ビクトーザのLEADER試験から見る心血管イベント抑制効果と安全性

ビクトーザのLEADER試験から見る心血管イベント抑制効果と安全性

ビクトーザ(一般名リラグルチド)は、心血管リスクが高い2型糖尿病の人を対象としたLEADER試験で、心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中を合わせた主要評価項目をプラセボより減らしました。発生割合は13.0%対14.9%です。追跡期間の中央値は3.8年でした。

この差は治療を受ければ心筋梗塞や脳卒中を必ず避けられるという意味ではなく、同じように心血管リスクが高い集団で比較した平均的な結果です。ビクトーザを使う目的や期待できる利益は、持病、年齢、これまでの心血管病、現在の治療によって変わります。

ここからは、比較の条件と数値、安全性を順に整理し、自分の治療へ当てはめる際の確認点を解説します。

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LEADER試験は安全性の確認から始まった

長く使ったときに、心臓や血管への重大な悪影響が許容できないほど増えないかが最初の確認点でした。そのうえで、プラセボと比べて心血管イベントが少なくなるかも評価されました。

血糖値だけでは長期的な影響の判断が難しい

糖尿病薬では血糖値の変化が大切ですが、その数値だけでは心筋梗塞、脳卒中、心血管死への影響を判断する材料として不十分です。そのため、実際に起きた重大な出来事を長期間数える心血管アウトカム試験という方法が選ばれました。血糖値が下がった事実と、将来の心血管イベントが減った事実は分けて評価する必要があります。

試験名のLEADERは、リラグルチドによる糖尿病での作用と心血管評価を表す英語名の略称です。血糖や体重を主に調べた別の試験群とは目的が異なるため、名前が似ていても分けて読む必要があります。

プラセボとの比較にも通常の治療を続けた

比較の条件として、9,340人はリラグルチド群とプラセボ群へ無作為に分けられ、どちらの群も血糖、血圧、脂質などに対する通常の治療を受けました。プラセボは有効成分を含まない比較用の注射であり、何も治療しない場合ではなく、標準的な治療へいずれかの注射を加えた比較です。

設計の要素LEADER試験での内容読み取れる意味
割り付けリラグルチドまたはプラセボ群間の条件差を抑えて比較
通常治療両群で継続実際の糖尿病診療に近い上乗せ比較
追跡中央値3.8年短期の血糖変化ではなく長期の出来事を評価

比較の偏りを抑えるため、どちらの注射かを本人にも担当者にも知らせない二重盲検法が用いられ、出来事も定められた基準で判定されました。この方法でも、日常診療にある患者さんごとの違いの再現には限界があります。

最初に非劣性、その後に優越性を評価した

結果を読むときは、安全性を確かめる非劣性と、より多く減らせるかを見る優越性を区別します。まずリラグルチドがプラセボより許容できないほど心血管リスクを増やさないことを確認し、その基準を満たした後で、出来事をより減らしたといえるかが検討されました。

診察で押さえたいのは、非劣性だけでなく優越性の基準も満たしたという二段階の結論です。ただし、目的と解析順序を踏まえずに「心臓の薬」と受け取ると、糖尿病治療薬として使われた条件から離れてしまいます。

対象は心血管リスクが高い2型糖尿病の人

自分への当てはまりを判断する基準は、2型糖尿病に加えて、心血管病の既往または複数の危険因子があることです。この条件に該当する9,340人が参加し、心臓や血管の危険が高い人が中心でした。人数や背景を抜きに、発生割合だけを自分へ当てはめることはできません。

年齢によって求められた条件が違う

50歳以上では、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患、慢性腎臓病などがある人を主な対象としました。60歳以上では、高血圧や腎機能低下など心血管病につながる危険因子を持つ人も含まれています。

  • 年齢と既往歴 … 50歳以上では心血管病や慢性腎臓病などを確認
  • 危険因子 … 60歳以上では高血圧や腎機能低下なども対象条件
  • 糖尿病の状態 … 2型糖尿病があり、過去1〜2カ月の平均血糖を反映するHbA1cは開始時7.0%以上

自分と対象者の近さを比べる目安として、平均年齢は約64歳、8割余りに心血管病または慢性腎臓病があった点を確認します。この背景なら、出来事が起きる割合が一般的な糖尿病集団より高くなり得る理由も理解できます。

試験集団と自分を比べる確認項目

結果を自分へ当てはめる際は、2型糖尿病という診断だけでなく、心筋梗塞や脳卒中の既往、腎機能、年齢、血圧、喫煙歴なども照合します。条件が近いほど参考にしやすくなりますが、同じ条件でも得られる利益には個人差があります。

心血管病を経験していない若い人や危険因子が少ない人では、もともとの発生確率が違います。相対的な減少割合が似ていても、一定期間に実際に避けられる人数の差は小さくなる可能性があります。

参加条件が示す結果の境界線

参加条件をそろえた無作為化比較には、群間の違いを薬の影響として検討しやすい利点があります。その反面、条件から外れる人への当てはめには慎重さが要ります。1型糖尿病の人や糖尿病がない人に、この数値をそのまま移すのは不適切です。

薬以外の条件にも目を向ける必要があります。対象者は定期的な診察と検査を受け、必要に応じて他の治療も調整されていました。薬だけを同じにしても、通院や危険因子の管理が大きく異なれば同じ結果になるとは限りません。

ビクトーザではどの心血管イベントを数えたのか?

数値を正しく読むには、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中のうち最初に起きた出来事をまとめた「主要複合評価項目」だと知っておく必要があります。3種類の全体で示された差と、個別項目の差は分けて受け取ります。

3つをまとめた主要評価項目

心血管死は心臓や血管の病気が原因と判定された死亡、非致死性心筋梗塞は死亡には至らなかった心筋梗塞、非致死性脳卒中は死亡には至らなかった脳卒中です。いずれも患者さんの生活や生命に大きく関わる重大な出来事です。

評価項目数え方読むときの注意
主要複合評価項目3項目のうち最初の1件同じ人の複数回の出来事は主要解析で重ねない
心血管死心血管の原因による死亡主要項目の一部で個別にも解析
非致死性心筋梗塞・脳卒中死亡に至らなかった発症各項目の推定幅も確認

複合評価項目を使うと重大な出来事をまとめて効率よく比較できます。一方、3項目が同じ程度に減ったという意味にはならず、全体の差がどの項目から生じたかも確認が必要です。

主な差は心血管死で示された

差の大きさを見ると、主要複合評価項目の発生割合はリラグルチド群13.0%、プラセボ群14.9%でした。ハザード比は0.87です。これは追跡中に起きる速さを群間で比べると、相対的に13%低かったという読み方です。

個別では心血管死が4.7%対6.0%で、ハザード比は0.78でした。一方、非致死性心筋梗塞と非致死性脳卒中はいずれもリラグルチド群で少ない方向でしたが、単独では偶然の差を否定できる範囲に達しておらず、3項目のすべてに同じ確かさの効果が示されたとはいえない結果です。

総死亡と心不全入院は分けて読む

原因を問わない総死亡は8.2%対9.6%で、リラグルチド群のほうが少ない結果でした。心血管死だけでなく総死亡も減った点は重要ですが、死亡原因や背景治療を含む試験全体の条件と一緒に受け取ります。

心不全による入院はリラグルチド群で少ない方向だったものの、統計学的に明確な群間差とは判断されなかった結果です。主要評価項目に心不全入院は含まれておらず、心臓に関係する出来事の一様な減少を示すデータではありません。

相対差と絶対差で異なる結果の見え方

「13%低下」という相対的な表現だけでは、日常の判断に必要な差の大きさをつかみにくくなります。13.0%対14.9%という実際の発生割合も並べると、約3.8年間の絶対差は1.9ポイントです。

13%低下と1.9ポイント差は同じ結果

相対リスク減少は、プラセボ群を基準に発生割合がどれだけ低くなったかを示します。これに対し、絶対リスク減少は両群の発生割合を直接引いた値です。主要評価項目では14.9%から13.0%を引いた1.9ポイントでした。

表し方LEADER試験の値伝えている内容
発生割合13.0%対14.9%各群で出来事を経験した人の割合
相対的な差ハザード比0.87追跡期間中の発生速度が相対的に13%低い
絶対的な差1.9ポイント約3.8年間における群間の割合差

単純に絶対差から計算すると、約53人を同じ期間治療して1人分の主要評価項目を減らす差に相当します。この人数は「治療必要数」と呼ばれる考え方に近い概算です。ただし、集団の平均から求めた値であり、特定の個人に効くかどうかや、より短い期間の効果を予測する数字ではありません。

信頼区間は推定値の幅を示す

推定の確かさを判断する材料が、ハザード比0.87に対する95%信頼区間0.78〜0.97です。信頼区間は真の差としてデータと矛盾しにくい範囲を示し、幅があるほど推定に不確かさが残ります。

この区間が1.00をまたがなかったため、主要評価項目ではプラセボとの差が統計学的に認められました。しかし、統計学的な差は各人にとって十分大きな利益へ直結せず、もともとの危険度も考慮します。

個別項目は主要結果ほど確実ではない

個別項目より主要評価項目を中心に読むのは、比較を始める前に主要評価項目が定められ、必要な参加者数もそれに合わせて計画されたためです。個別項目は発生件数が少なくなり、同じ方向の数値でも推定の幅が広がります。あらかじめ中心に置かれた結論と、補足的に見る結論では確かさが異なります。

そのため、非致死性心筋梗塞や非致死性脳卒中が少ない方向だった事実と、それぞれ単独で差を確定できなかった事実を同時に受け止めます。複合評価項目の結論を個別の病気すべてへ広げない読み方が必要です。

ビクトーザの結果を自分へ当てはめる条件

得られた数値は処方を一律に決める答えではなく、対象条件が近い人で期待される利益を見積もる材料です。自分のもともとの心血管リスクと、安全に続けられるかを一緒に確認します。なお、ビクトーザ皮下注18mgは2026年後半を目途に販売終了(出荷終了)となる予定です。

薬を選ぶときには、GLP-1受容体作動薬という群全体の傾向も補助的な材料になります。複数の無作為化比較をまとめたデータから心血管イベントや死亡への影響が検討されていますが、成分、対象者、用量、追跡期間は一様ではありません。薬同士を比べた集団の平均だけで個人の処方が決まらない理由です。

もともとの危険度で絶対的な利益が変わる

過去に心筋梗塞や脳卒中を経験した人は、同じ期間でも再発の可能性が高くなりやすいため、相対差が同じなら絶対差は大きくなります。既往がなく危険因子も少ない人では、得られる絶対差は小さくなるのが一般的です。

  • 心血管病の既往 … 心筋梗塞、脳卒中、足の動脈の病気などの有無
  • 現在の危険因子 … 血圧、脂質、喫煙、腎機能の状態
  • 治療を続ける条件 … 胃腸症状、低血糖リスク、通院と検査の継続

診察では「13%減るか」だけでなく、自分が試験参加者とどの程度似ているかを確認するほうが実用的です。過去の病名や治療歴が分かるお薬手帳、検査結果、健診記録を用意すると照合しやすくなります。

背景治療を含めた結果の受け止め方

示された差は、血圧や脂質を含む心血管リスクの管理を両群で続けたうえで得られたものです。ビクトーザを使っても、他の薬や生活上の対策の必要性は変わらず残ります。

むしろ、禁煙、血圧管理、脂質管理、運動や食事を含む治療全体の中に薬を置いて考えます。自己判断で処方薬を減らすと、試験とは異なる条件になり、心血管リスクを高めるおそれがあります。

海外の用量と国内の処方条件の違い

自己調整を避けるために知っておきたいのは、海外で得られた結果と国内の処方条件が同一とは限らない点です。比較時のリラグルチドは1日1回、最大1.8mgまで使用されましたが、実際の投与量は体調や血糖値などを見ながら調整されます。示された最大量を自分の目標と考え、注射量を変えるのは危険です。

自分の処方では、国内の電子添文に記載された効能又は効果、用法及び用量、安全上の注意が基準です。海外で得られた数値は医学的な根拠になりますが、使用量をそのまま国内の処方へ移せるわけではありません。処方内容は承認情報と診察時の判断で決まります。

診療では利益と安全性を一緒に確かめる

心血管イベントの差が示されても、安全に続けられるかという確認は別に必要です。重い有害事象の全体割合に大きな群間差はなかった一方、胃腸症状による中止はリラグルチド群で多くなりました。

胃腸症状が左右する治療継続

吐き気、嘔吐、下痢などはリラグルチドで治療を中止する主な理由でした。症状が軽く水分や食事を取れるなら経過をみる場面もあります。ただし、自己判断だけで耐え続けず、症状の強さや持続期間を処方元へ伝えて用量調整の要否を確認します。

嘔吐や下痢が続いて水分を保てない、尿が極端に少ない、立っていられないほどふらつく場合は、脱水や腎機能悪化が疑われます。次の予約日を待たず、処方元または救急相談へ連絡してください。

低血糖と急性膵炎の兆候の違い

重い低血糖はリラグルチド群のほうが少ない結果でしたが、併用する糖尿病薬によって危険度は変わります。冷汗、手の震え、動悸、強い空腹感が代表的な兆候です。症状が出たときの補食や連絡方法は、治療開始時に確認しておくと安心です。

持続する激しい腹痛、とくに背中へ抜けるような痛みや嘔吐を伴う場合は、急性膵炎も考えます。このような症状があれば使用を中止し、速やかに医療機関へ連絡してください。

診察に役立つ数値と症状の記録

心血管リスクの低下は長期的な利益であり、毎日の体感だけでの判断は困難です。血糖値や血圧、腎機能などの検査結果と、吐き気や食事量などの症状を同じ時系列で記録すると、継続や調整の判断に役立ちます。

確認する内容目的行動の目安
血糖値・血圧・腎機能治療全体と危険因子を評価受診時に推移を共有
吐き気・嘔吐・下痢継続できる程度かを評価強い症状や脱水なら予約前に連絡
胸痛・片側の麻痺・言葉のもつれ心筋梗塞や脳卒中を疑う直ちに救急要請

心血管イベントを減らす期待があるからといって、胸痛や片側の麻痺を薬の効果に任せて待つのは危険です。急な胸の圧迫感、息苦しさ、顔や手足の片側の麻痺、言葉のもつれがあれば、直ちに救急車を呼んでください。

心臓や血管への期待を知るほど、「中止すると不利益があるのでは」と不安になるのは自然です。続けにくい症状があるときは我慢や自己中止で済ませず、症状の程度を処方元へ伝えれば、減量や休薬を含む安全な判断につながります。

よくある質問

ビクトーザを使えば心筋梗塞や脳卒中を避けられますか?

必ず避けられるわけではありません。3つを合わせた主要評価項目は13.0%対14.9%でしたが、個別の非致死性心筋梗塞と非致死性脳卒中は、それぞれ単独で確かな差と判断されませんでした。

LEADER試験の13%低下とは何が13%減ったのですか?

心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中を合わせた主要評価項目が、追跡期間中に起きる速さで相対的に13%低かったという意味です。発生割合の絶対差は13.0%対14.9%の1.9ポイントでした。

心血管病になった経験がなくても同じ利益を期待できますか?

同じ大きさの利益を期待できるとは限りません。対象となった参加者は心血管病や慢性腎臓病を持つ人が中心で、危険因子だけで参加した人にも年齢などの条件がありました。

自分への当てはまりは、心血管病の既往、年齢、腎機能、血圧、脂質などを診察で照合します。検査結果や健診記録を持参し、もともとの危険度から期待できる絶対的な利益を確認しましょう。

心臓に良いと聞いたので他の薬をやめてもよいですか?

自己判断ではやめないでください。根拠となった数値は、血圧や脂質を含む通常の治療を両群で続けたうえで、リラグルチドとプラセボを比較して得られたものです。

他の薬を減らせるかは、処方目的、検査値、副作用、低血糖の危険を踏まえて判断されます。変更したい理由を処方元へ伝え、変更後に何を測るかまで確認したうえで調整を受けてください。

吐き気があっても心血管への利益のために続けるべきですか?

利益だけを理由に無理をして続けるべきではありません。軽い吐き気でも食事量や水分量、始まった日、強くなる時間帯を記録し、処方元へ相談します。

水分を保てない嘔吐、尿量の低下、強いふらつきがある場合は予約日を待たずに連絡してください。持続する激しい腹痛や背中へ抜ける痛みを伴うときは使用を中止し、速やかな受診が必要です。

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この記事を書いた人 Wrote this article

大木 沙織 大木皮ふ科クリニック 副院長

皮膚科医/内科専門医/公認心理師 略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。 所属:日本内科学会