妊娠中に水疱瘡(水痘)に感染すると、おなかの赤ちゃんに「先天性水痘症候群」と呼ばれる障害が生じるおそれがあります。水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)への抗体を持たない妊婦は、特に妊娠20週までの時期に注意が必要です。

先天性水痘症候群の発症率は妊娠全体を通して約0.5〜2%とされ、頻度は低いものの、皮膚・神経・眼・骨格にわたる重い合併症をもたらすことがあります。妊娠前のワクチン接種や抗体検査で自分の免疫状態を把握しておくことが、赤ちゃんを守る第一歩です。

この記事では、妊娠中の水疱瘡感染がもたらすリスク、先天性水痘症候群の具体的な症状、そして抗体のない妊婦がとるべき対策まで、産婦人科領域の知見をもとに丁寧に解説します。

目次
  1. 妊娠中の水疱瘡感染で胎児に及ぶ影響は妊娠週数で大きく異なる
    1. 妊娠20週未満の水疱瘡感染は先天性水痘症候群を引き起こす
    2. 妊娠中期以降は胎児への影響がどう変わるか
    3. 抗体がないまま妊娠を迎えるとなぜ危険なのか
  2. 先天性水痘症候群で赤ちゃんに現れる症状と発症の確率
    1. 皮膚・神経・眼・骨格に生じる特徴的な異常
    2. 感染時期ごとの発症率はどのくらいか?
    3. 出生後の経過と予後に影響する要因
  3. 水疱瘡の抗体がない妊婦ができる感染予防の対策
    1. 妊娠前の水痘ワクチン接種で抗体を獲得しておく
    2. 妊娠中に感染者との接触を避ける工夫
    3. 家族や同居者への水痘ワクチン接種の呼びかけ
  4. 水疱瘡の抗体検査は妊娠前に受けておくのが鉄則
    1. 抗体検査の方法と受けるタイミング
    2. 抗体が陰性だった場合にとるべき行動
    3. 「水疱瘡にかかった記憶がない」は抗体があるとは限らない
  5. 妊婦が水疱瘡患者と接触してしまったときの緊急対応
    1. 接触後96時間以内の免疫グロブリン(VZIG)投与が鍵
    2. 抗ウイルス薬アシクロビルは妊娠中でも使えるのか?
    3. 産科での経過観察と超音波検査による胎児確認
  6. 出産直前の水疱瘡感染が新生児にもたらす深刻なリスク
    1. 分娩前5日〜分娩後2日の発症が最も危険な時期
    2. 新生児水痘の症状と早期治療
    3. 母体からの抗体移行が間に合わないケース
  7. 水痘ワクチン未接種の妊婦が日常生活で心がけたい感染回避術
    1. 飛沫感染と接触感染の両方に備える
    2. 上の子どもの保育園・幼稚園での水疱瘡流行時にとる対策
    3. 産後の早い段階でワクチン接種を受けて次の妊娠に備える
  8. よくある質問

妊娠中の水疱瘡感染で胎児に及ぶ影響は妊娠週数で大きく異なる

妊娠20週未満で水疱瘡に感染した場合に先天性水痘症候群が発症する確率は約0.4〜2%と報告されています。感染する時期によって胎児への影響の種類や深刻さが変わるため、妊娠週数に応じたリスク把握が欠かせません。

感染時期胎児への影響発症リスク
妊娠13週未満先天性水痘症候群(低頻度)約0.4%
妊娠13〜20週先天性水痘症候群(やや高い)約2%
妊娠20週以降胎児帯状疱疹など非常にまれ
分娩前後5日以内新生児水痘高い

妊娠20週未満の水疱瘡感染は先天性水痘症候群を引き起こす

妊娠初期から20週未満にかけて母体が水疱瘡を発症した場合、水痘帯状疱疹ウイルスが胎盤を通過し、胎児の組織に直接感染する可能性があります。とりわけ妊娠13〜20週の時期がもっとも高い発症率を示し、約2%の確率で先天性水痘症候群を発症するとの大規模前向き研究の結果が出ています。

ウイルスは胎児の発達途中の皮膚・末梢神経・中枢神経系・眼球・四肢に影響を及ぼし、多臓器にわたる形態異常を引き起こします。13週より前の感染でも先天性水痘症候群の報告はありますが、頻度はさらに低くなります。

妊娠中期以降は胎児への影響がどう変わるか

妊娠20週を過ぎてからの感染では、先天性水痘症候群の発症は極めてまれになります。ただし、まったくリスクがなくなるわけではありません。妊娠21〜27週の感染で先天性水痘症候群が確認された症例報告もわずかながら存在します。

中期以降に母体が感染した場合、胎児は子宮内でウイルスに触れた影響で、出生後の乳幼児期に帯状疱疹を発症する場合があります。免疫が完成しきらない段階でのウイルス潜伏感染が原因と考えられています。

抗体がないまま妊娠を迎えるとなぜ危険なのか

水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体(IgG)を持たない妊婦は、ウイルスに初めて接触したとき一次感染を起こします。一次感染はウイルス血症(血液中にウイルスが広がる状態)を伴いやすく、胎盤を越えた胎児感染の引き金になるのです。

すでに抗体を持っている妊婦が再感染(帯状疱疹)を起こした場合、先天性水痘症候群のリスクはほぼないと報告されています。つまり、抗体の有無が胎児の安全を大きく左右します。妊娠を考え始めた段階で自分の免疫状態を確認しておくことは、赤ちゃんを守るうえで大切な備えといえるでしょう。

先天性水痘症候群で赤ちゃんに現れる症状と発症の確率

先天性水痘症候群は、皮膚の瘢痕・四肢の低形成・眼の異常・神経障害を主な特徴とする多臓器の先天性疾患です。発症頻度は低いものの、報告された症例の約30%が生後数か月以内に亡くなっているとの集計があり、決して軽視できません。

皮膚・神経・眼・骨格に生じる特徴的な異常

先天性水痘症候群の代表的な所見として、皮膚には神経分節に沿った瘢痕性の皮膚病変が約76%の症例で認められます。この瘢痕はジグザグ状や帯状に分布し、ウイルスが知覚神経の走行に沿って組織を傷害した痕跡と考えられています。

神経系では小頭症や脳の萎縮、精神運動発達の遅れなどが約60%に見られ、眼の異常(白内障・小眼球症・脈絡網膜炎など)は約51%、四肢の低形成や筋萎縮といった骨格異常は約49%で報告されています。複数の臓器にまたがる障害が同時に現れる点が、この症候群の特徴です。

感染時期ごとの発症率はどのくらいか?

ドイツと英国で実施された1739例の前向き研究では、母体の水疱瘡感染が妊娠13〜20週に起こった場合の先天性水痘症候群の発症率は約2.0%でした。13週未満では約0.4%と低く、20週以降の発症はごくまれとされています。

別の前向きコホート研究でも、妊娠全体を通じた発症率は約0.59%であり、妊娠20週未満に限ると約0.84%との数値が示されました。頻度は低く見えますが、発症した場合の障害が深刻なため、リスクの大小だけで安心はできません。

出生後の経過と予後に影響する要因

先天性水痘症候群を持って生まれた児の予後は、障害の範囲と重さが左右します。皮膚病変のみであれば経過が比較的良好なケースもある一方、中枢神経系の障害が加わると重篤な発達遅延につながるおそれがあります。

報告例の約30%が生後数か月以内に死亡しているという統計は、治療手段が限られていた時代のデータも含みます。現代の周産期医療の発達により生存率は改善傾向にありますが、後遺症への対応は長期的になりやすいのが実情です。

障害部位主な症状出現頻度
皮膚神経分節に沿った瘢痕性病変約76%
神経小頭症・脳萎縮・発達遅延約60%
白内障・小眼球症約51%
骨格四肢低形成・筋萎縮約49%

水疱瘡の抗体がない妊婦ができる感染予防の対策

「自分は水疱瘡にかかったことがあるはず」と思い込んでいても、実際には抗体が十分でないケースは珍しくありません。感染を防ぐもっとも有効な手段は妊娠前のワクチン接種であり、それが間に合わなかった場合も日常の工夫で接触リスクを下げられます。

妊娠前の水痘ワクチン接種で抗体を獲得しておく

水痘ワクチンは生ワクチンのため、妊娠中には接種できません。妊娠を計画している段階で抗体検査を受け、陰性の場合はワクチンを2回接種して十分な免疫を獲得しておくことが望ましいとされています。ワクチン接種後は少なくとも1か月間の避妊期間を設けるよう指導されるのが一般的です。

水痘ワクチンの導入以降、妊娠可能年齢の女性における水疱瘡感染そのものが大幅に減少しています。米国の予防接種諮問委員会(ACIP)も、妊娠前および産後のワクチン接種を推奨しています。

妊娠中に感染者との接触を避ける工夫

水痘帯状疱疹ウイルスは、水疱液との直接接触だけでなく、感染者の呼気に含まれる飛沫核を介して空気感染します。感染力はインフルエンザよりも強く、同じ室内にいるだけで感染が成立する可能性があります。

妊娠中の方が感染者に接触してしまったときの対処は後述しますが、まずは「水疱瘡の発症者や帯状疱疹の患者に近づかない」ことが基本です。職場や公共の場で水疱瘡が発生した情報を得たら、早めに産科に相談してください。

家族や同居者への水痘ワクチン接種の呼びかけ

妊婦自身がワクチンを接種できなくても、周囲の家族や同居者が免疫を持っていれば、家庭内へのウイルス持ち込みを防げます。パートナーや上の子ども、同居の祖父母の抗体状態を確認し、必要であればワクチン接種を勧めましょう。

  • パートナー:抗体検査で陰性の場合は早めにワクチン接種を行う
  • 上の子ども:定期接種スケジュールの確認と未接種分の追加接種
  • 同居の祖父母:帯状疱疹の発症にも注意が必要(同じウイルスが原因)

家族全体で免疫の壁をつくることが、妊婦を守るうえでとても有効です。

水疱瘡の抗体検査は妊娠前に受けておくのが鉄則

「過去に水疱瘡にかかったから大丈夫」とは言い切れません。自己申告の感染歴と血液検査の結果が一致しない例が一定数あり、確実な判断には血液検査による抗体価の確認が必要です。

抗体検査の方法と受けるタイミング

水痘帯状疱疹ウイルスに対するIgG抗体を血液検査で測定します。ELISA法や蛍光抗体法などの方法があり、多くの医療機関で実施できます。妊娠を考え始めた時点で受けておくと、陰性だった場合にワクチン接種の時間的余裕を確保できるでしょう。

ブライダルチェックや妊娠前健診の一環として水痘抗体検査を組み込む医療機関も増えており、風疹の抗体検査と合わせて受ける方も少なくありません。

抗体が陰性だった場合にとるべき行動

検査の結果、抗体が陰性または不十分と判定された場合は、妊娠前に水痘ワクチンを2回接種して免疫を獲得します。1回目と2回目の間隔は通常4〜8週間あけ、2回目の接種から少なくとも1か月は避妊を続けるのが原則です。

すでに妊娠がわかっている段階で抗体陰性が判明した場合、ワクチンは接種できないため、日常での感染回避策の徹底と、万一の接触時に備えた免疫グロブリン投与の準備が柱になります。

状況推奨される対応
抗体陽性追加の処置は不要。通常の妊婦健診を継続
抗体陰性(妊娠前)水痘ワクチン2回接種→1か月以上避妊
抗体陰性(妊娠中)感染回避策を徹底し、接触時はVZIG投与を検討

「水疱瘡にかかった記憶がない」は抗体があるとは限らない

幼少期に軽い症状で経過した水疱瘡は本人も家族も記憶していないことがあります。一方、水疱瘡だと思い込んでいた発疹が実は別の疾患であった可能性もあります。記憶だけでは免疫の有無を正しく判定できないため、客観的な検査を受けておく安心感は大きいといえます。

妊婦が水疱瘡患者と接触してしまったときの緊急対応

接触後すぐに症状が出るわけではないため「様子を見よう」と放置する方もいますが、それは誤りです。抗体のない妊婦が水疱瘡患者と接触した場合、96時間(4日)以内の免疫グロブリン投与が母子双方の安全を高める可能性があります。

接触後96時間以内の免疫グロブリン(VZIG)投与が鍵

水痘帯状疱疹免疫グロブリン(VZIG)は、ウイルスに対する抗体を含む血液製剤で、接触後できるだけ早い段階に投与するほど効果が高まります。米国やカナダのガイドラインでは、抗体陰性の妊婦が水疱瘡患者と密接に接触した場合、72〜96時間以内のVZIG投与を推奨しています。

VZIGには母体の発症予防や軽症化の効果を見込めますが、胎児への感染を完全に防ぐエビデンスは限られています。それでも、母体の重症化を防ぐことで間接的に胎児を守る意義があると考えられています。

抗ウイルス薬アシクロビルは妊娠中でも使えるのか?

アシクロビルは水痘帯状疱疹ウイルスに有効な抗ウイルス薬で、妊娠中の使用についても大規模コホート研究で先天異常のリスク上昇は認められなかったと報告されています。デンマークの83万人超の出生児を対象にした調査では、妊娠初期のアシクロビルまたはバラシクロビル使用群と非使用群との間に先天異常の有意差はありませんでした。

ただし妊婦への投与は慎重に判断する必要があり、重症の水痘肺炎を合併した場合など、母体のリスクが高い状況で主治医が必要と認めたときに使われるのが一般的です。自己判断での服用は避け、必ず産科医に相談してください。

産科での経過観察と超音波検査による胎児確認

母体が水疱瘡を発症した場合、胎児への影響を評価するために定期的な超音波検査が行われます。四肢の成長、脳室の拡大の有無、眼球の構造異常などを確認し、先天性水痘症候群を示唆する所見がないかを丹念に観察します。

羊水中のウイルスDNAをPCR法で検出する検査も行われることがありますが、検査結果が陰性でも胎児感染を完全には否定できず、慎重なフォローが続きます。不安を一人で抱えず、主治医と密に連絡をとることが大切です。

対応時期の目安目的
VZIG投与接触後96時間以内母体の発症予防・軽症化
アシクロビル発疹出現後24時間以内症状の軽減・合併症予防
超音波検査感染後定期的に胎児の形態異常の確認

出産直前の水疱瘡感染が新生児にもたらす深刻なリスク

分娩の前後5日以内に母体が水疱瘡を発症した場合、新生児が重症の水痘を発症する危険性が急激に高まります。母体の抗体産生が間に合わず、胎盤を通じた防御抗体の移行が十分にできないことが原因です。

分娩前5日〜分娩後2日の発症が最も危険な時期

母体が発疹を出してから抗体が産生されるまでには数日を要します。分娩の5日前から2日後までの間に母体が発疹を出した場合、新生児はウイルスに曝露されながらも母体からの防御抗体を受け取れない状態で生まれてきます。

治療が行われなかった場合の新生児水痘の致死率は約20〜30%にのぼるとの過去の報告もあります。現代ではVZIGや抗ウイルス薬が使えるため死亡率は低下していますが、速やかな介入が命を救います。

新生児水痘の症状と早期治療

新生児水痘は、全身に広がる水疱性発疹だけでなく、肺炎・肝炎・脳炎といった内臓合併症を伴うことがあります。免疫が未成熟な新生児ではウイルスが全身に拡散しやすく、重篤な経過をたどるおそれがあるため、出生直後からの管理が必要です。

  • 新生児へのVZIG投与:出生後できるだけ早い段階で行う
  • アシクロビルの静脈投与:重症例では点滴による治療を開始
  • 隔離管理:院内感染防止のため他の新生児との接触を避ける

周産期の水疱瘡が判明した場合は、新生児科との連携のもと、出生前から治療計画を立てておくことが望ましいといえます。

母体からの抗体移行が間に合わないケース

妊娠後期に十分な期間を経て水疱瘡を発症・回復した母体からは、IgG抗体が胎盤を通じて胎児へ移行します。この場合、新生児は軽症か無症状で済むことが多いでしょう。しかし分娩直前の発症では、このIgGの移行が完了する前に出産を迎えてしまうため、新生児が無防備な状態でウイルスと戦わなければなりません。

帝王切開で分娩を遅らせることが新生児水痘の予防に有効かどうかは、まだ結論が出ていません。個々の状況に応じて産科医・新生児科医が協議のうえ判断します。

水痘ワクチン未接種の妊婦が日常生活で心がけたい感染回避術

日本では毎年約100万人が水疱瘡を発症しており、完全に接触を避けることは現実には難しい面があります。ワクチンが打てない妊娠中だからこそ、日常のちょっとした行動で感染リスクを減らす工夫が大切です。

飛沫感染と接触感染の両方に備える

水痘帯状疱疹ウイルスは飛沫核(エアロゾル)による空気感染が主な感染経路で、同じ部屋にいるだけでも感染しうるほど伝播力が強いウイルスです。水疱液への直接接触でもうつるため、帯状疱疹患者との接触にも注意が必要です。

換気の悪い密閉空間や人混みではリスクが高まりやすいので、混雑する時間帯の外出を避ける、室内の換気をこまめに行うなどの対策が有効でしょう。

上の子どもの保育園・幼稚園での水疱瘡流行時にとる対策

保育園や幼稚園は水疱瘡の集団感染が起きやすい場所です。園から水痘の流行情報が出たら、可能であれば送迎をパートナーや家族に代わってもらい、妊婦自身が園内に立ち入る機会を減らすと安心です。

上の子どもが水疱瘡にかかってしまった場合は、家庭内での接触を最小限にしつつ、速やかに産科へ連絡して自身の抗体状況を確認してもらいましょう。VZIG投与が必要かどうかを含め、早めの判断が鍵になります。

産後の早い段階でワクチン接種を受けて次の妊娠に備える

抗体を持たないまま妊娠期間を乗り越えた方は、産後できるだけ早い時期にワクチン接種を受けることを推奨します。授乳中であっても水痘ワクチンの接種は可能であり、次の妊娠に向けた備えとして意義があります。

産後は育児に追われワクチンのことを後回しにしがちですが、2人目以降の妊娠で同じリスクを繰り返さないためにも、産科の退院時に接種スケジュールを確認しておくとよいでしょう。

場面感染回避のポイント
外出時人混みを避け、換気の良い場所を選ぶ
保育園・幼稚園流行時は送迎を家族に依頼する
家庭内同居者の免疫確認とワクチン接種を促す
産後早期にワクチン接種を受ける

よくある質問

Q
先天性水痘症候群の発症率はどのくらいですか?
A

先天性水痘症候群の発症率は、妊娠中に水疱瘡に感染した全期間を通して約0.4〜2%と報告されています。妊娠13〜20週の時期に母体が感染した場合がもっとも発症率が高く、約2%です。妊娠13週未満での発症率は約0.4%とされ、妊娠20週以降の発症は極めてまれです。

頻度は低いものの、発症した場合は皮膚・神経・眼・骨格にわたる多臓器の障害をもたらすことがあるため、決して油断はできません。抗体のない妊婦は感染予防を意識しておくことが大切です。

Q
妊娠中に水痘ワクチンを接種することはできますか?
A

水痘ワクチンは生ワクチンに分類されるため、妊娠中の接種は禁忌とされています。胎児へのワクチンウイルス感染の理論的リスクがあるためです。ただし、妊娠に気づかず接種してしまった症例の追跡調査では先天異常の増加は確認されておらず、接種を理由に妊娠の中断を勧める必要はないとされています。

ワクチン接種は妊娠前に済ませ、接種後少なくとも1か月間は避妊期間を設けるのが一般的な指導です。産後の接種も可能ですので、次の妊娠に備えて検討してみてください。

Q
水疱瘡の抗体検査はどの医療機関で受けられますか?
A

水痘帯状疱疹ウイルスに対するIgG抗体の血液検査は、産婦人科・内科・皮膚科など多くの医療機関で受けることができます。妊娠前の健診やブライダルチェックの一環として実施している施設もあり、風疹の抗体検査と併せて受ける方も多くいらっしゃいます。

検査費用は自費診療となる場合が多いですが、自治体によっては助成制度を設けていることもあります。まずはかかりつけの産婦人科や内科に問い合わせてみるとよいでしょう。

Q
妊娠中に水疱瘡に感染した場合アシクロビルは安全ですか?
A

デンマークで実施された約83万人規模の出生コホート研究では、妊娠初期にアシクロビルまたはバラシクロビルを使用した群と非使用群との間で先天異常の発生率に有意な差を認めていません。現時点では、母体に重篤な合併症(水痘肺炎など)がある場合に限り、主治医が投与の必要性を判断します。

安全性に関するデータは蓄積されていますが、すべてのケースで無条件に安全とまでは結論づけられていません。服用が必要かどうかは、必ず産科医と相談のうえ判断してください。

Q
水疱瘡の免疫グロブリン(VZIG)は妊婦に投与できますか?
A

水痘帯状疱疹免疫グロブリン(VZIG)は、抗体を持たない妊婦が水疱瘡患者と密接に接触した際に投与を検討できる血液製剤です。接触後できるだけ早く、理想的には96時間以内に投与することで、母体の発症予防または軽症化を期待できます。

VZIGは胎児への感染を完全に防ぐことを保証するものではありませんが、母体の重症化を抑えることで間接的に胎児を守る効果が見込まれます。接触の状況を速やかに産科に連絡し、投与の要否について指示を仰いでください。

参考文献