難治性のニキビ治療において、エピデュオゲルとデュアック配合ゲルは、皮膚科医が提案する極めて強力かつ有効な選択肢です。
これらは異なる作用機序を持つ成分を組み合わせた「合剤」であり、従来の単剤治療では改善が見られなかった頑固な症状に対しても、確かな効果を発揮することが期待されています。
本記事では、これら二つの薬剤が持つ独自の特徴や効果の違い、副作用への具体的な対処法、そして個々の肌状態に合わせた最適な選び方について詳しく解説します。
皮膚科学的な根拠に基づいた正しい知識を身につけることで、不安を解消し、納得のいく治療選択ができるようお手伝いします。
合剤の基礎知識とニキビ治療における位置づけ
ニキビ治療における合剤は、それぞれ異なるアプローチでニキビに作用する二つの有効成分を、一つの製剤に凝縮することで誕生しました。
この配合技術は、単なる成分の足し算ではなく、互いの効果を高め合う相乗効果を生み出し、治療効率を飛躍的に向上させる役割を担っています。
単一の成分だけでは対処しきれなかった、複雑で絡み合った病態を持つ中等症以上のニキビに対し、多角的な視点からの攻略が可能になる点が最大の強みです。
二つの成分がもたらす相乗効果の強み
合剤を使用する最大の利点は、たった一度の塗布で、複数の治療ターゲットに対して同時に、かつ強力に働きかけられる点にあります。
ニキビが発生する原因は一つではなく、毛穴の出口が塞がること、皮脂が過剰に分泌されること、アクネ菌が増殖すること、そして炎症が起きることなど、様々な要因が重なっています。
これら全ての要因に対し、一つの成分だけで完璧に対応することは現実的に困難であり、治療が長引く原因となっていました。
合剤と単剤のアプローチ比較
| 項目 | 合剤(エピデュオ・デュアック) | 単剤(抗菌薬やBPO単独) |
|---|---|---|
| 作用範囲 | 多角的(毛穴・菌・炎症) | 限定的(菌のみ、または毛穴のみ) |
| 治療効率 | 非常に高い(相乗効果あり) | 標準的 |
| 耐性菌リスク | 低い(BPO配合による抑制) | 高い(特に抗菌薬単独の場合) |
合剤を導入することで、例えば「毛穴の詰まりを物理的に取り除く作用」と「アクネ菌を化学的に殺菌する作用」を、タイムラグなく同時に進行させることが可能になります。
この同時進行のアプローチは、治療期間の大幅な短縮が期待できるだけでなく、患者様が自宅で行うスキンケアの手間を減らすことにもつながります。
複数の薬を順番に重ね塗りする必要がなくなるため、塗布時の摩擦による肌への物理的な刺激を軽減できるという副次的なメリットも見逃せません。
毎日のケアがシンプルになることは、忙しい現代人にとって治療を継続するための大きなモチベーションとなり、結果として治療成功率を高める要因となります。
耐性菌リスクの低減と持続的な効果
これまで中心的に使われてきた抗菌薬の単独使用は、長期にわたって使い続けると、アクネ菌が薬に対して抵抗力を持つ「薬剤耐性菌」を出現させるリスクがありました。
一度耐性菌が出現してしまうと、薬が効かなくなるだけでなく、将来的に他の感染症にかかった際の治療選択肢を狭めてしまう恐れもあります。
合剤に含まれる過酸化ベンゾイル(BPO)は、強力な酸化作用によって菌を構成するタンパク質を変性させ、物理的に死滅させるという特性を持っています。
このメカニズムは、特定の代謝経路を阻害する抗菌薬とは異なり、菌が変異して対抗することが構造的に難しいため、耐性菌を生じさせにくいという決定的な利点があります。
BPOを抗菌薬やレチノイド様作用を持つ成分と巧みに組み合わせることで、耐性菌の発生を抑え込みつつ、安定した高い治療効果を長期間維持することが可能になりました。
現代の皮膚科治療の現場において、合剤は、積極的にニキビを治す「攻め」の治療と、将来のリスクを回避する「守り」の管理を両立させるための不可欠なツールとして確立されています。
合剤と単剤の治療戦略の違い
従来の単剤治療では、赤みがあれば抗生物質、毛穴詰まりがあればレチノイドといったように、症状の一つ一つに対して順次対応していくアプローチが一般的でした。
合剤治療においては、治療の初期段階から複数の原因を包括的に叩く、「絨毯爆撃」のようなアプローチをとることができます。
炎症が強く痛みを伴う赤ニキビから、目には見えにくいニキビの前段階である面ぽう(コメド)まで、幅広い段階の皮疹を一網打尽にすることを目指します。
特に中等症から重症のニキビに対しては、日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨度の高い治療法として位置づけられており、早期の寛解導入に貢献しています。
エピデュオゲルの詳細と長期的な肌質改善効果
エピデュオゲルは、毛穴の詰まりを根本から解消するアダパレンと、広範囲な殺菌作用を持つ過酸化ベンゾイル(BPO)を配合した、国内で初めて認可された合剤です。
現在発生しているニキビの炎症を抑えるだけでなく、肌の代謝サイクルを正常化し、将来的なニキビ予防を含めた根本的な肌質改善に極めて有効です。
長年ニキビを繰り返し、肌がごわついてしまっているような慢性的な症状に対して、切り札的な存在として多くの患者様に選ばれています。
アダパレンによる毛穴環境の正常化
エピデュオゲルの主成分の一つであるアダパレンは、ビタミンA誘導体の一種であり、表皮の角化細胞にある核内受容体に結合して作用します。
この働きにより、毛穴の出口付近の角層が異常に厚くなって詰まるのを防ぎ、まるで蓋が開くように毛穴を開放状態へと導きます。
ニキビの始まりは、肉眼では確認できないほどの微細な毛穴の詰まり(マイクロコメド)ですが、アダパレンはこの初期段階に直接作用します。
毛穴を開放することで、内部に溜まっていた皮脂や老廃物の排出を促し、アクネ菌が増殖するための温床となる環境そのものを無くしていきます。
すでにできている白ニキビや黒ニキビを排出させる効果はもちろん、新たなニキビができる土壌を改良していくため、使い続けることで肌のざらつきが取れ、滑らかな質感へと変化します。
エピデュオゲルの成分特性と期待できる効果
| 成分名 | 主な作用機序 | 狙いとする効果 |
|---|---|---|
| アダパレン | 角化細胞の分化抑制 | 毛穴詰まりの解消・予防、面ぽうの排出 |
| 過酸化ベンゾイル | 酸化殺菌作用・角層剥離 | アクネ菌の殺菌、耐性菌抑制、炎症抑制 |
| 合剤としての特性 | 上記二つの相乗効果 | 難治性ニキビの鎮静化、再発予防、肌質改善 |
過酸化ベンゾイル(BPO)の強力な酸化作用
もう一つの主成分である過酸化ベンゾイル(BPO)は、皮膚に塗布されると分解され、フリーラジカルという活性酸素を発生させます。
この活性酸素がアクネ菌の細胞膜やDNAを直接攻撃して酸化させることで、強力な殺菌効果を発揮します。
抗生物質のように菌の代謝を阻害するのではなく、菌の構造そのものを破壊するため、どんなタイプのアクネ菌であっても耐性を獲得することができません。
BPOには殺菌作用に加えて、軽度のピーリング作用(角層剥離作用)もあり、古くなった角質を剥がれやすくする働きも持っています。
この作用がアダパレンの働きを強力にバックアップし、頑固な毛穴の詰まりをより効果的に、よりスピーディーに解消へと導きます。
エピデュオゲルは、この二つの成分が互いの効果を高め合う設計になっているため、標準治療薬の中でも特に「効果の強さ」と「確実性」において高く評価されています。
慢性的なニキビ体質からの脱却
エピデュオゲルの真価は、短期間の使用ではなく、数ヶ月単位でじっくりと使用を継続した際に最大限に発揮されます。
赤い炎症が治まった後も使用を続けることで、目に見えないレベルのマイクロコメドの形成を阻害し続けることができます。
これは、一時的に症状を抑えるだけの対症療法とは一線を画し、ニキビを繰り返してしまう肌質そのものを根本から変えていく治療戦略です。
一見ニキビが治ったように見えても、肌の奥ではまだ角化異常が残っていることが多いため、医師の指示に従って根気よく塗布を継続することが重要になります。
デュアック配合ゲルの詳細と即効性のある炎症抑制
デュアック配合ゲルは、抗生物質であるクリンダマイシンと、殺菌剤である過酸化ベンゾイル(BPO)を組み合わせた、急性期の炎症抑制に特化した薬剤です。
特に赤く大きく腫れ上がった炎症性ニキビや、膿を持って痛むような化膿性ニキビに対して、速やかに鎮静化を図る即効性に優れています。
炎症が長引くことによって生じるニキビ跡のリスクを最小限に抑えるため、治療の初期段階における「消火活動」の主役として活躍します。
クリンダマイシンとBPOのダブル抗菌作用
デュアック配合ゲルには、リンコマイシン系抗生物質として知られるクリンダマイシンが配合されています。
クリンダマイシンは、アクネ菌のリボソームに結合してタンパク質の合成を阻害することで、菌の増殖を抑える静菌的な働きを持っています。
ここにBPOの強力かつ直接的な殺菌作用が加わることで、異なるアプローチから同時に、そして徹底的にアクネ菌を攻撃する体制が整います。
デュアック配合ゲルの成分特性と使用の目安
| 成分名 | 主な作用機序 | 特記事項 |
|---|---|---|
| クリンダマイシン | タンパク合成阻害(抗菌) | 抗生物質であり、長期連用には注意が必要 |
| 過酸化ベンゾイル | 酸化殺菌作用 | 抗生物質の耐性化を防ぐ役割も担う |
| 合剤としての特性 | 強力な抗炎症・殺菌 | 赤ニキビへの即効性が高い。維持療法には不向き |
このダブルの抗菌作用により、菌の活動レベルを極限まで抑え込み、炎症を引き起こす原因物質や酵素が作られるのを未然に防ぎます。
さらに、クリンダマイシンには白血球の遊走を抑制する直接的な抗炎症作用もあるとされ、赤みや腫れを物理的に引かせる効果も期待できます。
結果として、見た目にも痛々しいニキビが短期間で落ち着き、患者様の精神的な負担を軽減することにも大きく寄与します。
急性期の激しい炎症への適正
顔全体に赤ニキビが多発している状態や、通常の塗り薬ではなかなか引かない頑固な炎症がある場合、デュアック配合ゲルは第一選択の一つとなります。
炎症が長期間続くと、皮膚の真皮層にあるコラーゲンなどの組織が破壊され、クレーター状の凹みや色素沈着といったニキビ跡として一生残るリスクが高まります。
デュアック配合ゲルは、その抗炎症作用の立ち上がりが非常に早いため、ニキビ跡を残さないための早期治療において優れたパフォーマンスを発揮します。
まずはこの薬で火事を完全に消し止めることが、美しい肌を取り戻すための治療の第一フェーズとなることが一般的です。
使用期間の制限と耐性菌対策
デュアック配合ゲルには抗生物質が含まれているため、漫然とした長期使用は推奨されておらず、使用期間には一定の目安があります。
一般的には、炎症性の赤いニキビが消失した段階、あるいは使用開始から3ヶ月(12週間)程度を目安に、治療薬の変更を検討します。
抗生物質を含まない他の薬剤、例えばエピデュオゲルやベピオゲル、ディフェリンゲルなどへ切り替えることがスタンダードな流れです。
これは、耐性菌の出現を防ぎ、将来本当に抗生物質が必要になった時に薬の効果を温存しておくための、非常に重要な戦略です。
デュアックはずっと使い続けるスキンケアのようなものではなく、ここぞという時に使う「短期決戦型」の強力な武器であると認識してください。
エピデュオとデュアックの直接比較と使い分けの基準
エピデュオゲルとデュアック配合ゲルは、どちらも非常に強力な薬剤ですが、その「強さ」が発揮される方向性やベクトルが異なります。
現在の肌状態がどのようなステージにあるか、悩んでいるニキビの種類は何か、そして最終的な治療のゴールをどこに設定するかによって選択が変わります。
それぞれの特性を正しく理解し、医師と相談の上で適切な方を選択することが、治療成功への近道となります。
効果発現のスピードと質の比較
「今ある赤い炎症をどれだけ早く抑えられるか」というスピードに関しては、抗生物質を含むデュアック配合ゲルに明確な優位性があります。
赤みが強く、触れると熱を持っていたり痛かったりするようなニキビが多発している場合、デュアックを使用することで数週間以内に劇的な改善が見られることが多いです。
一方、「根本的な毛穴の詰まりを除去する力」や「新しいニキビを作らせない力」に関しては、アダパレンを含むエピデュオゲルが圧倒的に優れています。
エピデュオは効果を実感するまでに多少の時間を要することがありますが、コメドの新生を抑える力が強いため、長期的な視点での「完治」を目指す力強さを持っています。
両薬剤の特性比較まとめ
| 比較項目 | エピデュオゲル | デュアック配合ゲル |
|---|---|---|
| 得意な症状 | コメド、赤ニキビ、慢性的なニキビ | 激しい赤ニキビ、化膿したニキビ |
| 即効性 | 比較的ゆっくり(1〜3ヶ月) | 早い(2週間〜1ヶ月) |
| 使用期間 | 長期間可(維持療法に最適) | 短期間推奨(急性期治療向け) |
肌への刺激と忍容性の違い
「副作用の強さ」や「使い続けやすさ」という観点では、一般的にエピデュオゲルの方が刺激を感じやすい傾向にあります。
アダパレンとBPOの両方が角層を剥がす作用(ピーリング作用)を持っているため、乾燥、皮剥け、ヒリヒリ感といった随伴症状が強く出ることがあります。
デュアック配合ゲルもBPOによる刺激はありますが、配合されているクリンダマイシン自体に保湿作用に近い基剤特性があるため、比較的マイルドな使用感です。
肌が敏感で刺激に弱い方や、過去に塗り薬でトラブルがあった方は、まずデュアックから開始して炎症を抑え、肌が慣れてからエピデュオへ移行するステップを踏むこともあります。
ライフスタイルに合わせた選択
治療薬の選択は、薬効だけでなく、患者様のライフスタイルや性格、通院頻度といった生活背景にも左右されます。
デュアック配合ゲルは、成分の安定性を保つために冷所保存(冷蔵庫での保管)が必要な場合があります(製剤や処方状況によります)。
一方、エピデュオゲルは室温保存が可能であるため、管理の手間が少なく、旅行や出張が多い方にとっては利便性が高いと言えます。
毎日のことですので、冷蔵庫に取りに行くのが手間で塗り忘れてしまうリスクがあるなら、室温保存できるエピデュオを選ぶという判断も合理的です。
このような生活上の細かな事情も医師に伝え、無理なく続けられる薬剤を選択することが望ましいです。
副作用の発生時期と具体的な対処法
強力な効果を持つ反面、副作用の発現頻度も高く、ほぼ全ての患者様が何らかの皮膚反応を経験するのがこれら合剤の特徴です。
これらの症状は「薬が合わない危険なサイン」ではなく、多くの場合「薬が効いている証拠(随伴症状)」であると理解することが重要です。
事前にどのような症状が起こるかを知り、適切に対処する準備をしておくことで、不安を感じることなく治療を継続することができます。
主な副作用と対策チェックリスト
- 乾燥・皮剥け
角質が薄くなることで起こります。使用量を減らす、または隔日使用にして肌を休ませてください。高保湿な保湿剤を併用することが必須です。 - 赤み・ヒリヒリ感
血行促進や刺激によるものです。洗顔後すぐに塗らず、肌が完全に乾いてから塗ってください。保湿剤の後に塗布すると緩和されます。 - 漂白作用(BPO特有)
髪の毛や色付きの衣類、タオルに付着すると脱色します。就寝時の枕カバーには白いタオルを敷くなどの対策が必要です。 - 紫外線感受性
日焼けしやすくなるため、朝の使用は避けるのが原則です。日中は帽子や日傘、日焼け止めを使用して紫外線を防いでください。
使用初期に現れる随伴症状
使用開始から数日〜2週間以内に、多くの患者様が「肌の乾燥」「赤み」「粉吹き(落屑)」「ヒリヒリ感」「痒み」を経験します。
これはBPOやアダパレンの作用により、溜まっていた古い角質が剥がれ落ち、皮膚のターンオーバーが急激に促進されるために起こる反応です。
特にエピデュオゲルではこの傾向が顕著であり、最初の2週間が一番辛い時期と言われています。
多くの場合は、肌が薬剤に慣れてくるにつれて、1ヶ月程度で症状は自然に軽減していき、その後は快適に使用できるようになります。
この「慣らし運転」の期間をどう乗り越えるかが、治療継続の分水嶺となりますので、自己判断で中止せずに対策を行いましょう。
保湿ケアによるバリア機能の補完
副作用を最小限に抑えるためには、これまで以上に徹底した保湿ケアを行い、低下したバリア機能を補うことが欠かせません。
薬剤を塗布する前に、ノンコメドジェニック(ニキビができにくい処方)テスト済みの化粧水や乳液で、たっぷりと水分と油分を補給してください。
肌の水分量を保つことでバリア機能が維持され、薬剤の刺激成分が直接的に神経を刺激するのを和らげることができます。
刺激が強すぎて辛い場合は、保湿剤を塗った後に薬剤を塗るという順番を守ることで、薬の浸透スピードが緩やかになり、不快感を大幅に軽減できます。
ヘパリン類似物質含有の保湿剤や、セラミド配合の保湿クリームなど、高保湿なアイテムを併用することをお勧めします。
接触皮膚炎(アレルギー)との見極め
通常の刺激症状とは別に、稀に薬剤の成分に対するアレルギー反応である「接触皮膚炎(かぶれ)」を起こすことがあります。
塗布した直後から我慢できないほどの強い痒みや腫れが出現する場合や、翌日以降も赤みが引かずに悪化する場合が該当します。
また、薬を塗った範囲を超えて赤みやブツブツが広がっている場合は、アレルギーの可能性が高いと考えられます。
この場合は、無理をして使い続けると症状が悪化する危険があるため、直ちに使用を中止し、薬を洗い流した上で処方医の診察を受けてください。
治療の切り替え時期と維持療法の重要性
ニキビ治療は、「今ある目立つニキビを治す急性期」と、「新しいニキビを作らせないように管理する維持期」の二段構えで考える必要があります。
エピデュオゲルとデュアック配合ゲルは、それぞれのステージで果たすべき役割が異なります。
適切なタイミングで薬剤を切り替えたり、あるいは継続したりする判断が、将来の肌状態を左右します。
デュアックからのステップダウン
デュアック配合ゲルで治療を開始し、赤ニキビや腫れが平坦化して落ち着いてきたら、維持療法への移行を検討するタイミングです。
具体的な目安としては、炎症性の赤い皮疹が消失し、残るはコメドやニキビ跡の赤みだけになった段階が挙げられます。
このタイミングで、抗生物質を含まないエピデュオゲルやベピオゲル、あるいはアダパレン単剤(ディフェリンゲル)などへ切り替えます。
これにより、耐性菌のリスクを完全に回避しながら、コメド治療を継続し、ニキビのリバウンドを防ぐことが可能になります。
エピデュオによる長期寛解維持
エピデュオゲルで治療を開始した場合、あるいはデュアックからエピデュオへ移行した場合は、目に見えるニキビがなくなった後も使用を継続することが強く推奨されます。
これを「プロアクティブ療法」と呼び、再発を防ぐための世界的なスタンダードとなっています。
肌の奥底にある微細な毛穴詰まりがなくなり、角化サイクルが完全に正常化して安定するまでには、長い時間を要します。
自己判断で中止すると、数週間〜数ヶ月で再び毛穴が詰まり始め、元のニキビ肌に戻ってしまう可能性が非常に高いです。
少なくとも半年から1年程度は継続し、揺らぎのない安定した肌状態を固定化させることが、本当の意味でのゴールです。
治療ステージ別の薬剤選択イメージ
| 治療フェーズ | 肌の状態 | 適した薬剤と戦略 |
|---|---|---|
| 急性期(重症) | 赤ニキビ多発、膿疱あり | デュアック配合ゲル 炎症の早期鎮火を最優先 |
| 移行期(中等症) | 赤み減少、コメド残存 | エピデュオゲル 毛穴治療へのシフト、耐性菌回避 |
| 維持期(寛解) | ニキビなし、予防目的 | エピデュオゲル・アダパレン 再発防止、肌質の維持管理 |
医師との連携による減量プラン
維持期において症状が完全に落ち着いている場合は、医師の指導のもと、塗布回数を徐々に減らしていく「漸減(ぜんげん)療法」を行うこともあります。
「毎日」の使用から、「隔日(2日に1回)」、さらに「週2回(週末のみ)」へと、肌の調子を見ながら慎重にペースを落としていきます。
急にゼロにするのではなく、アクセルを少しずつ緩めるように薬を抜いていくことで、安全に治療の出口を目指すことができます。
この微調整こそが、再発させないための重要なテクニックですので、定期的に通院して医師と相談しながら進めてください。
効果を最大化するための正しい外用方法と注意点
どんなに優れた効果を持つ薬剤でも、使い方が間違っていれば効果は半減し、逆に副作用のリスクばかりが高まってしまうことになります。
エピデュオゲルやデュアック配合ゲルのポテンシャルを最大限に引き出し、安全に使用するためには、適切な量、範囲、そしてタイミングを厳守することが必要です。
正しく安全に使用するための手順
- 洗顔
たっぷりの泡で優しく洗顔し、タオルで水分を抑えるように拭き取ります。ゴシゴシ擦るのは厳禁です。 - 保湿
化粧水や乳液で十分に保湿を行い、肌を整えます。ここでしっかりと肌を保護しておくことが副作用軽減の鍵です。 - 準備
清潔な指先に適量をとります。顔全体の場合は「1FTU」が目安です。 - 塗布
目、口の周り、傷口を避け、ニキビができやすい部分全体に優しく塗り広げます。強く擦り込む必要はありません。 - 手洗い
塗布後は必ず手を石鹸で洗い、薬剤を洗い流してください。指についたままだと、触れた衣類などが脱色する恐れがあります。
「面」で塗ることの重要性
ニキビ治療薬というと、ニキビができている「点」だけにチョンチョンと塗るイメージがあるかもしれませんが、合剤においてはその使い方は不適切です。
これらの薬剤は、今あるニキビを治すだけでなく、これからできるニキビを予防する効果を含んでいます。
そのため、ニキビができやすいエリア全体(例:顔全体、額全体、フェイスライン全体など)に「面」で塗り広げる必要があります。
これにより、目に見えていない予備軍のニキビも同時に治療し、エリア全体の肌質を底上げすることができます。
ただし、目や口の周り、小鼻の際などの皮膚が薄く敏感な部位は、刺激が出やすいため避けるように塗布範囲をコントロールしてください。
適切な塗布量(1FTU)の遵守
薬の量が少なすぎると十分な効果が得られず、逆に多すぎると不要な刺激の原因になってしまいます。
世界共通の目安となるのが「1FTU(フィンガーチップユニット)」という単位です。
大人の人差し指の先から第一関節までの長さに、チューブから出した薬剤の量が、約0.5gに相当します。
この量で、大人の手のひら2枚分の面積(およそ顔全体)を塗るのに適した分量となります。
自己流で薄く伸ばしすぎたり、逆に厚塗りしすぎたりせず、この基準を守ることが治療成功への近道です。
保管方法と使用期限の管理
デュアック配合ゲルは成分の安定性を保つため、未開封の状態や薬局での保管中は冷蔵庫(2〜8℃)での管理が求められます。
処方後、患者様が自宅で保管する際も、基本的には冷蔵庫での保管が推奨されるケースが多いですが、製剤や薬剤師の指示に従ってください。
一方、エピデュオゲルは室温(1〜30℃)での保存が可能ですが、直射日光が当たる場所や、夏場の車内などの高温多湿な環境は避ける必要があります。
また、開封後は成分が徐々に劣化する可能性があるため、指定された期間内(通常は数ヶ月以内)に使い切るようにしましょう。
期限を過ぎたものや、いつ処方されたか分からない古い薬は使用せず、必ず新しいものを処方してもらってください。
よくある質問
- Q二つの薬を同時に併用して塗っても良いですか?
- A
原則として、エピデュオゲルとデュアック配合ゲルを同じ部位に同時に重ねて塗ることはしません。両者に共通して過酸化ベンゾイルが含まれており、成分が重複することで刺激が強くなりすぎる危険性があるためです。医師の指示で朝と夜で使い分けるケースは極めて稀にありますが、基本的にはどちらか一方を選択して使用します。
- Qニキビが治ったらすぐにやめても良いですか?
- A
見た目のニキビが治っても、肌の内部ではまだ微細な毛穴詰まりが残っている可能性が高いです。すぐにやめると再発するリスクが高まるため、自己判断で中止せず、医師の指示に従って維持療法へ移行するか、塗布回数を調整しながら継続することが大切です。
- Q妊娠中や授乳中でも使用できますか?
- A
エピデュオゲルに含まれるアダパレンは、催奇形性のリスクが否定できないため、妊娠中の方、または妊娠している可能性のある方は絶対に使用できません。デュアック配合ゲルに関しては、治療の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用されることがありますが、慎重な判断が必要です。授乳中の使用についても、必ず医師に相談してください。
- Q塗った後に化粧をしても大丈夫ですか?
- A
朝に薬を塗る指示がある場合(デュアックなど)、塗布部位が完全に乾いてからであれば、その上から化粧をすることは可能です。ただし、毛穴を詰まらせないよう、ニキビ肌用のノンコメドジェニックテスト済みのファンデーションなどを選ぶことが望ましいです。エピデュオゲルは通常1日1回就寝前の使用ですので、翌朝洗顔した後であれば通常通り化粧ができます。
- Qヒリヒリして痛いのですが、使い続けても大丈夫ですか?
- A
使い始めのヒリヒリ感は多くの人に現れる反応ですが、痛みが激しく日常生活に支障が出る場合や、顔全体が真っ赤に腫れ上がっている場合は、使用を一時中止し、氷嚢などで冷やした上で医師に相談してください。軽度であれば、保湿を強化したり、塗布量を減らしたり、隔日使用にするなどの工夫で継続できることが多いです。
