「乾癬」という字を見て、人にうつる感染症だと思い込み、不安になる方は少なくありません。けれども乾癬は、人から人へうつる病気ではなく、名前に「感染」の意味も含みません。

発症の背景にあるのは、生まれ持った体質と、免疫の働きの乱れです。そこへストレスや感染症、肥満やメタボリックシンドロームといった引き金が重なり、症状が表にあらわれます。

この記事では、乾癬がうつらない理由から、遺伝やストレス、メタボとの関わり、悪化を招く生活習慣、そして発症や再燃を防ぐ手立てまでを、皮膚科の視点でやさしく整理します。

乾癬は人にうつらない 接触やプールで感染しないと言える理由

乾癬は人にうつる病気ではありません。握手やプール、同じタオルの共用でうつることはなく、まわりの人へ感染させる心配もいりません。

次のような場面でうつるのではと心配されがちですが、いずれも感染の心配はありません。

  • 握手やハグなど肌の触れ合い
  • プールや銭湯、温泉の利用
  • タオルや衣類、寝具の共用
  • 食器の共用や同じ食事
  • せきやくしゃみ、会話

どれも日常でよくある場面ですが、乾癬がこれらを通じて他人へ移ることはありません。まずはこの点を、はっきりお伝えしておきます。

なぜうつらないのか、その理由をもう少しかみくだいてお伝えします。

なぜ「かんせん」でも感染症ではないのか

乾癬は「かんせん」と読みますが、ウイルスや細菌が引き起こす感染症とはまったく別の病気です。原因は体内の免疫の乱れにあり、外から病原体がうつって起こるものではありません。

名前が「感染」と同じ音のため誤解されやすいのですが、漢字も成り立ちも異なります。人にうつるのではないかという心配は、まず手放して大丈夫です。

乾癬は世界で人口の2〜3%にみられる、ありふれた慢性の病気です。これだけ多くの人がかかっていても感染の報告がないことが、うつらない何よりの証拠といえます。

家族やパートナーにうつる心配はいらない

同じ家で暮らす家族や、肌を触れ合うパートナーへ乾癬がうつることはありません。一緒に入浴しても、布団を並べて眠っても、相手に発症させる心配はないのです。

ただし家族のなかに乾癬の人が複数いる場合もあります。これはうつったのではなく、なりやすい体質が受け継がれた結果だと考えられます。

うつるのではと気がねして、温泉やプールを避けてしまう方もいます。けれども感染の心配はないので、これまでどおりの暮らしを続けて構いません。

握手やプール、入浴でうつらない理由

乾癬の発疹は、皮膚の中で免疫が過剰に働いて生じます。皮膚の表面に病原体がいるわけではないため、触れても、同じ水につかっても、相手の肌に移ることはありません。

むしろ心配なのは、まわりの誤解で患者さんが傷つくことでしょう。正しく知ることが、本人にとっても周囲にとっても支えになります。

名前のせいで距離を置かれ、つらい思いをする方もいます。だからこそ、うつらないという事実を家族や職場にも知ってもらえると、気持ちがずっと楽になります。

乾癬の原因は免疫の乱れ 体質が関わる自己免疫の病気

乾癬の主な原因は、免疫の働きの乱れにあります。本来は体を守るはずの免疫が皮膚を攻撃し、新陳代謝が異常に速まることで、あの赤みとカサカサが生まれます。

免疫が皮膚を攻撃して新陳代謝が速まる

健康な皮膚は、およそ4週間かけてゆっくり生まれ変わります。ところが乾癬では、免疫の異常によって、皮膚が数日という速さでつくられてしまうのです。

未熟なまま積み上がった角質が、白く厚いカサカサ(鱗屑)の正体です。その下では血管が広がり、赤い発疹(紅斑)となって表にあらわれます。

皮膚がはがれ落ちる量がふだんより多くなるのも、入れ替わりの速さが原因です。フケのように見える白い粉は、未熟な角質がたまった結果なのです。

炎症を起こすT細胞とサイトカインのはたらき

免疫の乱れの中心にいるのが、T細胞と呼ばれる免疫細胞です。これが活性化すると、炎症を強めるサイトカインという物質が放出され、皮膚の細胞をどんどん増やしてしまいます。

とりわけIL-17やIL-23といったサイトカインが深く関わると分かってきました。こうした炎症の連鎖が、慢性的に続く乾癬の特徴をかたちづくります。

炎症のかなめとなる物質が分かってきたことで、その流れをおさえる治療も広がりました。乱れた免疫を鎮めることが、症状を抑える土台になります。

乾癬になりやすい体質の特徴

乾癬は、生まれ持った体質が土台にある病気です。同じように暮らしていても、発症する人としない人がいるのは、この体質の差が関わっているといえます。

体質だけで必ず発症するわけではありません。あとで触れる引き金が重なったとき、はじめて症状が表に出てくると考えられています。

乾癬は子どもからお年寄りまで、どの年代でも始まります。20代前後と50代前後に発症の山があることも知られています。

いつ始まるか分からないからこそ、自分の体質を知っておくと心の準備になります。気になる症状が出たら、早めに皮膚科で確かめると安心でしょう。

乾癬の発症に関わる3つの要素

要素どう関わるか主な具体例
免疫の乱れ皮膚を攻撃する炎症の中心T細胞、IL-17、IL-23
体質(遺伝)なりやすさの素地になる家族歴、特定の遺伝子
環境・引き金発症や悪化を後押しするストレス、感染、肥満

これら3つが重なったときに、乾癬は発症しやすくなります。とりわけ気になる遺伝との関わりから、順に整理します。

乾癬は遺伝するのか 親から子へ受け継がれるのは「なりやすさ」

親や兄弟に乾癬の人がいると、発症しやすさは確かに高まります。ただし遺伝するのは乾癬そのものではなく、あくまで「なりやすい体質」だという点が大切です。

乾癬そのものではなく「なりやすさ」が伝わる

遺伝で受け継がれるのは、乾癬という病気の完成形ではありません。免疫が過剰に反応しやすい体質という、いわば土台の部分が伝わります。

ですから、親が乾癬でも子が必ず発症するわけではありません。体質を受け継いでいても、引き金がなければ症状が出ないまま過ごす人も多いのです。

一卵性の双子では、片方が乾癬だともう片方も発症する割合が高いと報告されています。遺伝の影響は確かにありますが、それでも完全には一致しません。

親が乾癬だと子の発症リスクはどのくらい高まるか

両親のどちらかが乾癬の場合、子どもの発症率はおよそ14%前後、両親ともに乾癬だと40%を超えるという報告があります。家族に乾癬がいない場合と比べ、確かに高い数字です。

とはいえ、片親が乾癬でも8割以上の子は発症しません。数字は「必ず発症する」ことを意味せず、「少し起こりやすい」程度に受け止めるのが適切でしょう。

家族歴からみた発症リスクの目安

家族歴おおよその発症しやすさ受け止め方
家族に乾癬なし一般的な水準過度な心配はいりません
片方の親が乾癬やや高まる引き金に気を配る
両親とも乾癬高くなる早めの相談が安心

ただし、こうした数字はあくまで目安にすぎません。遺伝の影響だけで発症が決まるわけではないからです。

同じ家族でも、発症する人としない人がいます。受け継いだ体質をどう生かすかは、その後の暮らし方しだいともいえます。

遺伝だけでは決まらない 引き金との重なりが鍵

乾癬は、遺伝という素因に、後天的な引き金が加わって発症する病気です。同じ体質でも、生活環境やそのときの体調しだいで、発症する人としない人に分かれます。

だからこそ、体質は変えられなくても、引き金を減らす工夫には意味があります。その引き金を、次に具体的に見ていきましょう。

遺伝と引き金、この2つがそろってはじめて症状は動き出します。だからこそ、家族歴があっても過度に恐れる必要はないのです。

乾癬を悪化させる引き金 ストレスや感染、生活習慣に注意したい

きっかけは、ふだんの暮らしの中にひそんでいます。ストレス、のどの感染症、皮膚への刺激、喫煙や飲酒などが、乾癬の発症や悪化を後押しします。

代表的な引き金には、次のようなものがあります。

引き金どう関わるかひとことメモ
ストレス免疫バランスを乱す強い負荷が重なると悪化しやすい
感染症のどの炎症が引き金に子どもの滴状乾癬に多い
皮膚の傷・摩擦ケブネル現象を招くかき壊しや日焼けに注意
喫煙・飲酒炎症を強める量が多いほど影響が大きい
一部の薬症状を誘発・悪化させる自己判断で中止しない

とりわけ相談の多い引き金を、順に取り上げます。どれも、心当たりがあれば見直す価値のあるものばかりです。

ストレスが乾癬を悪化させる理由

強いストレスは、免疫のバランスを乱し、乾癬を悪化させる引き金になり得ます。実際、多くの患者さんが「疲れやストレスがたまると症状が出る」と感じています。

ただし研究では、ストレスと悪化の関係はそれほど単純ではないとも報告されています。強い思い込みがかえって負担を増やすこともあるため、神経質になりすぎないことも大切です。

ストレスをゼロにするのは誰にとっても難しいものです。完全になくそうと気負うより、うまく付き合う工夫を持つほうが現実的でしょう。

軽い運動や十分な睡眠、ゆっくり過ごす時間は、ストレスをやわらげる助けになります。心地よいと感じる方法を、自分なりに見つけてみてください。

のどの感染症と皮膚の傷が引き金になる

かぜや扁桃炎など、のどの細菌感染がきっかけで乾癬が出ることがあります。とくに子どもや若い世代では、感染のあとに小さな発疹が散らばる滴状乾癬が起こりやすい傾向です。

また、すり傷ややけど、強くかいた跡など、皮膚への刺激が新しい発疹を生むこともあります。これはケブネル現象と呼ばれ、乾癬の人に特徴的な反応です。

のどの感染が引き金になる滴状乾癬は、適切に治療すれば落ち着くことも多い型です。くり返すときは、扁桃の状態も含めて医師に相談してみてください。

喫煙・飲酒・一部の薬が症状を強める

たばこやお酒は、体内の炎症を強め、乾癬を悪化させやすくします。量が多いほど影響は大きく、治療の効きを妨げることもあるとされます。

一部の血圧の薬や、特定の飲み薬が乾癬を誘発・悪化させる場合もあります。気になる薬があるときは、自己判断で中止せず、主治医に相談してください。

お薬手帳を診察のときに見せると、薬の影響を判断する手がかりになります。市販薬やサプリも含めて伝えておくと、よりよい相談ができます。

乾癬とメタボリックシンドロームは互いに影響し合う

乾癬のある人は、メタボリックシンドロームを抱える割合がおよそ2倍と報告されています。皮膚だけの病気にとどまらず、全身の状態と深くつながっているのです。

肥満や内臓脂肪が全身の炎症を強める

内臓脂肪は、ただ蓄えられるだけの組織ではありません。炎症を引き起こす物質を出し、乾癬の炎症をいっそう強めるはたらきを持っています。

体重が増えるほど症状が重くなりやすく、治療への反応も鈍くなる傾向があります。乾癬と肥満は、互いに悪循環を生みやすい関係といえるでしょう。

脂肪細胞から出る炎症物質は、皮膚だけでなく血管にも作用します。乾癬と肥満が重なると、全身の炎症がいっそう長引きやすくなります。

乾癬の人に多い生活習慣病

乾癬の背景には、肥満だけでなく、高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病が重なりやすいことが知られています。これらをまとめてメタボリックシンドロームと呼びます。

全身でくすぶる慢性的な炎症が、皮膚と血管や代謝の両方に影響していると考えられます。乾癬は心臓や血管の病気のリスクとも関わるため、油断できません。

だからこそ、皮膚科だけでなく、必要に応じて内科とも連携して全身を診ていくことが大切です。血圧や血糖、コレステロールの値にも目を配りましょう。

体重を整えると症状が落ち着きやすい

うれしいことに、体重を減らすと乾癬の症状が和らぐという報告があります。とくに肥満のある方では、減量が治療を後押しする力になります。

無理な食事制限は長続きしません。腹八分や軽い運動など、続けられる範囲から整えるのが、結局はいちばんの近道でしょう。

減量がそのまま治療の一部になる、というのは心強い話です。食事と運動の小さな積み重ねが、肌の調子にもよい形で返ってきます。

乾癬に合併しやすい主な病気

合併しやすい病気主な関わり気をつけたいこと
肥満・メタボ炎症を強める体重を整える
高血圧・脂質異常症血管に負担がかかる定期的な検査
糖尿病代謝の乱れ血糖の管理
心血管の病気全身の炎症が影響生活習慣の見直し
関節症性乾癬関節に炎症が及ぶ痛みは早めに相談

皮膚の症状だけでなく、全身の健康に目を向けることが、乾癬とうまく付き合うこつになります。

乾癬の発症と悪化を防ぐ毎日のセルフケア

何から始めればいいか分からない、という声をよく耳にします。基本は、肌を乾かさず傷つけないこと、そして引き金を減らすことに尽きます。

毎日の暮らしで意識したいのは、次のような点です。

  • こまめな保湿で肌を乾かさない
  • かき壊しや強い摩擦を避ける
  • 睡眠と休息をしっかりとる
  • たばこと深酒を控える
  • 体重を整え、栄養のバランスをとる
  • のどの感染症は早めに治す

どれも特別なことではありませんが、続けることで症状の波はおだやかになっていきます。

無理に全部をこなそうとせず、できそうなものから一つずつ始めれば十分です。小さな習慣の積み重ねが、肌を守る大きな力になります。

肌を乾かさず傷つけない工夫

乾燥は乾癬の大敵です。入浴後すぐに保湿剤を塗り、肌のうるおいを保つことが、発疹を抑える土台になります。

ゴシゴシ洗う、かき壊す、きつい衣類でこするといった刺激は、新しい発疹を招きます。やわらかいタオルでそっと押さえるように、肌をいたわってください。

保湿は一日に何度行っても構いません。乾きを感じたらこまめに塗り足すことで、肌の状態がぐっと安定しやすくなります。

食事と体重を整える習慣

特定の食品が乾癬を治すという確かな証拠はありません。それでも、栄養バランスのとれた食事と適正な体重は、症状の安定を助けてくれます。

脂っこい食事やお酒を控えめにし、野菜や魚を意識して取り入れるとよいでしょう。体重が気になる方は、少しずつ整えることが乾癬にもプラスにはたらきます。

極端な制限食に走る必要はありません。バランスよく食べ、楽しみながら続けられる形を見つけることが、結局は長続きのこつになります。

受診の目安と長く続けたい心がけ

発疹が広がってきた、かゆみや痛みがつらい、爪や関節に変化がある。こうしたサインがあるときは、早めに皮膚科を受診してください。

乾癬は長く付き合う病気ですが、適切なケアで症状を抑えながら暮らせます。自分を責めず、引き金を一つずつ手放していくことが、穏やかな毎日につながります。

市販薬でしのぐより、一度きちんと診断を受けるほうが近道になることもあります。長引かせず、気軽に皮膚科の扉をたたいてみてください。

よくある質問

Q
乾癬は人にうつる病気ですか?
A

乾癬は人にうつる病気ではありません。握手やプール、入浴やタオルの共用などでまわりの人に感染させることはなく、安心して日常を送っていただけます。

名前が「感染」と同じ読みのため誤解されがちですが、原因は体内の免疫の乱れです。外から病原体がうつって起こるものではないのです。

Q
乾癬は親から子へ遺伝しますか?
A

遺伝するのは乾癬そのものではなく、発症しやすい体質です。親が乾癬でも子が必ず発症するわけではなく、引き金が重ならなければ症状が出ないことも多くあります。

両親のどちらかが乾癬の場合、子の発症率は14%ほどと報告されています。高めではありますが、「必ず受け継ぐ」という数字ではありません。

Q
乾癬はストレスで悪化することがありますか?
A

強いストレスは免疫のバランスを乱し、乾癬を悪化させる引き金になり得ます。多くの患者さんが、疲れや心労が重なると症状が出やすいと感じています。

一方で、ストレスと悪化の関係は単純ではないとも報告されています。気に病みすぎるとかえって負担になるため、休息を上手にとることを心がけてください。

Q
乾癬はメタボリックシンドロームと関係がありますか?
A

乾癬のある人は、メタボリックシンドロームを抱える割合が高いと報告されています。全身の慢性的な炎症が、皮膚と代謝の両方に影響していると考えられます。

肥満や高血圧、糖尿病などが重なりやすいため、皮膚だけでなく全身の健康に目を向けることが大切です。体重を整えると症状が落ち着くこともあります。

Q
乾癬の発症は生活習慣で防げますか?
A

体質そのものは変えられませんが、引き金を減らす工夫には意味があります。保湿で肌を守り、睡眠や体重を整え、喫煙や深酒を控えることが備えになります。

のどの感染症を早めに治すことも、発症や再燃を遠ざける助けになります。すべてを完璧にする必要はなく、できることから少しずつ始めれば十分です。

参考文献