東京で美容外科医をしている齋藤隆文(形成外科専門医)です。当サイトで、美容コラムを担当しています。この記事の一番最後に、現在の東京での診療案内を載せていますので、受診希望の方は私のホームページの問い合わせフォームからお問い合わせください。

鼻尖、もっと細くなんないかな〜〜〜〜

鼻先をもっとほっそりさせたい、丸い鼻先をスッキリさせたい。指で鼻先をつまんで細くなったのを見て、こうなればいいのにな〜なんて思ったこと、ありますよね。

美容外科において一般的には、鼻尖形成びせんけいせいや鼻尖縮小びせんしゅくしょうといった名前がつけられていたりします。

そして、そんな鼻先を細くしたいという思いを胸に、私の外来にいらっしゃると決まって聞かれるのが、

私、鼻尖縮小だけでよくなりますか?

というご質問です。これ、本当に多いんです。こういった質問が多くなる理由の一つに、これらの術式で具体的になにをするのかがわからない、という状況が挙げられます。

というのも

あなたがインスタで見た鼻尖縮小って、どんな治療でしたか?

とお聞きすると、

なんか〜、糸で細くするらしいですよ。
先生はできませんか?

みたいな流れになってきます。そうです、鼻尖形成や鼻尖縮小という言葉だけが広まってしまい、具体的になにをするのかについて理解できているケースは少ないのが実情なんです。

鼻先は、皮膚と、脂肪と、軟骨なんこつで形作られています。これらの構造こうぞうやバランス、量を調整することをすべてひっくるめて、鼻尖形成と呼ぶのが正しいと思います。

つまり、オーダーメイドの治療が必要で、糸で縛ってしばって終わり!みたいなことでは困るわけです。今回の記事の要点を先にまとめてみます。

  1. 鼻先は皮膚、脂肪、軟骨によって形つくられている
  2. 皮膚から脂肪にかけては主に切除せつじょして厚み・量を調整する。軟骨は形をトリミングと糸を使って整える
  3. 鼻先は、鼻筋からのラインによって印象が大きく変わる

今回は、一番世の中で使われている、糸と耳の軟骨を用いた鼻尖形成について、実際の症例を見ながら解説してみたいと思います。

自分にどんな治療が合っているかわからずに、ドクターに丸投げで手術を受けるのはとても怖いことです。

特に、値段が安いから、モニター価格で受けられるから、などという手術とは直接関係のない理由で手術を受けようとしている場合はなおさら危険です。修正手術は複雑でとってもとってもとっても、大変です。

この記事を読めば、自分には鼻尖形成、鼻尖縮小が合っているのかがなんとなく見えてきます。そして、腕の確かなドクターに、オーダーメイドの治療プランを立ててもらおうと、正しいドクター選びへと進んでいけると思います。

糸でしばるだけでは細くならない。鼻先は皮膚、脂肪、軟骨のバランスで考える

切らない〇〇、みたいな美容の治療がどんどん増えてきて、気軽に美容医療びよういりょうを受けられる時代になりました。手術というのは普通怖いものでしょうし、切らないで形がよくなるならそれは素晴らしいことです。

ただし、いくつかの注意点があります。そのうちの一つに、担当ドクターが、施術を受ける部位の皮膚の下にある構造こうぞう、いわゆる解剖かいぼうについて正しく理解できているか、という問題があります。

というのも、鼻の構造はとても複雑なんです。絵で表現するのがもっとも難しい顔のパーツの一つでもあり、皮膚、脂肪、軟骨が絡み合いながらあの美しい造形ぞうけいを形作っています。

なので、それらの構造を直接見ることなく、糸だけをかけてなんとなく縛ってくる、みたいな治療で形を良くしようとするのは、ギャンブルとしかいいようがありません。

私が研修医の頃、鼻とまぶたの名医として知られるお師匠さんとの会話でこんなことがありました。

専門医をとったら、美容外科はまずは埋没法をマスターするところからですよね先生!

先生にはまだ埋没法は早いな〜。
まぶたも鼻も、まだまだたくさん切開治療を経験して、解剖かいぼうをマスターしたら、切らないでも良い形を作れるかもね。

解剖かいぼうというのは、皮膚や脂肪、軟骨の構造、形のことです。この解剖を一番良く知っているのは、たくさん切開治療をしている外科医に他なりません。

特に鼻は、手術をすればするほどその構造の複雑さを思い知らされます。私のお師匠さんは、クローズ法という鼻の中だけを切開するアプローチで鼻整形ができる数少ない名医として知られています。

そんな先生も、オープン法という鼻の皮膚の部分にも切開をして解剖がよく見えるアプローチで行う鼻の手術を数え切れないほど経験した後に、クローズ法での手術法を完成させたそうです。

一見お手軽に見える、切らない〇〇術。これからもどんどん新しい術式が出てくることでしょう。それ自体は、とても良いことです。

ただし大事なことは、それでなにが変わって、形がどのように変化して、最終的な仕上がりがどうなるかまでをきちんと説明してくれるドクターでない限り、その治療を受けるのは慎重に考えたほうが良さそうだ、ということです。

ちなみに、私のお師匠さんは杖も持っていなければ鶴も背負っていません。長生きしてほしいので、福禄寿さんという、七福神をイメージ画にしてみました。

皮膚と脂肪、軟骨はそれぞれ調整方法が違う。※実際の鼻の軟骨の写真が出ます

さて、皮膚、脂肪、軟骨なんこつそれぞれの組織をどうやって調整するのかについて具体的にみていきたいと思います。

最後の方に鼻の軟骨のお写真が出ますので、苦手な方は注意してください。

まず皮膚ですが、これはずばり減らすという方法しかありません。アジア人の皮膚は分厚い場合が多く、時には皮膚を直接切除する方法をとる先生もいらっしゃるみたいですが、私は基本的に行っていません。

鼻先や鼻筋に残った傷跡は基本的に目立ちやすいです。そして一度切ったら、もとに戻すことはできません。慎重な判断をしてください。

次に、脂肪です。基本的には触れば脂肪の厚い人というのはだいたいわかります。手術でていねいに切除してくるだけで結構すっきりする場合もあります。

ただし、薄くしすぎて皮膚に切り込むと皮膚が壊死えししてだめになってしまうリスクがあります。実際にはいくつかのコツがあり、それを守って手術をしていればそういったリスクは避けられます。

最後に、軟骨です。軟骨については、まず、その形がとても複雑であることを知っていただきたいです。

鼻の解剖

これは手術中に、鼻の軟骨だけをきれいに露出させた状態です。丁寧な手術を行うことで、皮膚と脂肪、軟骨はごく少量の出血できれいに分けることができます。またきれいな手術をすれば、術後もあまり腫れません。

このような口ではとても説明できないような複雑な三次元的な形をしているのが鼻の軟骨です。これを、なんとなく糸をかけるだけで形をよくするのがとても難易度が高いことがおわかりいただけるかと思います。

実際には、この軟骨のどこを細くすればどこの形が変わるか、とか、どことどこを縫い合わせれば鼻先が効果的に細くなるか、などのコツが説明しきれないほどにあります。

そして、他の部位から採取してきた軟骨を組み合わせることで、さらに多くのバリエーションの中から鼻先の形を作っていくこともできます。

そういったたくさんの手技の組み合わせによって、それぞれの鼻に最も効果的な治療を行うのが鼻尖形成ということになります。

軟骨の調整だけで細くした症例写真を見る

それでは、実際の症例写真を見てみたいと思います。

鼻尖形成 斜め 術前後
鼻尖形成 術前後 横

この方は鼻の曲がり、詰まりがあり私のところにご相談にいらっしゃいました。形の希望として、鼻先は少し下げて、細くしたいということでした。

外来では写真でのシミュレーションを行い、鼻先が少しだけ前に出て下がった位置で、全体のバランスが自然な形に収まることを確認し合うことでプランが決定されました。

この方の鼻尖は皮膚は厚くなく、診察上も脂肪は少なかったので、軟骨の形を整えるだけで細くなると判断し、治療プランを整えました。具体的には、下記のようなことをしています。

  1. 鼻尖びせんをつくっている軟骨の形をトリミングと吸収性の糸で整えています。
  2. 皮下脂肪が厚い場合は脂肪を減らすこともありますが、今回は行っていません。
  3. 鼻中隔軟骨を使って鼻尖を少し出して、最後に耳の軟骨で鼻尖の形を整えました。
鼻尖形成 鼻尖縮小 斜め
鼻尖形成 鼻尖縮小 正面
鼻尖形成 鼻尖縮小 横

なお、今回の患者さんは、鼻詰まりのある曲がった鼻の治療希望でしたので、曲がった鼻尖を真ん中に修正しながら、鼻尖の印象を自然な範囲で調整しました。

骨の軽度の曲がりは、患者さんのご希望で骨切り等の治療は行いませんでした。

まとめ

鼻尖形成びせんけいせい、鼻尖縮小びせんしゅくしょうについて正しく知るためには、まず鼻がどんな構造をしているのかを知る必要があります。

それを知っていれば、ドクターが言っている治療で本当にうまくいくのかを少しは想像できるようになるかと思います。

また、自分の皮膚は厚いのか薄いのか。脂肪は多いのか少ないのか。そして、軟骨の形はどうなっているのか、それぞれをドクターと事前に話しておくことで、自分が立ててもらったプランで本当にうまくいきそうかを感じることができるようになります。

そのときに、いまいち腑に落ちなかったり、ドクターの説明ではどうもうまくいきそうな気がしない場合には、その手術を受けるのは慎重に考えていただいたほうがいいかもしれません。

いい治療というのは、常にシンプルで、筋が通っているものだそうですよ。

引用論文

Mao GY, Yang SL, Zheng JH, Liu QY. Aesthetic rhinoplasty of the Asian nasal tip: a brief review. Aesthetic Plast Surg. 2008 Jul;32(4):632-7. doi: 10.1007/s00266-008-9114-1. PMID: 18214585.

Toriumi DM, Swartout B. Asian rhinoplasty. Facial Plast Surg Clin North Am. 2007 Aug;15(3):293-307, v. doi: 10.1016/j.fsc.2007.04.003. PMID: 17658425.

今回の治療内容について

<施術内容> 鼻中隔延長 鼻尖形成 鼻中隔彎曲・斜鼻矯正術

<手術費用> 約100〜120万円 
*モニター制度の場合、減額あり
*これ以外に検査費用・麻酔費用などがかかる場合があります。
*斜鼻、鼻中隔彎曲症の場合、保険適応となる場合があります。

<リスク>  術後出血、感染、キズが開く、曲がりや変形の残存、後戻り、など

さいとう隆文 顔写真

齋藤 隆文(さいとう たかふみ)
日本形成外科学会認定専門医
神戸大学医学部医学科卒
現在は加藤クリニック麻布、聖路加国際病院に所属。専門はお顔の美容外科、特に鼻の治療。

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