東京で美容外科医をしている齋藤隆文(形成外科専門医)です。当サイトで、美容コラムを担当しています。この記事の一番最後に、現在の東京での診療案内を載せていますので、受診希望の方は私のホームページの問い合わせフォームからお問い合わせください。
口唇口蓋裂は、生まれつきのお顔の先天異常の一つで、上くちびるや口蓋(口の天井)が完全には閉じていない状態です。これにより、お顔の左右非対称やお鼻の変形といった外観への影響が出るだけでなく、発音や食事、呼吸にも問題が生じることがあります。通常は就学前までに必要な手術の大部分が終わりますが、お顔の成長後に見た目の問題が残ってしまうことが少なくありません。ここでは特に、お鼻の変形に焦点を当てて解説していきます。
- 口唇口蓋裂の鼻手術の目的は、左右差の改善、美容的なバランスの改善、鼻詰まりなどの機能改善
- 手術は鼻柱部の小さい切開からアプローチし、鼻の中の軟骨を使って形を整える。耳の軟骨を使うこともある。
- 手術時期は女子で14~15歳、男子で17~18歳以降
- 鼻修正手術は比較的安全な手術だが、感染、出血、麻酔のリスク、術後すぐは1週間程度の目立つ腫れや内出血などがある。
上記のような要点について、詳しく見ていきましょう!
鼻修正手術をなぜ行う必要があるのか?
口唇口蓋裂の影響は、鼻の形状にも現れます。特に、鼻先が曲がったり、片方の鼻の穴が小さかったりすることがあります。これらの問題を解決するために、鼻修正手術が行われることがあります。
口唇裂に伴う鼻の形状の変化は、両側唇裂と片側唇裂でそれぞれ特徴があり、鼻修正手術の必要性とアプローチに違いが生じます。以下に、それぞれの状態における鼻修正手術の必要性について詳しく説明します。
片側唇裂における鼻修正手術の必要性
片側唇裂は、唇の片側だけに裂け目が存在する状態です。この場合、鼻の形状にも左右非対称性が見られることが一般的です。特に、裂け目の側の鼻の穴が小さくなり、鼻翼が下がって見えることがあります。また、鼻中隔と呼ばれれる、左右の鼻の穴を分ける仕切りになっている壁の軟骨が曲がり、鼻先が裂け目の側に曲がっていることもあります。
鼻修正手術は、このような左右の非対称性を修正し、鼻の見た目を改善することを目的とします。手術では、鼻翼の位置を調整し、鼻の穴のサイズを均等にすることで、鼻の外観を対称的にします。また、鼻中隔の曲がりを矯正し、鼻先の位置を中心に戻すことも行われます。
両側唇裂における鼻修正手術の必要性
両側唇裂は、唇の両側に裂け目が存在し、中央の鼻下の部分の皮膚が短く、前方に突出することが特徴です。この状態では、鼻の形状に顕著な変化が見られ、特に鼻先が広がり、鼻孔が大きく見えることがあります。また、鼻中隔の形状の問題も影響し、鼻先の形状が扁平でのっぺりした印象になることも一般的です。
両側唇裂における鼻修正手術の目的は、鼻先の扁平なラインを調整し、鼻の形状をより自然なものに近づけることです。手術では、鼻中隔の曲がりがないことを確認してから、鼻中隔延長術という耳や鼻の中の軟骨を用いた術式で鼻先の高さを調整し細く整形します。また、鼻孔の大きさや形状を調整し、全体的なバランスを改善することも目指します。
手術の目的は見た目の機能の改善
口唇口蓋裂に関連する鼻修正手術の主要な目的は、見た目と機能の両方を改善することにあります。見た目に関しては、手術は患者さんの顔の左右対称性と美容的な自然さを回復し、社会的自信と生活の質を向上させるための重要な役割を果たします。
非対称な鼻形状、突出した鼻中隔、不均等な鼻孔は、患者さんの外見に大きな影響を与えることがあり、これらの問題を修正することで、より自然な外観を得ることができます。
一方で、機能の観点からは、鼻修正手術は呼吸を改善することを目指します。口唇口蓋裂は鼻の通気性に影響を及ぼすことがあり、手術によって鼻中隔の位置を正しい位置に戻したり、鼻孔のサイズを調整することで、空気の流れが改善されます。
このように、手術は見た目だけでなく、お鼻の基本的な機能にも着目し、患者さんが快適に呼吸できるようにすることを目標としています。全体的に、鼻修正手術は患者の外観の改善と生活の質の向上を目指し、同時に呼吸機能の最適化を図ることで、患者さんの全体的な幸福と健康に寄与します。
手術方法 最新研究に基づいた、正しい鼻中隔延長術が極めて効果的
鼻修正手術では、まず鼻の骨格を詳細に評価し、必要に応じて骨や軟骨を再配置または追加します。この手術では、鼻中隔軟骨や耳の軟骨が使用されることが一般的です。
国際的な最新の研究では、口唇口蓋裂の鼻手術においては、鼻中隔延長術という術式が最適であると考えられています。実は私が2023年に書き上げたのが、まさに口唇口蓋裂の鼻修正で鼻中隔延長術を用いるというものです。
私の研究では、いかに口唇口蓋裂の鼻変形を修正し、平均的なお鼻の形に仕上げるか、というものです。この論文では、
- 鼻先は鼻中隔延長術を使うことで安定して平均的な高さまで改善させることが可能
- 鼻筋にも高さを出す必要な患者さんが多い。皮膚・脂肪・軟骨を材料にすることができる。
- 必要に応じて、口唇の傷跡の修正などを組み合わせることで、一度に複数の問題点を改善させることが可能
といったことについてまとめており、平均的なお鼻の形に仕上げるための鼻中隔延長術の方法論について詳しく書き上げています。この論文は、アメリカ美容・形成外科学会の公式医学雑誌に認められ、掲載が決まっています。
外来では、どういった方法で仕上げていくのか、どうすれば大きな改善が得られるのか、どんな注意点があるのかをより詳しく説明させていただくように心がけています。
手術のタイミングは、お顔の成長が終わってから
口唇口蓋裂の修正手術は、通常は幼少期に行われますが、鼻の最終的な修正手術は成長がほぼ完了した青少年期以降に行われることが多いです。女子の場合は14~15歳、男子の場合は17~18歳が一つの目安になります。これは、成長期に大きく進むお鼻の成長に悪い影響を与えないようにするためです。
特に、お鼻のバランスや美容的な形の大きな改善を目的にする場合は、必ずこの成長期が終了したタイミングで検討すべきです。
リスクと合併症を知る 正しくやればリスクは避けられる
耳軟骨や鼻中隔軟骨を使用したお鼻の手術は、鼻の見た目の形を改善するために行われますが、この手術にはいくつかのリスクや合併症が伴います。手術による感染リスクは、適切な術後ケアによって最小限に抑えられますが、万が一感染が起きた場合は迅速な治療が必要です。
適切な抗生剤を必要な期間しっかりと使用し、手術後の時期に応じて注意点を理解し、きちんと経過を見ていくことが大事です。出血や腫れについては、大きな腫れは1週間程度、7、8割の腫れは数週間で自然に解消します。
軟骨の吸収は、移植した軟骨が時間とともに体内で分解される現象であり、これにより手術の結果が変化する可能性があります。また、手術後に期待した通りの形状にならない、あるいは時間とともに鼻の形状が変わってしまうこともあり得ます。
軟骨の採取部位である耳や鼻中隔に痛みや知覚の低下が生じることがありますが、これは通常、一時的なもので時間の経過とともに改善していきます。
まとめ
口唇口蓋裂の鼻修正手術は、患者さんの外観と機能を大きく改善する可能性を秘めています。しかし、手術を受けるかどうかの決定には、患者および保護者と医師の十分なコミュニケーションが必要です。また、経験豊富な医師による正確な評価と計画が、成功の鍵となります。
最後に具体例として、鼻中隔延長術を使ったお鼻の手術をお受けになられた患者さんの術前後写真をご紹介します。
鼻尖形成 鼻中隔延長 隆鼻(鼻筋) 耳軟骨・肋軟骨採取 他院修正 鼻翼基部形成 全身麻酔
費用 保険診療の場合 高額療養費申請により10~30万円程度 自費診療の場合 170万円
リスク 内出血 感染 腫れ 一時的な痺れ 違和感 左右差 曲がり 鼻詰まり残存 など
齋藤 隆文(さいとう たかふみ)
日本形成外科学会認定専門医
神戸大学医学部医学科卒
現在は加藤クリニック麻布、聖路加国際病院に所属。専門はお顔の美容外科、特に鼻の治療。
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