男性のHPVワクチン接種では、カバーするHPV型が多いシルガード9(9価)を選ぶことで、肛門がんや中咽頭がんなどHPV関連疾患の予防範囲を大きく広げられます。ガーダシル(4価)は4つのHPV型に対応しますが、9価は高リスク型を5つ追加した合計9型をカバーし、男性における発がんリスクをより広範に低減できるワクチンです。

臨床試験のデータでは、9価ワクチンの男性に対する免疫原性(免疫をつくる力)は女性と同等であり、安全性も良好と報告されています。接種対象は9歳から45歳までの男性で、性交渉の経験がある方でも予防効果が期待できます。

この記事では、4価と9価それぞれの特徴と違い、男性が9価を選ぶ具体的なメリット、接種スケジュール、副反応の情報をわかりやすくまとめています。ワクチン選びの参考にしてください。

目次
  1. HPVワクチンは男性にも必要――感染リスクと9価ワクチンの予防効果
    1. 男性のHPV感染率は想像以上に高い
    2. 尖圭コンジローマだけでなく癌につながるリスクも見逃せない
    3. パートナーへの感染を防ぐ意味でも接種する価値がある
  2. ガーダシル(4価)とシルガード9(9価)が対応するHPV型の比較
    1. 4価ワクチンが防ぐHPV 6・11・16・18型
    2. 9価ワクチンが追加でカバーする5つの高リスク型
    3. 予防できる疾患の範囲はどこまで広がるか
  3. 男性がシルガード9(9価HPVワクチン)を選ぶ具体的なメリット
    1. HPV関連がんに対するカバー率が約90%に上昇する
    2. 男性でも高い免疫原性が臨床データで確認されている
    3. 一度の接種スケジュールでより広い防御を手に入れられる
  4. 男性のHPVワクチン接種スケジュールと適応年齢
    1. 標準は3回接種(0か月・2か月・6か月)
    2. HPVワクチンは何歳まで接種できるのか
    3. 性交渉の経験がある男性でも接種は遅くない
  5. HPVワクチンの副反応と安全性に関する男性の臨床データ
    1. 臨床試験で報告された主な副反応
    2. ガーダシル4価とシルガード9価で副反応の出方に差はあるか
    3. 重篤な有害事象の報告頻度はきわめて低い
  6. HPVワクチン接種前に押さえておきたい注意点と費用の目安
    1. 接種を控えたほうがよいケースとは
    2. 費用の目安と医療機関の選び方
    3. 接種後のフォローアップと定期的な検診のすすめ
  7. よくある質問

HPVワクチンは男性にも必要――感染リスクと9価ワクチンの予防効果

HPV(ヒトパピローマウイルス)は男性にも感染し、尖圭コンジローマや肛門がん、中咽頭がんなどの原因になります。「女性のためのワクチン」というイメージは、すでに過去のものです。

男性のHPV感染率は想像以上に高い

HPVは性交渉を通じて広がるウイルスで、性別に関係なく感染します。男性のHPV感染率は研究によって差がありますが、生涯で50%を超える男性が何らかのHPV型に感染するとされており、決して珍しい感染症ではありません。

感染しても自覚症状がないことが多く、知らないうちにウイルスを保有しているケースが大半を占めます。自然に排除される場合もありますが、一部のHPV型は持続感染を起こし、数年から十数年かけてがんへ進行するリスクがあります。

尖圭コンジローマだけでなく癌につながるリスクも見逃せない

男性のHPV関連疾患で目立つのは尖圭コンジローマ(性器いぼ)ですが、怖いのはがんへの進行でしょう。HPV16型・18型の持続感染は、肛門がんや中咽頭がん、さらに陰茎がんの発症に関与することが明らかになっています。

とくに肛門がんの90%以上はHPV感染が原因とされ、近年の研究では発症率が上昇傾向にあります。中咽頭がんについても、HPV関連の症例が増加しており、男性にとっても無視できない健康リスクといえます。

  • 尖圭コンジローマ(HPV6・11型が主因)――外性器にいぼが多発する
  • 肛門がん・肛門上皮内腫瘍(HPV16・18型が主因)――肛門周囲の細胞が異常増殖する
  • 中咽頭がん(HPV16型が主因)――のどの奥に発生するがん
  • 陰茎がん(HPV16・18型が関与)――発症率は低いものの進行すると深刻な疾患

パートナーへの感染を防ぐ意味でも接種する価値がある

男性がHPVワクチンを接種することは、自分自身の健康を守るだけにとどまりません。パートナーへの感染リスクを減らし、女性の子宮頸がん予防にも貢献できます。

海外では男女ともにHPVワクチンを接種する「ジェンダーニュートラル接種」が広がっており、集団全体の感染率を下げる効果が確認されています。男性のワクチン接種は、自分と大切な人の両方を守る行動です。

ガーダシル(4価)とシルガード9(9価)が対応するHPV型の比較

4価と9価の最大の違いは、防御できるHPV型の数にあります。4価が4つの型に対応するのに対し、9価は9つの型をカバーし、がん予防の範囲が格段に広がります。

項目ガーダシル(4価)シルガード9(9価)
対応HPV型6, 11, 16, 186, 11, 16, 18, 31, 33, 45, 52, 58
低リスク型6, 116, 11
高リスク型16, 1816, 18, 31, 33, 45, 52, 58

4価ワクチンが防ぐHPV 6・11・16・18型

ガーダシル(4価)は、HPV6・11・16・18型の4つに対応します。HPV6型と11型は尖圭コンジローマの約90%を引き起こす型で、HPV16型と18型は子宮頸がんの約70%に関与する高リスク型です。

男性における臨床試験では、4価ワクチンがHPV6・11・16・18型に関連する外性器病変を約90%予防したと報告されています。肛門上皮内腫瘍に対しても有効性が示されており、基本的な防御としては十分な実績があるワクチンといえるでしょう。

9価ワクチンが追加でカバーする5つの高リスク型

シルガード9(9価)は、4価の4型に加えてHPV31・33・45・52・58型の5つの高リスク型を追加でカバーします。この5型は子宮頸がんの約15~20%に関与しており、4価では防ぎきれなかった発がんリスクを補えるのが大きな違いです。

HPV52型や58型はアジア地域で検出頻度が高いとされ、日本で生活する男性にとっても9価ワクチンの恩恵は小さくありません。肛門がんや中咽頭がんにおいても、これら5型の関与が指摘されており、より幅広い予防を求める方に9価が適しています。

予防できる疾患の範囲はどこまで広がるか

4価から9価へ切り替えることで、HPV関連がんの約90%をカバーできるとされています。とくに男性では、肛門がんの原因となるHPV型の大部分が9価ワクチンの対象に含まれる点が見逃せません。

中咽頭がんの予防についても、HPV16型を中心にカバーされていますが、9価ワクチンの対象型が広いことで将来的なリスク低減に寄与する可能性があります。現在、多くの国際的なガイドラインが9価ワクチンの使用を推奨しており、男性のHPV対策として9価が標準になりつつあるのが現状です。

男性がシルガード9(9価HPVワクチン)を選ぶ具体的なメリット

「4価で十分なのか、9価にすべきか」と迷う男性は少なくありません。結論から言えば、同じ3回接種でカバー範囲を大きく広げられる9価は、追加費用に見合う価値のある選択です。

HPV関連がんに対するカバー率が約90%に上昇する

4価ワクチンのカバー率は子宮頸がんで約70%ですが、9価では約90%にまで引き上げられます。男性に関係する肛門がんや中咽頭がんでも、9価ワクチンの対象型が原因の大多数を占めるため、より高い予防効果が見込めます。

がん予防の観点から考えると、同じ回数の接種でカバー範囲を広げられる9価は、費用対効果の面でも優れた選択といえるでしょう。一度接種を完了すれば長期にわたって抗体が維持されることが臨床試験で確認されています。

疾患4価のカバー率9価のカバー率
子宮頸がん約70%約90%
肛門がん約80%約90%以上
尖圭コンジローマ約90%約90%

男性でも高い免疫原性が臨床データで確認されている

「9価ワクチンは男性にも効くのか」と疑問に思う方がいるかもしれませんが、答えは明確です。16~26歳の男性を対象にした臨床試験では、9価ワクチンの接種後に99%以上の男性が全9型に対して血清陽転(抗体がつくこと)を達成したと報告されています。

抗体価(免疫の強さを示す数値)は女性と比較しても劣らず、男性への接種においても十分な免疫応答が得られることが示されました。27~45歳の男性を対象にした別の試験でも同様に良好な結果が出ており、幅広い年齢層で有効性が裏付けられています。

一度の接種スケジュールでより広い防御を手に入れられる

4価ワクチンも9価ワクチンも、接種スケジュールは基本的に3回で同じです。つまり、同じ通院回数と期間で、9価なら5つ多いHPV型への防御を追加できます。

将来の感染リスクを考えると、できるだけ広い範囲をカバーしておくことが合理的な判断でしょう。とくに若い男性はHPV感染の機会がこれから増える可能性が高く、早い段階でカバー範囲の広いワクチンを選ぶことが長期的な健康を守る一手になります。

男性のHPVワクチン接種スケジュールと適応年齢

シルガード9(9価)もガーダシル(4価)も、接種スケジュールは3回が基本です。9歳から45歳までの男性が接種対象となります。

標準は3回接種(0か月・2か月・6か月)

HPVワクチンの標準的なスケジュールは、初回を0か月として2か月後に2回目、6か月後に3回目を接種する計3回です。すべての回を半年以内に完了するのが理想的ですが、多少の前後は許容される場合もあります。

なお、15歳未満で接種を開始する場合は、2回接種(0か月・6~12か月)で済むケースもあります。接種回数の判断は医師と相談して決めましょう。

回数接種時期備考
1回目任意の日(0か月)初回接種
2回目初回から2か月後最短で1か月後も可
3回目初回から6か月後2回目から最低3か月空ける

HPVワクチンは何歳まで接種できるのか

日本国内では、シルガード9は9歳以上の男性に接種が認められています。米国FDAの承認範囲では9歳から45歳までが対象となっており、日本でも同様の年齢層で接種を受けることが可能です。

ワクチンの効果を最大限に引き出すには、HPVに曝露される前、つまり性交渉を開始する前の接種が理想的でしょう。ただし、26歳以降であっても予防効果がゼロになるわけではなく、個々の状況に応じて接種を検討する価値があります。

性交渉の経験がある男性でも接種は遅くない

すでに性交渉の経験がある方でも、HPVワクチンの接種には意義があります。過去に特定のHPV型に感染した経験があっても、ワクチンが対象とするすべての型に同時感染していることはまれだからです。

まだ感染していない型に対しては、ワクチンによる予防効果が期待できます。臨床試験では、接種前にHPV陽性だった男性でも、未感染の型に対しては高い抗体産生が確認されました。「今さら遅い」と諦める必要はありません。

HPVワクチンの副反応と安全性に関する男性の臨床データ

1万5000人以上を対象にした安全性の統合解析では、9価ワクチンの副反応は大半が注射部位の局所反応であり、重い有害事象はごくまれでした。男性に特有の安全性の懸念も報告されていません。

臨床試験で報告された主な副反応

9価ワクチンの接種後にもっとも多く報告された副反応は、注射部位の痛み・腫れ・赤みといった局所症状です。全身性の副反応としては頭痛や発熱が挙がっていますが、いずれも軽度から中程度の強さにとどまり、数日以内に軽快するケースがほとんどでした。

これらの副反応は他の一般的なワクチンでも見られるものであり、HPVワクチンに固有のリスクが極端に高いわけではありません。体調に不安がある場合は、接種前に医師へ相談してください。

ガーダシル4価とシルガード9価で副反応の出方に差はあるか

臨床試験の比較データによると、9価ワクチンは4価ワクチンよりも注射部位の反応(痛み・腫れ)がやや多く報告されています。9価のほうが含まれるウイルス様粒子の量やアルミニウム補助剤の量が多いことが一因と考えられています。

ただし、全身性の副反応や重篤な有害事象の発生率には両者で有意な差が認められていません。注射部位の腫れが多少強く出る可能性はあるものの、安全性の観点から9価を避ける理由にはならないでしょう。

副反応の種類4価ワクチン9価ワクチン
注射部位の痛み約84%約90%
注射部位の腫れ約25%約40%
頭痛約13%約15%
発熱約4%約5%

重篤な有害事象の報告頻度はきわめて低い

7つの第III相試験を統合した大規模解析では、9価ワクチンに起因する重篤な有害事象の頻度は0.1%未満と報告されています。因果関係が確認されたものはさらに少なく、ワクチンの安全性は高水準にあるといえます。

接種後に万が一体調の変化を感じた場合は、速やかに医療機関を受診してください。アナフィラキシーなどの急性反応は接種直後に起こるため、接種後15~30分は院内で経過観察を行うのが一般的です。

HPVワクチン接種前に押さえておきたい注意点と費用の目安

HPVワクチンの接種を検討する際には、自分が接種の対象に当てはまるかどうか、費用面の見通し、接種後のフォローアップについて事前に把握しておくと安心です。

接種を控えたほうがよいケースとは

HPVワクチンの接種が推奨されないケースは限られていますが、いくつか確認しておくべき点があります。ワクチンの成分(酵母など)にアレルギーがある方は接種を避ける必要があるため、過去にアレルギー反応を起こしたことがある場合は事前に医師へ伝えてください。

発熱中や急性疾患にかかっている期間は接種を延期するのが通常の対応です。基礎疾患がある方や免疫抑制状態にある方も、主治医と相談のうえで接種の可否を判断しましょう。

  • ワクチン成分(酵母たんぱく質など)に対するアレルギーがある方
  • 発熱や急性の感染症にかかっている方(回復後に接種可能)
  • 過去にHPVワクチンで強いアレルギー反応を経験した方

費用の目安と医療機関の選び方

男性のHPVワクチン接種は、多くの場合自費診療となります。シルガード9(9価)の1回あたりの費用は医療機関によって異なりますが、おおむね2万5000円~3万5000円程度が目安です。3回接種で合計8万~10万円前後になる計算です。

一部の自治体では男性へのHPVワクチン接種に対する助成制度を設けている場合があります。お住まいの自治体のホームページや保健センターで確認してみるとよいでしょう。接種を受ける医療機関は、HPVワクチンの取り扱い経験がある皮膚科や泌尿器科、性感染症外来などが候補になります。

接種後のフォローアップと定期的な検診のすすめ

HPVワクチンの接種を完了した後も、定期的な検診を受けることが大切です。ワクチンはすべてのHPV型を防ぐわけではないため、接種済みであっても性感染症全般への注意は引き続き求められます。

肛門がんリスクが高い男性(MSM=男性と性交渉のある男性など)は、肛門の細胞診やHPV検査を定期的に受けることが望ましいでしょう。ワクチンと検診の両方を組み合わせることで、HPV関連疾患の予防効果を最大限に高められます。

よくある質問

Q
シルガード9(9価HPVワクチン)はガーダシル(4価)よりどれくらい多くのHPV型を防げますか?
A

シルガード9(9価)はガーダシル(4価)がカバーするHPV6・11・16・18型に加え、HPV31・33・45・52・58型の5つの高リスク型を追加で防ぎます。合計9つのHPV型に対応することで、HPV関連がん全体のおよそ90%の原因をカバーできるとされています。

4価ワクチンでもHPV16・18型による主要ながんの予防は可能ですが、9価は残りの高リスク型もカバーするため、より広い予防効果が期待できます。とくにアジア地域ではHPV52・58型の検出率が比較的高い傾向にあり、9価を選ぶメリットは大きいといえるでしょう。

Q
HPVワクチンの接種は男性でも効果がありますか?
A

はい、男性にも効果があります。16~26歳の男性を対象とした臨床試験では、9価ワクチン接種後にすべてのHPV型に対して99%以上の被験者が抗体を獲得しました。免疫応答の強さは女性と同等水準であり、男性への接種の有効性は科学的に裏付けられています。

4価ワクチンによる男性の臨床試験でも、HPV6・11・16・18型に関連する外性器病変を約90%予防できたとの結果が示されています。年齢が上がっても免疫応答が著しく落ちるわけではなく、27~45歳の男性でも良好な抗体産生が確認されました。

Q
HPVワクチンの副反応で注意すべき症状はありますか?
A

もっとも多い副反応は注射部位の痛み・腫れ・赤みで、いずれも軽度から中程度の強さです。全身性の反応としては頭痛や発熱が報告されていますが、通常は数日以内に治まります。これらは他のワクチンにも共通して見られる反応であり、過度に心配する必要はないでしょう。

まれにアナフィラキシーなどの急性アレルギー反応が起こる可能性があるため、接種後15~30分間は医療機関内で経過を観察します。接種後に強いだるさや発疹、呼吸困難などが現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

Q
HPVワクチンはすでに性交渉の経験がある男性でも効果がありますか?
A

性交渉の経験がある男性でも、HPVワクチンの接種には意義があります。過去に特定のHPV型に感染していたとしても、ワクチンが対象とする9つの型すべてに感染している可能性は低いため、未感染の型に対しては十分な予防効果が期待できます。

臨床データでも、接種前にHPV陽性であった男性が未感染の型に対して高い免疫応答を示したことが報告されています。「もう手遅れかもしれない」と感じている方も、まずは医師に相談されることをおすすめします。

Q
シルガード9(9価HPVワクチン)の男性の接種スケジュールと回数はどうなっていますか?
A

シルガード9(9価)の標準的な接種スケジュールは、初回を基準として2か月後に2回目、6か月後に3回目を接種する合計3回です。すべての接種を半年以内に完了するのが望ましいとされています。

15歳未満で接種を開始する場合は、0か月・6~12か月の2回接種で完了できるケースもあります。接種間隔がずれた場合でも、最初からやり直す必要は通常ありません。スケジュールの調整については担当医に相談してください。

参考文献