つむじのあたりがむずがゆいと感じる方は意外と多いようです。一時的なものだと軽く考えてしまいがちですが、そのかゆみは頭皮からの危険信号かもしれません。

特に、かゆみが続いたり、フケや赤みを伴ったりする場合は注意が必要です。

つむじ周辺は自分では見えにくい場所のため、気づかないうちに頭皮環境が悪化し、薄毛の進行に繋がる可能性があります。

目次

つむじがかゆいのは薄毛のサイン?

つむじのかゆみは、多くの人が経験する症状ですが、それが薄毛の前兆である可能性を考える人は少ないかもしれません。

しかし、かゆみという症状は、頭皮の健康状態を示す重要なバロメーターです。

健やかな髪は、健康な頭皮から育ちます。かゆみがあるということは、その土台である頭皮に何らかのトラブルが起きている証拠です。

このトラブルを放置すると、結果として抜け毛を増やし、薄毛を目立たせる原因になり得ます。

かゆみと抜け毛の直接的な関係

頭皮を掻きむしる行為は、物理的に頭皮や毛根を傷つけます。爪で頭皮を傷つけると、そこから細菌が侵入して炎症が悪化する恐れがあります。

また、成長期の髪の毛が、まだ十分に成長しきる前に引き抜かれてしまうときもあります。

この行為が繰り返されると毛周期(ヘアサイクル)が乱れ、髪が細く弱々しくなり、最終的には抜け毛の増加に繋がります。

かゆいからといって無意識に掻いてしまう行動が、薄毛を助長する直接的な原因となるのです。

頭皮環境の悪化が髪の成長を妨げる

かゆみの根本原因である頭皮環境の悪化は、髪の成長そのものに悪影響を及ぼします。

例えば、過剰な皮脂やフケが毛穴を塞ぐと、髪の健全な成長が妨げられます。また、乾燥してバリア機能が低下した頭皮は外部からの刺激に弱くなり、炎症が起きやすいです。

炎症が慢性化すると毛母細胞の働きが鈍り、強く太い髪を作るのが困難になります。

つまり、かゆみは単なる不快な症状ではなく、髪の育つ土壌が劣化しているのを示すサインなのです。

頭皮トラブルの主なサイン

サイン状態考えられる影響
フケ乾燥または皮脂過剰による角質の剥がれ毛穴詰まり、見た目の不潔感
赤み頭皮の炎症血行不良、毛母細胞の機能低下
湿疹・できもの細菌の繁殖やアレルギー反応痛み、さらなる炎症の拡大

つむじ周辺はトラブルが起きやすい

頭頂部にあるつむじは頭皮の中でも特にデリケートで、トラブルが起きやすい部位です。

その理由の一つに、皮脂腺が多く分布していることが挙げられます。皮脂の分泌が多いため雑菌が繁殖しやすく、脂漏性皮膚炎などの原因になります。

また、つむじは髪の毛が渦を巻いているため、シャンプーやトリートメントのすすぎ残しが発生しやすい場所でもあります。これらの残留物が頭皮を刺激し、かゆみや炎症を引き起こす場合があります。

自分では確認しづらい場所だからこそ、意識的なケアが重要です。

つむじがかゆい原因

つむじのかゆみを引き起こす原因は一つではありません。生活習慣や体質、使っているヘアケア製品など、様々な要因が複雑に絡み合って生じます。

皮脂の過剰分泌と毛穴の詰まり

頭皮は顔のTゾーンの約2倍もの皮脂腺が存在する、体内でも特に皮脂分泌が活発な部位です。

皮脂は頭皮を乾燥や外部刺激から守るために必要なものですが、過剰に分泌されると問題を引き起こします。

余分な皮脂が古い角質やホコリと混ざり合うと、毛穴を塞いでしまいます。この詰まりが、かゆみの原因菌であるマラセチア菌などの常在菌を異常繁殖させ、炎症やかゆみを引き起こすのです。

特に、脂っこい食事が多い、睡眠不足、ストレスなどは皮脂分泌を増加させる要因となります。

乾燥によるバリア機能の低下

皮脂の過剰分泌とは逆に、頭皮の乾燥もかゆみの大きな原因です。

洗浄力の強すぎるシャンプーの使いすぎ、熱いお湯での洗髪、エアコンによる空気の乾燥などは頭皮から必要な皮脂まで奪い去り、乾燥を招きます。

頭皮が乾燥すると角質層の水分が失われ、外部からの刺激を守るバリア機能が低下します。

この無防備な状態の頭皮は、わずかな刺激にも敏感に反応してしまい、かゆみや炎症を起こしやすくなるのです。

頭皮の乾燥を招く主な生活習慣

習慣理由対策のポイント
熱いお湯での洗髪必要な皮脂まで洗い流してしまう38℃程度のぬるま湯を心がける
洗浄力の強いシャンプー頭皮のうるおいを奪うアミノ酸系などマイルドな洗浄成分を選ぶ
自然乾燥水分蒸発時に頭皮の水分も奪われる洗髪後は速やかにドライヤーで乾かす

シャンプーや整髪料のすすぎ残し

シャンプーやコンディショナー、ワックスなどの整髪料に含まれる化学成分が頭皮に残ることも、かゆみの原因となります。

特に、髪の流れが複雑なつむじ周りは、意識してすすがないと洗い残しが生じやすい部分です。

これらの化学物質が毛穴を塞いだり頭皮に刺激を与えたりすると、接触皮膚炎(かぶれ)を引き起こし、かゆみや赤みを生じさせます。

洗髪時にはシャンプー前の予洗いを十分に行い、すすぎは「もう十分」と感じてからさらに1分ほど時間をかける意識が大切です。

皮膚疾患の可能性

セルフケアをしてもかゆみが改善しない、あるいはフケが異常に多い、強い赤みやじゅくじゅくした湿疹があるといった場合は、単なる頭皮トラブルではなく皮膚疾患の可能性があります。

自己判断で対処すると悪化させるケースもあるため、早めに皮膚科などの専門医に相談しましょう。

  • 脂漏性(しろうせい)皮膚炎
  • 接触皮膚炎(かぶれ)
  • アトピー性皮膚炎
  • 頭部白癬(しらくも)

かゆみを引き起こす頭皮環境の悪化とその要因

つむじのかゆみは、頭皮環境が悪化しているサインです。

では、なぜ頭皮環境は悪化してしまうのでしょうか。その背景には、日々の生活に潜む様々な要因が存在します。

生活習慣の乱れと血行不良

髪の毛は、毛細血管から運ばれてくる栄養素によって成長します。しかし、不規則な生活や栄養バランスの偏った食事、睡眠不足などは、全身の血行を悪化させます。

特に、頭頂部は心臓から遠く、血行が悪くなりやすい部位です。血行不良に陥った頭皮には髪の成長に必要な栄養が十分に行き渡らなくなり、弱々しい髪しか生えてこなくなります。

また、新陳代謝(ターンオーバー)も乱れるため、古い角質が剥がれ落ちずに蓄積し、かゆみやフケの原因となるのです。

頭皮の血行を促進する栄養素

栄養素主な働き多く含まれる食品
ビタミンE血管を拡張し、血流を改善するナッツ類、アボカド、植物油
鉄分血液中の酸素を運ぶヘモグロビンの成分レバー、赤身肉、ほうれん草
EPA/DHA血液をサラサラにする青魚(サバ、イワシなど)

ホルモンバランスの変化

ホルモンバランスの乱れも、頭皮環境に大きく影響します。

例えば、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)は、皮脂腺を刺激して皮脂の分泌を促す作用があります。

このDHTが増加すると頭皮が脂っぽくなり、かゆみや炎症、さらにはAGA(男性型脱毛症)を引き起こす原因となります。

また、女性でも加齢やストレス、出産などで女性ホルモンの分泌が減少すると、相対的に男性ホルモンの影響が強まり、頭皮トラブルや薄毛に繋がる場合があります。

外的刺激(紫外線・物理的摩擦)

頭皮は、顔の2倍以上の紫外線を浴びていると言われます。特に、髪の分け目やつむじは、直接紫外線が当たりやすい場所です。

紫外線は頭皮を乾燥させてバリア機能を低下させるだけでなく、活性酸素を発生させて頭皮の細胞にダメージを与え、光老化を引き起こします。

これが炎症やかゆみ、さらには白髪や抜け毛の原因にもなります。

また、帽子による蒸れや、頻繁に髪を結ぶことによる牽引、ゴシゴシと力を入れた洗髪なども頭皮への物理的な刺激となり、かゆみや炎症を招く要因です。

かゆみはストレスが頭皮に送るSOSかも

「毎日しっかりシャンプーをしているし、食事にも気を使っているのに、つむじのかゆみが治まらない」といった方は、もしかしたら「心」の疲れが頭皮に現れているのかもしれません。

現代社会で避けて通れないストレスは、自律神経やホルモンバランスを介して、自分が思う以上に頭皮環境を揺さぶります。

交感神経の優位と血管収縮

人間はストレスを感じると、体を緊張・興奮状態にする「交感神経」が優位になります。この状態が続くと、血管が収縮し、全身の血流が悪化します。

特に、頭皮の毛細血管は非常に細いため、この影響を真っ先に受けやすいのです。

血流が滞ると、髪の毛の成長に必要な酸素や栄養素が毛根まで届きにくくなります。栄養不足に陥った毛根は健康な髪を作れなくなり、髪が細くなったり、抜けやすくなったりします。

つむじのかゆみは、「頭皮に栄養が足りていません」という、体からの悲鳴とも言えるのです。

ストレスが引き起こす身体の反応

反応内容頭皮への影響
血管収縮交感神経が優位になり血管が細くなる血行不良、栄養不足、冷え
皮脂分泌の増加男性ホルモンやコルチゾールの影響毛穴詰まり、炎症、かゆみ
睡眠の質の低下交感神経が活発なままで眠りが浅くなる成長ホルモンの分泌減少、細胞修復の遅延

ストレスホルモンと皮脂の過剰分泌

強いストレスを感じると、体は「コルチゾール」というストレスホルモンを分泌します。コルチゾールには男性ホルモンの働きを活発にする作用があり、これが皮脂腺を刺激して皮脂の分泌を促します。

仕事のプレッシャーや人間関係の悩みで頭がいっぱいになると、気づかないうちにつむじ周辺がベタついてかゆくなるのは、このホルモンの影響が一因と考えられます。

増えすぎた皮脂は常在菌のエサとなり、脂漏性皮膚炎などを引き起こし、慢性的なかゆみに繋がります。

無意識の「掻きむしり」と睡眠の質の低下

精神的なストレスは、無意識の行動にも現れます。イライラしたり不安になったりすると、貧乏ゆすりをする人がいるように、頭をポリポリと掻くことが癖になる場合があります。

この無意識の掻きむしり行為が頭皮を傷つけ、かゆみの悪循環を生み出します。

また、ストレスは睡眠の質を著しく低下させます。眠りが浅いと、体の修復や髪の成長に重要な「成長ホルモン」の分泌が不足します。

これによって日中に受けた頭皮のダメージが回復せず、トラブルが慢性化しやすくなるのです。

つむじのかゆみとAGA(男性型脱毛症)の関連性

つむじ周辺のかゆみや薄毛で悩む男性にとって、最も気になるのがAGA(男性型脱毛症)との関係ではないでしょうか。

必ずしも「かゆみ=AGA」ではありませんが、両者には無視できない関連性があるため、正しい知識を持つことが大切です。

AGAの主な原因と症状

AGAは、遺伝や男性ホルモンの影響が主な原因で起こる進行性の脱毛症です。

男性ホルモンの「テストステロン」が、頭皮に存在する還元酵素「5αリダクターゼ」と結びつくことで、より強力な「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換されます。

このDHTが毛乳頭細胞の受容体と結合すると、髪の成長を抑制する信号が出され、毛周期における成長期が短縮されます。

その結果、髪が太く長く成長する前に抜け落ちてしまい、徐々に薄毛が進行していくのです。

主に、生え際の後退やつむじ周りの薄毛といった特徴的な症状が現れます。

DHTが引き起こす頭皮環境の悪化

AGAの原因物質であるDHTは脱毛を促すだけでなく、皮脂腺を活発化させる作用も持っています。DHTの量が多いと皮脂が過剰に分泌され、頭皮がベタつきやすくなります。

この過剰な皮脂が毛穴を塞いだり、酸化して炎症を引き起こしたりして、かゆみを生じさせるケースがあります。

つまり、AGAを発症している人は、DHTの影響によってかゆみが起きやすい頭皮環境になっている可能性があるのです。

つむじ周辺のかゆみが、AGAの進行と並行して現れるケースは少なくありません。

AGAとかゆみの関係性

要因AGAへの影響かゆみへの影響
DHT(ジヒドロテストステロン)毛周期の成長期を短縮し、薄毛を進行させる皮脂腺を刺激し、皮脂の過剰分泌を促す
皮脂の過剰分泌毛穴詰まりで髪の成長を妨げる可能性がある常在菌の繁殖を招き、炎症やフケを引き起こす
頭皮の炎症毛母細胞の働きを低下させるかゆみや赤みといった自覚症状として現れる

AGAの初期症状としてのかゆみ

AGAの初期段階では、目に見える薄毛よりも先に、頭皮環境の変化がサインとして現れるときがあります。

「最近、つむじ周りが脂っぽくてかゆい」「フケが増えた気がする」といった症状は、DHTの活動が活発化し始めた兆候かもしれません。

これらの症状を単なる体質の変化や季節的なものだと見過ごしていると、気づいたときにはAGAがかなり進行してしまっていた、という事態にもなりかねません。

かゆみやフケといった頭皮の違和感が続く場合は、AGAの可能性も視野に入れ、早めに対策を考えましょう。

今日からできる!つむじのかゆみを改善するセルフケア

専門的な治療が必要になる前に、日々の生活習慣やヘアケアを見直すと、つむじのかゆみを改善できるケースは多くあります。

ここでは、今日からすぐに実践できるセルフケアの方法を紹介します。

正しいシャンプー方法の実践

毎日のシャンプーは、頭皮環境を左右する最も重要なケアです。間違った方法では、かえって頭皮を傷つけ、かゆみを悪化させる原因になります。

以下のポイントを意識して、正しいシャンプーを実践しましょう。

  • シャンプー前にブラッシングで髪の絡まりとホコリを取る。
  • 38℃程度のぬるま湯で、1分以上かけて頭皮と髪を十分に予洗いする。
  • シャンプーは手のひらで泡立ててから、髪ではなく頭皮につける。
  • 指の腹を使って、頭皮をマッサージするように優しく洗う。
  • すすぎは洗う時間の2倍以上を目安に、洗い残しがないよう丁寧に行う。

シャンプー選びのポイント

シャンプーは「髪に良い」と言われるものや高価なものを選ぶよりも、自分の頭皮タイプに合ったものを選びましょう。

頭皮タイプおすすめの洗浄成分特徴
乾燥肌・敏感肌アミノ酸系マイルドな洗浄力で、頭皮の潤いを保つ
脂性肌(オイリー)高級アルコール系(適度な洗浄力)泡立ちが良く、余分な皮脂をしっかり落とす
フケ・かゆみが気になる抗真菌・抗炎症成分配合原因菌の増殖を抑え、炎症を鎮める

食生活の改善と栄養バランス

健やかな頭皮と髪は、体の中から作られます。

なかでも髪の主成分であるタンパク質、頭皮の新陳代謝を助けるビタミンB群、血行を促進するビタミンE、そしてミネラル(特に亜鉛)は、意識して摂取したい栄養素です。

インスタント食品や脂質の多い食事は控え、緑黄色野菜や魚、大豆製品などをバランス良く取り入れた食生活を心がけましょう。

バランスの取れた食事は皮脂の過剰分泌を抑え、血行を改善して頭皮環境を正常に保つことに繋がります。

質の高い睡眠とストレス管理

髪の成長や頭皮の細胞修復は、主に睡眠中に行われます。入眠後3時間の間に多く分泌される成長ホルモンは、頭皮の新陳代謝を促す上で非常に重要です。

毎日6〜7時間程度の質の高い睡眠を確保するよう努めましょう。

また、前述の通り、ストレスは頭皮環境を悪化させる大きな要因です。

適度な運動や趣味の時間を持つなど、自分なりのストレス解消法を見つけ、心身ともにリラックスできる時間を作る工夫が健やかな頭皮への近道です。

セルフケアで改善しない場合に考えられること

生活習慣を見直し、正しいヘアケアを実践しても、つむじのかゆみが一向に改善しない、あるいは悪化する場合には、セルフケアの範囲を超えた原因が潜んでいる可能性があります。

無理に自己判断で対処を続けるのではなく、専門家の視点を取り入れる段階かもしれません。

脂漏性皮膚炎などの皮膚疾患の進行

かゆみの原因が脂漏性皮膚炎などの皮膚疾患であった場合、市販のシャンプーやセルフケアだけでは根本的な改善は困難です。

脂漏性皮膚炎は、皮脂を好むマラセチア菌という常在菌の異常繁殖が原因で起こる皮膚の炎症です。

この菌の活動を抑えるには、抗真菌成分が配合された医薬品を用いた治療が必要になるケースがほとんどです。

放置すると炎症が広がり、抜け毛の原因にもなるため、フケや赤みがひどいときは皮膚科医の診断を受けることを推奨します。

AGA(男性型脱毛症)が進行している可能性

つむじのかゆみと同時に、抜け毛の増加や髪の毛の細毛化を実感している場合、AGAが進行している可能性が高いと考えられます。

AGAは進行性の脱毛症であり、セルフケアでその進行を完全に止められません。

一般的な育毛剤や頭皮ケアでは、AGAの根本原因であるDHTの産生を抑制できないため、効果は限定的です。

AGAの進行を食い止め、改善を目指すには、医学的根拠に基づいた専門的な治療が必要となります。

セルフケアと専門治療の違い

項目セルフケア(市販品など)専門治療(医療機関)
目的頭皮環境の改善、現状維持AGAの進行抑制、発毛促進
働きかけ保湿、血行促進、栄養補給などDHTの抑制、毛母細胞の活性化など
根拠一般的な健康理論医学的・科学的根拠

間違ったケアによる悪化

良かれと思って行っているセルフケアが、実は症状を悪化させているケースもあります。

例えば、かゆいからといって1日に何度もシャンプーをしたり、爪を立ててゴシゴシ洗ったりすると、頭皮のバリア機能が破壊され、乾燥と炎症を助長します。

また、自分の頭皮タイプに合わない育毛剤やトニックを使用すると、その刺激で接触皮膚炎を起こすときもあります。

改善が見られない場合は、一度セルフケアの方法そのものを見直してみる機会も重要です。

専門クリニックでの相談・治療という選択肢

セルフケアでは改善が難しいかゆみや薄毛の悩みは、一人で抱え込まずに専門のクリニックに相談することが、解決への最も確実な一歩です。

薄毛治療を専門とするクリニックでは、医師が頭皮の状態を正確に診断し、一人ひとりの原因に合わせた適切な治療法を提案します。

専門医による正確な診断

クリニックでは医師による問診と視診、そしてマイクロスコープなどを用いた詳細な頭皮診断を行います。

この診断により、かゆみの原因が乾燥なのか、皮脂過剰なのか、あるいは皮膚疾患やAGAによるものなのかを正確に特定します。

自己判断では分からなかった根本原因を突き止められるため、的確な治療方針を立てられます。この最初の診断が、治療の成否を分ける非常に重要な工程です。

AGAに対する医学的ケア

診断の結果、AGAが原因であると判断された場合、医学的根拠に基づいた治療を開始します。

代表的な治療法には、AGAの進行を止める内服薬(フィナステリドやデュタステリドなど)や、発毛を促進する外用薬(ミノキシジルなど)があります。

これらの治療は、AGAの根本原因に直接働きかけるため、市販の育毛剤などとは効果のレベルが異なります。

医師の管理のもとで、安全かつ効果的に薄毛の改善を目指せます。

頭皮環境を改善する専門的治療

AGA治療と並行して、かゆみの直接的な原因である頭皮環境の悪化を改善するための治療も行います。

クリニックによっては薬の処方だけでなく、頭皮の血行を促進する施術や、毛穴の汚れを取り除く専門的なスカルプケア、栄養バランスを整えるためのサプリメント処方などを組み合わせて、多角的に働きかけます。

これらの治療により、かゆみを抑えながら髪が育ちやすい健康な頭皮環境を整えていきます。

つむじのかゆみに関するよくある質問

さいごに、つむじのかゆみや薄毛に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q
つむじがかゆいと、将来必ずはげますか?
A

必ずしもそうとは限りません。かゆみの原因が一時的な乾燥やシャンプーのすすぎ残しなどであれば、セルフケアで改善し、薄毛に繋がらないケースも多くあります。

しかし、かゆみが長期間続いたり、AGAや脂漏性皮膚炎が原因であったりする場合は、薄毛が進行する可能性が高いため注意が必要です。

かゆみは頭皮の異常を示すサインと捉え、放置しないことが大切です。

Q
女性でもつむじがかゆくなり、薄毛になりますか?
A

女性でもつむじのかゆみや薄毛に悩む方は多くいます。女性の場合、加齢やストレス、出産などによるホルモンバランスの乱れが原因で頭皮環境が悪化し、かゆみが生じるケースがあります。

また、男性のAGAとは異なる「びまん性脱毛症」など、女性特有の薄毛のパターンもあります。

原因は様々ですので、気になる症状があれば専門クリニックに相談するのがおすすめです。

Q
市販のかゆみ止めを使っても大丈夫ですか?
A

一時的なかゆみを抑えるために短期間使用することは問題ありません。

しかし、市販薬はあくまで対症療法であり、かゆみの根本原因を解決するものではありません。特に、ステロイド配合の薬を自己判断で長期間使用すると、副作用のリスクもあります。

かゆみが続くときは原因を特定するためにも、まずは専門医に相談してください。

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