東京で美容外科医をしている齋藤隆文(形成外科専門医)です。当サイトで、美容コラムを担当しています。この記事の一番最後に、現在の東京での診療案内を載せていますので、受診希望の方は私のホームページの問い合わせフォームからお問い合わせください。
まぶたが重い、目が疲れやすくなった、肩こりや頭痛がある、おでこのシワがひどくなった、などの症状でお悩みではありませんか?もしかするとその原因は眼瞼下垂かもしれません。
この記事では、私が専門の一つとしている眼瞼下垂(がんけんかすい)治療の術後経過、いわゆるダウンタイムについてご紹介します。
ダウンタイムとは、いわゆる腫れや内出血がおさまるまでの期間です。
私は眼瞼下垂(がんけんかすい)手術以外にもふたえ切開や下まぶたのたるみ手術、鼻の美容外科手術など様々なお顔の手術を毎日行っています。そんな中で、みなさんが心配されることの一つにダウンタイムがあります。
ダウンタイム、という言葉をgoogle先生で検索すると、
美容クリニックやエステティックサロンでの施術を受けてから、肌の状態が元の状態へと戻るまでの期間のこと。 美容クリニックでの治療では、高出力マシンや注射などによって、赤みやかさぶた、腫れなどが生じることがある。
と出てきます。手術の場合でも、術後に腫れや内出血が出て、元の状態に戻るまで時間がかかりますので、手術を受ける上でダウンタイムも重要なポイントの一つとなります。
手術の後に、自分のまぶたがどのように変化していくのか、知りたいですよね。というか、知らずには受けられないでしょ、という方もおられると思います。
今日も、心優しい患者さんのご協力で、実際の経過写真をお見せしながら解説していきたいと思います。
おそらくこの記事まで読めば、あなたの眼瞼下垂治療の予備知識、かなりついていると思います。あと少しです、頑張りましょう!!!
この患者さんは、加齢による皮膚のたるみとまぶたをあげる機能が低下した典型的な眼瞼下垂症です。ハードコンタクトレンズを昔使っていたことも影響していますが、それについてはまた別の機会に説明したいと思います。
つまり、初診からの流れとしては前回の患者さんとだいたい同じ経過を辿って手術を迎えています。
なお、眼瞼下垂の一般的な治療の流れについては、他の記事で詳しく説明していますので、いきなりこの記事にたどり着いた方は、先にそちらを参考にしてください。
手術治療の2大ポイントは、まぶたの開く強さと皮膚の余り
眼瞼下垂(がんけんかすい)の手術治療は主に、
- けんばんと挙筋を再固定して、まぶたの開く機能を改善させる
- まつげにかぶさってくる余分な皮膚を切除する
という2つのポイントでプランニングされます。(だいぶ簡略化していますが笑)
- まぶたをあげる機能にだけ問題があれば①だけ
- 皮膚がかぶさって見えにくいだけならば②だけ
- そのどちらもがある場合は①と②
をすることになります。
①はとってもシンプルです。まぶたが開く強さを変えます。この調整が実はすごく難しいんですが、ここから先は、お医者さんの仕事です。患者さんには見えない仕事の部分です。
問題は②です。まぶたのどの部分の皮膚を、どのくらい切除するか。これによって、まぶたの印象が随分と変わってきます。基本的には、皮膚切除だけを考えると、
切除しない
↓
眉毛の下のラインに沿って傷うっすら残るように、皮膚を切除する
↓
ふたえのライン(ひとえの人は、その人が二重だった場合の線を仮定します)に沿って切除
上から下にいくにつれて印象変化が大きくなってきます。そしてもちろん、皮膚切除の量が多ければ多いほど、印象変化が大きくなります。逆に言えば、ほんの少しの皮膚切除であれば、印象変化にはあまり影響しません。
また、完全な一重まぶたの人は、二重まぶたになるデザインが含まれることにも注意が必要ですが、これについては少し話が逸れるので、またの機会に説明します。
ややこしいのは、①と②の組み合わせの場合です。実は、①をする場合は、必ず二重のラインを切開してアプローチすることになります。
なので、①と②をする場合に皮膚切除は眉毛の下でやりたい、となると、切開が2つできることになります。ですから、手術のプランを聞くときは、
- まぶたをあげる機能を改善する手技が必要かどうか
- 皮膚切除はどの程度必要か、眉毛の下と二重のラインどちらから皮膚を切除するか
の2点を確認しておく必要があります。そして、術後ダウンタイムへの影響としては、
1.が必要だと術後の腫れは強くなり、2.の切除量が多くなっても、腫れが強くなります。
今回の患者さんは、
- とにかくまぶたの重さが改善して欲しい。
- 皮膚のたるみは気になってない。
- 印象変化はできるだけ避けたい。
というご希望でした。ですから、皮膚切除が少なく、まぶたをあげる機能改善をメインとしたプランとしました。ですので、この後にお見せするダウンタイムは、
見た目の変化が小さいプランの経過、と考えてください。 なお、全く皮膚を切除しない場合もありますが、少しは切除することが多いので、こちらの方がより現実的な経過だと思います。
腫れるのは抜糸まで!術後半年までのお写真で”普通”のダウンタイムをイメージする
手術当日
組織の切除量が少ないタイプの手術であっても、手術に使う局所麻酔の量や、手術中の内出血の有無により、腫れの程度は個人差が大きいです。なので、手術後10日間はとっても腫れると思って、予定を立ててください。
この方は、だいたい、平均的な術直後の状態だと思います。
術後5日目
抜糸です。内出血が術後にあった場合も、これくらいの時期には紫色が黄色く変化してきて、最終的に吸収されて元に戻ります。内出血の色は残りません、安心してください。
そして、抜糸すると、どんどん腫れは引いていきます。抜糸するまでは、縫合している部分に軟膏を塗ってもらいますが、抜糸後は、自己処置はゼロです。シャワーも洗顔もOKです。
術後1ヶ月
この頃には、だいたい7、8割の腫れが引いています。この方の場合、術後一時的に上がっていた眉毛も下がってきて、この方本来の、優しいまぶた、を取り戻しつつあります。
この頃には、患者さんの笑顔もどんどん素敵になってきます。術後一時的に眉毛が上がっていたのは、まぶたがパンパンに腫れて、開けづらいため、眉毛で補助していたからです。
眉毛が下がったのは、つまり、腫れが引いたことも示しています。
術後半年
だいたい術後3ヶ月で完成です。術後3ヶ月と半年は見た目にはほぼ同じなので半年だけお出ししていますが、そこからの変化も慎重に経過を見て、これでもう安心です。
- できるだけ目の印象を変えたくない、
- 機能の改善重視でやってほしい。
というご希望でしたので、皮膚は最低限の切除としています。
術後は眉毛が下りてきても、ギリギリまつげに皮膚が被っていませんが、エイジングが進んで皮膚が当たるようになってきたら、改めて皮膚の調整が必要になり、そのときは眉毛の下での皮膚切除をオススメすることになりそうです。ただし、キズは本当にきれいになります。
さて、ここでポイント!
そうはいっても、ギリギリまつげに当たらないくらいよりは、もっと皮膚取っておいたほうがよくない? 手抜き?!とお思いの方がいらっしゃるかもしれません。
ここにはきちんとしたワケがあります。最初にお話しした、ハードコンタクトレンズ略してH C L、これが原因の方は控えめがいいんです。
H C Lが原因の眼瞼下垂は、術後に後戻り・再発をしやすいことが知られています。なので、手術の後で少し下がってしまうかもしれません。それなのに皮膚だけたくさん切除すると、二重幅だけが広くなって、本人が一番嫌がっていた、
“印象の変化”
が大きくなってしまいます。皮膚は、後からは切除できても、切除したら戻ってこないのです。そして、この方の場合は、これも事前にお話していたので、
『またそれで困ったら先生んとこ来るね』
と笑顔で最後の診察を終えました。でも、そうはいっても、手術は一回で完璧にしたいですよね。もっと経験を積んで、いつか、この辺りを自分の中では解決したいなあ、なんていつも思っています。
まとめ
眼瞼下垂手術のダウンタイムで知っておくべきなのは、以下の通りです。
- 手術から5日目の抜糸までは腫れる。
- 内出血がもし出た場合は5日目をめどに黄色くなってきて10日ほどで吸収されていく。色が残ることはない。
- 術後1ヶ月で7、8割の腫れが引く。
- 術後3ヶ月でほとんど完成、だけど半年まではしっかりと経過をみてもらいましょう
さて、この記事でお見せした患者さんの手術を担当したのは2018年です。私は常に手術の質を改善する努力を続けていますので、現在の手術術式はこの時期とは大きく変化しています。
ですので、ダウンタイムも昔に比べると大きく改善しています。こんなことを書いている今日も、また眼瞼下垂手術があり新しい改善点が見つかりました。日々、コツコツと進歩を繰り返していますので、またご紹介していきたいと思います。
施術内容:眼瞼下垂症手術(挙筋前転法)
費用:今回のような保険治療の場合 3割負担で約5万円 ・ 美容目的の場合 約50万円(モニター制度あり)
リスク:腫れ、内出血、痛み、違和感、左右差や後戻り、ドライアイ、眼瞼痙攣、霰粒腫、など
齋藤 隆文(さいとう たかふみ)
日本形成外科学会認定専門医
神戸大学医学部医学科卒
現在は加藤クリニック麻布、聖路加国際病院に所属。専門はお顔の美容外科、特に鼻の治療。
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