髪のボリュームが気になり始めると、何とかして進行を抑えたいと考える方が多いです。

男性型脱毛症(AGA)への治療薬は複数ありますが、中でも2015年に承認された「ザガーロ」への注目が高まっています。

今回はザガーロとはどのような薬なのか、またザガーロの効果と副作用を中心に、治療方法や費用の目安など幅広く説明します。

AGAの基本概要

はじめに、男性型脱毛症と呼ばれるAGAとは何かについて、原因や進行メカニズムを交えながら見ていきます。

治療方法を判断するうえで、ヘアサイクルの乱れが大きく関わるこの脱毛症を理解することが大切です。適切な知識を持つと、日常のケアや治療薬の選択がより的確になります。

AGAとは

AGAは男性ホルモン(テストステロンなど)をもとに生成されるDHT(ジヒドロテストステロン)が毛根を弱らせることで進行する脱毛症です。

思春期以降の男性に多くみられ、髪の生え際や頭頂部が徐々に薄くなる特徴があります。放置すると進行しやすいので、早めの治療を考える方が多いです。

AGAに関連する用語

用語内容
毛母細胞髪の毛を作る細胞のこと。毛母細胞が衰えると髪が細くなる。
DHT(ジヒドロテストステロン)テストステロンが変換されてできるホルモン。AGA進行の主因になる。
ヘアサイクル髪の成長期・退行期・休止期の周期。AGAでは成長期が短縮する。

AGAが進行するメカニズム

髪が伸びるにはヘアサイクルの成長期が長く保たれることが重要です。ところがAGAになると、DHTの作用で成長期が短くなり、髪が十分に伸びきる前に抜けてしまいます。

結果的に細い髪や短い髪が目立ち、薄毛が気になっていきます。

AGAが与える心理的影響

AGAが進行すると見た目の変化に悩む方も少なくありません。髪型が決めにくくなり、外出時に帽子やスプレーなどで隠したくなるケースもあります。

脱毛が進むとコンプレックスを抱えやすいので、適切な治療やケアを早めに選ぶと良いです。

早期治療に踏み切るメリット

  • 自信の回復が期待できる
  • 進行の抑制や改善を狙いやすい
  • 生活習慣の見直しが同時に進めやすい

ザガーロとは

ここではAGA治療薬として知られるザガーロについて、一般名や特徴を中心に取り上げます。

薬の成分や従来の薬との違いを知ると、効果への理解が深まり、服用に対する不安も軽減しやすいです。

ザガーロの概要

ザガーロは「デュタステリド」を有効成分とするAGA治療薬です。従来から用いられてきたフィナステリド製剤(一般名フィナステリド)と同じく、男性ホルモン由来のDHTを抑える仕組みを持っています。

ただ、フィナステリドが主に5αリダクターゼの2型を阻害するのに対し、ザガーロ(デュタステリド)は1型と2型の両方を阻害する点に特徴があります。

ザガーロに含まれる成分

成分名特徴
デュタステリド5αリダクターゼの1型・2型に作用し、DHTの産生を抑制する。
添加物(カプセルなど)体内での安定性を高め、カプセルとして飲みやすくする。

ザガーロの誕生背景

元々は前立腺肥大症の治療薬として開発されましたが、男性ホルモンに作用する仕組みを応用し、男性型脱毛症にも使えることがわかりました。

日本では2015年に厚生労働省からAGA治療薬として承認を得ており、2016年に販売開始、多くの医療機関で処方されています。

AGA治療薬としての特徴

ザガーロの特徴は、5αリダクターゼの2つの型に働きかける点です。フィナステリドとの違いを理解すると、選択の幅が広がりやすいです。

毛髪の成長に大切なDHT抑制をより広範囲で行える可能性があるため、効果を実感するまでの期間やその程度にも注目が集まっています。

フィナステリド製剤との主な違い

  • 1型リダクターゼもカバーする
  • 有効成分が異なる
  • 薬価や処方価格がやや高めになる傾向がある

ザガーロの作用機序と効果

ここでは、ザガーロの効果をより具体的に知るために、作用機序を確認しながら、実際にどのような改善が見込めるのかを見ていきます。

DHTを抑制するのがAGA治療の要となるので、この点をしっかり押さえておきましょう。

ザガーロの作用機序

ザガーロの主成分デュタステリドは、5αリダクターゼの1型と2型を阻害することで、DHTの産生量を抑えます。

DHTが減少すれば、頭皮の毛母細胞や毛包に対するダメージが抑えられ、ヘアサイクルの改善が期待できます。

フィナステリドでは届きにくかった1型が存在する部位にも、より広く働きかけられる点がポイントです。

ザガーロの効果を感じやすい部位

部位特徴
頭頂部進行してから治療を始める方が多い。毛髪のコシが戻る変化を実感しやすい傾向。
生え際個人差が大きいが、生え際の後退や産毛の増加に効果を見込む方もいる。
全体頭皮全体に作用するので、ボリュームアップが期待される例もある。

効果を実感するまでの期間

ザガーロを服用した場合、早い方で約3か月から6か月程度で変化に気づきます。しかし、効果の実感度には個人差が大きく、1年程度じっくり服用を続けて変化を確認するケースが多いです。

ヘアサイクルが安定した状態を維持するために、治療を途中で止めると再び進行に転じるリスクがあるため注意が必要です。

効果をより高めるためのポイント

ザガーロによる治療効果を高めるには、日常生活のケアや生活習慣の見直しも大切です。

喫煙や過度の飲酒、偏った食事、睡眠不足などは頭皮環境の悪化を招きやすいからです。

定期的なクリニック通院や医師の指示に従った処方に加え、頭皮マッサージなども組み合わせて髪を育てる土台を作るとよいでしょう。

生活習慣の見直し

  • バランスの良い食生活
  • 質の良い睡眠
  • ストレスケア

服用の方法と注意点

ここではザガーロの服用方法と、その際に気をつけたい点を具体的に解説します。

飲み方や服用するタイミング、そして相互作用の有無なども知っておくと、より安心して治療を進めやすくなります。

ザガーロの飲み方

ザガーロは1日1回、1カプセルを内服するのが基本です。

食事の有無を問わず決められた用量を服用し、自己判断で増量や減量を行わないのが望ましいです。

服用タイミングは一定に保つと良いとされ、毎日同じ時間帯に飲むと血中濃度の安定が期待できます。

用量特徴
0.5mg/日ザガーロの一般的な処方量。1日1回1カプセル。
相談により変更医師の判断で異なる場合がある。自己判断は避ける。

服用時に意識したい生活習慣

ザガーロの効果を高めるためには、血行を良好に保つことや、頭皮に負担をかけない生活を意識することが大切です。

過度な飲酒や油分・糖分の多い食事は頭皮の皮脂バランスを乱しやすいです。

また、運動を取り入れたり、シャワー後に頭皮を清潔に保ったりするだけでも毛髪の成長環境を整えやすくなります。

取り入れたい行動

  • 定期的な運動
  • 抜け毛を増やさないための優しい洗髪
  • 過度な日光や紫外線への対策

他の薬との相互作用に注意

ザガーロの主成分デュタステリドは、他の薬との相互作用に注意を要する場合があります。特にホルモン治療薬や降圧剤などを服用している方は、医師に相談したうえで開始する必要があります。

自分が常用しているサプリメントや市販薬がある場合も事前に伝えると安心です。

相互作用が懸念される薬

薬の種類具体例
ホルモン調整薬女性ホルモン剤、経口避妊薬など
抗真菌薬イトラコナゾール、ケトコナゾールなど
その他血圧降下剤、抗うつ薬など

副作用とリスクへの理解

ここではザガーロの副作用やリスク面について詳しく触れます。どのような副作用が起こりうるのかを知っていると、万が一の変化にも冷静に対応しやすくなります。

ザガーロの副作用について十分理解したうえで治療を続けると、トラブルを未然に防ぎやすいです。

ザガーロの副作用

代表的な副作用として、性欲の減退や勃起機能の低下、乳房の張り感などが挙げられます。これらは男性ホルモンに作用する薬の特徴でもあります。

確率としては高くないものの、気になった場合は早めに医師に相談すると良いです。

副作用特徴
性欲減退男性ホルモン低下による影響。
勃起不全軽度の機能低下や自覚症状を伴うケースがある。
乳房の違和感女性化乳房に近い症状が起こる例もある。
肝機能数値の変化まれに肝機能への影響が見られる。

重篤な副作用の可能性

非常にまれですが、肝機能障害やアレルギー反応など、重い副作用が起こるリスクもゼロではありません。

普段と明らかに違う倦怠感や発疹、皮膚のかゆみが続くなど、少しでも不安な症状がある場合はすぐに診察を受けてください。

重篤な副作用が疑われる症状

  • 全身のだるさや食欲不振
  • 黄疸や目の白目部分が黄色くなる
  • 皮膚の湿疹・強いかゆみ

副作用との向き合い方

副作用が疑われるときは自己判断せず、クリニックや病院に相談したほうが良いです。医師が薬を減量する、もしくは一時的に中止するなど状況に応じた判断を行います。

本人の体質や併用薬との相性も関係しますので、定期的な血液検査やカウンセリングを受けながら無理のない治療を続けると安心です。

他のAGA治療薬との比較

ここではフィナステリド製剤や外用薬、さらに育毛メソセラピーなどとの比較ポイントを整理してみます。

フィナステリド製剤との比較

ザガーロと同じく5αリダクターゼを阻害するタイプの薬として、フィナステリド製剤(先発薬:プロペシア)が有名です。

フィナステリドは主に2型のリダクターゼを抑制し、ザガーロは1型と2型の両方を抑制します。

効果の範囲や副作用の出方に個人差があるため、実際にどちらが合うかは医師の判断や体感が重要になりやすいです。

ザガーロとフィナステリドの違い

項目ザガーロ(デュタステリド)フィナステリド(プロペシア)
阻害する酵素5αリダクターゼの1型・2型5αリダクターゼの2型のみ
効果実感の可能性やや広範囲な抑制が期待できる従来から実績が豊富
主な副作用性機能低下、乳房の張りなど性機能低下、めまいなど
費用面比較的高額やや安価なケースが多い

外用薬との違い

ミノキシジル外用薬は頭皮に直接塗布して血行促進を促す仕組みです。

ザガーロがDHT生成を抑えて抜け毛を防ぎ、ミノキシジルは発毛環境を整えるというように、役割が異なります。組み合わせると相乗効果が見込める可能性があるため、医師が併用を勧めることもあります。

外用薬の利点

  • 頭皮に直接働きかける
  • 皮膚刺激の強さを調整しやすい
  • 女性の薄毛治療にも使われる例がある

クリニックで行う治療法との併用

育毛メソセラピーやHARG治療など、頭皮に成長因子を注入する方法を受ける方もいます。こうした施術はザガーロと目的が異なるため、併用で相乗効果をめざすパターンがあります。

ただし施術内容や費用はクリニックによって差があるため、事前のカウンセリングで確認が必要です。

AGA治療法と特徴

治療法特徴
内服薬(ザガーロ、フィナステリド)ホルモン面でのアプローチ。抜け毛予防が主眼。
外用薬(ミノキシジルなど)血行促進による発毛環境の改善。
注入療法(育毛メソセラピー)成長因子や栄養素を直接注入。
植毛自毛や人工毛を外科的に移植。

費用と治療期間の目安

AGA治療は自由診療に分類されるため、保険適用外での支払いが一般的です。

ここではザガーロの費用相場や治療期間の目安を紹介します。治療の予算やスケジュールを立てるために、ある程度の目安を把握しておきましょう。

ザガーロの費用目安

クリニックや医療機関によって差はありますが、ザガーロ(0.5mg)の1か月分の処方はおおむね7,000円から10,000円程度になる場合が多いです。

ジェネリックが流通しているケースもあり、やや費用を抑えたい方はジェネリックを選ぶことも考えられます。

ただし在庫状況や扱っているクリニックの方針によって取り扱いがない場合もあるため、事前に確認が必要です。

項目目安料金
ザガーロ(先発品)7,000円~10,000円/1か月分
ジェネリック5,000円~8,000円/1か月分
診察料0円~3,000円(クリニックによる)
検査費用3,000円~10,000円程度(血液検査など)

治療期間の考え方

AGA治療は短期間で劇的な変化を求めるのではなく、少しずつ進行を抑えながら髪の成長を維持するのを目標にします。

ザガーロの服用期間としては6か月から1年ほど継続することで効果を評価する考え方が一般的です。

効果を実感しても、服用を中止すれば再び進行が目立つ可能性があるため、長期的なプランを持つとよいでしょう。

長期継続のための工夫

費用面やモチベーション面から、途中で治療をやめてしまう方もいます

。対策としては、月々の支払いを把握したうえで予算を組む、あるいは無理のない範囲で他の治療との併用を検討するなどが挙げられます。

また、定期的に写真を撮って変化を記録すると、治療を続ける意欲を保ちやすいです。

長期継続のための工夫

  • クリニックのキャンペーンやまとめ買い割引を利用
  • 家族や友人のサポートを得る
  • アプリなどで服用日を管理

よくある質問

ここでは、ザガーロに対する代表的な質問を取り上げ、簡潔に回答します。迷いや不安を解消したうえで治療を続けましょう。

Q
ザガーロを飲むのを忘れた日はどうすればいいですか?
A

1日程度飲み忘れた場合は、思い出したタイミングで1回分を服用するよりも、次の通常のタイミングで1回分を飲むほうがよいとされています。

過剰にまとめて飲むと副作用リスクが高まる恐れがあるため、服用回数を増やさないよう注意してください。

飲み忘れが続かないように、スマートフォンのアラームなどを活用すると便利です。

Q
女性がザガーロを使用することは可能ですか?
A

ザガーロは、原則として女性は使用できません。妊娠中の女性が錠剤の破損に触れるだけでも、胎児への影響が懸念される場合があります。

AGAは男性の脱毛症として扱われることが多いですが、女性の薄毛に関しては別の治療薬や外用薬が利用されるケースが一般的です。

Q
ザガーロとフィナステリドは併用できますか?
A

通常、ザガーロとフィナステリドを同時に併用するメリットはあまり大きくありません。

どちらも同じ5αリダクターゼ阻害薬であり、作用機序が重複するため、併用することで劇的な効果向上を期待するのは難しいです。

医師が特別な目的で併用を判断する場合を除いては、どちらか一方を継続する方が一般的です。

参考文献

TSUNEMI, Yuichiro, et al. Long‐term safety and efficacy of dutasteride in the treatment of male patients with androgenetic alopecia. The Journal of dermatology, 2016, 43.9: 1051-1058.

ZHOU, Zhongbao, et al. The efficacy and safety of dutasteride compared with finasteride in treating men with androgenetic alopecia: a systematic review and meta-analysis. Clinical interventions in aging, 2019, 399-406.

HARCHA, Walter Gubelin, et al. A randomized, active-and placebo-controlled study of the efficacy and safety of different doses of dutasteride versus placebo and finasteride in the treatment of male subjects with androgenetic alopecia. Journal of the American Academy of Dermatology, 2014, 70.3: 489-498. e3.

ARIF, Tasleem, et al. Dutasteride in androgenetic alopecia: an update. Current clinical pharmacology, 2017, 12.1: 31-35.

HERZ-RUELAS, Maira Elizabeth, et al. Efficacy of intralesional and oral dutasteride in the treatment of androgenetic alopecia: a systematic review. Skin appendage disorders, 2020, 6.6: 338-345.

BOERSMA, Ids H., et al. The effectiveness of finasteride and dutasteride used for 3 years in women with androgenetic alopecia. Indian Journal of Dermatology, Venereology and Leprology, 2014, 80: 521.

GUPTA, Aditya K.; TALUKDER, Mesbah; WILLIAMS, Greg. Comparison of oral minoxidil, finasteride, and dutasteride for treating androgenetic alopecia. Journal of Dermatological Treatment, 2022, 33.7: 2946-2962.

GUPTA, Aditya K.; CHARRETTE, Andrew. The efficacy and safety of 5α-reductase inhibitors in androgenetic alopecia: a network meta-analysis and benefit–risk assessment of finasteride and dutasteride. Journal of dermatological treatment, 2014, 25.2: 156-161.