ビクトーザの承認の背景と歴史|日本での認可から糖尿病治療への貢献まで

ビクトーザの承認の背景と歴史|日本での認可から糖尿病治療への貢献まで

ビクトーザ(一般名リラグルチド)は、食事に反応して体内で分泌されるGLP-1というホルモンを手がかりに開発され、日本では2010年1月に2型糖尿病治療薬として製造販売承認を受けました。体内のGLP-1はすぐ分解されますが、リラグルチドは作用が長く続くよう分子を工夫した薬です。

承認は開発の終点ではなく、患者さんが使い始めた後も副作用報告や使用成績が集められ、注意事項が見直されます。長く使われてきた薬である点と、現在の自分に合う点は分けて考え、診察では現在公開されている電子添文と自身の治療状況を照らし合わせるのが大切です。

この記事では、ビクトーザが着想から日本での承認へ進んだ道筋と、承認後も評価が続く仕組みを解説しています。

ビクトーザ皮下注18mgは2026年後半を目途に販売終了(出荷終了)となります。

ビクトーザ開発の出発点は体内ホルモン

開発の出発点は、食後の血糖調節に関わる体内のGLP-1を、2型糖尿病の治療へ応用する発想でした。ただ、天然のホルモンをそのまま注射しても短時間で分解されるため、薬として安定して働かせる工夫が求められました。

食事の後に分泌される物質が手がかりになった

GLP-1は、小腸などの消化管から食事に応じて分泌されるペプチドホルモンです。ペプチドとは、アミノ酸が鎖のようにつながった小さなたんぱく質を指し、体内では情報を伝える物質として働きます。

このホルモンが血糖値に応じた調節へ関わる点は、血糖を下げる薬を設計する重要な手がかりになりました。研究の焦点は、体に元からある反応を利用しながら、治療に使える持続時間をどう確保するかという課題でした。

天然のGLP-1は数分で分解される

天然のGLP-1は、DPP-4という分解酵素によって速やかに切断され、血液中からも短時間で除かれます。体が食事のたびに信号を出す仕組みとしては合理的でも、その短さは1日を通じて使う薬には不向きでした。

そこで開発では、GLP-1に近い性質を保ちつつ、分解と排出を遅らせる分子が探されました。薬の候補を作る段階では、長く残るだけでなく、必要な働きを保つ点や品質を一定に製造できる点も同時に確かめます。

比べる点天然のGLP-1リラグルチド
由来体内で食事に応じて分泌GLP-1をもとに設計した医薬品
体内での持続短時間で分解分解と排出が遅くなるよう工夫
薬としての使い方そのままでは持続が難しい1日1回の皮下注射として開発

天然のホルモンとの違いを見るときは、似た働きだけでなく、吸収速度や体外へ除かれる速さまで薬として設計し直された点が重要です。

人のGLP-1に近い分子から候補を絞った

リラグルチドは、人のGLP-1とアミノ酸配列の大部分が共通するよう設計されています。元のホルモンとかけ離れた分子を作るのではなく、一部を調整して体内にとどまる時間を延ばす方針が採られました。

候補化合物は、必要な働き、持続時間、製剤としての安定性などを比べて絞り込まれます。この段階で有望に見えても直ちに患者さんへ使えるわけではなく、非臨床試験と臨床試験を順に通る必要があります。

分解されにくい薬へ変える工夫

リラグルチドでは、アミノ酸配列の一部と脂肪酸の鎖を調整し、注射後にゆっくり吸収される性質を持たせました。複数の工夫が重なることで、天然のGLP-1より長く体内に残ります。

脂肪酸の鎖がアルブミンとの結び付きを生む

リラグルチドには、脂肪酸に由来する鎖が付加されています。この鎖は血液中のアルブミンというたんぱく質と結び付きやすく、薬が急速に腎臓から排出されるのを遅らせる助けになります。

また、注射した皮下では分子同士が集まり、少しずつ離れて血液へ移る性質があります。皮下とは皮膚と筋肉の間にある脂肪を含む層で、注射部位からの吸収速度も持続時間に関係します。

分解酵素の影響を受けにくくした

アミノ酸配列の一部を置き換えた設計には、DPP-4による分解を受けにくくする狙いがあります。脂肪酸の鎖による吸収と排出の遅れに、この分解されにくさが加わり、薬として使える長さが得られました。

開発上の課題分子への工夫薬として生じた性質
皮下から急速に移る分子同士が集まりやすい設計注射部位から徐々に吸収
血液から早く除かれる脂肪酸の鎖を付加アルブミンと結び付き排出が緩やか
酵素で切断されるアミノ酸の一部を置換分解の影響を受けにくい

3つの性質は別々に働くのではなく、注射部位から血液へ移り、血液中を循環し、やがて分解・排出されるまでの各場面で持続性を支えます。

1日1回という投与間隔につながった

持続時間を延ばした設計は、ビクトーザを1日1回投与する製剤へつながりました。投与間隔は単に便利さで決まったのではなく、体内濃度の推移と有効性、安全性を臨床試験で確かめたうえで承認事項になります。

同じ成分でも、承認された用量や使う目的が違えば別の医薬品として扱われます。手元の製品名と用量を自己判断で置き換えず、処方された製剤の用法に沿う必要があります。

ビクトーザの承認は段階的な確認の先にある

候補物質が見つかってから承認されるまでには、品質、動物などを用いた非臨床試験、人を対象とする臨床試験、規制当局による審査という段階があります。各段階は、次へ進めるだけの根拠がそろっているかを確かめる関門です。

非臨床試験で薬の基本的な性質を調べる

人への投与を始める前には、細胞や動物などを使い、薬の働き方、体内での移動、毒性を調べます。毒性試験では、どの臓器にどのような変化が起こり得るか、投与量や期間との関係も確認対象です。

同時に、原料から一定品質の製剤を作り、保管中も成分量や性状を保てるかが検討されます。有効成分が同じでも製造条件によって品質が揺らげば薬として供給できないため、品質資料は承認審査の大きな柱になります。

臨床試験では投与量と利益・不利益を確かめる

臨床試験は少人数での安全性や体内での動きを調べる段階から始まり、投与量の候補を絞り、より多くの参加者で有効性と安全性を比較する段階へ進みます。2型糖尿病の薬では、血糖の指標がどの程度変わるかに加え、低血糖や消化器症状なども記録されます。

試験の参加条件、比較相手、期間が違えば、得られる答えの範囲も変わります。そのため、試験で平均的に確認された結果と、持病や併用薬を持つ1人の患者さんへの判断は同じではありません。

段階主に確かめる内容承認との関係
候補の探索必要な働きと持続性開発する分子を選ぶ
非臨床試験体内動態と毒性人へ進む根拠を整える
臨床試験用量、有効性、安全性患者さんでの利益と不利益を評価
承認審査品質、有効性、安全性の資料全体使用条件と注意事項を定める

前の段階で良い結果が出ても、後の段階で安全性や製造上の課題が見つかれば、開発の中止や投与条件の再検討が選ばれます。

申請資料全体から使える条件が定められる

製薬企業は、品質、非臨床試験、臨床試験の資料をまとめて製造販売承認を申請します。規制当局は示された利益が不利益を上回るかを評価し、対象となる病気、投与方法、注意すべき状態などを審査します。

承認は「どの使い方でも安全」という保証ではなく、審査された条件の範囲で医薬品として提供できるという行政上の判断です。承認時に決まった内容は電子添文に記載され、医療現場で処方や安全管理を行う基準になります。

日本でビクトーザが認可されたのは2010年

ビクトーザは日本で2010年1月に製造販売承認を受け、同年に2型糖尿病の治療へ導入されました。承認年月と当初の承認内容は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開する審査報告書や電子添文で確認できます。

日本の審査では国内外の資料が評価された

日本での申請では、海外で行われた試験だけでなく、日本人を対象にした成績も含めて用量の妥当性が検討されました。体格、医療環境、併用される薬などが地域で異なるため、海外の結果をそのまま移すだけでは判断できない項目があるからです。

当初の日本での最大用量は海外より低く設定され、その後に追加資料を踏まえて用量の選択肢が変更されました。この経緯は、承認内容が最初から固定されたままではなく、新たな根拠を審査して更新され得る点を示します。

審査報告書は承認時にどの資料が論点となったかを追う資料であり、現在の使い方を確認する電子添文とは目的が異なります。

承認と発売は同じ日を指さない

承認は国が医薬品の製造販売を認める手続きであり、患者さんが医療機関で使えるようになる発売とは別の節目です。承認後には薬価収載や供給準備などがあり、実際の発売まで時間が空く場合があります。

  • 製造販売承認 … 品質、有効性、安全性の審査を経て販売が認められた時点
  • 薬価収載 … 公的な薬価基準に医薬品が載る手続き
  • 発売 … 医療機関への供給が始まり、診療で使えるようになる時点

「いつから使われた薬か」を調べるときは、承認日と発売日を混同しないのがポイントです。資料ごとに日付が違って見える場合は、その日付がどの節目を示すのかまで確かめると整理できます。

承認番号と電子添文が公的な確認先になる

医薬品には品目ごとの承認番号があり、販売名が似た製品や成分が同じ別製品と区別できます。PMDAの医療用医薬品情報検索では、現在の電子添文、改訂履歴、安全性に関する通知などを販売名から探せます。

古い記事や資料を読む際は、掲載当時の用量や注意事項が現在も同じとは限りません。治療に関わる確認では発行日と改訂日を見て、現在の処方内容については医師または薬剤師に尋ねてください。

手元の説明冊子とオンラインの電子添文で内容が違うときは、発行元と改訂年月を見比べると、古い版か現在の版かを判別しやすくなります。

承認後も安全性と有効性の確認は続きます

承認時の臨床試験で得られる情報には、参加人数や観察期間による限界があります。そのため発売後も実際の診療で情報を集め、まれな副作用や長期使用時の傾向を確かめます。

使用成績調査が日常診療の情報を補う

発売後の使用成績調査では、臨床試験より幅広い背景を持つ患者さんについて、有効性や副作用の情報が集められます。高齢者、腎機能や肝機能に変化がある人、複数の薬を使う人など、承認前の試験だけでは人数が限られた集団も確認対象です。

一方、日常診療の記録は治療条件をそろえた比較試験と性質が違い、起きた変化が必ず薬によるものとは限りません。複数の報告や調査結果を合わせ、因果関係と発生頻度を慎重に評価します。

副作用報告が新しい注意事項につながる

医療現場や患者さんから寄せられた副作用の疑いは、製薬企業や規制当局が収集して評価します。個別の報告だけで頻度や原因を断定せず、同様の報告の集まり方、他の病気や薬の影響、時間的な関係などを検討する仕組みです。

新たな危険性が示唆された場合は、電子添文の注意事項改訂や医療者向け情報の発出につながります。承認後の変更は薬の評価が失敗したという意味ではなく、利用者が増えて得られた情報を安全な使用へ反映する働きです。

時期分かりやすい情報残りやすい課題
承認前条件を定めた試験での有効性と安全性まれな事象、長期使用、幅広い背景
発売直後日常診療での使用状況報告数が少ない事象の評価
使用の蓄積後多数例や長期間の傾向個々の患者さんへの当てはめ

承認前と発売後の情報は優劣を競うものではなく、条件をそろえた比較と日常診療での幅広い観察が互いの不足を補います。

電子添文の改訂日は現在の情報を示す

電子添文には、使用上の注意、副作用、特定の背景を持つ人への注意などがまとまっています。承認された年が古くても、電子添文が改訂されていれば、その時点までに評価された重要情報が反映されています。

気になる症状があるときは、薬の歴史だけで安全性を判断せず、症状が始まった時期と程度を処方元へ伝えてください。強い腹痛、繰り返す嘔吐、意識がぼんやりする状態などがあれば、次回の予約日を待たず医療機関へ連絡する必要があります。

同じ系統の薬が増えて治療の選択肢が広がった

リラグルチドの開発と承認は、GLP-1を利用する薬を日常的な治療へ取り入れる流れの一部となりました。その後は持続時間や投与方法が異なる同系統薬が増え、患者さんの生活や治療目標に応じて比べられる項目も広がっています。

1日1回の製剤が長時間作用型への道を開いた

ビクトーザは、長時間作用型のGLP-1受容体作動薬として1日1回使う製剤です。分子を長く働かせる考えはその後の研究にもつながり、週1回など投与間隔の異なる薬が開発されました。

投与回数が少ない薬が常に優れているわけではありません。投与量の調整方法、胃腸症状などへの対応、使い慣れた器具、併存する病気を含め、処方時には複数の条件を比べます。

同じ成分でも調べられた目的で扱いが変わる

リラグルチドは海外で異なる用量帯や目的についても研究され、同じ系統全体でも対象となる病気が広がってきました。ただし、ある目的で得られた成績を、別の製品や別の用量へそのまま当てはめることはできません。

製品ごとに審査された対象、用量、注意事項が定められています。成分名が同じという理由で自己判断による増量や使い分けをせず、手元の製品名を医師または薬剤師と確認するのが安全です。

承認の歴史は今の治療を確認する材料になる

薬の歴史を調べる目的は、古いか新しいかだけで順位を付けることではなく、何を根拠に使えるようになり、どの情報が後から加わったかを把握する点にあります。現在の治療を考える際は、発売年よりも今の電子添文と自分の健康状態が直接的な判断材料です。なお、ビクトーザ皮下注18mgは2026年後半を目途に出荷終了(販売終了)となる予定です。

  • 製品名 … ビクトーザであることを注射器や薬袋で確認
  • 現在の投与量 … 処方時の指示と自分が実際に使っている量の照合
  • 変更後の体調 … 吐き気、食事量、低血糖を疑う症状などの開始時期
  • 資料の更新日 … 電子添文や本人向け資材がいつ改訂されたかの確認

確認項目をそろえておくと、承認当時の一般的な情報と、自分が今受けている治療の説明を分けて整理できます。

長年使われているという安心感だけで疑問を飲み込む必要はありません。処方が続いている理由や注意点が気になれば、現在の投与量と体調の変化をメモし、診察時に確認すると話が具体的になります。

よくある質問

ビクトーザは日本でいつ承認されましたか?

ビクトーザは、日本で2010年1月に2型糖尿病治療薬として製造販売承認を受けました。承認と実際の発売は別の節目なので、資料の日付を見るときは何を示す日かも確かめると混同を防げます。

なぜ天然のGLP-1をそのまま薬にしなかったのですか?

天然のGLP-1は体内で数分ほどの短時間に分解され、治療薬として働く時間を保ちにくいためです。リラグルチドはアミノ酸配列の一部と脂肪酸の鎖を調整し、分解や排出を遅らせるよう設計されました。

承認を受けた薬なら長期の安全性もすべて分かっていますか?

承認時点ですべてが分かるわけではなく、参加人数や観察期間のために捉えにくい情報が残ります。発売後も使用成績や副作用の疑いが集められ、必要に応じて電子添文の注意事項が改訂されます。

治療中に新しい症状が出た場合は、長く使われている薬だから大丈夫と決めつけず、症状の開始時期と程度を処方元へ伝えてください。

2010年承認という点だけで古い薬と判断してよいですか?

承認年だけで、現在の患者さんに合うかどうかは判断できません。発売後に蓄積した安全性情報や電子添文の改訂も含め、今の投与量、持病、併用薬、治療目標に照らして考える必要があります。

不安がある場合は、使用年数ではなく「なぜ今この薬なのか」「現在の注意点は何か」を診察時に尋ねると、処方の理由を確認できます。

承認後に投与量や注意事項が変わることはありますか?

追加の試験成績や発売後の安全性情報が審査され、投与量や注意事項が変更される場合があります。古い説明資料だけに頼らず、現在の電子添文や処方時の説明を基準にしてください。

以前と指示が違って見えるときは自己判断で元の量へ戻さず、処方元か薬剤師へ製品名と投与量を伝えて確認するのが適切です。

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この記事を書いた人 Wrote this article

大木 沙織 大木皮ふ科クリニック 副院長

皮膚科医/内科専門医/公認心理師 略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。 所属:日本内科学会