
腎機能が低くても、ビクトーザ(リラグルチド)を使用できる場合があります。ただし、患者さん自身で用量を減らすのは避けてください。リラグルチドは腎臓から未変化のまま大量に排泄される薬ではなく、用量や継続の可否は腎機能の程度、検査値の推移、体調を合わせて医師が判断します。
なお、ビクトーザ皮下注18mgは2026年後半を目途に出荷終了(販売終了)となる予定です。
一方、吐き気や嘔吐、下痢に加え、食事や水分の摂取低下が続くと、体内の水分が減って腎臓へ負担がかかります。もともと慢性腎臓病がある方や透析を受けている方では得られている情報に限りがあるため、治療開始前から腎臓の状態を共有し、体調変化を見逃さない姿勢が大切です。普段の尿量や飲水量を把握しておくと、変化を処方元へ具体的に伝えられます。
この記事では、ビクトーザが体から出る道筋と腎機能との関係、用量判断の材料、受診時に伝える情報を解説しています。
ビクトーザ皮下注18mgは2026年後半を目途に販売終了(出荷終了)となります。
ビクトーザは腎臓からそのまま排泄される薬ではない
ビクトーザの有効成分リラグルチドは、体内で少しずつ分解されるペプチド製剤です。腎臓だけが排泄を担う一般的な薬とは体から出る道筋が異なるため、血中濃度は腎機能の数値だけでなく、薬の分解過程を含めて捉えます。
リラグルチドが体内で分解される道筋
リラグルチドは、もともと体内にあるGLP-1(食事に反応して分泌されるホルモン)に似せて作られた成分です。皮下注射後は血液中のたんぱく質と結びつき、酵素による分解を受けながら、複数の経路を通って代謝されます。
分解後の成分の一部は尿へ出ますが、投与したリラグルチドが未変化のまま腎臓だけを通って排泄される形とは異なります。したがって、腎臓のろ過能力が少し低いと直ちに薬が大きく蓄積する、という単純な対応関係ではなく、体調や治療反応も含めて評価します。
腎機能と血中濃度は1対1で動かない
リラグルチドへの曝露量(体が薬にさらされる量)には個人差があります。腎機能が低下した人を含む薬物動態データでも、腎機能の段階が下がるほど曝露量が一方向に増える関係は確認されていません。これは、腎臓だけに排泄を依存しない性質と整合します。
ただし、この血中濃度の傾向は、腎臓病がある方全員に同じ使用条件を当てはめる根拠にはなりません。参加者の人数、腎機能の範囲、治療期間には限界があり、脱水の有無や併用薬まで同一だったわけでもないためです。実際の判断には、検査値と全身状態の両方が含まれます。
排泄経路と診療上の意味
薬がどこから出るかと、体調不良時に腎臓へ負担がかかるかは別の問題です。次の整理を踏まえると、排泄経路だけで安心または危険と判断せず、症状と検査値を合わせて見る理由が分かります。
| 確認する点 | リラグルチドとの関係 | 診療での意味 |
|---|---|---|
| 未変化体の排泄 | 腎臓だけが主な出口ではない | 腎機能の値だけで蓄積を決めない |
| 体内での分解 | 複数の経路で徐々に代謝 | 全身状態も用量判断に含める |
| 体調による影響 | 嘔吐や下痢から水分不足が起こりうる | 症状と腎機能の変化を合わせて確認 |
つまり、腎臓からの直接的な排泄が中心でない点と、体調変化を介して腎臓が影響を受けうる点を分けて捉える必要があります。この2つを混同すると、自己判断で減量したり、症状があるのに様子を見続けたりする恐れがあります。排泄の仕組みだけで安全性を決めず、治療中の変化を確認することが大切です。
腎機能が低い人で得られている知見
腎機能が軽度から中等度に低下した人については、リラグルチドを使用した際の効果や有害事象を判断する臨床データがあります。一方、重度の腎機能低下や透析中の人に関する情報は比較的限られます。数値の区分だけでなく、対象者の治療環境や体調が自分に近いかを区別して捉える必要があります。
軽度から中等度の低下を含む研究
2型糖尿病で腎機能が低下している人にもリラグルチドの使用経験があり、心血管系や腎臓に関する転帰、治療を続けられた割合などが確認されています。腎機能が正常な人だけの情報ではない点は判断材料になりますが、参加条件を満たした集団で得られた結果です。日常診療では年齢や併存疾患、併用薬の違いも加えて考えます。
GLP-1受容体作動薬全体では、腎臓に関する転帰についても評価が積み重なっています。ただ、複数の薬をまとめて見た利益や危険の傾向は、目の前の患者さんに合うビクトーザの用量を直接導く資料ではありません。
薬ごとの性質や対象者の違いがあるため、集団での傾向と個人の投与判断を分けて扱います。腎臓に関する結果が良好だったという情報と、消化器症状による脱水への注意は別の論点です。
重度の腎障害では情報の幅が狭い
腎機能が大きく低下すると、食欲や体液量に加え、併存する病気と使用中の薬が相互に影響しやすくなります。リラグルチドの排泄経路だけでは説明しきれない個人差が増えるため、軽度の腎機能低下で得られた結果の単純な当てはめは避けます。とくに摂取量の低下や利尿薬の使用など、体液量に関わる条件を一緒に確認することが重要です。
慢性腎臓病を伴う人に対するGLP-1受容体作動薬は、腎機能の段階によって得られている証拠の量が異なります。重度という言葉だけで結論を出さず、自分の推算糸球体ろ過量(eGFR)や治療状況に即した説明を受けるのが安全です。eGFRが同程度でも、安定した慢性の低下か、脱水などによる急な低下かで対応は変わります。
透析中の研究をそのまま一般化しない
透析中の人については、海外の診療記録からGLP-1受容体作動薬の転帰や安全性を追ったデータがあります。実際の診療を幅広く反映する一方、治療を受けた群と受けなかった群には、年齢や病気の状態などの背景差が残ります。そのため、観察された差を薬だけの効果や影響として受け取ることはできません。
| 対象 | 得られる情報 | 読み取れない内容 |
|---|---|---|
| 軽度から中等度の腎機能低下 | 試験内での効果や有害事象の傾向 | 全員に共通する用量 |
| 重度の腎機能低下 | 限られた対象での使用経験 | 幅広い患者さんへの一律の結論 |
| 透析中 | 特定集団で観察された転帰 | 透析前の人や日本の診療への直接適用 |
また、透析中の集団で得られた結果から、透析を受けていない人の用量を直接決めることはできません。透析の方法や治療環境、栄養状態が違うため、「情報がある」点と「自分に当てはまる」点の間には医師による評価が入ります。日本で承認された用法と現在の治療内容を基準に、個別の使用可否を確認してください。
脱水を介して腎臓に負担がかかる道筋
ビクトーザ使用中の腎臓への負担は、薬が腎臓に直接たまる道筋だけでなく、消化器症状から体内の水分が減る道筋にも注意が必要です。特に症状が続くときは、次の受診まで待たずに処方した医療機関へ連絡してください。
吐き気や下痢から循環血液量が減る
吐き気で飲食量が落ちたり、嘔吐や下痢で水分を失ったりすると、血管内を循環する血液量が減ります。腎臓へ届く血液が減ると、老廃物をこし取る働きが一時的に落ち、血清クレアチニンが上昇する可能性があります。
もともとの腎機能が低い方は、体液量の変化に対する余裕が小さい場合があります。消化器症状の強さだけではなく、水分を保てているか、尿量が普段と変わったかも重要な情報です。
検査値の急な変化は一時的な負担も示す
血清クレアチニンは筋肉で作られ、主に腎臓から排泄される物質で、腎機能を推定する材料です。eGFRはクレアチニン、年齢、性別などから、腎臓が血液をこし取る能力を推算した値を指します。どちらも採血時点の情報なので、以前の値との比較が重要です。
脱水の場面ではクレアチニンが上がり、eGFRが下がって見える可能性があります。その結果を慢性腎臓病の進行と即断せず、症状の時期、以前の値、再検査後の変化を合わせて評価します。
連絡を急ぐ症状と伝える内容
症状が軽くても長く続くと水分不足が進む可能性があり、反対に短時間でも嘔吐を繰り返せば負担は大きくなります。連絡時には「気持ち悪い」だけで終えず、次の情報を具体的に伝えると判断が進みやすくなります。
- 嘔吐・下痢 … 始まった時刻、回数、続いている時間
- 飲食 … 水分や食事をどの程度保てているか
- 尿 … 回数や量が普段より明らかに少ないか
- 全身状態 … 強いだるさ、立ちくらみ、意識のぼんやり感
ただ、腎機能が低い方の対応は、症状の程度や普段の水分制限によって異なります。処方量を自分で変えたり、水分を無理に増やしたりせず、処方元または腎臓の治療先から個別の指示を受けてください。
ビクトーザ使用中に腎機能を測る理由
腎機能の検査には、ビクトーザを使用できるかという判断に加え、治療中の変化を追う役割があります。開始前の基準値があると、症状が出た際に以前の状態と比べられます。数値が動いた時期と、嘔吐や下痢などが起きた時期の照合にも役立ちます。
開始前の値が比較の基準になる
治療前のクレアチニンやeGFRが分かると、もともとの腎機能の段階を把握できます。1回の採血値には体調や食事、筋肉量なども影響するため、過去の結果があれば一緒に確認するほうが判断材料は増えます。
尿アルブミンは、血液中のたんぱく質が尿へ漏れているかを見る指標です。eGFRとは異なる側面を映すため、両方が測られていると、腎臓の状態をより立体的に把握できます。
単独の数値より推移を重視する
eGFRが前回より低い場合も、その差だけでビクトーザが原因だとするのは早計です。発熱や嘔吐、下痢、食事量の低下などが同じ時期にあったかを確認します。必要に応じて再検査を行い、数値が戻るか、低下が続くかを見ます。
一方、低下傾向が続く、尿の異常が増える、むくみなどの変化を伴うときは、腎臓病自体の評価も必要です。薬を続けるかという問いと、腎機能が変化した理由を調べる問いは分けて検討されます。
検査項目ごとに見ている変化
検査の間隔は腎機能の段階、治療開始後の体調、ほかの病気などで変わります。定期検査の予定前でも、脱水が疑われる症状があれば処方元への連絡が必要です。腎臓との関係でよく用いられる指標を整理すると、1つの値だけで結論を出さない理由が見えてきます。
| 指標 | 何を表すか | 確認時の要点 |
|---|---|---|
| 血清クレアチニン | 腎臓から排泄される老廃物の濃度 | 過去値と体調を合わせて比較 |
| eGFR | 血液をこし取る能力の推算値 | 単回値より変化の方向を確認 |
| 尿アルブミン | たんぱく質の漏れの程度 | eGFRとは別の腎障害の手掛かり |
| 電解質 | ナトリウムやカリウムなどのバランス | 体液量や腎機能の変化と関連 |
定期検査の全体像は、糖尿病の状態や併存疾患を含めて個別に組まれます。採血や採尿を受けた日だけでなく、症状が出た日と注射の状況を記録しておくと、数値の変化との時間関係を確かめやすくなります。
用量は腎機能だけで一律に決まりますか?
いいえ。用量は腎機能の数値だけで機械的に決めず、国内の電子添文に示された用法・用量を基準とします。実際の開始量や増量、維持、休薬については、体調と治療反応を踏まえて医師が決めます。
患者さん自身で減量しない
「腎臓が悪いから半分にする」といった変更を患者さん自身で行うと、血糖管理が崩れたり、医師が症状と投与量の関係を評価しにくくなったりします。逆に、以前と同じ検査値だから続けてよいと自己判断するのも避けるべきです。
増量の予定日であっても、嘔吐や下痢、食事摂取の低下があるなら、その情報を処方元へ伝えて指示を受けてください。体調が落ち着くまでの扱いは、腎機能や糖尿病治療の内容によって変わります。
医師が組み合わせる判断材料
用量判断では、腎機能の現在の段階と最近の変化を確認します。さらに、消化器症状と食事量、血糖の状態と併用している治療も判断材料です。同じeGFRでも、長く安定している方と短期間に急低下した方では、必要な対応が変わります。
| 判断材料 | 確認する内容 | 判断への関わり |
|---|---|---|
| 腎機能 | eGFRの段階と過去からの推移 | 使用経験の範囲と観察の密度 |
| 体液量 | 嘔吐、下痢、摂取低下、尿量 | 一時的な腎負担の疑い |
| 治療反応 | 血糖値の変化と消化器症状 | 増量や維持を検討する材料 |
| 腎臓の治療 | 透析の有無や水分管理の指示 | 個別性の高い調整が必要 |
数値が変わったときの判断順序
腎機能の数値が悪化したときは、まず変化の程度と速さを確認し、同時期の症状や摂取量を照合します。次に、再検査やほかの検査結果から一時的な変化か持続する変化かを評価し、そのうえで投与の扱いが決まります。
数値を見て不安になるのは自然な反応です。手元の1回分だけで薬の中止を決めず、過去の結果と体調記録をそろえて相談すると、何を根拠に続けるか、変更するかを確認できます。
腎臓の治療中にビクトーザを使う際の伝達事項
腎臓の治療を受けている方は、病名だけでなく、直近の検査値、治療内容、水分や食事に関する指示を処方元へ伝える必要があります。診療科が分かれている場合は、双方が同じ情報を持てるように準備します。
初回や再診で共有する情報
「腎臓が悪いと言われた」という情報だけでは、腎機能の段階や変化の速さが伝わりにくいものです。検査結果の用紙や医療機関のアプリなど、数値と検査日を確認できる資料があれば持参しましょう。少なくとも直近値と、その前に測った値があると推移を比べられます。
- 腎臓の診断 … 病名、指摘された時期、通院先
- 検査結果 … クレアチニン、eGFR、尿アルブミンの直近値
- 治療状況 … 透析の有無、通院頻度、食事や水分の指示
- 最近の変化 … 体重、食欲、尿量、むくみ、嘔吐や下痢
検査値が手元になければ、その旨をそのまま伝えて大丈夫です。推測した数値を書くより、検査日や受診先を示すほうが、必要な情報を確認しやすくなります。
複数の診療科で情報をそろえる
糖尿病の処方元と腎臓の治療先が別の場合、一方での薬の変更がもう一方へすぐ共有されるとは限りません。診療情報の共有方法を尋ね、処方内容と検査結果を双方へ示せる状態にしておくと安心です。
新たに水分制限や透析が始まったとき、入院後に薬が変わったときは、次の予約日まで情報を抱え込まないでください。ビクトーザを処方した医療機関へ変化を伝え、次回投与までの扱いを確認します。
日々の記録を受診判断に役立てる
腎臓への負担が疑われる場面では、症状の有無だけでなく、いつ始まり、どのくらい続いたかが判断材料です。注射した時刻と、嘔吐や下痢の回数をまず記録します。飲食の程度や尿量の変化も添えると、症状と投与の時間関係を医師が確認しやすくなります。
さらに、検査結果は日付順に並べると、単発の変化と持続する傾向を区別しやすくなります。受診時には記録を見せたうえで、次に同じ症状が出た場合の連絡先と、投与前に確認すべき条件を聞いておきましょう。
よくある質問
腎機能が悪いとビクトーザは使えませんか?
腎機能が悪いという情報だけで一律に使用を除外するのではなく、個別に判断します。医師は腎機能の段階、数値の推移、消化器症状、腎臓の治療状況を確認し、使用するかを決めます。
直近のクレアチニンやeGFRが分かる資料を持参し、透析や水分制限がある場合は初回の処方前に伝えてください。
eGFRが低い場合は自分で用量を減らしてよいですか?
自己判断で減量してはいけません。eGFRだけでなく、低下の速さ、体調、血糖の状態を合わせて投与の扱いが決まるため、処方元へ検査結果を伝えて指示を受けてください。
吐き気や下痢があると腎機能に影響しますか?
吐き気で飲食量が落ちたり、嘔吐や下痢が続いたりすると、脱水を介して腎機能へ負担がかかる可能性があります。
水分を保てない、尿が明らかに少ない、強いだるさがあるときは、処方した医療機関へ連絡し、次の投与をどうするか確認してください。
クレアチニンが上がったらビクトーザが原因ですか?
クレアチニンの上昇には複数の原因があり、その値だけでビクトーザの影響と断定することは避けます。脱水、腎臓病の変化、ほかの体調変化などを区別する必要があります。
症状が出た時期と過去の検査結果を処方元へ示し、必要な再検査と投与の扱いについて確認しましょう。
腎臓内科と糖尿病の処方元が別なら何を伝えますか?
腎臓の病名、直近のクレアチニンとeGFR、透析の有無、食事や水分の指示、現在の処方内容を双方へ伝えます。検査結果の写しを持参すると、同じ情報をもとに相談できます。
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