オゼンピック中はタンパク質が重要!筋肉を落とさず痩せる理由

オゼンピック中はタンパク質が重要!筋肉を落とさず痩せる理由

オゼンピック(セマグルチド)による減量では、落ちた体重の約25〜40%が筋肉を含む除脂肪量だと報告されています。「痩せたのに体がたるむ」「代謝が落ちてリバウンドしやすい」という悩みは、筋肉の減少と深く結びついています。

筋肉の減少を抑えるカギは、タンパク質の十分な摂取です。食欲が落ちるオゼンピック服用中でも、体重1kgあたり1.2g以上を意識して摂ることで、脂肪中心の体重減少をめざせます。

本記事では必要なタンパク質の量や食材の選び方、レジスタンス運動との組み合わせ方まで、医学的根拠をもとに解説します。

目次 Outline

オゼンピックで減るのは脂肪だけではない — タンパク質が減量の質を左右する

オゼンピックによる減量では、脂肪と同時に筋肉を含む除脂肪量も減少します。タンパク質の十分な摂取が「脂肪を落として筋肉を守る」ための分岐点になるでしょう。

STEP 1試験が示した体重減少と除脂肪量の減り方

オゼンピック(セマグルチド2.4mg)の大規模臨床試験であるSTEP 1試験では、68週間で平均14.9%の体重減少が確認されました。一方で除脂肪量は約6.9kg減少し、減った体重のうち約45%が脂肪以外の組織から失われたと報告されています。

こうした数字は「体重が減れば成功」と考えがちな方にとって驚きかもしれません。けれども体組成の変化に目を向けなければ、見た目も代謝も満足のいく結果にたどり着きにくいのが実情です。

筋肉量が減るとリバウンドしやすくなる?

筋肉は安静時にもエネルギーを消費する組織です。筋肉量が減ると基礎代謝が低下し、同じ食事量でも余剰カロリーが生まれやすくなります。その結果、治療を終えた後にリバウンドするリスクが高まります。

さらに筋肉は血糖コントロールにも深く関わっており、食後に血液中のブドウ糖を取り込んで血糖値の急上昇を抑える働きを担っています。筋肉量の低下は肥満だけでなく糖代謝の悪化にもつながりかねません。

オゼンピックの食欲抑制がタンパク質不足を招きやすい背景

オゼンピックはGLP-1受容体作動薬(腸から分泌されるホルモンの働きを模倣する薬)として食欲を強力に抑えます。食事量そのものが減ることで、カロリーだけでなくタンパク質の摂取量も大きく落ち込みやすくなります。

ある調査では、GLP-1受容体作動薬を使用中の患者の多くが体重1kgあたり1.0gを下回るタンパク質しか摂れていなかったと報告されています。タンパク質不足が長期化すると筋分解が進み、せっかくの減量が「不健康な痩せ方」に傾いてしまいます。

指標セマグルチド群プラセボ群
体重変化率(68週)−14.9%−2.4%
除脂肪量の減少約6.9kg軽度
体重減少に占める除脂肪量約40〜45%約25%前後

オゼンピック服用中に筋肉が落ちやすい3つの原因

筋肉が落ちる原因は「薬の副作用」だけではありません。食事量の減少、急激な体重変化、そして個人のリスク因子が複合的に絡み合っています。

食事量の減少がもたらすタンパク質と総カロリーの不足

オゼンピックは満腹感を強めることで食事量を自然に減らします。総カロリーが減ると体は脂肪を燃焼しますが、タンパク質の供給が不十分だと筋肉のタンパク質を分解してアミノ酸を確保しようとします。

とくに朝食を抜いたり、お粥やゼリー飲料だけで済ませたりする食事パターンが続くと、1日のタンパク質摂取量はさらに低下します。少ない食事の中にもタンパク質源を組み込む工夫が減量の質を高めるカギです。

急激な体重減少と筋分解の関係

体重が短期間で大きく落ちると、体は生命維持のためにエネルギーを節約しようとします。エネルギー源として脂肪だけでなく筋肉中のアミノ酸も動員されるため、減量スピードが速いほど筋肉の損失割合が増加しやすいといえます。

月に体重の5%を超えるペースで減っている場合は、主治医と相談のうえオゼンピックの用量を調整したり、食事内容を見直したりすることが大切です。

高齢者・女性はとくに筋肉量低下のリスクが高い

年齢を重ねると筋肉の合成能力は自然に低下し、同じ量のタンパク質を摂っても筋肉に変わりにくくなります。加えて女性はホルモンの影響で男性よりも筋肉量が少ない傾向があり、減量時の筋肉減少の影響を受けやすいでしょう。

以下のようなリスク因子がある方は、とくに注意が必要です。

  • 65歳以上の方や筋力の衰えを感じている方
  • 閉経後の女性でホルモンバランスが変化している方
  • もともと運動習慣がなく筋肉量が少ない方
  • 糖尿病を合併していてインスリン抵抗性が高い方

オゼンピック中に意識したいタンパク質の量と摂り方

体重1kgあたり1.2〜1.5gのタンパク質を毎日摂ることが、筋肉量維持の目安として多くの研究で示されています。食事量が少なくなるオゼンピック服用中でも、この量に近づける食品選びが重要です。

体重(kg)1日の目標タンパク質量1食あたりの目安
50kg60〜75g20〜25g
60kg72〜90g24〜30g
70kg84〜105g28〜35g
80kg96〜120g32〜40g

1食20g以上を目安にした3食分散型の食事設計

筋肉のタンパク質合成は、1回の食事で20〜30gのタンパク質を摂ったときに効率よく活性化されることが知られています。まとめて1食で大量に摂るよりも、3食に分けて均等に摂取するほうが筋肉の維持に効果的です。

朝食に卵2個とヨーグルト、昼食に鶏むね肉や魚の主菜、夕食に豆腐や赤身肉を組み合わせるなど、各食事にタンパク質源を1品以上取り入れる意識が大切でしょう。

吐き気があっても摂取しやすいタンパク質食品

オゼンピックの副作用として吐き気を感じる方は少なくありません。脂質の多い肉や揚げ物は胃もたれを起こしやすいため、消化にやさしい食品を選ぶことがポイントです。

たとえば、半熟卵、蒸し鶏、白身魚、絹ごし豆腐、ギリシャヨーグルトなどは胃への負担が軽く、吐き気がある時期でも比較的食べやすいタンパク質源といえます。冷たい状態で食べると匂いが抑えられ、さらに摂取しやすくなるでしょう。

プロテインサプリメントは補助的に活用できる

食事だけでは十分なタンパク質を確保しにくい場合、プロテインパウダーやプロテインバーなどのサプリメントを補助的に取り入れることも選択肢の一つです。ホエイプロテインはロイシンを多く含み、筋タンパク質の合成を促す効果が期待できます。

ただし、サプリメントに頼りすぎると食事全体のバランスが崩れる恐れがあるため、あくまで食事を基本にしたうえでの「補足」として位置づけてください。腎機能に不安のある方は、事前に主治医への相談をおすすめします。

タンパク質摂取と筋トレの併用がオゼンピック中の筋肉を守る

タンパク質をしっかり摂るだけでは、筋肉の減少を完全には防げません。レジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせてはじめて、筋肉への「使う信号」が送られ、タンパク質が効率よく筋肉に取り込まれます。

レジスタンス運動が除脂肪量を維持する仕組み

筋肉に負荷をかけると、筋繊維に微細な損傷が生じます。体はこの損傷を修復する際に食事から得たアミノ酸を使って筋繊維を太く再生しようとするため、タンパク質摂取と運動のタイミングが合えば筋肉量の維持・増加につながります。

研究では、10週間以上の継続的なレジスタンス運動で除脂肪量が約3kg増加し、筋力が約25%向上したという報告もあります。オゼンピックで減量しながらでも、適切な運動を取り入れれば筋肉を守ることは十分に可能です。

運動の種類筋肉維持への効果おすすめ頻度
レジスタンス運動(筋トレ)筋量維持・増加に高い効果週2〜3回
有酸素運動(ウォーキング等)脂肪燃焼に有効だが筋肉維持効果は限定的週3〜5回
併用(筋トレ+有酸素)脂肪減少と筋肉維持の両方を狙える各週2〜3回

週2〜3回の自重トレーニングで十分な効果が得られる

ジムに通えなくても、自宅でのスクワットや腕立て伏せ、椅子を使った立ち座り運動など、自分の体重を使ったトレーニングで筋肉を刺激できます。大切なのは「少し辛い」と感じる強度を維持し、週に2〜3回は取り組むことです。

1回のトレーニング時間は20〜30分程度でかまいません。短時間でも継続することが筋肉維持にとって何より効果的であり、完璧を求めすぎて続かなくなるよりも、無理のない範囲で習慣化するほうがよい結果につながります。

有酸素運動だけでは筋肉の維持は難しい

ウォーキングやジョギングは心肺機能の向上や脂肪燃焼に優れていますが、筋肉に対する直接的な負荷が弱いため、それだけでは筋肉量を保つ効果が十分ではありません。有酸素運動を中心に取り組んでいる方は、レジスタンス運動をプラスすることで体組成の改善効果が高まるでしょう。

ランダム化比較試験の結果からも、有酸素運動単独よりもレジスタンス運動を併用したグループのほうが除脂肪量の減少を抑えられたと報告されています。

オゼンピックダイエット中のタンパク質摂取で起こりがちな失敗

「食べられないから仕方ない」と栄養を後回しにすると、筋肉の減少は加速します。よくある3つの失敗パターンを知っておくことで、早い段階で軌道修正が可能です。

食べられないからと栄養バランスを放置してしまう

吐き気や食欲低下があると、食べやすいもの — パンやお粥など炭水化物中心の食事 — に偏りがちです。カロリーはある程度摂れていても、タンパク質がほとんど含まれていなければ筋肉の材料が不足し、体は筋肉を分解してエネルギーに変えてしまいます。

  • タンパク質源(卵・豆腐・ヨーグルトなど)を食事の最初に食べる
  • 少量でもいいので毎食タンパク質を含む食品を1品以上取り入れる
  • 食べられる量が少ない日はプロテイン飲料で補う

このような小さな工夫の積み重ねが、筋肉量を維持する力になります。

炭水化物を極端にカットしてエネルギー不足に陥る

「糖質制限とオゼンピックを併用すればもっと痩せるはず」と考える方もいますが、エネルギー源が極端に不足すると体はタンパク質をエネルギーとして消費します。せっかく摂ったタンパク質が筋肉の材料ではなく燃料に回されてしまうため、適度な炭水化物の摂取もやはり大切です。

ご飯を半膳程度に減らしつつ、タンパク質と野菜を中心にバランスよく食べることが、脂肪を減らしながら筋肉を守るうえで理にかなった方法といえます。

自己判断でタンパク質を過剰に摂取する危険

「たくさん摂れば摂るほど筋肉がつく」というわけではありません。体重1kgあたり2.0gを大きく超える量を長期間摂り続けると、腎臓への負担が増す可能性があります。

とくに糖尿病を合併している方は腎機能が低下しやすいため、タンパク質量の上限についても主治医と相談したうえで決定するのが安全です。目安はあくまで目安であり、個人の病状や腎機能に応じた調整が必要です。

主治医や管理栄養士と連携しながらオゼンピック中のタンパク質を管理するコツ

自分だけで栄養管理を完璧にこなすのは容易ではありません。医療チームとの連携が、安全かつ効果的な減量を長期間続けるための基盤になります。

定期的な体組成測定で筋肉量の変化を見える化する

体重計の数字だけでは、減った体重が脂肪なのか筋肉なのか区別できません。体組成計やDXA(二重エネルギーX線吸収測定法)を定期的に受けることで、脂肪量と除脂肪量の変化を客観的に把握できます。

測定項目チェック頻度の目安
体重毎日〜週1回
体組成(体脂肪率・筋肉量)月1回
握力(筋力の指標)3か月に1回

数値の推移を記録しておくと、主治医や管理栄養士との相談時に具体的なデータをもとに方針を決められるため、より精度の高い食事指導を受けやすくなります。

管理栄養士への相談で食事プランを個別に調整する

タンパク質の推奨量は体重や年齢、合併症の有無によって変わります。管理栄養士に相談すれば、吐き気の程度や食の好みまで考慮した具体的な献立提案を受けることが可能です。

とくにオゼンピック導入初期は吐き気が出やすい時期であり、この期間に適した食品の選び方や調理法を専門家から学んでおくと、栄養不足を防ぎながらスムーズに治療を続けられるでしょう。

減量ペースが速すぎるときは用量の見直しを検討する

1か月に体重の5%を超える急激な減量が続くと、筋肉の減少リスクが一段と高まります。こうした場合は主治医に相談し、オゼンピックの用量を一時的に下げるか、段階的に増量するペースを緩めるなどの対応を検討してみてください。

減量は「速さ」よりも「質」を優先することが、長い目で見たときの体型維持や健康維持につながります。焦らず、タンパク質をしっかり摂りながらゆるやかに体重を落とすことが理想的です。

サルコペニア肥満を防ぐためにオゼンピック服用中から始めたい筋肉ケア

見た目は痩せても筋肉量が極端に少ない「サルコペニア肥満」は、心血管疾患や死亡率の上昇と関連が指摘されている深刻な状態です。オゼンピックによる減量中からの筋肉ケアが、この状態を未然に防ぎます。

サルコペニア肥満とはどんな状態か

サルコペニア肥満は、筋肉量の減少(サルコペニア)と過剰な体脂肪(肥満)が同時に存在する状態を指します。通常の肥満よりも代謝異常や身体機能の低下が進みやすく、転倒・骨折のリスクも上昇します。

SEMALEAN研究ではセマグルチド治療開始時に約49%の患者がサルコペニア肥満に該当していたものの、治療とタンパク質管理の併用で12か月後には33%まで低下したと報告されています。早期からの対策が効果的であることを示す結果です。

減量後のリバウンドと筋肉減少の悪循環を断つ

オゼンピックの投与を中止した後、体重がリバウンドするケースは珍しくありません。リバウンド時に増える体重は主に脂肪であり、減量中に失った筋肉はそのまま戻りにくいという特徴があります。

こうした「脂肪は戻るが筋肉は戻らない」というサイクルを繰り返すと、体組成は回を重ねるごとに悪化していきます。減量中にできるだけ筋肉を維持しておくことが、リバウンド時のダメージを最小限にとどめる予防策になるでしょう。

タンパク質と運動の継続がオゼンピック治療の効果を長持ちさせる

タンパク質の十分な摂取とレジスタンス運動の習慣化は、オゼンピック治療中だけでなく治療を終えた後も続けたい生活習慣です。筋肉量が保たれていれば基礎代謝の低下を抑えられ、治療後の体重維持が容易になります。

減量のゴールは「体重を減らすこと」ではなく「健康的な体組成を手に入れること」です。タンパク質と運動を日常の習慣として定着させることが、オゼンピック治療の恩恵を最大限に活かす方法といえます。

予防策期待できる効果
毎日のタンパク質1.2g/kg以上筋タンパク質の分解を抑制
週2〜3回のレジスタンス運動筋量・筋力の維持と向上
定期的な体組成チェック筋肉減少の早期発見と対処

よくある質問

オゼンピック服用中はタンパク質を1日何グラム摂ればよいですか?

一般的には、調整体重1kgあたり1.2〜1.5gが目安とされています。たとえば体重60kgの方であれば、1日あたり72〜90g程度のタンパク質が目標です。

ただし腎機能に問題がある方や糖尿病を合併している方は、主治医や管理栄養士と相談のうえで個別に適切な量を決定してください。

まずは毎食20g以上のタンパク質を確保することを意識すると、1日の目標量に到達しやすくなります。食事だけで難しい場合は、間食にヨーグルトやプロテイン飲料を取り入れてみてください。

オゼンピックで吐き気があるときでもタンパク質は摂るべきですか?

はい、吐き気がある時期でも可能な範囲でタンパク質を摂取することが望ましいです。消化にやさしい半熟卵、豆腐、白身魚、ギリシャヨーグルトなどは胃への負担が少なく、比較的食べやすい食品です。

冷たい状態で少量ずつ食べると匂いが気になりにくくなり、吐き気がある時期でも摂取しやすくなります。症状が強くほとんど食べられない場合は、無理せず主治医に相談し、用量や服用タイミングの調整を検討してもらいましょう。

オゼンピック中にプロテインサプリメントを併用しても問題ありませんか?

食事だけで十分なタンパク質を摂れない場合は、プロテインサプリメントを補助的に使うことは有効な手段です。ホエイプロテインはロイシンというアミノ酸を豊富に含んでおり、筋タンパク質の合成を促す作用が期待できます。

ただし、サプリメントだけに依存すると他の栄養素が不足しやすくなります。食事をベースにしたうえで足りない分を補うという使い方を心がけ、腎臓への負担が心配な方は医師に相談してから導入してください。

オゼンピックによる減量中に筋トレは必要ですか?

タンパク質を十分に摂ったうえでレジスタンス運動(筋力トレーニング)を行うと、筋肉の維持効果が格段に高まります。研究データでは、週2〜3回のレジスタンス運動を継続したグループで除脂肪量の減少が抑えられ、筋力も向上したことが確認されています。

自宅でできるスクワットや腕立て伏せなど、特別な器具がなくても始められる運動で十分な効果が期待できます。運動の経験が少ない方は、まず軽い負荷から始め、徐々に強度を上げていくことをおすすめします。

オゼンピックをやめた後にリバウンドで筋肉が戻ることはありますか?

リバウンドで増える体重の大部分は脂肪です。減量中に失った筋肉が自然に回復することは難しく、体組成はむしろ治療前より悪化する可能性があります。この「脂肪は増えるが筋肉は戻りにくい」という現象が繰り返されると、サルコペニア肥満のリスクが高まります。

そのため、オゼンピック服用中からタンパク質の摂取と筋力トレーニングを習慣づけ、できるだけ筋肉を残した状態で治療を終えることが大切です。治療を終了した後も運動と栄養管理を継続することで、リバウンドの影響を最小限に抑えられます。

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この記事を書いた人 Wrote this article

大木 沙織 大木皮ふ科クリニック 副院長

皮膚科医/内科専門医/公認心理師 略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。 所属:日本内科学会