然現れることです。
脱毛部分の境界がはっきりしており、AGAのようにゆっくりと薄くなるのとは対照的です。また、頭部だけでなく、眉毛や体毛などにも症状が現れることがあります。
脂漏性脱毛症との違い
脂漏性脱毛症は、皮脂の過剰な分泌によって頭皮に炎症が起こり、抜け毛が増える状態です。
AGAと異なり、強いかゆみやベタベタとした湿ったフケを伴うことが多く、頭皮全体が赤っぽくなる傾向があります。
AGAが特定の部位から進行するのに対し、脂漏性脱毛症は頭部全体に影響が及ぶことがあります。
AGAと他の脱毛症の比較
種類 | 主な原因 | 脱毛の特徴 |
---|---|---|
AGA(男性型脱毛症) | 男性ホルモン、遺伝 | 生え際や頭頂部からゆっくり進行する |
円形脱毛症 | 自己免疫疾患 | 円形の脱毛斑が突然現れる |
脂漏性脱毛症 | 皮脂の過剰分泌、真菌 | 強いかゆみやフケを伴い、全体的に抜ける |
家族歴から予測する将来の薄毛リスク

AGAの発症には、遺伝が深く関わっています。ご自身の家族、特に近親者に薄毛の方がいるかどうかは、将来の薄毛リスクを予測する上で重要な情報となります。
遺伝情報を変えることはできませんが、リスクを自覚することで、より早期からの対策や生活習慣の見直しにつなげることができます。
AGA発症に関わる遺伝的要因
AGAのなりやすさを決める遺伝子は、複数あると考えられています。一つは、男性ホルモンをAGAの原因物質であるDHTに変換する「5αリダクターゼ」の活性度を決める遺伝子です。
もう一つは、DHTを受け取る「男性ホルモン受容体」の感受性の高さを決める遺伝子です。これらの遺伝的な特徴が組み合わさることで、AGAの発症しやすさが決まります。
母方の家系の影響
特に「男性ホルモン受容体」の感受性に関する遺伝子は、X染色体上に存在します。
男性は母親からX染色体を受け継ぐため、母方の祖父や叔父に薄毛の人がいる場合、ご自身もAGAを発症するリスクが高まると言われています。
もちろん、父方の家系からの遺伝も影響するため、両親、祖父母に薄毛の方がいるかどうかを確認してみましょう。
遺伝リスクのセルフチェック
血縁者 | 薄毛の有無 | リスクへの影響 |
---|---|---|
父 | あり | リスクは高まる |
母方の祖父 | あり | リスクは特に高まるとされる |
兄弟 | あり | 遺伝的素因が共通している可能性が高い |
セルフチェック結果の記録と医師への伝え方
これまで紹介してきたセルフチェックの結果は、ぜひ記録に残しておくことをお勧めします。
記録することで、症状の進行度合いを客観的に把握でき、専門のクリニックを受診する際に、医師へご自身の状態を正確に伝えることができます。
的確な情報は、よりスムーズで適切な診断と治療につながります。
記録しておきたいセルフチェック項目
医師に相談する際に、以下の情報をまとめておくと診察がスムーズに進みます。記憶に頼るだけでなく、メモや写真で記録を残しましょう。
- いつから薄毛や抜け毛が気になり始めたか
- 特に気になる部位(生え際、頭頂部など)
- 抜け毛の量や質の変化(写真があればより良い)
- 頭皮の状態(かゆみ、フケ、赤みなど)
- 家族の薄毛の状況(父方、母方)
- 現在治療中の病気や服用中の薬
クリニックで正確な情報を伝える重要性
医師は、患者様からの情報と視診、触診、そして必要に応じて検査結果を総合して診断を下します。セルフチェックの記録は、問診における非常に重要な情報源です。
例えば、「半年前の写真と比べて、M字部分が明らかに後退した」「シャンプー時の抜け毛が倍になった気がする」といった具体的な情報は、医師がAGAの進行スピードを判断する上で役立ちます。
これにより、フィナステリドやミノキシジルといった治療薬の中から、患者様一人ひとりに合った治療計画を立てやすくなります。
医師への伝達メモ(サンプル)
項目 | 具体的内容(記入例) |
---|---|
相談内容 | 2年前から生え際の後退が気になり始めた。特にここ半年で進行が早い気がする。 |
抜け毛 | 枕元の細い抜け毛が増えた。シャンプー時の抜け毛も多い。 |
家族歴 | 父、母方の祖父が薄毛。 |
よくある質問
- QセルフチェックだけでAGAと断定できますか?
- A
いいえ、セルフチェックはあくまでAGAの可能性を判断するための目安です。薄毛の原因は様々であり、自己判断は禁物です。
例えば、甲状腺機能の異常など、他の病気が原因で脱毛が起きている可能性もゼロではありません。
正確な診断とご自身に合った治療法を知るためには、必ず専門のクリニックを受診し、医師の診察を受けることが重要です。
- QAGAは自然に治りますか?
- A
残念ながら、AGAは進行性の脱毛症であり、自然に治ることはありません。放置すると薄毛は徐々に進行していきます。
しかし、AGAは適切な治療によって、その進行を抑制したり、毛髪の状態を改善したりすることが可能です。
フィナステリドやミノキシジルなどの治療薬が有効であり、早期に治療を開始するほど、より良い効果が期待できます。
- Q治療薬(フィナステリドやミノキシジル)はすぐに効果が出ますか?
- A
AGAの治療は、すぐに効果が現れるものではありません。乱れたヘアサイクルを正常な状態に戻すには時間が必要です。
一般的に、治療効果を実感し始めるまでに、少なくとも3ヶ月から6ヶ月程度の継続的な治療が必要です。焦らず、根気強く治療を続けることが大切です。
当クリニックでは、患者様一人ひとりの進行度に合わせて、適切な治療計画をご提案します。
この記事ではAGAの症状とセルフチェック法に焦点を当てて解説しました。
AGAがなぜ起こるのか、その根本的な原因や、クリニックではどのような検査を行って診断するのかについて、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
原因を深く理解することで、治療へのモチベーションも高まります。
以上