東京で美容外科医をしている齋藤隆文(形成外科専門医)です。当サイトで、美容コラムを担当しています。この記事の一番最後に、現在の東京での診療案内を載せていますので、受診希望の方は私のホームページの問い合わせフォームからお問い合わせください。
お鼻の整形手術を検討中の患者さんとカウンセリングをしていると、鼻中隔びちゅうかく延長という術式についてのネガティブなご質問をお受けすることが少なくありません。ここでは、鼻中隔延長術についての基本的な知識から、特に鼻中隔軟骨のみを用いた鼻中隔延長術を受ける際のリスクや主な注意点について解説していきたいと思います。
ちなみに、私はお鼻の整形手術を専門にしており、鼻中隔延長術に関する研究で医学論文も執筆しています。なかでも、お鼻の修正手術における鼻中隔延長術をテーマにした論文は、美容外科領域における世界二大医学雑誌であるアメリカ形成外科学会誌(通称PRS)とアメリカ美容外科学会誌(通称ASJ)に認められ、鼻修正手術に関しては日本人としては初めて公式サイトに収載されています(ご興味のある方は文末に引用サイトを載せています)。
そんな鼻中隔延長術に精通した美容外科医である著者が、現在までに報告されている医学研究結果を基に、ぜひ知っておいていただきたい内容を丁寧に解説していきます。
鼻中隔延長術について知りたい方は、この記事をしっかり理解していただければ必要な情報はほとんど網羅されると思います。
鼻中隔延長術とは?
鼻中隔延長術とは、お鼻の美容整形手術の中で、主に鼻の先端部分を延長し、バランスのとれた美しい鼻先を作り出すことを目的としています。この手術は、特に鼻の長さや上向いた鼻先、鼻の穴が正面から目立つことに不満を持つ患者さんに適しており、自然で調和のとれた顔立ちを目指します。
鼻中隔延長術では鼻の中だけでなく、患者さんの状態やゴールの形に応じて、耳や胸からも軟骨を採取して利用することがあります。鼻の軟骨を使用する場合は、鼻中隔軟骨という左右の鼻の穴を真ん中の仕切りとして分けて、鼻の内部全体を支えてる軟骨を使用します。下の図は模式図で、オレンジ色の部分が鼻筋の支柱になっている鼻中隔軟骨です。この部分が曲がると、図のように鼻の通りが悪くなって鼻詰まりの症状が出ることがあります。
この軟骨は、鼻中隔延長術に使いやすい材料として広く利用されており、自分の体の一部から採取されるため、シリコンや人工プレートなどに比べて感染リスクが非常に低いという利点もあります。
手術のプロセスとしては、まずは鼻中隔軟骨を採取し、必要に応じて取り出した軟骨の形を加工します。その後、鼻尖部に移植し、鼻先の形状を整えます。このプロセスにより、鼻の先端が自然に延長され、全体のバランスが改善されます。鼻中隔延長術は、鼻の全体的な印象を大きく変える可能性があるため、患者の顔の特徴や希望する形状を考慮しながら慎重に行われます。
この手術の大きな利点は、安定した土台を使って鼻先を希望する位置に移動させることができることです。また、鼻の機能面でも、正しい手順で組み立てていくことで呼吸がしやすくなるなどの改善が見られることがあります。
しかし、鼻中隔延長術にはリスクも伴います。鼻中隔軟骨の採取による鼻内部の損傷、鼻詰まり、軟骨の吸収や変形などが挙げられます。これらのリスクを最小限に抑えるためには、熟練した専門医による正確な手術技術が必要です。
鼻中隔延長術を検討する際は、患者自身の鼻の構造や顔全体のバランスをよく理解し、経験豊富な専門医との十分なカウンセリングを行うことが重要です。患者の希望や顔の特徴を考慮した上で、最適な手術計画を立てることが、理想的な結果を得るための鍵となります。
鼻中隔軟骨を利用した鼻中隔延長術の3大リスクは後戻り、曲がり、鼻詰まり
うまく使えばバランスの取れた魅力的なお鼻の形に仕上げるのにとても効果的な鼻中隔延長術ですが、いくつかの注意点があります。
鼻中隔軟骨は有限の資源であり、取り出せる量には限りがあります。一般的には、鼻中隔軟骨は長軸で長さ約2〜4センチメートルの軟骨を安全に採取することができるとされており、患者さんによって取れる量が倍近く異なるということになります。
鼻中隔軟骨が少ない場合や、期待する変化が大きい場合など必要とされる軟骨の量が多いケースには、採取可能な軟骨の量が手術の要件を満たさないことがあります。このような患者さんに鼻中隔を使った鼻中隔延長をしてしまうと、強度が足りなくて後戻りや曲がりが起きてしまったり、そういった変形により鼻詰まりを起こすリスクがあります。
軟骨が不足している場合、他の部位から軟骨を採取する必要があります。代替の軟骨源としては、耳の軟骨や肋軟骨が一般的です。しかし、これらの軟骨は鼻中隔軟骨と異なる特性を持っており、手術の複雑さが増す可能性があります。
たとえば、耳の軟骨は柔軟性が高いため、鼻先作りに適していますが、耳の形状に影響を与えるリスクがあります。また、耳の軟骨が柔らかい人・薄い人は思ったような変化を得られなかったり後戻りリスクが増える可能性があります。
一方、肋軟骨はより硬く、大きな変形に対応できる一方で、未熟な外科医だと採取に伴う痛みや回復期間が長くなる可能性があります。また、肋軟骨は加齢とともに石灰化と言って骨のように固くなっていく性質があり、患者さんによっては使うのが適していない可能性があります。
鼻中隔軟骨を使うのが適しているかどうかを判断するにはCTが極めて有用!
すでに、鼻中隔軟骨を用いた鼻中隔延長術のリスクが曲がり、後戻り、鼻詰まりであることを説明させていただきました。では、これらを確実に予防していくためには、どのような工夫が必要なのでしょうか?
とても有用な予防策の一つに、術前の画像検査があります。一般的に受けやすいものだと、特にCT検査がおすすめです。
こちらは正常な方の鼻中隔軟骨の画像です。お顔の面で輪切りにした形で、前歯が見えていますね。画面の真ん中に真っ直ぐ立っているグレーの線が鼻中隔軟骨です。
通常はこんな形でほぼ真っ直ぐの形をしていますが、これが曲がってしまうとどんな形になってしまうのでしょうか?
こちらは他院での鼻整形手術後の方のCT画像です。先ほどとは違い、ぐにゃっと曲がってしまっているのがわかります。不適切な手術を受けるとこんな形で曲がりが出てしまい、またこれが原因でこの方の場合は向かって右側の鼻の穴が塞がってしまっています。
実は、手術の前からここが曲がっている方もおり、鼻中隔湾曲症びちゅうかくわんきょくしょうという状態です。これは手術で治すことができますが、鼻整形手術をする前に確認しておけば、自分がどんな状態で、どんなリスクがあるかを知っておくことができます。
あとは、慣れた先生であればこの検査により軟骨のサイズをある程度正確に計測することも可能です。そうすれば、自分の軟骨がどれくらいの大きさで、手術をするのに十分な量なのかどうかがわかります。
私はご希望のある患者さんには手術前にCT検査を受けてもらい、こういった情報を正確にお伝えするようにしています。
術後トラブルの予防はなんといっても手術方法 精通した医師をどう選ぶ?
これで手術前に知っておくべきこと、リスク、その予防として自分でできることは知ることができましたね。いよいよ手術です。
鼻中隔延長術については世界的には非常に多くの工夫や検証研究が報告され、これらの知識に沿って正しく組み立てればこういったリスクを避けることができるようになりました。具体的には、
- 変化させたい量に応じて使う軟骨を正しく選択する。耳や鼻中隔軟骨はおおよそ2〜3ミリ程度まで、それ以上は肋軟骨を使用する。
- 鼻中隔湾曲症びちゅうかくわんきょくしょうがある場合はこの治療を手術中に必ず先に行ってから延長術に進む。
- 精度が高いとして多くの術式報告や検証研究がされている組み立て方を選ぶ。
といったことが挙げられます。具体的な工夫についてお知りになりたい方は、カウンセリングの際に絵を使って説明させていただいています。こういった重要なポイントをしっかり守ってくれる先生か見極めてドクター選びをしましょう。
実際の鼻中隔延長術の症例を見る
それでは、実際に鼻中隔と耳軟骨を使って鼻整形手術を受けた方のお写真をお見せしてまとめとしたいと思います。
術前と、術後約2年です。
鼻中隔・耳軟骨を用いた鼻中隔延長 鼻尖形成 鼻骨骨切り 全身麻酔 おでこ・ほうれい線・顎先のヒアルロン酸注入
費用 約150万円
リスク 出血 感染 腫れ 違和感 左右差 曲がり 後戻り 鼻詰まり など
齋藤 隆文(さいとう たかふみ)
日本形成外科学会認定専門医
神戸大学医学部医学科卒
現在は加藤クリニック麻布、聖路加国際病院に所属。専門はお顔の美容外科、特に鼻の治療。
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