乾癬のある方の関節に痛みやこわばりが出てきたとき、その背景には乾癬性関節炎(関節症性乾癬)が関わっていることがあります。見た目が似た関節リウマチと混同されやすく、診断までに時間がかかる例も珍しくありません。

この記事では、指のはれや腱の付け根の痛みといった特徴から、リウマチとの見分け方、原因、診断の進め方、そして痛みを抑える治療までを順にまとめました。早く気づくための手がかりも具体的に取り上げます。

関節の傷みは早い段階から進むことがあり、気づいた時点での行動が将来の生活を左右します。気になる症状がある方が次の一歩を考えるときの材料になれば幸いです。

乾癬性関節炎の痛みは指のはれと腱の付け根に出やすい

乾癬性関節炎の痛みは、手足の指の関節と、腱や靭帯が骨につく部分にもっとも出やすい病気です。皮膚の乾癬に加えて、こうした場所のはれや痛みが続くときは注意が要ります。

場所主な症状気づきやすいサイン
手足の指関節や指全体のはれ指がソーセージのように太い
かかと・足裏腱の付け根の痛み歩き始めの一歩がつらい
腰・お尻鈍い痛みとこわばり動くとかえって楽になる
点状のへこみ・はがれ関節症状より先に出ることも

指がソーセージのようにはれる指趾炎

指趾炎(しゅしえん)は、指が関節だけでなく一本まるごと太くはれる症状で、ソーセージ指という呼び名もあります。乾癬性関節炎では比較的よくみられ、見た目にもはっきりわかるのが特徴です。

はれた指は熱を持ち、曲げ伸ばしがしにくくなることもあります。一本だけのときもあれば複数の指に出るときもあり、出方は人によってさまざまです。

指趾炎が出ているときは、関節の炎症がそれなりに強いサインと受け止めてよいでしょう。長く放っておくと指の変形につながることもあり、早めの相談が安心につながります。

かかとやアキレス腱が痛む付着部炎

付着部炎(ふちゃくぶえん)は、腱や靭帯が骨に付く部分に起こる炎症です。かかとやアキレス腱、足の裏に痛みが出やすく、歩き始めにつらさを感じます。

関節そのものより先に、この付着部の痛みが現れる人も少なくありません。スポーツのしすぎと取り違えられ、見過ごしてしまうこともあるので気をつけたいところです。

足の裏が突っ張るように痛むときも、付着部炎が隠れている場合があります。靴の中敷きで負担を和らげたり、痛む間は無理に走らないようにしたりと、日々の工夫も症状を落ち着ける助けになります。

朝だけ動かしにくいのはなぜ?

朝起きたときに関節がこわばり動かしにくいのは、休んでいる間に炎症で生じた成分が関節にたまるためと考えられています。体を動かすうちに少しずつほぐれていくでしょう。

こわばりが30分以上、ときに1時間ほど続く場合は、炎症性の関節の病気を疑う手がかりになります。使い過ぎによる痛みとは、ちょうどここが違う点です。

皮膚や爪の乾癬と痛みのつながり

多くの方では皮膚の乾癬が先に現れ、その後に関節の症状が出てきます。とはいえ皮膚症状が軽い人や、関節の痛みのほうが先に出る人もいます。

爪の点状のへこみやはがれは、関節症状と関わりが深いサインの一つです。皮膚の状態と関節の痛みは、必ずしも同じ重さで進むわけではない、という点も覚えておきたいところです。

関節リウマチとの違いはどこ?乾癬性関節炎の鑑別ポイント

見た目が似ていても、乾癬性関節炎と関節リウマチは別の病気です。左右非対称のはれ、爪や皮膚の乾癬、血液検査でリウマトイド因子が出にくいこと、この3点が見分けの大きな手がかりになります。

左右で出方が違う関節のはれ

関節リウマチは、両手の同じ関節が左右そろってはれてくることが多い病気です。一方で乾癬性関節炎は、右手の一部と左足の指など、左右ばらばらに出る傾向があります。

はれる関節の場所にも違いがみられ、乾癬性関節炎では指先に近い関節が傷みやすいといえます。もちろん例外もあるため、はれ方だけで決めつけるのは禁物です。

爪の変化と皮膚症状が決め手になる

爪の点状のへこみや変形、皮膚の赤みとフケのような白い粉は、乾癬性関節炎を強く疑わせるサインです。関節リウマチでは、こうした皮膚や爪の症状はふつう伴いません。

そのため、関節の痛みを訴える方では皮膚や爪の状態もあわせて確かめます。頭皮やひじ、おしりの割れ目など、目立たない場所に乾癬が隠れていることもあります。

血液検査だけで見分けられる?

血液検査は手がかりにはなりますが、それだけで完全に区別できるわけではありません。関節リウマチではリウマトイド因子や抗CCP抗体が陽性になりやすく、乾癬性関節炎では陰性のことが多いという違いがあります。

ただし乾癬性関節炎でもまれにこれらが陽性になる人がいて、判断を難しくします。結局は症状や画像とあわせて総合的に見ていく必要があるでしょう。

背骨や仙腸関節に出る痛み

乾癬性関節炎では、腰の奥にある仙腸関節や背骨に炎症が及び、慢性的な腰や背中の痛みが出ることがあります。安静より動いたほうが楽になる腰痛は、その典型的なあらわれです。

関節リウマチでは、こうした背骨の症状はまれです。ぎっくり腰やふつうの腰痛と区別がつきにくく、見逃されやすい部分でもあります。

項目乾癬性関節炎関節リウマチ
関節の出方左右非対称が多い左右対称が多い
皮膚・爪乾癬や爪の変化あり通常はなし
血液検査因子は陰性が多い陽性が多い
背骨・腰痛みが出ることありまれ
腱の付け根付着部炎が出やすい出にくい

乾癬から関節炎へ進む乾癬性関節炎の原因

原因の中心にあるのは、免疫の働きすぎです。本来は体を守るしくみが過剰にはたらき、皮膚と関節の両方で炎症を起こすところから乾癬性関節炎は始まります。

免疫の暴走と炎症を起こすサイトカイン

免疫の細胞が誤って自分の組織を攻撃すると、TNFやIL-17、IL-23と呼ばれる炎症の伝令物質が増えていきます。これらが皮膚を赤くし、関節をはらせる引き金になります。

近年の治療薬は、まさにこの伝令物質をねらって炎症を抑えるしくみになっています。原因の理解が進んだことで、治療の選択肢も広がってきました。

体質として受け継ぐ遺伝の関与

乾癬や乾癬性関節炎は、家族内で見られることがあり、なりやすさには遺伝的な体質が関わります。特定の遺伝子のタイプを持つ人で起こりやすいと分かってきました。

とはいえ、遺伝だけで発症が決まるわけではありません。体質という土台の上に、後で述べる引き金が重なって発症へ向かうと考えられています。

肥満や喫煙が引き金になることも

生活の中の要因も、発症や悪化に少なからず影響します。体重の増加や喫煙は炎症を強めやすく、関節への負担やけが、強いストレスがきっかけになることもあります。

  • 体重の増加・肥満
  • 喫煙
  • 関節への強い負担やけが
  • 長く続く心身のストレス
  • 皮膚の乾癬が重いこと

これらは一つひとつが小さく見えても、積み重なると関節の状態に響いてきます。体重を整え、たばこを控えることは、痛みを和らげるうえでも意味のある取り組みです。

見逃したくない乾癬性関節炎の早期発見のサイン

診断が1年以上遅れた人は、早く診断された人にくらべて関節の状態が悪くなりやすい、という研究の報告があります。だからこそ、初期のサインに早く気づくことが将来を守ります。

受診を考えたい初期のサイン

次のような症状が続くときは、一度専門の医療機関で相談する価値があります。とくに乾癬がある方は、関節の小さな変化も見過ごさないでほしいところです。

  • 朝のこわばりが30分以上続く
  • 指が一本まるごとはれる
  • かかとや足裏が歩き始めに痛む
  • 関節のはれや熱感が数週間以上続く
  • 爪に点状のへこみやはがれがある

一つでも思い当たるものがあれば、早めの相談が安心につながります。症状が軽いうちのほうが、その後のコントロールもしやすくなると考えられています。

乾癬がある人ほど関節の声に注意

乾癬のある人のおよそ5人に1人で関節の症状が起こると報告されており、けっして珍しいものではありません。皮膚の治療で通院している間も、関節の調子に目を向けておくと安心です。

関節の痛みやこわばりを感じたら、遠慮なく主治医に伝えてください。皮膚科と連携して関節を診てもらえる体制も整いつつあります。

どんなときに整形外科やリウマチ科へ?

関節のはれや痛みが数週間以上引かないときは、整形外科やリウマチ科への受診が一つの目安になります。乾癬で皮膚科に通っている方は、まず主治医に紹介を相談するとよいでしょう。

受診の際は、いつから、どの関節が、どんなときに痛むのかをメモしておくと役立ちます。症状の経過を伝えられると、診断までの道のりがぐっと短くなります。

乾癬性関節炎の診断で受ける検査と流れ

関節の痛みが乾癬性関節炎かどうかは、いくつかの検査を組み合わせて確かめます。これ一つで診断が決まるという単独の検査はなく、問診と診察を土台に画像や血液の情報を重ねていきます。

検査調べること特徴
問診・診察はれの場所・乾癬の有無診断の出発点
レントゲン骨や関節の変形進行の度合いを見る
超音波・MRI早期の炎症・付着部炎初期の変化に強い
血液検査炎症の程度・他の病気区別の手助け

問診と関節の診察でわかること

医師はまず、いつからどの関節が痛むか、皮膚や爪に乾癬があるかをていねいに聞き取ります。続いて関節のはれや熱感、指のはれ方、腱の付け根の痛みを直接確かめていきます。

この段階で得られる情報が、その後の検査の方向を決める大切な手がかりです。家族に乾癬や関節の病気がある場合も、必ず伝えるようにしましょう。

レントゲン・超音波・MRIの画像検査

レントゲンは骨や関節の変形を映し出し、病気がどこまで進んでいるかを示します。乾癬性関節炎では、骨が削れる変化と新しく増える変化が同時に見られることがあります。

超音波やMRIは、レントゲンに写る前の早い段階の炎症や付着部炎を見つけるのが得意です。早期発見をめざすうえで、心強い検査といえます。

血液検査で炎症や他の病気を確かめる

血液検査では、体の中の炎症の程度を示す数値や、関節リウマチと区別するための抗体を調べます。乾癬性関節炎ではリウマトイド因子が陰性のことが多い、という特徴が手がかりになります。

ただし血液検査だけで診断が確定するわけではありません。あくまで問診や画像と組み合わせ、全体像から判断していく材料の一つです。

痛みを抑え進行を防ぐ乾癬性関節炎の治療

治療の柱は、炎症を抑えて痛みと関節の傷みを止めることです。近年は炎症の元をねらった生物学的製剤などが登場し、症状のコントロールは大きく改善してきました。

痛みと炎症をやわらげる飲み薬

痛みやはれが強い時期には、炎症を抑える鎮痛薬で症状をやわらげます。これは関節の痛みを和らげ、日常生活を送りやすくするための対処です。

ただし鎮痛薬だけでは、病気の進行そのものは止められません。症状が続く場合は、次に挙げる進行を抑える薬へと治療を進めていきます。

進行を抑える生物学的製剤とDMARD

関節の破壊を食い止めるために、抗リウマチ薬(DMARD)や生物学的製剤を使います。生物学的製剤はTNFやIL-17、IL-23といった炎症の元をピンポイントで抑える薬です。

飲み薬で炎症の信号を内側から抑えるJAK阻害薬という選択肢もあります。どの薬が向くかは、関節や皮膚の状態、持病などをふまえて医師と相談しながら決めていきます。

治療目的
飲み薬痛みと炎症を抑える鎮痛薬
抗リウマチ薬進行を抑えるメトトレキサートなど
生物学的製剤炎症の元を抑えるTNF・IL-17・IL-23を標的
JAK阻害薬炎症の信号を抑える飲み薬タイプ
運動・リハビリ動きと筋力を保つ

自分でできる運動と日常の工夫

薬による治療とあわせて、関節を動かす運動や筋力を保つリハビリも役立ちます。痛みのない範囲で体を動かすことが、関節の動きと生活の質を守ることにつながります。

体重を整え、たばこを控える工夫も炎症をしずめる助けになります。無理のない範囲で続けることが、長くつき合っていくうえでの近道です。

よくある質問

Q
乾癬性関節炎の痛みは、関節リウマチの痛みとどう違うのですか?
A

乾癬性関節炎の痛みは、左右ばらばらの関節に出やすく、指が一本まるごとはれたり、かかとなど腱の付け根が痛んだりするのが特徴です。関節リウマチは両手の同じ関節が左右そろってはれることが多く、ここが大きく異なります。

また乾癬性関節炎では、皮膚の乾癬や爪の変化を伴うことがよくあります。痛みの場所や出方に加えて、皮膚や爪の状態もあわせて見ると区別の手がかりになります。

Q
乾癬性関節炎は、乾癬の皮膚症状が軽くても起こりますか?
A

はい、皮膚の乾癬が軽くても乾癬性関節炎は起こり得ます。皮膚症状の重さと関節症状の重さは、必ずしも同じ歩調で進むわけではありません。

頭皮や爪、おしりの割れ目など目立たない場所だけに乾癬が出ている方もいます。皮膚症状が軽いからと油断せず、関節の痛みやこわばりがあれば医師に伝えてください。

Q
乾癬性関節炎を早期発見するために、自分で気をつけられることはありますか?
A

朝のこわばりが30分以上続く、指が一本まるごとはれる、かかとや足裏が歩き始めに痛む、といった変化に気を配ってください。こうした症状が数週間以上続くなら、早めの受診をおすすめします。

とくに乾癬のある方は、関節のわずかな違和感も見過ごさないことが早期発見につながります。症状が始まった時期や場所をメモしておくと、診察のときに役立つでしょう。

Q
乾癬性関節炎は完治しますか?
A

現時点では、乾癬性関節炎を完全に治しきる方法は確立していません。ただし治療は大きく進歩しており、炎症を抑えて痛みを和らげ、関節の傷みを防ぐことは十分にめざせます。

早く診断を受けて適切な治療を続ければ、症状が落ち着いた状態を保ちやすくなります。長くつき合う病気だからこそ、医師と相談しながら無理のない治療を続けることが大切です。

Q
乾癬性関節炎は何科を受診すればよいですか?
A

関節の症状が中心であれば、リウマチ科や整形外科が相談先になります。すでに乾癬で皮膚科に通っている方は、まず主治医に関節の症状を伝え、紹介を相談するとスムーズです。

皮膚科とリウマチ科が連携して診てくれる医療機関もあります。どこを受診すべきか迷うときは、かかりつけの医師に尋ねてみてください。

参考文献