東京で美容外科医をしている齋藤隆文(形成外科専門医)です。当サイトで、美容コラムを担当しています。この記事の一番最後に、現在の東京での診療案内を載せていますので、受診希望の方は私のホームページの問い合わせフォームからお問い合わせください。
皆さんの周りにも、鼻が曲がっている人がいますよね?怪我をして鼻が曲がった人はもちろん怪我が原因ですが、そんなことがなくても曲がっている人もたくさんいます。なぜ鼻は曲がるのでしょうか?
この記事では、私が専門の一つとしている外鼻変形(がいびへんけい)の中で、特に曲がったお鼻、斜鼻についての治療についてご紹介します。
鼻詰まりのある曲がった鼻は一度の手術でどちらのお悩みも同時に直すことが可能です。手術の流れは以下のような3つのステップに分けることができます。
- 鼻の真ん中の壁をまっすぐにする
- ブクブクと膨らんだ鼻の粘膜をスッキリさせる。ここまでで鼻の詰まりの原因がほとんど解消されます。
- テントの左右差を整えながら、支柱である壁も補強して、全体の形を整える。見た目の治療です。
では、これら一つ一つについて、図を用いてわかりやすく解説していきたいと思います。
鼻の曲がっている人は、鼻の穴が狭くなっています。図で解説
鼻が曲がっていることを、医学的には斜鼻(しゃび)といいます。また、鼻詰まりは鼻閉(びへい)といいます。これらが同時に起きてくる原因として、最も多いのが鼻中隔弯曲(びちゅうかくわんきょくしょう)です。
はい、急に難しい漢字が出てまいりました。これらはあくまで医学用語なので覚える必要はないのですが、ネットに落ちている説明記事の多くでこれらの単語が使われているようなので、一応ご説明しておきます。
鼻の右の穴・トンネルと左の穴・トンネルを分ける壁を鼻中隔といい、曲がっている状態を弯曲(わんきょく)している、と言いますので、“左右の鼻の穴・トンネルの間の壁が曲がってしまっている状態”を指しています。
イメージ図でこの状態をお示しします。この図は、真ん中に壁がまっすぐと奥から手前に走っています。鼻中隔です。次に、その両サイドには鼻と言う構造物の横の終わり部分を線で表しています。
頬から指で鼻の方に向かってなぞっていくと、急に坂になり、鼻に変わりますよね。この頬と鼻の変わり目の境界線です。そしてこの左右の線から鼻中隔に向かってテントが張られています。
水色の部分をテントと呼ぶこととします。この、2本の線と真ん中の壁で作られたテントを鼻のイメージ図と考えてください。このテントの左右のスペースが、鼻の穴、トンネルということになります。
鼻筋の通ったキレイな鼻、などと表現されたりしますが、僕たちの鼻筋のすぐ下にはこの鼻中隔と言う壁が立っているので、これが曲がっていればもちろん斜鼻(しゃび)になるわけです。テントの天井の真ん中にある支柱部分です。つまり、この鼻中隔という壁が鼻筋の形を決めているわけです。
また、その壁がぐにゃんと曲がっていると、トンネルはどうなるでしょうか?
そうです、その曲がりの膨らんだ先のトンネルは狭くなり、凹んだ側のトンネルは広くなります。しかしながら、実は広がった側のトンネルの中も、鼻の粘膜がブクブクと太ってしまい狭くなることが知られています・ ちなみに、鼻は骨で出来ている部分と軟骨で出来ている部分に分かれています。
図のように、上半分が骨、下半分が軟骨、とざっくり理解してください。なので、曲がっている部分の違いで、骨だけ、軟骨だけ、骨と軟骨、の治療が必要になってきます。いずれにしても、こうして、鼻は曲がり、鼻が詰まるようになるわけです。
曲がったお鼻の相談に行くと、ドクターは診察と画像検査で治療プランを決定します。
鼻詰まりだけで見た目にはあまり鼻の曲がりがわからない場合は、原則として耳鼻科の先生にご相談することになります。実際、鼻のつまりは花粉症・その他アレルギーなどの鼻炎が原因になっていることが圧倒的に多く、その場合は真ん中の壁はあまり曲がっていないわけですから当然その手術は必要ないわけです。
実際には、見た目にあまり曲がっていない場合でも形成外科の手術が必要となる場合もありますが、ここでは省略します。
では、鼻詰まりがあって、鼻が曲がっている患者さんのお話に移ります。
基本的には、C T検査で骨と軟骨の曲がりを画像的に確認します。この検査で骨と軟骨の曲がりを確認し、耳鼻科の先生の協力が必要な、奥のふか〜い位置まで曲がりがある場合には耳鼻科の先生にも診察してもらいます。
内視鏡で鼻の穴の中を確認したり、鼻の通りを検査で確認して、手術が必要かどうかを確認します。
画像的に明らかな曲がりがあって、鼻詰まりをご自覚していれば、鼻の通りの検査でも通気が悪くなっていることが多いので、基本的には手術適応(手術で改善が期待できる状態)であると判断されます。
では、この曲がったお鼻、どうすればキレイにまっすぐになり、すっきり鼻が通るようになるのでしょうか? まさに、見た目と機能の手術です。
お鼻の手術を整理すると、シンプルな3ステップになります。
解説する前にこんなことを言うのはずるいかもしれませんが、曲がったお鼻の手術、これは本当に複雑です。お鼻の手術の中でも、最も難しい手術の一つだと思います。
なので、説明しだすと、めちゃくちゃマニアックで、退屈で、途中でほとんどの人が脱落するような難解な文章が続きます、、、
なので、ここでは
“鼻曲がっててめちゃ通り悪いねん、どーやって治すん?
簡単に説明してくれんかなー”
という、せっかちな関西のおねーちゃんに説明するつもりで、シンプルにいきたいと思います。生粋の関西人ですので、この辺は慣れたもんです。
さて、冒頭でも説明しましたが、曲がったお鼻の手術は、
- 鼻の真ん中の壁をまっすぐにする
- ブクブクと膨らんだ鼻の粘膜をスッキリさせる。ここまでで鼻の詰まりの原因がほとんど解消されます。
- テントの左右差を整えながら、支柱である壁も補強して、全体の形を整える。見た目の治療です。
① 鼻の真ん中の壁をまっすぐにする
真ん中の壁は軟骨と骨で出来ていて、両側から粘膜で覆われています。鼻のトンネルの壁は全て粘膜になっています。これの軟骨と骨が曲がっているのが鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)の原因なので、曲がった部分は取り除いてしまいます。
“えっ、テントの支柱無くなったらテント倒れるやん!”って思ったあなた、正解です。鼻、凹んでしまいます。これを鞍鼻変形(あんびへんけい)と言います。下の図のようになってしまいます。
なので、そうならないように、壁の枠組みの部分だけは残すようにします。これで壁はまっすぐ、鼻も凹みません。
② ブクブクと膨らんだ鼻の粘膜をスッキリさせる
先に述べたように、広くなった方を中心として、粘膜が太ってしまっている場合が多いので、ここの処置をします。特に形には影響しません。 ここまでで鼻の詰まりの原因がほとんど解消されます。
そして最後に、見た目の調整です。実際にはこの時点ではまだ、曲がりが少し残っていたり、左右差があったりします。
③ テントの左右差を整えながら、支柱である壁も補強して、全体の形を整える
テントの天井の部分は、上半分は骨、下半分は軟骨で出来ているとお話ししました。なので、この時点で骨の天井部分が左右左があればここを特殊な器械を使って切って形を整えます。
軟骨の天井部分においてもやはり切ったり、糸で固定したりして形を整えます。最終的に形が整ったら、手術は終了です。
僕の所属している聖路加国際病院では基本的に、
全身麻酔(ぜんしんますい) 通常2泊の入院治療になります。
- キズはお鼻の中と、鼻の穴の間の皮膚に5mmくらいの切開がされますが、最終的にはほとんど見た目にわからないくらいになります。
- 術後は鼻の穴の中に詰め物をして、鼻の部分だけ固定のためのギプスをします。詰め物は翌日や術後2日目に抜去します。
- 術後1週間で抜糸、数週間は夜間だけギプスを継続、腫れは1週間で落ち着く場合から、骨を切ると数週間持続する場合もあるので担当医師に確認してください。
- 術後2週間程度は日常生活での最低限の生活負荷で、運動は控えてもらっています。
- マスクをしても良い環境であれば、退院後はすぐにお仕事に復帰される方が多いです。
- リスクとしては、出血、感染、キズが開く、曲がり・左右差の残存、鼻閉の残存、変形の後戻り、などがあります。
用については、保険治療の場合は変形外鼻手術(へんけいがいびしゅじゅつ)という術式が適応されます。これには保険治療となる基準が厚生労働省からも公表されており、
- 先天性の高度斜鼻・鞍鼻、口唇裂外鼻又は上顎洞・外鼻の悪性腫瘍術後等による機能障害を伴う外鼻の変形に対して、機能回復を目的として外鼻形成を行った場合に算定する。 なお、外傷等による骨折治癒後の変形等に対するものは、区分番号「K334-2」鼻骨変形治癒骨折矯正術により算定する。
- 単なる美容を目的とするものは保険給付の対象とならない。
となっています。ですので、鼻詰まりなどの機能障害があるお鼻の変形で、その機能を改善する目的で手術をする場合に保険治療とみなされます。手術の費用な3割負担の場合で約5万円で、これ以外に麻酔の費用などがかかります。
まとめ
鼻の詰まりと鼻の曲がりは密接に関係しています。
- 鼻の真ん中の壁をまっすぐにする
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真ん中の壁である鼻中隔(びちゅうかく)が曲がっているので、これを手術でまっすぐにします。 - ブクブクと膨らんだ鼻の粘膜をスッキリさせる。ここまでで鼻の詰まりの原因がほとんど解消されます。
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鼻の穴の壁は粘膜でできています。これらの粘膜が膨らんでいるのを手術でスッキリさせることができます。 - テントの左右差を整えながら、支柱である壁も補強して、全体の形を整える。見た目の治療です。
↓
鼻の曲がっている人は、鼻全体の左右差があるケースがほとんどです。きちんと左右差を診断してもらい、正しい手術プランを立ててもらうことが重要です。
次回の記事では、実際の患者さんの例を参考にして、診断から治療の流れについて見てみたいと思います。
この患者さん、小さい頃にぶつけてからのお鼻の曲がりと鼻詰まりを治したいとご相談にいらっしゃいました。どこに曲がりがあって、何をすればよくなるか、なんとなくお鼻の中が見えてきましたか? きっと理解が深まると思います、ぜひ次も読んでくださいね。
齋藤 隆文(さいとう たかふみ)
日本形成外科学会認定専門医
神戸大学医学部医学科卒
現在は加藤クリニック麻布、聖路加国際病院に所属。専門はお顔の美容外科、特に鼻の治療。
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