ウゴービの最適使用推進ガイドラインとは?処方できる施設と医師の基準

ウゴービの最適使用推進ガイドラインとは?処方できる施設と医師の基準

ウゴービ(一般名:セマグルチド)は、日本で約30年ぶりに承認された肥満症治療薬です。厚生労働省は「誰でも使える薬」ではなく「本当に必要な方に届ける薬」と位置づけ、処方できる施設や医師に厳格な条件を設けました。

この記事では、ウゴービの処方に関わるガイドラインの中身を、施設要件・医師要件・患者要件のそれぞれからわかりやすく解説します。「自分が対象になるのか」「どの病院に行けばいいのか」と迷っている方に向けて、正確な情報をお届けします。

ご自身の状況に照らし合わせながら、ぜひ最後まで読み進めてみてください。

目次 Outline

ウゴービに「使用ガイドライン」が設けられた背景と肥満症治療の現状

ウゴービのガイドラインが作られた最大の理由は、痩身・ダイエット目的の安易な使用を防ぎ、医学的に治療が必要な肥満症の方に確実に届けるためです。GLP-1受容体作動薬の一部は、SNSなどを通じて「痩せ薬」として注目を集め、本来の対象でない方が美容目的で使用するケースが社会問題となりました。

GLP-1受容体作動薬の「痩せ薬」としての乱用が問題になった

ウゴービの有効成分であるセマグルチドは、もともと2型糖尿病の治療薬「オゼンピック」と同じ成分です。糖尿病治療薬としての需要がある一方で、体重減少効果に着目した自由診療での処方が広がり、糖尿病患者に必要な薬が届かない事態が生じました。

こうした事態を重く見た厚生労働省は、ウゴービの薬価収載と同時に「革新的医薬品を本当に必要な患者に届ける」枠組みとして、ガイドラインの策定に踏み切っています。

「肥満」と「肥満症」は医学的にまったく別の概念である

区分定義治療の必要性
肥満BMI 25以上の身体状態必ずしも治療を要さない
肥満症BMI 25以上かつ健康障害を伴う、または内臓脂肪面積100cm²以上医学的に減量治療が必要

ガイドラインの策定には複数の学会が関わっている

ガイドラインは、日本肥満学会・日本肥満症治療学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会・日本内科学会、そしてPMDA(医薬品医療機器総合機構)の協力のもとで作成されました。一つの学会の見解ではなく、複数の専門領域が横断的に関わっている点が大きな特徴です。

2023年11月に薬価収載、2024年2月に発売が開始された

ウゴービは2023年3月に製造販売の承認を受け、同年11月22日に薬価収載されました。その後、2024年2月22日にノボ ノルディスク ファーマ株式会社から発売が開始されています。ただし、ガイドラインを満たす施設に限定した流通が行われているため、すべての医療機関で入手できるわけではありません。

2025年5月にはペン型製剤の追加承認を踏まえてガイドラインが改訂されており、治療へのアクセスが少しずつ広がりつつある段階です。それでも、対象となる患者と施設の条件は緩和されておらず、厳格な運用が続いています。

ウゴービを処方できる施設の条件|どんな病院なら対応しているのか

ウゴービを処方できるのは、内科系の標榜科を持ち、専門医の在籍と教育研修施設の認定を受けた医療機関に限られます。街のクリニックや小規模な診療所では、これらの要件を満たすことが難しいのが実情です。

内科・循環器内科・内分泌内科・代謝内科・糖尿病内科の標榜が必要になる

ガイドラインでは、処方施設は「内科、循環器内科、内分泌内科、代謝内科又は糖尿病内科を標榜している保険医療機関」であることが求められています。外科やその他の診療科のみを標榜する施設では、要件を満たしません。

学会認定の「教育研修施設」であることが求められる

施設要件のなかで、とくにハードルが高いのが教育研修施設としての認定です。日本糖尿病学会・日本内分泌学会・日本循環器学会のいずれかから教育研修施設として認められている必要があります。

教育研修施設は一般的に、大学病院や地域の大規模総合病院に限られます。入院病床を持たないクリニックのほとんどは該当しないため、処方可能な施設の数は全国的に見ても限定的です。

常勤の管理栄養士による栄養指導体制も必須となっている

施設には常勤の管理栄養士が在籍し、栄養指導を継続的に行える体制が整っていなければなりません。実施した栄養指導の内容は診療録に記録することが義務づけられています。

肥満症治療は薬物療法だけでは完結しません。食事・運動・行動療法を組み合わせた包括的な治療体制が前提であり、管理栄養士の存在はその要となります。

施設要件具体的な内容
標榜科内科・循環器内科・内分泌内科・代謝内科・糖尿病内科のいずれか
専門医の在籍日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本内分泌学会の専門医が常勤で1人以上
教育研修施設上記いずれかの学会から認定を受けていること
管理栄養士常勤で在籍し、栄養指導を実施・記録できること

処方する医師に求められる資格と臨床経験|ウゴービの医師要件を解説

ウゴービを処方する医師には、関連学会の専門医資格に加え、肥満症や生活習慣病の診療に5年以上携わった実績が必要です。経験の浅い医師が単独で処方することはできない仕組みになっています。

日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本内分泌学会いずれかの専門医であること

医師要件として明記されているのは、上記3学会のいずれかの専門医資格を有していることです。施設内にこの専門医が常勤で1人以上所属し、ウゴービによる治療に直接携われる体制が整っていなければなりません。

自施設に所属していない専門医がいる場合でも、その専門医が所属する施設と適切に連携がとれる体制を有していれば要件を満たす場合があります。

医師免許取得後、肥満症関連の診療に5年以上の臨床経験を要する

パターン必要な経験
初期研修修了後高血圧・脂質異常症・2型糖尿病・肥満症の診療に5年以上従事
医師免許取得後満7年以上の臨床経験のうち、5年以上は上記疾患の臨床研修を行っていること

肥満症と生活習慣病の治療ガイドラインを熟知していることが前提になる

医師要件には「高血圧治療ガイドライン」「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」「糖尿病診療ガイドライン」「肥満症診療ガイドライン」「肥満症の総合的治療ガイド」を熟知していることも含まれます。ウゴービの処方は、これらの知識を土台とした総合的な判断によって行われるべきだと位置づけられています。

つまり、ウゴービを処方する医師には「肥満症」という一つの疾患だけでなく、その背景にある循環器疾患や代謝疾患を含めた幅広い診療能力が求められるということです。患者さんにとっては、こうした経験豊富な医師のもとで治療を受けられる安心感にもつながるでしょう。

ウゴービの対象になる患者の条件|BMI値と健康障害の組み合わせで決まる

ウゴービは「太っているから処方される」薬ではなく、BMIと健康障害の両方の条件を満たした肥満症の方だけが対象です。さらに、食事療法・運動療法を6か月以上続けても十分な減量効果が得られなかった場合に、はじめて薬物療法が検討されます。

BMI 27以上で2つ以上の健康障害がある、またはBMI 35以上であること

患者選択の基準は、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれか1つ以上の診断があり、かつBMIが27以上で肥満に関連する健康障害を2つ以上有する場合、またはBMIが35以上の場合です。BMIの数値だけで判断されるのではなく、合併症の種類と数を総合的に評価して適応が決定されます。

肥満症に関連する11種類の健康障害とは何か

ガイドラインでは、肥満症に関連する健康障害として11項目が定められています。耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞、非アルコール性脂肪性肝疾患、月経異常・不妊、閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、運動器疾患、肥満関連腎臓病の11種類です。

食事療法と運動療法を6か月以上続けても効果が不十分な場合にかぎる

ウゴービの投与を検討するにあたっては、処方施設において食事療法・運動療法に係る治療計画を作成し、6か月以上実施しても十分な効果が得られないことが確認されている必要があります。推定1日総エネルギー消費量から500kcalを差し引いたエネルギー量による食事療法と、週150分の身体活動を目安とした運動療法が推奨されています。

高血圧・脂質異常症・2型糖尿病への薬物治療がすでに行われていること

対象となる患者は、ウゴービの開始前に高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれか1つ以上に対して適切な薬物療法を受けている必要もあります。肥満症だけを治療するのではなく、併存する生活習慣病も含めた包括的な管理が前提となっています。

患者要件具体的な内容
BMI基準27以上で健康障害2つ以上、または35以上
併存疾患高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれか1つ以上
生活習慣改善食事・運動療法を6か月以上実施しても不十分
既存の薬物療法併存疾患に対する薬物治療がすでに行われていること

ウゴービの投与方法と用量調整|週1回の皮下注射で段階的に増やしていく

ウゴービは週1回の皮下注射で、0.25mgという少量から開始し、4週間ごとに段階的に増量して最終的に2.4mgまで引き上げます。急に高用量を投与するのではなく、身体が薬に慣れるための期間をしっかり設ける設計です。

0.25mgから2.4mgまで、4週間ごとに5段階で増量する

投与スケジュールは、0.25mg→0.5mg→1.0mg→1.7mg→2.4mgの5段階です。各段階を4週間ずつ維持しながら進めるため、維持用量の2.4mgに到達するまでには約16週間(4か月)かかります。

副作用として多い消化器症状(吐き気、便秘、下痢など)は、とくに増量時に出やすい傾向があります。段階的な増量は、こうした症状を抑えつつ体重減少効果を得るための工夫といえるでしょう。

  • 0.25mg:開始用量(4週間)
  • 0.5mg:第2段階(4週間)
  • 1.0mg:第3段階(4週間)
  • 1.7mg:第4段階(4週間)
  • 2.4mg:維持用量

投与期間は原則として68週間(約1年4か月)が上限になる

現時点でのウゴービの投与期間は68週間が目安です。治療中は2か月に1回以上、管理栄養士による栄養指導を受けることが定められています。薬を使っている間も、食事や運動による生活習慣の改善を並行して進める必要があります。

注射し忘れたときの対処法も知っておきたい

次の投与予定日まで2日(48時間)以上ある場合は、気づいた時点で直ちに1回分を投与し、以降はあらかじめ決めた曜日に戻します。48時間未満の場合は、忘れた分は投与せず、次の予定日に1回分を注射してください。1度に2回分を打つことは絶対に避けましょう。

注射部位はお腹・太もも・上腕から選べます。毎回同じ場所に打つと皮膚に負担がかかるため、部位をローテーションさせることが推奨されています。ペン型の注射器は操作が比較的簡単で、針も細いため、自己注射に対する不安が強い方でも無理なく続けやすい設計です。

ウゴービの投与を続けるか中止するかの判断基準

ウゴービの治療効果は定期的に評価し、十分な減量が得られない場合や副作用が強い場合には中止を検討します。漫然と使い続けることは認められておらず、一定の判断基準が設けられています。

投与開始から一定期間で体重の変化を確認する

ガイドラインでは、維持用量に到達してから一定期間が経過した時点で、体重減少の程度を評価するよう求めています。治療効果が認められない場合は、投与の継続について慎重に再検討する必要があります。

副作用の種類と程度によっては中止を判断する

消化器症状が主な副作用ですが、急性膵炎や胆嚢炎といった重大な副作用が報告される場合もあります。甲状腺髄様癌の既往がある方や、多発性内分泌腫瘍症2型の家族歴がある方には使用できません。

投与中止後には、急激な血糖上昇や肝機能の悪化、リフィーディング症候群(長期の栄養不足状態から急に栄養を摂取した際に起こる代謝異常)といったリスクも指摘されているため、中止の際にも医師の指導のもとで慎重に進めることが大切です。

糖尿病治療を受けている場合は血糖管理との兼ね合いに注意が必要になる

ウゴービを単独で使用する場合、低血糖のリスクは低いとされています。ただし、インスリン製剤やSU薬(スルホニル尿素薬)、グリニド薬と併用している場合には、低血糖の危険性が高まるため、糖尿病の治療を担当する医師との密な連携が求められます。

判断項目対応方針
体重減少が不十分漫然と投与を続けず、中止を検討
消化器症状が強い用量調整や一時的な減量を考慮
重大な副作用が発生直ちに投与を中止
糖尿病薬との併用低血糖リスクを考慮し、担当医と連携

「自分はウゴービを使えるの?」と感じたら確認してほしいこと

ウゴービの適応は非常に厳格に定められているため、「使ってみたい」と思っても、すぐに処方に至るとは限りません。まずは、ご自身の状態がガイドラインの条件に近いかどうかを客観的に把握することから始めましょう。

まずは現在のBMIと合併症を正確に把握することから始めよう

BMIは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算できます。BMIが27以上か35以上かで要件が変わりますので、正確な数値を知ることが第一歩です。あわせて、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病の診断を受けているかどうかも確認しておきましょう。

  • BMI 27以上35未満:肥満関連の健康障害が2つ以上必要
  • BMI 35以上:健康障害が1つ以上あれば対象になり得る

かかりつけ医に相談して、対応可能な施設を紹介してもらう流れが現実的

ウゴービの処方ができる教育研修施設は、大学病院や地域の基幹病院が中心です。多くの場合、かかりつけ医で基本的な生活習慣の改善指導と薬物療法を受けたうえで、条件を満たす施設に紹介状を書いてもらう流れになります。

ガイドラインの要件を満たさない施設で「ウゴービが処方できる」と謳っている場合、それは自由診療での取り扱いである可能性が高いです。安全性の観点から、ガイドラインに準拠した施設を選ぶことをおすすめします。

美容・痩身目的ではウゴービは使えないことを理解しておく

日本肥満学会は、ウゴービについて「健康障害を伴わない肥満に用いるべきではなく、低体重や普通体重の方に美容・痩身・ダイエット目的で使う薬ではない」と明確に述べています。あくまでも医学的な治療を必要とする「肥満症」に限定された薬であることを、改めて理解しておくことが大切です。

海外の大規模臨床試験(SELECT試験)では、ウゴービが心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)のリスクを20%低減させたという結果も報告されています。こうした医学的エビデンスに裏づけられた治療薬だからこそ、対象を絞って慎重に使用するという姿勢が貫かれているのです。

よくある質問

ウゴービのガイドラインは誰が作成した公式文書ですか?

ウゴービの「セマグルチド(遺伝子組換え)製剤に係る最適使用推進ガイドライン(肥満症)」は、厚生労働省が作成した公式文書です。策定にあたっては、PMDA(医薬品医療機器総合機構)をはじめ、日本肥満学会・日本肥満症治療学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会・日本内科学会が協力しています。

2023年11月21日に初版が公表され、2025年5月に改訂版が出されました。革新的な医薬品を適正に使うための国の方針を示したものであり、個別のクリニックが独自に定めたルールとは異なります。

ウゴービは近所のクリニックでも処方してもらえますか?

ガイドラインに準拠した処方を受けるには、日本糖尿病学会・日本内分泌学会・日本循環器学会のいずれかから「教育研修施設」として認定された医療機関を受診する必要があります。該当するのは主に大学病院や地域の大規模総合病院であり、一般的な街のクリニックでは対応が難しいのが現状です。

自由診療として取り扱うクリニックも増えていますが、ガイドラインの要件を満たしていない場合があります。安全性と治療の質を重視するなら、まずはかかりつけ医に相談し、要件を満たす施設を紹介してもらう方法がおすすめです。

ウゴービの投与期間に上限はありますか?

現行のガイドラインでは、ウゴービの投与期間は68週間(約1年4か月)が上限の目安とされています。治療中は2か月に1回以上の管理栄養士による栄養指導が必要であり、その内容は診療録に記録されます。

投与期間中に十分な体重減少が得られない場合は、漫然と投与を継続するのではなく、中止を含めた再評価が行われます。投与終了後も食事・運動による生活習慣の改善を続けることが、リバウンド防止には重要です。

ウゴービの臨床試験ではどの程度の体重減少が報告されていますか?

グローバルで実施されたSTEP試験プログラムでは、ウゴービ2.4mgの週1回投与により、糖尿病のない肥満・過体重の方で68週間後にベースラインから約14.9〜17.4%の体重減少が報告されています。日本・韓国を対象としたSTEP 6試験では、東アジアの方においても13.2%の体重減少が確認されました。

ただし、臨床試験の結果がすべての方に同じように当てはまるわけではありません。個人の体質や併存疾患、生活習慣の改善度合いによって効果には差が出るため、主治医とよく相談しながら治療を進めることが大切です。

ウゴービを使用中に注意すべき副作用にはどのようなものがありますか?

ウゴービで報告されている副作用のうち、もっとも多いのは吐き気・下痢・便秘・嘔吐・食欲減退といった消化器症状です。これらは治療開始初期や増量時期に出やすく、多くの場合は時間の経過とともに落ち着いていきます。

一方で、急性膵炎や胆嚢炎といった重大な副作用の報告もあります。甲状腺髄様癌の既往がある方や、多発性内分泌腫瘍症2型の家族歴がある方は使用できません。体調に異変を感じた場合は、すみやかに主治医に相談してください。

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この記事を書いた人 Wrote this article

大木 沙織 大木皮ふ科クリニック 副院長

皮膚科医/内科専門医/公認心理師 略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。 所属:日本内科学会